インフィニット・ストラトス~皇室の楯~(凍結) 作:のんびり日和
夕暮れが射す街の中を一人の少年が顔を下に向けトボトボとランドセルを背負って帰っていた。
『おぉ~い、こっちにパス回して!』
その声が聞こえ、少年は声が聞こえた方に顔を向ける。其処では少年と同じ歳の数人の子供達がサッカーをして遊んでいた。少年も混ざりたかったが自分が混ざればまたあの五月蠅い少女がやって来て邪魔をすると思い、仕方なくトボトボとその場を去って行った。
少年が人通りの少ない所まで行くと突然後ろから車が来ることに少年は気付き、道の端に移動すると突然自分の真横に車が停車し、扉が開かれ数人の男達が少年を引き込み連れ去って行った。
車に連れ込まれた瞬間少年は何とか逃げようと暴れだすが、首に注射を刺され意識を失ってしまった。
そして車はとある山奥にある施設へと到着し、少年は牢屋へと放り込まれた。其処には他にも数人の子供達がいた。
「それで、例の薬を投与してどれくらいだ?」
「2時間は経過していると思います」
「そうか、あと12時間ほど。彼らが我々の為に戦う兵士になれるには先は長いな」
白衣を着た男がそう言うと、近くにいた部下が頷く。
その頃、その施設のある部屋にいた2人の女性がおり、一人はイラついた表情を浮かべ、拳を握りしめていた。
「スコール、イラつくのは分かるが落ち着けよ」
「落ち着けですって? こんなのが落ちつける訳ないでしょ! 貴女も見たでしょ、また罪の無い子供が連れて来られたのを!」
そう言いスコールと呼ばれた女性はイラついた表情を浮かべ拳に額をぶつける。
「……俺達は只の傭兵だ。依頼主に異議を申し立てられるわけないだろ」
そう言い栗色の女性は諭すように言うが、本人もイラついているのか片方の拳が震えるほど握りしめられている。すると、スコールは何を思いついたのか突然立ち上がり何処かに行こうと部屋から出て行こうとする。
「なら、傭兵なりに好きにさせてもらうわ」
「お、おい! まさか……」
「えぇ、そのまさかよ」
そう言いスコールは部屋から出て行く。部屋に残った女性はクソッと呟きスコールの後を追う。
その頃連れて来られた少年は目を覚まし、辺りを見渡す。自分と同じくらいの子供やそれより下の子供たちが、目を閉じ眠っている様な感じを醸し出していた。すると壁にもたれていた一人の黒髪の少女も同じように目を覚ましていた。
「……此処何処?」
「……大丈夫?」
少年は心配そうに少女に話しかける。少女は首を縦に振り辺りを見渡す。
「此処何処か分かる?」
「ううん。 僕も連れて来られたの。えっと君は?」
「私は……分かんない」
そう言い少女は考え込む。すると急に顔を上げ質問を少年に投げた
「そうだ、ねぇ君の名前教えて」
「僕? 僕は……あれ、思い出せない」
そう言い少年は自身の名前を思い出そうとするが何一つ思い出せない。自身の名前、過去に何をしていたのか。そう思っていると突然牢屋の電気が消え、部屋は非常用に切り替わった為か赤色に染まった。
「!? な、なに?」
少女は怖くなり少年に抱き着く。少年は突然抱き着かれたことに驚くが、僕が守らないと。と思いながら周りを見渡していると、突然牢屋の格子が開かれ一人の女性が入ってきた。
「無事な子は……。! 君達大丈夫?」
入ってきたのは銃を持ったスコールだった。少年達は震えながらも首を縦に振る。
「怪我とかは無いようね。二人ともちょっとチクッとするけど我慢してね」
そう言いスコールは2人の首に注射を刺す。2人は何をされたんだ。と疑問を持ちスコールに尋ねようとしたが、もう一人の女性が牢屋の前から声を掛ける。
「スコール、そろそろ脱出しねぇと面倒な奴らが来ちまうぞ!」
「分かってる! オータムは一人抱え上げて! 私はもう1人を抱え上げるから!」
そう叫び、オータムと呼ばれた女性は少女を抱え上げ、スコールは少年を抱え上げ牢屋から脱出する。
そして施設から脱出し、近くに止められていた車に飛び乗り車を発進させ施設から脱出した。
「ふぅ~、マジで危なかったぞ」
オータムは息を吐きながら後ろにいる少年達に目線を向ける。
「他のガキ達は?」
「……もう手遅れだったわ」
スコールの悲観そうな顔にオータムはそうか。とだけ呟き後方を警戒する。すると突然前方から照明を照らされスコールは急ブレーキをかける。
「!? 待ち伏せ!」
「チッ! 読んでいやがったのかよ」
2人は悔しそうな顔でいると、前方の方から白衣を着た男が出てきた。
「やれやれ、私の施設から何を連れ出そうとしているんだお前達は?」
そう言い、男は武装した部下達に車に差し向ける。オータムとスコールは此処までかと思っていると、自分達が来た後方から一人の男がやって来た。
その男性は恰好は動きやすいカーゴパンツに黒いTシャツをしており、腰には刀が数本差してあった。更に顔には眼帯をしており、歴戦をくぐり抜けた顔つきをしていた。
「やれやれ、施設にいた連中は部下達に任せて来て正解だったようだ」
そう言いながら男性は手を後ろで組みながら男達の方へと歩む。
「なんだ貴様!」
白衣の男はそう叫ぶ。
「私かね? まぁ簡単に言えば君達の様な者を排除しに来た者だよ」
男は目を瞑っているのか分からない表情で、そう呟きながらも歩み続けた。
「そうか。なら死ね!」
そう言い白衣の男は部下達に男を殺すよう指示する。武装した男達は一斉に持っていた銃で攻撃するが、眼帯の男は何時の間にか抜いた刀で弾丸を叩き切りながら間合いを一気に詰め、武装した男達を次々に斬り伏せていった。
「そ、そんな馬鹿な!?」
次々に部下を斬り捨てられていくのを見た白衣の男は恐怖し、その場から逃げようとしたが背後から切り捨てられ地面に横たわる。男は這いつくばりながらも逃げようとするが、太ももに刀を突き刺され男は悲鳴に近い声を上げる。
「お、お願いだ! た、たた、助けてくれ!」
男の懇願に眼帯の男は耳を貸さず、男の首を刎ねた。車に乗っていたスコール達は一体何が起きたのか、状況が上手く呑み込めず固唾を飲んでいると、白衣の男の首を刎ねた眼帯の男がスコール達の元へとやって来る。
「さてお嬢さん方。君達は一体あそこで何が行われていたか知っているかね?」
男は嘘を見抜くような鋭い視線を二人へと向けていた。
2人はその視線に息を詰まるような感じを受けながらも答えた。
「……俺達も詳しくは知らない。俺達は施設の警護を任されていたから」
「……私が知っているのは、子供達を誘拐し薬で記憶を消して再教育し兵士に育て上げようとしていたくらいだけよ。何の為に兵士にしようとかは詳しくは聞いていないわ」
「そうか。それでその後ろにいる子供がその被害者か」
そう言い視線を後ろにいる少年達に向ける。少年は突然現れた男性に少女を守る様に前に座っていた。
それを見た男性は朗らかな笑みを浮かべる。
「安心しなさい。もう君達に悪さしようとした奴らはみんな倒したから」
そう言われ少年はおどおどしながらもありがとうとお礼を言った。
「所で、貴方の名前は?」
「おぉ申し遅れて申し訳ない。私は天城颯馬という」
「あ、天城ですって……!」
スコールは天城と言う名字を聞き震えあがった。
「お、おいスコール、天城って確か……」
「えぇ、この国の天皇直属の暗部組織よ。まさか頭領自ら前線に出てくるなんて……」
スコールの驚いた表情に颯馬はハハハ。と笑い出す。
「いやはや、それでも最近体が思う様に動かない事があるがね」
そう言い、スコール達は心の中で何処がだよ!とツッコミを入れていたのは言うまでもない。
すると、暗闇の中から一人の男性が現れて颯馬の元へとやってくる。
「颯馬様、施設に向かった部隊からの報告です。施設に残っていた子供達は息はあるのですが、記憶に障害があり、しかも知能がかなり低くなっている状態とのことです」
「……そうか」
颯馬は部下からの報告に悲しそうな表情を浮かべる。そして顔をスコール達の方へと向ける。
「所でその子達は大丈夫なのかね?」
「この子達は、薬を投与されてそれほど時間が経っていなかったし、解毒剤を射ったなら何とかなったと思うけど、恐らく名前や過去の事は……」
そう言いスコールは悲しそうな顔を浮かべる。
「そうか。……さて其処にいる子供達は私が保護するが、君達はこれからどうするかね? 」
颯馬の問いに2人は互いに顔を見合い、どうするか考え始めた。
「どうって言われてもよ?」
「そうね、行く場所何て決めてないしまた戦場に行こうかしら」
そう言うと、颯馬はだったらとある提案を出した。
「お主達、行くところがないのなら私の所に来ないか?」
「「え?」」
「見た所、お主達の実力は中々目に留まるほどありそうだ。それにその子達も君達が一緒に居れば安心するはずだ」
そう言われ、2人は後部座席にいる少年達に目を向ける。少年達は一緒に来て欲しそうな眼を向けていた。
「そうねぇ、何時までも危険な戦場に行くより、安定した給料が貰える所で仕えるのも悪くないわね」
「だな。良いぜアンタの案に乗ってやるよ」
そう言われ颯馬は首を縦に振り、部下が運転してきた車に颯馬は4人を車へと乗せその場から去って行った。
次回予告
あれから数年が経ち、少年は天城智哉と名乗り、少女は天城穂香と名乗った。そしてスコール達も名前を換え、少年達の傍で2人を見守り続けていた。そんなある日、家に侵入者が現れた。
次回
新しい家族