インフィニット・ストラトス~皇室の楯~(凍結) 作:のんびり日和
織斑千冬の裁判から月日は経ち、智哉達は6年生となった。そんなある日、智哉はとある一室の前に来ていた。
「時雨さんいますか?」
そう声を掛けると、襖が開かれ時雨が出てきた。
「若様? 如何なされましたか?」
「えっと、格闘術の訓練に付き合って欲しいんだけどいいですか?」
「格闘術ですか?」
「うん。時雨さん、軍隊式の
「なるほど。でしたら秋も呼びましょう。彼女もロシアのシステマを身に付けてますし」
「システマ?」
「ロシア軍が取り入れている軍隊式格闘術です」
そう言われ色んな武術を習うのもいい経験かもしれないと思い、智哉は秋さんも呼んでくると言い部屋から去って行った。
「さて、私も動きやすい服装に着替えてきましょうか」
そう言い時雨は服を着替えに部屋へと戻って行った。
それから暫くして天城家の敷地内に建てられている道場にジャージ姿の時雨と秋、そして体操着の智哉が組み手を行っていた。
「脇の締めがまだ甘いですよ、若様!」
そう言い時雨は懐に入り込んで、智哉を転ばせる。
「あいたっ!?」
「脇の締めが甘いとこのように転ばされますから、以後気を付けてくださいね」
そう言われ智哉はぶつけた後頭部を抑えながら、首を縦に振った。
その光景を見ていた秋は呆れた様な目で時雨を見ていた。
「おい、時雨。流石に若様相手に本気すぎないか?」
「あら、これは若様からの要望よ。手を抜いた訓練では技術は身につかない。だから本気でやって欲しいって」
そう言われなるほど。と秋は納得した。すると道場の入り口から
「私達もま~ぜ~てぇ!」
「お兄ちゃん汗だくじゃん。はい、タオル」
「皆様、ミネラルウォーターをお持ちしました」
恵梨香、穂香、黒江がそれぞれ動きやすい恰好、そして飲み物などを持ってやって来た。そして
「若様、格闘術のみならず天城流の特訓もしないとけませんよ。取り敢えず後ろの2人をおまけとしてお呼び致しましたので、後程剣術の訓練を行いましょう」
美哉は笑みを浮かべながらそう言うと、後ろにいた鴉羽は不敵な笑みを浮かべ紅翼は若干怒り顔を浮かべる。
「おやおや、オマケ呼ばわりとはいただけないねぇ」
「全くだよ。第一僕は若様が格闘術を学んでいるって聞いたから訓練にお付き合いしようと思って来たんだけど」
「あら、私に口答えですか? いいんですよ、今此処で2人纏めて叩き伏せても」
後ろに般若を浮かべながら黒い笑みを浮かべる美哉に、紅翼はうっ!?と恐怖し後ずさり、鴉羽はまたの機会にと言って壁際に置かれている椅子に座る。すると鴉羽は智哉に質問を投げた。
「そう言えば、若様。何故格闘術を身に付けたいと思ったのですか?」
「え?」
突然の質問に智哉は一瞬驚くも、ぽつりぽつりとその訳を口にした。
「……僕と穂香達が襲われた事件の後、僕まだその時の恐怖が時折夢で出てくるんです」
「「「「!?」」」」
驚いた顔を浮かべる面々の中、鴉羽と恵梨香だけは驚いていなかった。鴉羽は恵梨香が余り驚いていない事に質問を投げた。
「恵梨香様はさほど驚いておりませんね」
「うん。夜寝ているときに、時折とも君がうなされているときが偶にあったからね」
そうですか。と鴉羽は納得し、智哉に続きを促す。
「その夢で自分がまだ無力な感じがして、だから自分の身と皆を守れるだけの力を付けたい。そう思ってまだ身に付けていない格闘術を身に付けようと思って秋さん達に頼んだんです」
そう言うと鴉羽はそうですか。と笑みを浮かべ、刀を壁に立て掛ける。
「それでしたら私もお付き合いしましょう」
「あら、貴女。格闘技は得意だったかしら?」
美哉は普段仕事以外はやる気を見せない鴉羽が率先して動こうとした事に驚き、格闘技が得意だったか聞く。
「そりゃあ刀を扱うんだったら、格闘術には慣れておかないと。若様、剣術を習っておられるならその訳、分かりますよね?」
「えっと、懐に潜り込まれたら刀では振れないからですか?」
「そうです。懐に入られたら、刃が長い刀では振るのが遅くなります。だから相手に入られた場合に備え、相手を遠くに突き飛ばす為の格闘術を身に付けているんです」
そう言い壁に置かれている竹刀を持つ。
「では素手同士の格闘術が終わり、しばらく休憩した後刀同士の格闘術をお教えします」
「はい! よろしくお願いします!」
そう言い秋達と素手による格闘術の訓練に戻った。訓練を見守る傍ら、手が空いている紅翼に穂香が格闘術を教えてもらうために、端の方へと行き訓練を始める。
「さて、私達はどうする?」
恵梨香は訓練の光景を見ながら残ったメンバーに声を掛ける。
「そうですね。私は若様の訓練が終わられるまで此処で待っております」
「私も美哉同様に待ちます」
「くーちゃんはお母さんとじゃないと出来ないもんね」
「はい、頑張って皆さんとできるようになりたいです」
そう言い道場の壁際で座りながら訓練を眺める黒江。黒江は目ではなくISを使って周囲の状況を把握しているが、万が一ISが使えない状況に陥った場合に備え、雪子に気配による周囲の状況を察知する術を教えてもらっている途中である。
「美哉様」
そう言い一人の黒スーツの男性が道場前にやって来た。
「塩谷ですか。何か?」
「はっ! 颯馬様が訓練終了後、美哉、鴉羽、紅翼、秋、時雨は私の部屋に来るようにと言伝を預かって参りました」
そう言い美哉は分かりました。と伝えると塩谷と呼ばれた従者は去った。
次回予告
訓練後颯馬に呼ばれた5人。颯馬はある部隊を作るために呼んだと伝えた。そしてその部隊に就く従者3名を呼んだ。
次回
親が子を守るのは当たり前
~私が守れない時は、お前達があの子達の盾となり、鉾となれ~