インフィニット・ストラトス~皇室の楯~(凍結) 作:のんびり日和
季節は経ち、桜の花びらが舞い散る季節。智哉達は新たな制服を身に纏い玄関に立っていた。
「さて穂香、黒江。そろそろ行こうか」
智哉がそう言うと髪を整え終えた穂香と黒江は頷く。
「うん」
「はい、準備完了です」
そう言い2人はカバンを持つ。すると黒江はある物に気付き、穂香に声を掛ける。
「お姉様、ペンダントをお忘れですよ」
「あ、いけないいけない。忘れる所だったよ」
そう言い穂香は大切にしているロケットペンダントを首に掛ける。
「忘れ物はもう無いか?」
「うん、大丈夫!」
「私もありません」
「じゃあ、行こう」
そう言い3人は玄関に行くと変わらず颯馬達が見送りに来ていた。変わっているところがあるとすれば、新しい従者が何人かいるくらいだ。
「3人共、気を付けて行ってくるんだぞ」
颯馬は3人にそう言うと、3人は「はい。」と返す。雪子はその光景に笑みを浮かべながら見て、次に外に居る時雨、秋に目を向けた。2人は雪子の視線から3人を必ず守る様に。そう言った視線だと感じ取り小さく頷くと、雪子も小さく頷いた。
「さぁ、3人共。早く行かないと遅刻してしまいますよ」
雪子は視線を智哉達の方へと戻し、行かすように促すと3人は頷く。
「それじゃあ」
「行ってきます」「行ってきま~す」「行って参ります」
「うむ、行ってらっしゃい」
「気を付けて行ってらっしゃいね」
「「「行ってらっしゃいませ、若様! お嬢様!」」」
颯馬や従者達の見送りを背に智哉達は時雨、秋の用意した車へと乗り込もうとした。智哉は車に乗り込む前に遠くの方に居たホロウに手を振り口パクで
<行ってきます>
と言った。それを遠くで見たホロウは笑みを浮かべながら今日も高台からの護衛を頑張ろうとやる気に満ちたとか。
3人が乗った車は走り出し、そのまま浄苑中学校へと向かった。
「秋さん、時雨さん。また暫く送り迎えの方宜しくお願いしますね」
智哉は小学生の頃から何時も送り迎えをしてくれる2人にまた世話になることに、そう口にすると秋と時雨は二人は笑みを浮かべながら答えた。
「はい、お任せください」
「それが俺らの仕事だからな」
そうこうしている内に車は浄苑中学校の門前へと到着し、智哉達は扉を開け降りる。するともう一台の車が停まり2人の生徒が降りてきた。
「あ、簪に本音。おはよう」
「おはよう、簪ちゃん。本音ちゃん」
「おはようございます、簪さん。本音さん」
「智哉、それに穂香に黒江も。おはよう」
「おっはぁ~。ともともぉ、ほーちゃん、クロクロぉ」
簪は恥ずかし気に小さく手を振りながら挨拶し、本音は変わらずダボダボの袖の制服を身に纏い、袖を挙げながら挨拶する。
「簪達もこの中学校だったんだ」
「うん。お姉ちゃんと虚さんもこの中学なの」
智哉はへぇ~。と言い簪と本音も交え、共にクラス表を見に行く。
「えっと、俺は3組か」
「私と黒江も3組だ!」
そう言い穂香と黒江はまたお兄ちゃんと同じクラスだと喜んでいると、簪と本音は自分の名前を探す。
「えっと……。あった! 私と本音も3組みたい」
「おぉ~! ともとも達と一緒だぁ!」
そう言い隣にいた智哉に両腕を挙げながら喜ぶ本音。
「そんなに喜ぶことなのか?」
智哉はそう言いながら苦笑いを浮かべながら、簪達と共に3組へと向かう。
そしてクラスへと到着した5人はそれぞれ席に着き、担任の教師から学校についての説明などが行われた。そして入学式が行われる体育館へと移動しそれぞれクラスごとに分けられた席に座る。
壇上に校長、指導教諭の入学祝の祝辞が送られ次に生徒会長が壇上に上がる。
「あれ? もしかして刀奈さん?」
「うん、生徒会長をしているって聞いてたけど本当にしてたんだ」
「普段はおちゃらけなのに、こういう時はしっかりしてるね」
「一瞬見間違えそうになりました」
そう言いながらシャキッとしている刀奈に驚く4人。因みに本音はコクコクと居眠りしかけていた。
『新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。浄苑中学校生徒会長の更識刀奈と言います。我々上級生は皆様のご入学を心から祝福します。短い祝辞になりましたが、これで生徒会長の祝辞を終えます』
そう言い刀奈は一礼し壇上から下りて行った。
そして入学式が終わりクラスへと戻って来た生徒達は教師から渡された学校行事などが書かれたカレンダーやら親に書いて貰わなければいけない書類などが配られ、智哉達はそれらをカバンに仕舞う。そして先生からの挨拶が終わり、自由下校となった。ある生徒達は部活の見学。ある生徒達は他クラスの友人の元に行くなどした。そして智哉達は帰宅しようか考えていると
「あ、まだ此処に居てくれたんですね」
そう声を掛けられ振り向くと、虚が其処に居た。
「虚さん、こんにちは」
「はい、こんにちは智哉君。それと穂香さん、黒江ちゃん」
「こんにちは虚さん」
「お久しぶりです」
虚は朗らかな笑みを浮かべながら智哉達の元に行く。
「それでお姉ちゃん。どうしたのぉ?」
本音はそう聞くと、虚は用件を口にした。
「実はお嬢様が智哉君達を呼んできて欲しいと頼まれたの」
そう言われ智哉達は首を傾げる。
「刀奈さんがですか?」
「えぇ。呼ぶ理由は何かは聞いてないのだけど」
「そうなんですか。それじゃあ行こうか」
智哉はカバンを持つと、穂香や黒江達もカバンを持ち虚の案内で生徒会室へと向かった。そして生徒会室へと到着し中へと入る6人。
「失礼しま「待ってたよぉ、智哉君!」うわっ、危ないですって刀奈さん」
扉を開けた途端、刀奈は智哉に抱き着いてきた。
「はぁ~、入学式のあの凛々しい状態を普段からして頂けると、本当にありがたいですよ」
虚は何時ものおちゃらけな刀奈になっている事に、呆れた様にため息を吐きながらお茶の用意をする。
「お姉ちゃん、智哉が困っているから離れなよ」
簪はそう言い引っ付いている刀奈を引き剥がす。
「むぅ~いいじゃない、簪ちゃん。久しぶりに智哉君に会えたんだから甘えてもぉ」
そう怒っている様な雰囲気を出しながら『生徒会長』と書かれた札の席に向かう。
「……はっははは。えっと、それで刀奈さん。僕達を呼んだのは単に久しぶりに会いたいからなんですか?」
「それもあるけど、一緒に帰れたらなと思ってね」
そう言い机横に置かれているカバンを持ち上げる刀奈。
「でしたら別に此処に呼ばずに教室に直接行って誘えば宜しかったじゃないですか」
虚は自身のカバンを持ちあげながら呆れた溜息を吐くと、刀奈はてへっ。と舌を出しながら謝る。
「そうだったんですか。それじゃあ鴉羽さん、紅翼さん、切姫さん。護衛をお願いしますね」
智哉は背後にそう声を掛けると、扉が開かれ鴉羽と紅翼が立っていた。
「分かりました、若様」
「お任せください!」
「承りましたわ」
3人の言葉を聞いた智哉は頷き、刀奈達と共に生徒会室を出て学校を後にした。
次回予告
中学にあがり幾日が過ぎたある日、智哉は父颯馬から1本の刀を受け取った。そして天城家を背負うだけの力を身に付けるべく颯馬と真剣を使った訓練を行う。
次回
天城を背負う者として
~生半可な気持ちでは当主にはなれんぞ、智哉~