楽しんでいただけたら幸いです。
特に特筆すべきこともなく金曜日の学校が終わり、昇降口で靴を履き替えて外に出る。夕日に目を細めながら校門の方を見ると友希那が校門に背を預けていた。長い銀髪が風でなびき、目を細めている様子に見惚れていると友希那がこちらに気づき、手招きをされる。
「遅いわよ」
「何かあったか?」
「行きたいお店があるの、付き合ってもらっていいかしら?ちょうど明日は休みだし」
「いいけど、どこに行くんだ?」
「それはね……猫カフェよ」
ということでやってきました、猫カフェ。……正直、アウェーな感じがすごい。受付でお金を支払い、ロッカーに荷物を預けてホールに行くと動物独特の匂いと共に色々な猫たちが思い思いの場所でくつろいでいた。よく写真で見るような黒のシマシマが入った猫や三毛猫、流行りのスコティッシュフォールド(だったか?)までいる。
「ほー」
「何惚けた顔してるの、早く触りに行くわよ」
感心していると友希那からの喝が入る。友希那は右手にカメラを起動したスマホ、左手に猫じゃらしを持ち、興奮気味に猫に向かって進んでいった。いや、そんなに目ギラギラさせなくても……
「ほーら、猫じゃらしよ~~。ほらほら~」
友希那は猫じゃらしを鼠色の猫に向ける。が猫はそれを無視して遊具の方に行ってしまう。
「……なんでよ……」
「そんなに気合入れてたらあっちが警戒するだろ……」
俺は友希那がまとう負のオーラには触れずに近くのソファに座る。隣にはかなり太った感じの猫が気持ちよさそうに日向ぼっこをしている。そっと背中を撫でると驚くほどもふもふの毛と少し高めの体温で何度も撫でたくなってしまう。手のひらにデブ猫のぬくもりを感じていると、今度は白と黒の縞々の子猫が膝の上にのってきた。こちらがびっくりして動かずにいるとそのまま膝の上で丸くなり、軽く欠伸をした後に寝始める。……初対面なのにずいぶんと図々しいな、おい。
「……いいわね、そんなに猫に好かれて」
戻ってきた友希那はさっきから追いかけていた猫に逃げられたらしく、いつも気丈な友希那にしては珍しく落ち込んでいた。
「いや、まあ、そういうこともあるよ、うん」
「……うう……」
「泣かなくても……。ほらこいつやるから」
俺はさっきから片手間に撫でていたデブ猫を抱きかかえ、友希那に渡す。デブ猫は特に抵抗もせず友希那の腕に収まった。
「この子はラガマフィンって言う種類の猫ね。人に抱かれるのが好きな猫として有名なの」
「そんな猫もいるのか」
「親戚みたいなものにラグドールっていう種類もいて…………
友希那の豆知識に感嘆していると突然膝の上で寝ていた子猫が目を覚まし、「Staff only」と書かれた扉に走っていった。先ほどはキャットタワーにいた猫たちも少しずつ同じように扉に集まりにゃーにゃーとやかましく鳴き始める。
「なんだろうな、あれ」
「多分エサの時間ね」
友希那の予想通り、扉が開き、餌が入ってるであろう皿をお盆に載せた店員らしき人が出てきた。何匹もの猫が店員に群がり、なかなかに癒される。友希那に抱かれていた猫ものっそりと餌を食べに向かった。それを機に友希那も立ち上がり、餌にがっつく猫たちの写真を撮り始める。そして全ての猫たちが餌を食べ終える頃には友希那の写真フォルダは100枚も増えていた。
「可愛い……」
写真を撮り終え、満足したらしい友希那はまた先ほどのデブ猫を膝に乗せて、頭を撫でている。俺はその光景を写真にとり、壁紙に設定する。画面を見てニヤニヤしていると背中に爪を立てられる感触、何かと振り返ると白い毛で細身の猫が擦り寄ってくる。
「友希那、こいつはなんて種類なんだ?」
「シャム猫よ。初対面の人には警戒心が強いはずなのだけど……」
「本当か、それ」
友希那が驚くのも仕方ないだろう。さっきのシャム猫はいつの間にか俺の左手にじゃれ始めている。勿論今まで猫カフェには来たことがないのであったことなどないはずなのだが……。
「マタタビの匂いでもするのかしらね」
「何も嬉しくないぞ、それ」
それから1時間ほど、シャム猫と遊び、時間となる。友希那はずっとデブ猫を撫でていたわけではなくキャットタワーの方に行って他の猫を撫でたり、写真を撮っていた。…………勿論その時の緩んだ顔も写真に収めさせてもらった。
友希那の家までの帰り道、少し冷えてきた星空の下で俺と友希那は口々に今日の感想を言い合う。
「今日はいい息抜きができたわ」
「それはよかった。にしても可愛かったなー猫。特に店員さんに群がってにゃーにゃー行ってた時とか」
「おやつとかあげてみたいわね。食べてる時の猫の顔ってちょっとおかしいのよ。ほら、こんな感じ」
友希那は膨れ上がった猫のフォルダを開き、俺にスマホを渡してくる。
「すごいがっついてるな。目も細くなってるし、変顔してるように見える」
「あなたは撮らなかったの?写真」
「いや、俺は……撮ったというかなんというか」
「撮ったなら見せてちょうだい。というか送って」
「いや、猫は撮ってない」
「……?猫
言いかけて友希那は何かを思い出したように怪訝にこちらを見る。
「スマホ貸して」
「…………拒否権は?」
「ないわ、早く」
観念してロックを解きスマホを手渡す。友希那はそれを奪い取り、
「え……」
「あ、壁紙……」
フォルダどうこうじゃなくてその前にバレた。壁紙に設定してたのを完全に忘れていた。
「……何してるのかしら」
友希那は顔を真っ赤にして睨んでくる。まあ、だらしない表情を見られただけでなくそれを写真に残されているのだから気持ちはわかる。
「いや、その、えと」
「消すわ」
「それだけは何卒ご勘弁を!」
「こんなの隠し撮りじゃない。なんで……」
「いや、気を抜いてるお前が珍しかったのとその……可愛かったから、つい」
「…………」
あ、黙った。意外にちょろいな。いや本心だけど。
「……けよ」
「え?」
「だから、一枚だけ。それ以外は消すわ」
「交渉の余地は?」
「ないわ。こんな緩んだ顔、本当は見せたくないのに……」
俯いてしまった友希那を見て少し反省をする。これからはちゃんと断りを入れて写真を撮らせてもらうことにしようと心に決め、残す一枚を指差す。
「じゃあ、これにする」
俺が選んだのは緩んでるというよりは赤ん坊に母親が向けるような、慈愛に満ちたという表現がしっくりくるものだった。友希那はそれを恥ずかしそうに見て、ため息をつく。
「じゃあこれ以外は消すわね」
友希那が操作すること数秒、スマホには消去しましたのメッセージが出ていた。
「それじゃあ、また今度」
「え?あ、ああ」
写真のことで頭がいっぱいだったからか、友希那の家の前まで来ていたことに気がつかなかった。友希那が玄関のドアをくぐるのを見て、家に向かう。もうすぐ冬が来る、その前にまた友希那と行こうと思いながら。
因みに消されなかった一枚はずっと俺の壁紙になっている。勿論Roseliaのメンバーにも送ってあるので、今度友希那に会うのが楽しみだ。
短くしようとしてた最後が一番長いし、……も使いすぎですね、すいません。
というか今回友希那がデレてない……。これは早急にどうにかせねば。(次回の投稿が早いとは言ってない)
ご意見、ご感想待ってます。