せめて2週間に1個は更新できるように善処します。
けたたましい目覚まし時計の音で目を覚ます。現在時刻は午前七時。だるい体を無理やりベッドから起こし、シャワーを浴びて意識を覚醒させる。……今日も学校だ。
朝食を済ませて家を出ると、雨が降っていた。雨の日はやはり憂鬱だ、傘という荷物が増える。肌寒さを感じながら傘をさして歩き出したその時、ポケットに入れたスマホが震える。何かと思いながらロックを解いてラインを開くと友希那から一言だけ
「風邪をひいたから学校は休む」
とのメッセージがあった……
帰りのSHRが終わると同時に学校を飛び出し、友希那の家に向かう。朝のうちに見舞いに行くという連絡はした。その時はまだ38.0℃もあったので、今はもう下がっていることを祈りながら歩を進める。
程なくして友希那の家に着き、インターホンを鳴らす。しばらくしてからドアを開けたのは友希那だった。黒いパジャマにマスクをつけていて、気だるそうだ。
「はい、あ」
「よ。お母さんは?」
「今日も仕事。とりあえず入って」
「お邪魔します。熱は下がったか?」
「インターホンで起きたから測ってないわ」
友希那の後について部屋に向かう。フードに猫耳らしきものが見えるがそこは突っ込まない。
「さっきまで寝てたのか。じゃあ何か食べたか?」
「お昼におか……母が作ってくれたお粥を食べたわ」
部屋に入り、友希那は体温を測る。その間に俺はコンビニで買ってきたものを出す。
しばらくすると体温計がピピッとなる。
「何度だ?」
「37.3……だいぶ下がったわね……」
「それは良かった。明日は行けそうだな」
「こんな風邪で2日も休まないわよ。明日からはバンドも復帰するわ」
「まあ、無理だけはしないようにな。お前は無理することが多いから心配だ」
まあそこがすごいんだけどさと言いながら友希那の頭を撫でる。友希那はいつも以上に気持ち良さげに、こちらに体を倒しながら撫でられてくれていた。
「ああ、そういえばプリン買ってきたぞ」
ずっと撫でていると腕が辛くなってきたので手を離し、話題も変える。
「……あ」
名残惜しそうな顔したな今。
「プリン……食べたいわ」
「やっぱり甘いもんはいいよな〜」
蓋を開け、カップとスプーンを友希那に手渡そうとしたのだが、友希那はこちらを向き口を開けたまま微動だにしない。
「…………?どうした?」
「…………?あっ」
友希那は俯いて目を泳がせ始める。友希那はプリンが食べたい、俺が蓋を取った、カップとスプーンは別の手で持っている…………あ。
「…………あーんかと思って……」
顔を赤く染め、落胆した声で話す。
「すまん。今のは俺が悪かった」
「…………食べさせて」
「ハイ」
未練がましい視線を浴びせられながらプリンをすくい、友希那に差し出す。友希那がそれを咥え、プリンを飲み込む。
「あーーん」とスプーンを差し出し、「あーー……」と友希那が咥える直前にこちらに向かってスプーンを引く。何もないところで口を閉じた友希那は面と向かって怒りはしない。しないが、もちろん少しの非難と恥ずかしさが混じった視線が飛んでくる。そんなところまで可愛いと思ってしまう自分はおかしいのだろう。苦笑しながらスプーンを差し出す。
「ほら、最後の一口」
今度は普通に食べさせてあげる。むすっとしてはいるが大人しくプリンを咀嚼し、順調に食べているところを見ると回復しているんだなとわかり安堵する。
「ごちそうさま」
ものの数分で食べ終わり友希那は満足そうに手を合わせる。
「お粗末。それじゃ、俺は帰る。あんまり長居するのも悪いだろ」
「……ええ」
なんだか友希那が歯切れの悪い返事を返す。でも友希那はまだ病人だし、これ以上いるのは……。と思考を巡らせていると制服の袖が引っ張られる感覚。
「その……まだ一緒にいてほしいの…………。だめ……かしら……?」
袖をつかんだ犯人である友希那が見上げながら聞いてくる。上気した頰と潤んだ瞳に目が釘付けになり、まともな思考ができなくなる。無言のまま座り直し友希那の手を握る。
「……眠るまで、な」
「……ありがとう」
友希那にまだいてほしいと言われた後も今日の学校のことやRoseliaのことを話し、友希那が眠る気配はなかった。時刻はもう午後5時。もうすぐ友希那の母も帰ってくる頃だろう。
「もう5時……だな」
「もう、帰るの?」
「病人の娘と男が二人きりっていうのはあんまりいいイメージ持たれないだろうしな」
「……そう」
友希那がまた言葉を濁す。風邪のせいで気弱になっているのかいつものように率直に言葉を投げてこない。
「はっきり言わないのはお前らしくないな。何かしてほしいこととかあるのか?」
「……その……言いづらいのだけど…………また、抱きしめてほしいわ」
恥ずかしそうに俯きながら友希那が呟く。
「わかった。少し待ってくれ、心の準備がしたい」
少し深呼吸をしてバクバクなる心臓を無理やり落ち着かせる。5回ほどでだいぶ静かになり、友希那のほうを向く。ベッドに寝たまま上半身だけ起こした友希那の背中に腕を回し、抱きしめる。
「こんなもんでいいか?」
耳元で囁く。
「ええ……。あったかい…………」
友希那が目を閉じて肩に顔をうずめてくる。ほのかに香る甘いシャンプーの匂いと汗の匂いがした。頭を撫でてやると友希那は腕の力を強くする。しばらくの間、ゆっくりとした時が流れ友希那がウトウトし始める。そろそろ離れようとしたその時……
「友希那ー!風邪大丈……!?」
Roseliaでベースを担当している友希那の幼馴染、今井リサがいきなり部屋に入ってきた。抱きしめ合っている俺と友希那を見てリサは何を思ったのか顔を真っ赤にしながら
「ご、ごゆっくり!」
と言い、駆け出していった……。いきなりの出来事に固まっていると友希那が話しかけてくる。
「…………リサに……見られた……」
「いや付き合ってるのは知ってるし別にそこは問題じゃないだろ。むしろごゆっくりの方を気にした方が……」
「それもそうだけど……。練習の休憩時間に質問責めにされるのよ……。紗夜まで加担して」
Roseliaで俺が話したことがあるのは今井だけなので紗夜という人は大がつくほどの真面目だということだけを聞いている。
「……頑張れ。俺も弁明だけはしておくから」
「憂鬱だわ……」
友希那はベッドに転がり、布団をかぶる。
「それじゃ、俺は帰る。ちゃんと寝て治せよ?」
「わかってるわ……。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
友希那の部屋の電気を消し、扉を閉めた。
翌日は風邪も治り、Roseliaの練習にも参加していたらしい。もちろん休憩時間は質問責めにあったらしいが。
後日談を書きたくなるくせをどうにかせねば!
次回はどうしましょうかねぇ……。まだ決まってないんですよ、はい。
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