無力な吸血鬼   作:diaboli

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今回、徹夜明けのボロボロでウトウトとしている状態で後半を書きましたので、もしかすると変な文章があったりするかもしれませんが、ご了承下さい。

後程発見した場合は修正しておきます。
決して修正したからといって大幅にストーリーが変わる事はありませんのでご安心下さい。


Ep.2 - ハンデ -

 『AKIRA』というアニメ映画をご存知だろうか。

 

 第三次世界大戦後の近未来の東京を舞台に、アキラと呼ばれる強大な超能力者を巡り軍隊やゲリラ、暴走族たちが戦いを繰り広げる話だ。

 

 超能力、それは通常の人間にはできないことを実現できる特殊な能力のことであり、科学では説明出来ない摩訶不思議な事を指す。

 

 ボクはこの世界へ新たな生命として誕生してから既に5年程経過している。

 

 この異世界では現代人が憧れた幻想的な生命体が当たり前の如く存在しており、エルフ、獣人、亜人種、鬼等、多種多様だ。

 

 ボクはその中でも吸血鬼として誕生した。

 

 途轍ない身体能力や吸血する事で有名であり、流水、銀、日光等、弱点が多過ぎる種族としても有名である。

 

 吸血鬼の、それも大貴族の子供、ノア・スカーレットとして生まれたボクは、この世界に誕生して間もない頃は理解が追いつかず、現実逃避をしてしまう事が多々あったが、今では当たり前として受け入れている。

 

 そして、なによりだ。

 

 この世界では超能力が存在する。

 

 全ての生命体が何らかの能力を持っているわけではないが、結構な数の能力者が存在している。

 その能力も戦闘に特化したようなものや、生活に便利なもの、特定の仕事に特化されたようなもの等、大小様々だ。

 

 そんな中、ボクの家族は皆が能力者だった。

 

 この世界での父親であるゼノン・スカーレットは血液を操る能力という吸血鬼に相応しいであろうもの。

 母親であるソフィア・スカーレットは五感を強化する能力、そして姉であるレミリア・スカーレットは運命を操る能力である。

 

 どうやらこの世界では程度という言葉をつけるらしいが。

 

 そして、ボクはというと…

 

 「…ノア、能力を持っていなかったとしてもそれは悪い事ではないの。それにノアには能力なんてなくたって私達を幸せにしてくれているというとっても素敵な能力を持ってるじゃない。」

 

 そうやって母親であるソフィアはボクを励ましてくれる。

 姉であるレミリアもその言葉に追従するようにボクを励ましてくれる。

 

 そうなのだ。

 

 ボクは全く能力を持っていない。

 ボク以外の家族は皆が能力を持っている。

 それだけならまだ良いのだ。

 

 このスカーレット家計の先祖全員も何らかの能力を持っていた。

 その中で、たった一人だけ無能力者であるボクが生まれた。

 

 そして、そんなボクにとどめの一撃と言わんばかりに姉の言葉が酷く心に突き刺さる。

 

 「大丈夫よ、ノア。例え目が見えなくたって、例え能力がなくたって、貴女は私の唯一の妹よ。たった一人の、かけがえのない宝物なの。能力の有無で優劣が決まるなんて事はないわ。大丈夫。」

 

 姉はボクを必死に励ましたつもりだったのだろう。

 姉らしい、とても優しさの篭った言葉だった。

 しかし、その言葉の中にある一つの言葉が、まるで針で刺されたかのようにブスリと響いた。

 

 ―例え目が見えなくたって

 

 もし、神という曖昧なものが存在するのだとしたら、ボクは完全に見放されているどころか、嫌悪されていると思う。

 

 ボクは無能力はおろか、盲目というこの世界で生きるにはあまりにも酷いハンデを背負っているのだ。

 

 ボクが自分自身で盲目だと気付いたのは何時頃だったろうか。

 

 確か4~5歳だった。

 

 目を開けようとしても、瞼が全く動かず、無理やり手を使って瞼を持ち上げた事もあったが、目の前に広がる暗闇は全く晴れる事はなかった。

 

 その時だったか、母の廊下での呟きをふと耳に入れてしまったのだった。

 

 ―――まさか、盲目だなんて…どうしてあの子がっ…!

 

 その言葉を聞いた瞬間、ボクは一瞬感情が失われた。

 

 そして、その頃からだろう、ボクはあまり感情を表に出さなくなった。

 

 母と姉は優しくボクを介護してくれる。

 過保護ではないのだろうかと疑う程に介抱をしてくれる。

 

 対して父は誇り高き吸血鬼として後継者を求めており、女という事を除けばレミリアは後継者として相応しいと判断しているのだろう。

 

 ただし、父だけはボクをスカーレット家の子女として認めてはいなかった。

 

 無能力者であり、更には盲目。

 

 こんな醜い奴をスカーレット家の子女としてだなんてという思いがひしひしと伝わる。

 

 母や姉に対しては良き父だが、ボクに対してだけは態度が急変する。

 

 直接的虐待は受けない。

 全てが全くない。

 

 話しかけても無視。

 

 そう、まるでいないもの扱いをされているような感じだ。

 

 割りとボクは前世でも今世でもハードモードだ。

 

 そんなある日の事。

 

 今世のお先真っ暗である未来に絶望しているボクに一つの分岐点が生まれた。

 

 母がどうやら身籠っているとの事。

 

 かかりつけの医師によれば腹にいるのは女子らしい。

 

 姉、そして妹が出来るという事だ。

 

 ボクは素直に喜ばしい事だと言えば、母は一言「ありがとう」と様々な感情が篭った声で頭を撫でてくれた。

 

 姉は無邪気にもう一人妹が出来ると喜んでいた。

 

 恐らく父はまた女という事に関して少し思う所はあるだろうが、元気に五体満足で生まれてくれば普通に接してくれるだろう。

 

 どんな妹となるのだろうか。

 

 自分より劣っている姉と、ボクに対して暴力等をしてこなければ良いが……

 

 その辺りは妹が実際に誕生してから分かる事だ。

 

 無能力だろうと、盲目だろうと関係ない。

 ボクはボクとしてこの世界で生きよう。

 精々必死に足掻いてみせるさ。

 

 * * * * *

 

 私にはとても大切な宝物が存在する。

 

 それは妹だ。

 

 私の妹は生まれつき盲目であり、能力もない。

 

 しかし、それがなんだと言うのだろうか。

 

 誰よりも優しく、誰よりも人の気持ちを理解する。

 そして誰よりも可愛い私の妹。

 

 父は妹を避けているようだが、何時かきっと分かるはずだ。

 こんなに健気に生きようと努力している私の妹がどれ程愛おしいか。

 

 例え何があろうと私の妹は守ってみせる。

 

 毎朝妹のノアを起こすためにあの部屋の赤い扉を開くのは私の役目だ。

 そして、ノアの片手を取りながら廊下を案内して食堂まで導くのも私の役目だ。

 

 本当はずっと離れたくはないのだが、私も勉学をしなければならないし、その他沢山する事がある。

 

 だから母と時間の空いた時に交代でノアの面倒を見ている。

 

 ノアはとても賢く、私が一度でも読んで聞かせた本は内容も全て記憶している。

 更には盲目故に耳が良い。

 

 隣の部屋の窓から入ってくる風の音も聞き取るのだ。

 

 流石は私の妹だ。

 

 そんなノアを溺愛している私に更に嬉しい事が起こる。

 

 母が女子を身籠ったのだ。

 

 また一つ、宝物が増えた。

 

 私は、ノアと、これから生まれてくるもう一人の妹を必ず守り、幸せにさせる。

 

 そうやって、幸せを満喫している私は気づけなかった。

 

 運命を操るという能力を持っているにも関わらず、気づけなかった。

 

 そしてそれが、不幸の始まりだった―――




次回ではフランドール・スカーレットが登場します。

ここから結構な鬱展開が少しずつ展開されていく可能性があるので、もし苦手な方はササッと流し読みする程度をおすすめ致します。
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