無力な吸血鬼   作:diaboli

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主人公も私もおかしくなっております。


Ep.3 - 悪 -

 ボクに妹が出来た。

 

 レミリアというとても優しさに溢れた姉に可愛らしい無垢な感情を振りまくフランドールという妹。

 

 フランドールは皆の反応を聞く限り翼が歪らしいが、その他魔力もとても優秀であり、レミリアは言わずもがな。

 

 優秀な姉妹を持つと確かに頼もしいし嬉しいという感情も出るだろう。

 しかしながらそんな優秀な姉妹の間に劣等感溢れるボクがいるとどうなるだろう。

 それは見事な事に目立つ。

 

 とても目立つ。

 

 妹が生誕してからは今まで以上に父からの虐待がエスカレートした。

 ボクの存在を認めてくれたように暴力行為をし始めた。

 心の何処かでは存在を認めてくれた事が嬉しくもあったが、胸にぽっかりと穴が空いたような気分だった。

 その度にソフィアとレミリアが止めようとしてくれるし、慰めてくれる。

 

 フランドールも先月で5歳になった。

 

 今まではフランドールに虐待を受けている光景を見せないように必死に隠した。

 しかしながらそろそろ限界を感じつつあった。

 

 そんなある日の事だった。

 

 何時も通りボクは父親に虐待を受けていた時、ドアの場所に何者かがいる気配がした。

 

 足音が、何時も聞き慣れたあの足音だった。

 

 フランドールの、優しく地面を踏みしめる音だった。

 

 ついに見られてしまった。

 必死に良い姉を見せていたのに。

 惨めな姿を見せてしまった。

 

 ボクは何故か自然と涙をこぼしてしまった。

 

 別に虐待による涙ではない。

 人間は痛みや恐怖で涙を零す事もある。

 しかし、自らが大切な存在と認識している人物に自らが必死に隠していた事柄を発見され、見捨てられる。

 それら悲壮感による悲しみでも涙を流す事がある。

 

 ボクはもうフランドールから見放されると思っていた。

 

 しかしフランドールの反応は違った。

 

 ゆらりゆらりと、足音を聞くに、まるでホラー映画に登場するゾンビのような安定しない歩き方でこちらに向かってきたのだ。

 父親は何やら叫んでいたが、フランドールは止まらず、ゆらりゆらりと歩き続ける。

 

 後もう2~3歩でボクの場所へくる所へ辿り着くと、ぴたりと止まった。

 

 そして、数秒の虚無な時間を過ぎ去り、フランドールの声が聞こえた。

 

 あの言葉が―――

 

 ―――きゅっとしてドカーン

 

 その後は父親の存在がなかったかのように何もなかった。

 

 父親は弾け飛び、父親だった破片が所々散らばっていただけだった。

 

 その後、フランドールはとても明るく、悲しい声でいった。

 

 ―――ノアお姉様、大丈夫?

 

 ボクは声を聞いて、無意識にフランドールを抱きしめていた。

 

 そして、ボクは無意識に口を開いていた。

 

 ―――どうして、どうして?

 

 その言葉に答えるかのようにフランドール呟いた。

 

 ―――お姉様達の他には何もいらない

 

 その言葉を聞いて、ボクはまた涙が溢れ落ちた。

 

 その後、異変に気付いたレミリアとソフィアが部屋にきた。

 

 その瞬間、ボクの顔の横を何かが通った風を感じた。

 

 恐らく、フランドールがソフィアがいるであろう場所に右腕を上げたのだろう。

 

 何故かは分からないが、ボクはフランドールの右手にしがみつき、必死に下に下ろそうとした。

 

 しかしどうだろう。

 

 フランドールの右手は固定されたかのように下がらない。

 

 そして…そのまま……

 

 ―――部屋に彼岸花が咲いた光景がボクに見えた気がした

 

 それと同時にボクの中で何かがカチッと音がした―――

 

 

 

 * * * * *

 

 萩原朔太郎の死なない蛸はご存知だろうか。

 

 或る水族館の水槽で、ひさしい間、飢ゑた蛸が飼はれてゐた。

 地下の薄暗い岩の影で、青 ざめた玻璃天井の光線が、いつも悲しげに漂つてゐた。

 だれも人人は、その薄暗い水槽を忘れてゐた。

 もう久しい以前に、蛸は死んだと思はれてゐた。

 そして腐つた海水だけが、埃つぽい日ざしの中で、いつも硝子窓の槽にたまつてゐ た。

 けれども動物は死ななかつた。

 蛸は岩影にかくれて居たのだ。

 そして彼が目を覚ました時、不幸な、忘れられた槽の中で、幾日も幾日も、おそろしい飢餓を忍ばねばならなかつた。

 どこにも餌がなく、食物が全く尽きてしまつた時、彼は自分の足をもいで食つた。

 まづその一本を。

 それから次の一本を。

 それから、最後に、それがすつかりおしまひになつた時、今度は胴を裏がへして、内臓の一部を食ひはじめた。

 少しづつ他の一部から一部へと。

 順順に。

 かくして蛸は、彼の身体全体を食ひつくしてしまつた。

 外皮から、脳髄から、胃袋から。

 どこもかしこも、すべて残る隈なく。

 完全に。

 或る朝、ふと番人がそこに来た時、水槽の中は空つぽになつてゐた。

 曇つた埃つぽい硝子の中で、藍色の透き通つた潮水と、なよなよした海草とが動いてゐた。

 そしてどこの岩の隅隅にも、もはや生物の姿は見えなかつた。

 蛸は実際に、すつかり消滅してしまつたのである。

 けれども蛸は死ななかつた。

 彼が消えてしまつた後ですらも、尚ほ且つ永遠にそこに生きてゐた。

 古ぼけた、空つぽの、忘れられた水族館の槽の中で。

 永遠に――おそらくは幾世紀の間を通じて――或る物すごい欠乏と不満をもつた、人の目に見えない動物が生きてゐた。

 

 あの事件の後は殆ど記憶にない。

 

 気づけば、館の当主はレミリアとなっており、フランドールは地下に幽閉されていた。

 

 そしてボクもフランドールと一緒に幽閉されていた。

 

 レミリアが何故館の当主になっているのかは、大方察しがつく。

 

 フランドールとボクが幽閉されているのは理解が出来なかった。

 

 何故なのだろう。

 

 人間は思考をやめる事は許されない。

 つまりそれは生きる事をやめるという事になるからだ。

 

 ボクは必死に考え続けた。

 

 この血生臭く薄暗い地下から逃れるように―――

 

 そうやって考えている内にある事に気付いた。

 

 ボクの心にもう一人別のボクがいる事に。

 

 それが何かは分からない。

 分からないからこそ怖い。

 

 途轍もない悪を持つ、目に見えないものが此処にいる―――

 

 まるで、蛸のように。

 

 しかし、それ以上は何も分からない。

 

 何かがそこにいる。

 

 それしか分からない。

 

 けれども、それを見つけたせいだろうか。

 

 何故か時折、急に部屋中を破壊していたフランドールが、全く暴れなくなった。

 

 いや、実際は暴れるのだが、以前のように破壊行為をする事がなくなった。

 能力を使わないようになったというのが正しいのだろう。

 

 今まではフランドールが暴れ始めるとボクは手探りでフランドールを見つけ、そのまま抱きしめて落ち着かせていた。

 

 だがあれを見つけてからはそれは情緒不安定であるフランドールを落ち着かせる為ではなく、愛情表現と成り代わった。

 

 フランドールは毎日求めてくる。

 

 あの明るくも、悲しみが溢れる声で。

 

 ボクはその度に様々な感情が混じりながら抱きしめる。

 

 そして、今日もフランドールは求めてくる。

 

 「…お姉様。」

 

 ボクはゆっくりと手を伸ばし、フランドールを抱きしめる。

 

 優しく、優しく……

 

 しかし、一瞬。

 

 本当に一瞬だが妙な事を―――

 

 何故か…フランドールを利用出来ないか考えてしまった―――




どうしても主人公目線から書くと、支離滅裂というか、何を言っているのか私にも分からなくなります。

レミリアやフランドール等の第三者からの目線を少し多めに取り入れていこうか考え中です。
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