遠征 (筑波編)
早朝、みほたちは、宿泊道具を持ち、学校に集まっていた。
「おはよう、みぽりん 」
沙織は眠そうにしていた。
「はいはい、みんな、おはよう、今から筑波へ向かうからね。途中、休憩するからね。高橋先生はもう向かっているからね。」
杏は、みんなを取りまとめ、自動車部のメンバーは、機材を積んだハイエースを、ドライバーたちは、自分の車のエンジンをかけ、杏のFCを先頭に筑波へ向かった。
涼介は、筑波の走り屋「パープルシャドウ」のリーダー 城島俊也と星野幸造とともに星野幸造の建築会社の事務所で学園峠での走りを撮影した動画を見ながら、遠征での日程・練習内容を組んでいた。
「彼女たちの走りを君のデーターで見せてもらったけど、いい走りをしているね。このハチロクを運転している子は、藤原君に似ているね。」
「このR32に乗っている子は、俺が教え込もう。俺の孫と同じオーラを感じる。」
「アンツィオ学園のカレンね。GT部門で入賞して、お祝いでバーベキューしたな」
「そういえば、僕のワンハンドステアの技術を一人の高校生に教え込んだ。」
「ああ、確か、お嬢様みたいな娘だったな。城ちゃんのS2000同じ車に乗っていたな」
「それは、いったい、」
「その娘は、グロリアーナ女学院の生徒だったな。ま、城ちゃんの昔の走りに似ていたな」
その一方、みほたちは、涼介がいった集合場所の駐車場に到着した。
自動車部は、機材を下して、みほたちの車の点検を行った。みほたちも一緒に行っていった。
点検していると、白いFCとミッドナイトブルーのS2000、ダークイエローのR34が到着した。
「高橋先生が到着したよ。」
みほたちは点検をやめ、高橋先生のところに集合した。
「全員、無事に到着したな。短い期間だが、筑波で練習を行っていく、講師で、地元の走り屋の「パープルシャドウ」の城島俊也さんと星野幸造さんに来てもらった」
「星野幸造だ。アクセルワークを教えてやるからよろしく」
「城島俊也だ。ハンドリングとラインを担当する。」
自己紹介を終えた後、彼女たちは、セッティングの続きをしていた。
「あの子が、西住みほか、藤原君と同じオーラを感じるな。」
「どこまで、成長するか楽しみだな。」
夕方になり、宿泊施設で食事をした後、夜、セッティングをしていた場所に集合していた。
ドライバーたちは、軽い走り込みを行い、コースの状況等を確認しながら走行していた。
「ここは、溝落としができそう、」
「ここは、少し凸凹しているから気を付けないといけませんね。」
「このコーナーは、サイドは使わない方かいいかも。」
「砂が、散乱しているから気を付けないと」
彼女たちは、念入りに確認していった。
確認を終え、涼介は、みほに 城島俊也のS2000の後を追ってみる指示が入った。
スタート地点に入り、S2000の後ろに、みほのハチロクが停車していた。
「西住みほです。よろしくお願いします。」
「城島俊也だ。無理はしないようにね。」
挨拶が終わった後、涼介は、みほを呼び、指示をした。
「西住、これは、あくまで、どんな走りをするかよく見ておけ、」
「わかりました。」
涼介の指示を聞いた後、車に乗り、車載カメラを取りつけて、準備をした。
「5・4・3・2・1・・ゴー」
グオオォォーーー
みほのダウンヒルの後追い講習が始まった。
最初のロングストレートは、差がなかったが、最初の連続ヘヤピンをみほは、後輪をスライドさせながら攻めていったが、先行するS2000は、ハンドルを少し切るだけで攻めていった。三つ目のヘヤピンで、みほは、先行するS2000のラインに気が付いた。
「所々でラインが違う!差が開いていく」
S2000とハチロクの差が少しずつ開いたところで、第一セクションを通過した。
入り組んだカーブが続き、みほは、できる限りついていくようにしたが第二セクションが過ぎたところから、一台分差が開いたところで、何かに気が付いた。
「(コーナー入る前のギアチェンジのタイミングで若干の差が開いている…S2000の前輪の動きもカウンターステアを最小限に抑えていて、惑わされているような感じになる。この走法、確か、どこかで…」
その一方、みほが講習中に、優花里は、星野幸造に声を掛けられていた。
「君がR32のドライバーかい」
「はい!秋山 優花里と申します。」
「優花里か、よろしく、しかし、久しぶりに見たなR32、わしは、R31⇒R32⇒R33⇒R32⇒R34と乗ってきたからな。」
「R32を二回乗っているのですね。」
「ああ、R33に乗ったけど、あれはがっかりしたからな。あわてて買い戻したのさ。よし、城ちゃんの講習が終わったら、優花里は、俺の車の助手席に乗って、見学だ。」
「はいっ!」
元気よく返事をし、待ち遠しくて落ち着けなくなっている優花里であった。
ハチロクとS2000は、ゴール地点で、停車し、城島とみほは、休憩をしていた。
「しかし、驚いたな、離されずによくついてきたね。」
「いえ…まあ…、城島さんの走り、ワンハンドステアですか?」
「よく気が付いたね。その通りだ。どこで気が付いた?」
「ヘヤピンの時に、前輪の動きが小さかったですし、私の母もたまにしていました。」
「君の母は、確か、西住しほだったかな?」
「母を知っているのですか?」
「ああ、彼女は当時、君と同じ、ハチロクに乗っていたな。一度勝負したが、ハチロクのサスペンションが故障して失速したと同時に、俺の車も縁石の切れ目でパンクして、引き分けさ。」
「そういえば、姉さんから聞いたことがある。母さんは、二度の負けと一度引き分けているって、二度の負けは、確か、秋名山のダウンヒルでハチロクとインプレッサに負けたって言っていた。」
「そうか、秋名のハチロクとインプは、さすがの彼女でさえも勝つことはできなかったか、ちなみに俺も秋名の、いや、プロジェクトDのハチロクに負けたからね。」
みほと城島は、過去の話をした後、スタート地点の駐車場に戻っていった。戻る際中、R34とすれ違い、助手席には、優花里が乗っていた。