「なんでよぉーーー!?」
残虐の限りを尽くしてバッファローギルディを倒したテイルブルー、愛香の悲鳴に似た慟哭が基地に響く。
「なぁ....愛香。」
「やっぱ無理なんじゃね?その属性玉使うの。」
今、テイルブルーに変身した愛香は基地のトレーニングルームのような場所で先程手に入れた属性玉“巨乳属性”を使おうと躍起になっているが、ウンともスンとも言わない。その様子を見ている総二と貴理矢は若干憐れみが入った様子でテイルブルーを見る。
「そんなことは無いハズ....!トゥアール!ナフェール!どういうことよコレェ!!」
「あー、はいはい。それ多分能力発現のための属性力の濃度が薄いんだと思います。」
「は!?」
トゥアールはそのまま愛香に話を続ける。若干見下した感じで。
「要するにあのエレメリアンには“巨乳属性”以外にも属性力があったんですよ。人間だって趣味は只一つって訳では無いでしょう?つまり、起動に75%の濃度が必要だとしたらその“属性玉”はそこまでの濃度が無いんですよ。つまりどう足掻いたって愛香さんはまな板の」
セリフの途中で愛香のグーパンがトゥアールに炸裂する。しかもテイルブルー状態の。
トゥアールは切り揉みしながらぶっ飛んで壁に叩きつけられる。ナフェールが慌ててトゥアールの元に駆け寄り、今にもトゥアールを殺しかねない愛香を総二と貴理矢が止めにかかる。
「きゃああああ!?トゥアール大丈夫ですか!?」
「...普通変身した状態で殴ります?かふっ」
「落ち着け愛香!流石にテイルギア纏って生身の人間にパンチは不味いって!!」
「うっさいわね!!余計な事を言うアイツが悪いのよ!!」
「分からんことは無いけど取り敢えずテイルギアは解除してやれ!」
等と五人がワチャワチャしていると鶴の一声が入る。
「あらあら元気ねぇ。お母さんも混ぜて欲しいわぁ。」
「母さんが入るとややこしくなるからやめてってえええええええ!?」
いつの間にかいた母、未春の方に振り向いた総二が声をあげる。なにせそこには悪の大幹部風な奇抜な格好をした母がいたからだ。
「あぁ...いつものか...。」
「え?そうなんですか!?」
別に今に始まったことではないので貴理矢達は驚かないが、ナフェールが驚嘆の色を見せる。
「トゥアールちゃん。その“属性力”が愛香ちゃんのテイルギアで起動しないなら一から新しく作っちゃえば良いじゃない。」
未春の提案にトゥアールはゆっくり立ち上がりながら答える。生まれたての子鹿の如くめっちゃ足震えてるけど。
「そうですね...前の戦いでテイルギアを精製出来る位大きな“属性力を”手に入れましたし。戦力増強の観点からすればアリですね。」
大きな属性力とは貴理矢がゲンムと死闘を繰り広げていた一方で総二と愛香が交戦したドラグギルディのことである。
「え?新しく作れるのか?」
「はい。テイルギアを精製するに値する容量の“属性力”さえ手に入れば。」
「そのギアが出来たら私も巨乳に....?」
未春の提案に今まで絶望の只中にいた愛香が希望の輝きを見せる。が、そんな事散々愛香に暴虐の限りを尽くされた(大体自業自得)トゥアールがそう簡単に許すハズもなく。
「残念ですけどこのテイルギアを作るとは私は一言も言ってませんよ?そうですね、作って欲しければ土下座して今までの事を謝罪して」
「今まですみませんでしたトゥアール様。」
「ひっいいいいい!?間髪入れず!?割り切り過ぎですよこの蛮族!?」
言い切っても無いのにトゥアールの要求に間髪入れずに土下座を敢行して謝罪する愛香に流石のトゥアールも気味悪がる。ここで別に良いですよ作りますと言えば平和なのであるが、トゥアールは一瞬気味悪がったもののすぐに悪い顔をして土下座している愛香の頭を踏んづけながら今までの借りを返すと言わんばかりに言う。
「そこまで頼まれちゃあしょうがないですねぇ。けどその間、私の言うこと何でも聞いてくれるなら作ってあげてもいいですよぉ?」
「....分かりました。何でも聞きます。」
「あ、言いましたね!聞きましたよねナフェール!今なんでもって!」
「あの...それ位にしといた方が」
「え?良いんですよぉ!私と愛香さんは友達ですし!」
流石にやりすぎだとやんわり諌めるナフェールにガハハと鬼の首を取ったように笑うトゥアールの足元で総二と貴理矢は滅茶苦茶歯を食いしばって怒りを必死に押さえ込んでいる愛香の表情を見逃さなかった。何故そこまで巨乳に拘るのか。そんなプライドを捨ててまで巨乳になりたいのか。分からないが取り敢えずテイルギアが完成したら血の雨が降ることだけは確かだと二人は確信した。
「トゥアール。相談したい事とは?」
あの一件の後、トゥアールに呼び出されたナフェールが部屋に入るとトゥアールはテイルギアを律儀に制作している手を一旦止めるとナフェールに向き合う。その目はいつになく真剣だ。
「ナフェール。...この世界に来てから、やたら私によそよそしいですが、どうかしたのですか?」
「え」
ナフェールが少し驚いたような顔をする。だが、トゥアールは一瞬ナフェールの顔が悲しそうになったのを見逃さなかった。
「前の時は確かに貴女は大人しい性格でしたが今ほどオドオドしていませんでした。...何か私に隠していますか?」
「いやっ...そんなっ...!ことは....」
何かに怯えるように否定するナフェールを見て、トゥアールは嘆息して、優しい声音でナフェールに言う。
「大丈夫です。無理には聞きません。ですがこれだけは言わせて下さい。なにがあっても私は貴女を嫌いになったりしません。」
「トゥアール...」
トゥアールの言葉にナフェールは泣きそうになる。こんな私に本当にそんな言葉をかけてくれるのか?と。
「んで、本題に入りますけど。」
「え。」
今までのシリアスな空気から急に切り替えられて困惑するナフェールにトゥアールはガサゴソと何やら資料を取り出して渡す。
「ガシャットってゲームが持ちネタですよね。」
「えぇ....まぁそうですけど。」
「じゃあこれ!これで作って下さい!要望も書いてありますから!」
渡された資料を読み進めていく内にナフェールの顔に苦笑いが浮かぶ。
「あの...これ貴理矢さん怒ると思うんですけど...。」
「大丈夫ですって!ね!ね!」
なにが大丈夫なのか。具体的根拠は無い大丈夫にナフェールは嘆息しながら呟く。
「ホントにも~...貴女って人は...よくわかりません。」
「ふふっ。よく言われます」
「ねぇ~ヒロトォ~。暇だよ~。心が燻る...。」
「...君には昨日新しいゲームを与えたハズだが?」
「あんなの1日やりこんだら大体全クリしたよ~。」
エレメリアン基地の一室でパソコンに向かって何やら作業をしているヒロトにパラドが暇だ暇だと文句をブー垂れる。ヒロトはやれやれと作業を一時中止してパラドに向き合う。
「やれやれ...なら明日地球でゲーム好きなのを買ってくれば良い。私も同行するから。」
まるで幼い子供をあやすような言い方だが、パラドは特に気にもせず目を輝かせて笑顔になって言う。
「ホントに!?流石仮面ライダーゲンム!話が分かる!心が踊るなぁ!」
「調子の良い奴め....。」
喜ぶパラドを見てため息をつくとゲンムはクルリとパソコンに向き直りカタカタと作業を再開する。
「この私の神の才能の具現化とも言えるガシャットを完成させなくては...。」
ヒロトのパソコンにはケーブルが繋がっており、ケーブルの先には真っ白なガシャットが差し込んであった。
To be continued...
次回も遅くなるかも...