何処とも知れぬ不思議な、そして人類が絶対に到達することはかなわない別次元の空間にあるエレメリアンの地球侵攻への前線基地。その基地内の会議室は今大騒ぎになっていた。
「リザドギルディが倒されただと!?しかも人間に!?」
そう。事前調査でこの世界の文明レベルは自分達に遠く及ばないと結論付けられていたにも関わらず出兵したリザドギルディが倒されたのだ。
「馬鹿な有り得ぬ!!」
「油断していたでは済まされぬぞ!!」
「この世界は我らの理想の狩場では無かったのか!?」
「どういう事だ!?」
様々な姿形の怪人達が騒ぎ立てる中、一際大きな椅子に座っている怪人がしばし議論を聞いた後、鋭い一声を放つ。
「静まれいっ!」
まさに鶴の一声。あれだけ騒いでいた怪人達がすぐさま静かになり、全員がその怪人の方を向く。その怪人は雰囲気、そして佇まいからして他の怪人と一線を画していた。
体のあちこちにある傷や、その鍛え上げられた肉体が歴然の猛者であることを雄弁に物語っていた。
「これを見よ。」
その怪人ほ手前のパネルを操作して会議室のスクリーンに映像を浮かべる。その映像に映っていたには華麗に舞い、アルティロイド達を凪ぎ払うテイルレッドの姿であった。
「こ、この幼子は....」
会議室がざわつく中、怪人は続ける。
「嬉しい誤算とはこの事か。やはり予期せぬ難敵に立ちはだかられてこそ、武人の血が騒ぐというものよ!!」
ー次の日。陽月学園で総二達は緊急集会という訳で体育館に全校生徒と共に体育館に集められていた。そして目の前の壇上で神堂会長が演説をしている。
「皆さん。知っての通り昨日謎の怪人達が暴れまわり、町は未曾有の危機に直面しました。実はこのわたくしも現場に居合わせ、そして狙われた一人です。」
神堂会長が狙われたと聞いた瞬間何人かの生徒から声が上がる。
「会長を狙うなんて!!」
「なんて奴らだ!!」
「こうなりゃカチコミだカチコミ!!」
「腹にダイナマイトをくくりつけてカチコミだ!」
「....おいおいどこのヤーさんだよ。」
あまりの熱狂具合に貴理矢は苦笑いを浮かべる。ここまで人を惹き付ける神堂会長もスゴイのだが。
「しかし、今わたくしは無事ここにいる...正義の戦士に助けていただいたのです。」
後ろのスクリーンに一人の幼女と三頭身のゆるキャラが映し出される。総二に嫌な予感が走る。
「あの場に颯爽と現れた...私はあの少女とこのバイクさんに心奪われましたわ!! 」
「レーザーです。」
貴理矢が小声でツッコミを入れるが神堂会長が放った一言に呼応するように周りから歓声が上がる。
「その言葉を待っていたぜ!!」
「良かった....胸を張ってちっちゃい子にハァハァ言うのに正直引目を感じてたんだ。」
「会長がそう言うんだから何の憂いもない!」
「いや駄目だろ憂いを持って、そしてハァハァするんだ!」
「ちっちゃい会長がちっちゃい正義の味方に憧れる...これが摂理か!」
全員が歓声を上げる中、総二は悶絶する。そりゃ自分の女装が晒されて持ち上げられれば当然ではあるが。
「あれ?レーザーは?レーザーについては?」
そして貴理矢は貴理矢で全く自分の話が持ち上げられないことに困惑する。
「我々神堂家は全力であの方を支援すると決定しました!皆さんもどうかわたくしと共にあの新世代の救世主を応援していきましょう!」
神堂会長がそう宣言するとまた一際大歓声が上がる。その大歓声の中総二は叫んだ。
「いやそんなノリなら昨日の事も流せよォォォォォォ!!」
集会の後、テイルレッドの話で盛り上がる教室の中で総二と貴理矢は机に突っ伏していた。やれやれと嘆息した愛香が言う。
「そーじはともかくなんで貴理矢まで突っ伏してんのよ?」
「....レーザーの事クラスに聞いたらテイルレッドの付属品扱いだった...」
「あ...そう。」
そう言うと貴理矢はまた力無く机に突っ伏す。総二は机に突っ伏していたものの昨日の自分を思い出す。勝手に囃し立てられてスクリーンにデカデカと映し出され、胃が痛いものの昨日の自分の姿は。
「いや...我ながら見事なツインテールだったな...。」
「ちょっとそーじ!」
「な...何愛香?」
少し夢心地でにやけていた総二を愛香の一声が現実に引っ張り込む。
「何?じゃないわよ。また聞くんでしょトゥアールとナフェールからテイルギアとゲーマドライバーについて!」
「そ、そうだな。昨日の説明じゃ分かり辛かったし。」
「あたしも一緒に聞くからね。」
「お、おう....。」
遡ること昨日の戦闘終了後。総二の母にバレないようにトゥアールとナフェールの二人を何とか総二の部屋まで辿り着かせた三人はようやく一息をつく。
「ふぅー、何とかバレずに済んだ...。」
「まさかおばさんの気を引くために裏切られた三下の演技をするハメになるとはな...。」
「貴理矢がいなかったら危なかったかも...。」
三人は一息ついた後、居心地悪そうなナフェールとしきりにキョロキョロしているトゥアールに話しかける。
「取り敢えず、あの変態達と俺が貰った力について教えて貰うからな。」
「あぁ。はい分かりました。スミマセン。何分男の子の部屋は初めてなんで。」
トゥアールがニヤニヤしながら言うとピキリと愛香に青筋が浮かぶ。そんな事はいざ知らずトゥアールは続ける。
「まずは順を追ってテイルギアとゲーマドライバーから...えいっ。」
「こっちがゲーマドライバーとガシャットです。」
トゥアールとナフェールはそう言うと腕についている装置から電子パネルを空中に浮かび上がらせる。
「...モ、モニターが出て来た。」
「いちいちオーバーテクノロジーでワクワクしちゃうじゃねぇか...」
「?」
総二と貴理矢がオーバーテクノロジーに男の子の部分をくすぐられている中、トゥアールは自慢気に語る。
「このモニターを見て頂ければ大体分かります。」
「へぇ、どれどれ。」
モニターに映っている文字は日本語で三人にも読めた。各部の機能にフォトンサークルだのエクセリオンフィンガーだのスピリティカブーツだの名前が付いており、その下にかなりのオーバースペックな事が書いてある。
レーザーも同様だが、テイルレッドと違いレベル1,2があるので情報量も膨大である。LZ-1 BIKヘッドだのコズモビッグシューズ、コモンアンブレイカーだの様々な事が書かれている。
「....ん?」
貴理矢はスペック欄の下の方の部分に写真は無いが黒い?マークの下にレベル3という項目を見つける。
「このレベル3ってのは?」
「あっ、それはまだ戦闘データが揃っていないのでまだ完成していないんです。これから戦闘経験を積んでいけばそれを元に開発が進んでいく予定です...。」
「ふーん...。」
貴理矢がまじまじと見つめていると向こうから愛香が何やら言っているのが聞こえる。
「どれもこれもアホすぎるけどこのフォースリヴォンって何よ!なんでウに点々つけてんのよ!」
「何言ってるんですか!年頃の男の子はウに点々が大好物なんですよ!ま、所詮男を知らないメンヘラ女子の愛香さんには理解出来ないでしょうけど!!」
何かこだわりがあったのか。愛香の指摘に真っ向からトゥアールは反論する。その反論に愛香は顔を真っ赤にしながら返す。
「な、なななな何よ!じゃ...じゃああんたは沢山経験があるの!?」
「失礼な。愛香さんみたいなビッチと一緒にしないで下さい。処女に決まってるじゃないですか。」
次の瞬間愛香のそれは綺麗な一本背負いがトゥアールに炸裂した。
「あのー、トゥアール?このパンツの部分のエクセリオンショウツって何?空欄なんだが...。」
「ああ...そこは,...」
話題を変えようと総二が気になった部分を尋ねるとトゥアールは打ち付けられた部分をさすりながら答える。
「戦闘が長引いてトイレに行きたくなっても素早く吸収し、分子分解して大気に拡散してくれる機能が」
(聞くんじゃ無かった。)
まさかの機能に総二は頭を抱えたくなるが、それよりも一番聞きたいと思った事を思い出す。
「あ、テイルギアの仕組みも良いけど俺の身体!!なんで女の子の身体になるのか教えてくれよ!!」
「あ、それ自分も聞きたい。」
「女の身体の事を教えて!?」
総二の至極真っ当な疑問に貴理矢も同調するが、トゥアールは何故か頬を赤らめ服を脱ごうとする。しかも笑顔で。
「ふふふそうですね。覚悟はしてました....戦いで昂った男性の家にノコノコついていく時点で。私の心も何処かできっとこんな」
「早よ言え。おっぱいごと削りカスにするわよ。」
修羅のごとき顔の愛香にトゥアールは警戒して距離を取りながら説明する。
「て、テイルギアをまとうとロリっ子に...なるのは...私の趣味ですよ!!悪いですか!」
「開き直りやがった!!」
「あ、後、油断も誘える上に注意も引き付けるから、奴らと戦うベストスタイルなんです!」
(それだけ言えば良かったんじゃ....)
ここまで来るといっそ清々しい告白に面食らいながらも総二は無理矢理自分を納得させる。
「ま、まぁ良いや。理由があるんだし....」
「ですよね!ロリっ子かわいいですよね!」
「...まぁ、あの怪人も気になるけど。」
サラッと受け流して総二は本命の質問をトゥアールに問いかける。
「トゥアールとナフェールの事について教えてくれないか?」
「待ってました!しかも二人ご指名なんて総二様の欲ば」
「フンッ!!」
「リストンッ!?」
愛香のエルボーが見事トゥアールの鳩尾に炸裂し、トゥアールが悶絶する中、ナフェールが代わりに説明を始める。
「お気づきかもしれませんが、私達はこの世界の人間ではなく平行世界からここに来ました。」
ここからのナフェールの話を噛み砕いて説明するとこうだ。平行世界は無限に存在しており、そのほとんどが別の世界を知らない。だが、ごく稀に突出した科学力を持つ世界が存在し、属性力はそんな世界で生まれた心の力で、発達していくテクノロジーが抱えるエネルギー確保の問題を解決したのが人の心の力をエネルギーに転用することであった。属性力は人の趣味嗜好ありとあらゆるものに介在し、無限に存在する。一人一個ではなく、いくつも存在する場合もある。このエネルギー、属性力が奪われると一生その属性力の空白に肉体が支配され、自分の趣味に没頭出来なくなる。やろうとしてもやれない。まさしく残酷な事であろう。もし、総二と貴理矢が下手を打っていたらツインテールを奪われた人々は二度とツインテールを結べなくなっていたのだ。
「そう言えば総二様。今日の戦闘後何か拾いませんでした?」
「そう言えばブレスに薄緑色の変なのが」
するとブレスが輝き、ポンと正八面体の結晶が出てくる。「これは属性玉(エレメーラオーブ)と言うもので、あの怪人が何に打ち込み、何に魅せられ、何を欲したのか。それらの精神の力が凝縮されたのがその属性玉です。ちなみにそれは人形属性(ドール)ですね。」
「...つまり総二の場合は。」
「ツインテールに人生かけるって...。」
「じ、実際強かっただろ!!」
「そう、ツインテール属性は元々、属性力の中でも最大級の力を持つ不思議な属性なんです。」
「ツインテールが...最強...!?」
パァァと総二の顔が輝く。何せ自分が愛したツインテールが最強と呼ばれたのだ。大袈裟だがこの日のために総二は生きていたと言っても過言ではない...と思った。
「なら俺はあれか。バイク属性って奴か。」
「そうですね。ただレーザーは少しの属性力でも稼働出来る分出力は外部デバイスに依存しているのでテイルレッドと比べると性能は見劣りします。」
「だからサポート役ってことね。」
貴理矢はガシャットとゲーマドライバーを見る。ナフェールは貴理矢に言う。
「でも、データが集まれば私がその都度改修していくので強くなっていきます...。精一杯サポートさして頂きますので...。」
「ん、任せた。つまり戦っていけば俺もいつか人型に...。」
貴理矢がレベルアップを夢見ているとズサーッとトゥアールが床を滑ってきた。また何か変なことを言って愛香に殴り飛ばされたのだろう。
「つまり、あのアルティなんちゃら平行世界からあんた達と同じように来て属性力を狙ってるのね?」
「ふぁい...奴らが...私達の世界を滅ぼした張本人ですし...。」
「「「え。」」」
いきなり飛んできたとんでもない発言に場が凍る。
「エレメリアンの組織“アルティメギル”。彼らによって私の世界の住人は全て属性力を奪われました。」
「エレメリアンの属性力強奪の被害は第三者にとっては実感がしにくく、全世界の総力をあげるべきところで二の足を踏んでしまったのです。」
「まぁ...確かに...。」
「あんな事言われて本気で対策するかと言われるとな...。」
「私達は早めの対策で何とか全ての属性力を奪われずにすみました。」
「一度奪われた属性力はもう元には戻りません。生産性の復讐ですが、この力を持った以上私達は奴らを止めたいのです。」
今までと打って変わって真剣な眼差しに総二と貴理矢の二人はいきなり今自分が持っているアイテムの重みが増したように思えた。だが二人は互いにトゥアールとナフェールに言った。
「まぁ。思惑は随分違うけど。ありがたく使わせて貰うよ。」
「任せろ。ノリノリでレッドをサポートしてやるよ。」
「はい!遠慮無くお使い下さい!この身体!!」
トゥアールが真面目な雰囲気をぶち壊す発言をした瞬間愛香のジャーマンスープレックスが炸裂する。
「そういや、他に適格者っていねーの?」
貴理矢が伸びているトゥアールにふと疑問に思った事を問うと、トゥアールは倒れたまま答える。
「いや、判明していますし、ギアはもう一つあるんですが...。その、総二様のような正しい心を持った人ではありませんでした。そう。まさしく非道な蛮族...!ギアを渡せば必ずアルティメギル以上の脅威になるでしょう...!」
「そうか...ツインテール好きなのにそんな悪党がいるなんて悲しいな...。」
「ええ...もうマジ信じられません。あ、そうだ総二様。」
同じ趣味の人間に悪党がいたことで少し残念そうな総二にトゥアールが起き上がって問い掛ける。
「総二様をバックアップするためになるべく行動を共にさせて欲しいのです。寝食も。」
「う、ウチに泊まるのか!?」
「はい!アルティメギルの刺客はまだまだ来ますし、基地の建設も急務なんです。」
「でもおばさんどう説得すんのよ?」
貴理矢が尋ねるとトゥアールはエッヘンと胸を揺らして自慢気に答える。
「お任せ下さい!もう考えてあります!私は外国から留学してきた同級生で見知らぬ土地で怯える私を総二様が騙し拐って監禁」
「総二。一人で説得してきてくれ。」
「そうするわ....。」
「アレェ!?」
どう考えてもアウトな提案をするトゥアールをほっといて総二は考えを巡らす。
(んー、留学生って事は採用してホームステイってのが無難だよなぁ)
母を説得する文句を考えながらドアを開けると、そこには母、未春がいた。
「話は聞かせて貰ったわ!!」
「聞いてんじゃねぇぇぇぇぇ!!」
手遅れだった。
See you Next Game....
後、ちょっとだけ続くんじゃよ。