「息子のプライベートを何だと思ってんだよ!?」
ドアの前に立って話を盗み聞きしていた母、未春に総二が食って掛かる。しかし未春は笑顔で流す。
「愛香ちゃん以外の女の子を連れてきたから、面白展開になると思って。」
どうやら貴理矢の気を引く作戦は失敗しており、全て感付かれていたらしい。そもそも妙なところで鋭い母だ。こっそり帰ってこれたと思うのが間違いだったのかもしれない。
「ど、どこまで聞いた....?」
「ニュースでやってた事件貴女達が解決したんでしょう?とうとうこの日が来たのね....。属性力っていう人間の精神エネルギーを狙って未知の生命体“エレメリアン”の組織“アルティメギル”がこの世界に攻めてきて、総ちゃんがテイルギアを装着して戦うんでしょ?」
(かっ...完全に理解してる!!)
すらすらと先程の会話をかいつまんで未春は語る。その理解力の鋭さに総二はただただ驚くばかりだ。
「...夢だったのよ。」
驚く総二に未春は嬉しそうに、そして何処か悲しそうに語りかける。
「母さんはね。中二病をこじらせたまま大人になった人間なの。世界を守るヒロインになる夢は叶わなかったけど、その夢はへその緒を通じて貴方に全部託したから。」
「生まれる前の我が子に何て事!?」
それは夢ではなく呪いではないのか。総二が苦悶するなかそれでも未春は続ける。
「そして死んだ父さんもまた、末期の中二病患者だったのよ。二人は真逆のシチュエーションを夢見て何度と無く反発し合ったわ。でも...そんな時、総ちゃん...貴方がお腹の中にいると分かったの。」
「わああああ!!知りたくなかったその面白出生秘話!」
子が一番知りたくない父の秘密、そして両親が結ばれたのはまさかの出来ちゃった婚。こんなもの立て続けに聞かされればグレる事待ったなしである。
「ちなみに貴方がなんで総二かと言うと「あー、ホント中二の頃が一番楽しかった」という意味をこめて総二よ。」
「グレるぞ。」
ただでさえ中二病の謎妄想のデキ婚だけでお腹一杯なのに自分の名前の由来を聞かされた総二は完全にグロッキーになった。最悪である。恐らく常人なら家を飛び出す所だ。総二がダウン寸前になりかけているとトゥアールがひょっこりと顔を出して未春に話しかける。
「おのー、よろしいでしょうか。」
「ちょっ、おまっまだ」
貴理矢が止めようとしたが未春はトゥアールを見て、笑顔で言う。
「話は聞かせて貰ったわ。トゥアールちゃん。」
「実は私も聞かせていただきました。お母様...総二様にはお話しましたがここにナフェール共々住まわせて欲しいのです。」
「断る理由がないわ。」
「後出来ればこの地下に研究所を。」
「どんどんやっちゃって!たまに見せてね。」
先程の三人の心配が杞憂になるほどトントン拍子に話が進んでいく。三人がおいてけぼりを食らう中、トゥアールは未春に提案する。
「それとお母様、もう一つお願いが。今から『困ったわね。予備の布団がないのよ。そうだ総二のベッドで一緒に寝るといいわ!』と言って欲しくて。」
「ああもうトゥアールちゃん!貴女みたいな人が異世界から来たとか嬉しい!でも困ったわね。予備の布団がないのよ。そうだ総二のベッドで一緒に寝るといいわ!」
(ボイスレコーダーみたいに再生した!!)
流石にこれは見過ごせず、愛香が割って入る。
「ちょっと未春おばさんよく考えて!こんな女同居させたらそーじの貞操が!」
「願ったり叶ったりだわ。総ちゃんが押し倒されても私は痛くも痒くもないもの。」
「おい親!」
未春の発言に総二がツッコミを入れると貴理矢は肩をポンと叩いて言う。
「多分お前が生身の女性じゃなくてツインテールにしか目がいかないから未春おばさんなりの心配だと思うぞ。」
「余計なお世話だよ!」
「トゥアールちゃんはいい目をしてるわ。童貞食いたくてムラムラしてる節操なしの女の目。」
「お言葉ですがお母様。私は節操無しではありません。総二様一筋です。」
「前半部分も否定しなさいよ!!」
と、てんやわんやしたのが昨日の話。この時愛香はトゥアールがおちゃらけてはいるものの、肝心な所、属性力が狩尽くされた世界でテイルギアの核となるツインテール属性を何処から入手したのかを明かさなかった。トゥアールは何か大事な事を隠していると感じたのだ。
「ってことでそーじ!あの女信用しちゃダメだからね!昨日の説明といい...絶対何か企んでいるわ!」
「企んでるは言い過ぎだろ。」
総二がそう言うと愛香は突然泣き出しそうな声音で訴えかける。
「どうしてそこまでアイツを信用するのよ!?胸があるから!?」
「い、いやそういう訳じゃ。」
「総二は根っからのお人好しだからな。信用するのは胸とかじゃねーと思うぜ。」
思わず口ごもる総二に貴理矢がフォローを入れる。
そんなに気にしていたのか。悲痛な訴えに総二は今度から口喧嘩で胸をネタにするのは控えようと感じた。しかし、それよりも総二には気になる事があった。
「この写真は見たことなかったなぁ。」
「決めた!俺は今からテイルレッドたんのお兄ちゃん!」
「かわいいなぁ。かわいいなぁ。」
「うへへ剣持って可愛い俺も斬って~!」
この後ろでタブレット等でテイルレッドを見て気色悪い発言を繰り返す男子共である。正直お望み通り数千度の灼熱の剣でぶった斬ってやりたいくらいである。彼らの発言を聞くたびに総二に寒イボが出来る。
「あー、もうたまんねぇー!」
「うおわああああああああッー!!!」
とうとうタブレット越しにテイルレッドにキスをしようとする蛮行に走る男子が現れた。電子データの写真で本人ではないと分かっていながらも悪寒が頂点に達した総二は半ば反射的に持っていたペットボトルをその男子に投げつけた。
「あいっでぇ!?何すんだ観束...ってははーんさてはお前ツインテールが好きだからレッドたんを独り占めしようって魂胆か!!」
「ちっ、違うわ!!お前らそんなちっちゃい女の子にそんな事して恥ずかしくないのかよ!」
「恥なんてさっきの集会の時に捨てたわ!!」
「いや捨てんなよ!」
等と熱い舌戦を繰り広げた学校が終わり、その帰り道。舌戦で疲れた疲労感となんやかんやで名前を覚えていてくれた嬉しさを感じながら三人は帰路についていた。
「俺の画像...ネットでガンガン拡散されてた...色んな人に応援されてるのは嬉しいけど...」
「今日帰ったらトゥアールを締め上げてネットに散らばったファイルを消させれば良いのよ。」
「そういや部活どうするよ?」
「毎日戦う訳じゃないんだし普通に選びなさいよ。」
貴理矢の質問に愛香が返す。だが、総二は愛香に言う。
「けどそういう心構えでいないと今日にでもまた現れるかもしれないんだぜ?」
「まさかぁ。昨日の今日で」
愛香が言いかけた瞬間空に大きな怪人が浮かび上がる。と言っても超巨大なスクリーンに映し出されたものだが。
《この世界に住まう全ての人間に告ぐ。我らは異世界より参った選ばれし神の徒(ともがら)、アルティメギル。我らは諸君らに危害を加えるつもりはない。ただ各々が持つ心の輝きを欲しているだけなのだ。抵抗しなければ命は保証する。》
龍のような外観の怪物がこれ見よがしな玉座に座り、足を組んで演説している。
《だが、どうやら我らに弓引く者がいるようだ...抵抗は無駄である!それでもあえてするならば...思う様受けて立とう!存分に挑んでくるが良い!》
「おいおい。昨日の今日で宣戦布告ってノリが良すぎるだろ....。」
貴理矢は苦笑いを浮かべる。空に浮かんだスクリーンとは別に他の家々からも同じ声が聞こえる。まさかと思い、総二が携帯を起動させると、同じような映像が映し出されていた。
「放送電波全部に介入してるのか!?」
「そんな滅茶苦茶な....。」
「アイツら本気で地球を侵略するつもりなのか...!?」
脅威のテクノロジーに三人が愕然とするなか映像が切り替わり、今度は亀のような怪人が現れる。
《ふははははは!!我が名はタトルギルディ!ドラグギルディ様の仰る通り抵抗は無駄である!綺羅星と光る青春の輝き...体操服(ブルマ)の属性力を頂く!!》
すると後ろから戦闘員が申し訳なさそうにタトルギルディに耳打ちした。
《....なにぃ、この世界では今はほとんど存在せぬだとぉ!?おのれ愚かなる人類よ!自ら滅びの道を歩むかあああああ!》
絶叫する怪人とずっこける三人。あの演説から求めるものの落差に絶句する。するとトゥアールとナフェールから通信が入る。
『総二様!貴理矢様!今のをご覧になりました?』
『アルティメギルが現れました。今位置を教えますので!変身を!』
どうやら隣町の高校にタトルギルディは現れたらしい。というか隣町の高校未だにブルマなんだ... と思いながら総二と貴理矢は互いの変身アイテムを構える。
『爆走バイク!』
『貴理矢様は変身後、レベル2になって総二様、テイルレッドを目的地まで運んで下さい!』
「あいよ。行くぜ総二!」
「あ、あぁ。て、テイルオン!」
「1速!変身!」
『ガシャット!レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチュアネーム!?アイム ア 仮面ライダー。』
総二は発動のため、昨日話の合間に決めたキーワードをまだ恥ずかしさはあるものの言い、変身する。貴理矢もレベル1に変身し、ゲーマドライバーのレバーを開く。
「2速!」
『ガッチャーン!!レベルアップ!爆走!独走!激走!暴走!爆走バイク!』
フロントユニットとリアユニットが装甲がパージされたレーザーに接続され、仮面ライダーレーザーレベル2が現れる。
「さぁ。乗りなレッド!」
「あぁ!」
レッドがレーザーに跨がるとレーザーは爆音を上げて目的地へと向かう。ひどく、スケールの小さな侵略を潰しに。
「クックックッ。ツインテールの属性力回収が我が使命だが。その前に少し寄り道させてもらおう。」
タトルギルディはその巨体を突然の怪物の襲来に怯えるブルマを着けた女子生徒に向ける。女子の健康的な足を極限にまで露出させ、色香を放つブルマにタトルギルディはギロリと狙いをつけて言う。
「クックックッ。さぁ俺にブルマを嗅がせろォォォ!」
今まさに怪人の毒牙が女子に襲いかからんとした瞬間だった。
「今だレッド!俺のガシャットをスロットに挿してスイッチを押してくれ!」
「えぇと、これか!!」
『ガシャット!キメワザ!!』
一台の黄色いバイクの赤い美しいツインテールの幼女が柵を飛び越えて運動場に現れる。
「ぬっ、現れたなテイルレッド!頼むがブルマ、ブルマをはいてk」
「グランドブレイザー!!」
高速で近づくレーザーに乗っていたテイルレッドは既に必殺技の構えをとっており、すれ違い様に炎の剣でタトルギルディを一閃の元、切り捨てる。
「ご、ごふぅ!?ぐっ、て、テイルレッ」
『BAKUSOU!CRITICAL STRIKE!』
「もう一つオマケっと!!」
そして追い討ちと言わんばかりにレーザーのマフラーから強力な爆炎が吹き出し、その爆炎がタトルギルディを焼いた。
「ぶ、ブルマァァァァァァァァ!!」
哀れ、タトルギルディはあっという間に爆散した。レーザーはいつものようにドリフトターンの後、停車する。
「ふぅ。」
「よしっ、やったなテイルレッ、ってうおおっ!?」
敵を倒し、一息ついたのも束の間。今度は女子高校生達がテイルレッドに押し掛けてくる。
「うわっ、うわうわ!?」
「ちょっ、あいた!こけた!俺今バイクだから起き上がれないんだけど!!だっ!?踏まないで踏まないで!」
テイルレッド目掛けて押し寄せた女子高生になすすべもなくレッドは囲まれ、そしてレーザーはバタンと倒れてジタバタする。
キャーキャーと黄色い悲鳴があちこちからわき、自分より大きい少女にもみくちゃにされながらテイルレッドは叫んだ。
「わぁーん!もぅ帰るー!道を空けてー!」
See you Next Game....
次も早めに投稿を心掛けます。