「何なのよアイツ!!」
登校への道のりで愛香がぷりぷりと怒りながら文句を垂れる。その様子を総二と貴理矢が苦笑いを浮かべながら見守る。
あの後、実は愛香ことテイルブルーをおちょくっていたコメの大半を投稿していたのがトゥアールであった事が発覚し、愛香の暴力がまたもやトゥアールに炸裂したのだ。
「いっつもいっつも私をおちょくって!何が私の事を親友と思っているよ!」
「うーん、それはホントと思うぜ?」
怒る愛香に貴理矢が訂正を入れる。
「はぁ?どこがよ?」
「貴理矢の言う通りだよ。なんだかんだでトゥアールと愛香は仲良いし。」
「....ふん。どーかしら。」
ツンと愛香はそっぽを向く。けれども満更では無い様子に総二と貴理矢はヤレヤレと肩を竦める。
「...にしてもアレだな。最近、増えたよな。」
「何が?」
「いや、ツインテール。」
貴理矢がクイと顎で指す先には髪をツインテールに纏めた少女達がいた。すると総二が目をキラキラさせて貴理矢に言う。
「...貴理矢。それに気づくなんてとうとう貴理矢も俺と同じ」
「いや、自分髪型はセミロングのボブカット派だから。」
「貴理矢の裏切り者!」
総二はワッと貴理矢を怒る。貴理矢はいつもの事だと笑って受け流す。
「...それにしても確かに増えてきてるわね。結構ヤバいかも...。」
ブツブツ何かを小声で呟く愛香に貴理矢はニヤニヤしながら言う。
「大変だねぇ。愛しの総二がフラフラしちゃいそうだもんな。」
「な、そ、そんなんじゃ無いわよ!」
「?」
愛香が顔を赤くし、総二は頭に?マークを浮かべつつも三人が話しながら校門をくぐると偉く上機嫌な金髪ツインテールの少女、神堂慧理那生徒会長が三人に話し掛けてくる。
「あら、皆さんおはようございます!」
「あ、お、おはようございまひゅ!」
「おいおい。総二。テンパり過ぎだぜ?」
ぐぬぬ...と愛香が憧れの神堂会長に話し掛けられてドギマギする総二を睨む中、貴理矢が神堂会長に話しかける。
「それにしても偉く上機嫌に見えますケド、何か嬉しい事でもあったんスか?」
「えぇ。テイルレッドにレーザー以外にもテイルブルーという同世代の頼もしい味方がいたことが私嬉しくて...。」
「!」
初めて出会うテイルブルーを良く言ってくれる人にピクリと愛香が反応する。
「やっぱり、テイルレッドも同じ女性の仲間がいると心強いと思うんです。どんなに強くても一人で戦い続けるのは辛いと思いますから...。だから、レーザーの他にもテイルブルーという味方がいて、私安心したんです。」
ここまで、テイルレッドの事を考えていてくれたなんて....。総二の胸に熱い物が込み上げてくる。愛香も嬉しそうだし、貴理矢も笑みを浮かべている。
「...私、この年でもヒーローモノが好きで、よく見るんです。まえにあの怪物に襲われた時もこっそりデパートでやっていたヒーローショーを見ようとしたんですよね。やっぱり...この歳でヒーローモノ好きはおかしいですかね?」
「そんな事はないですよ会長!」
総二が神堂会長に言う。
「貴女のその思いやる気持ちはテイルレッドも嬉しいと思います!多分...いや、絶対!!」
「...そうですか。」
クスリと神堂会長は笑い、そして三人に尋ねる。
「そう言って貰えると私も嬉しいです。お名前をお聞きしても?」
「観束総二です!」
「...津辺愛香です。」
「三条貴理矢でーす。」
「....覚えました!では観束さん、津辺さん、三条さん、よき学園生活を!」
そう言って神堂会長は去っていく。その後ろ姿を見ながら貴理矢は愛香に言う。
「良かったじゃねーか。テイルブルーを評価してくれる人がいてよ。」
「....まぁね。」
「やっぱり会長はいい人だ....。あんなにテイルレッドや、ブルーとレーザーの事思ってくれるなんて。」
「何言ってんだ。あっこにもテイルレッドの事思ってくれる人いるぞ。」
貴理矢が指差す先に総二が視線を移す。そこには同じクラスの男子生徒達がいた。
「トランクスにテイルレッドたんをプリントしてきたぜ!もはや常に一緒にいないと作業もままならねぇ!!」
「お前!テイルレッドたんbotパクってんじゃねーよ!俺が先に作ったんだぞ!」
「うるせー!俺の方がフォロワー数多いんだぞ!って言うか既にbotは何千何百と作られてんだから今更だろ!」
「うん。うん。放課後一緒に映画見に行こうねテイルレッドたん。」←通話が繋がっていない電話に話しかけてる。
思わぬどす黒い深淵がごとき闇を目の当たりにして総二は愛香にげんなりとした様子で言う。
「...嫌味でも何でもないが、愛香。代われるもんなら俺は代わりたい。いやマジで。」
「...ごめん。アタシも少し頭冷やすわ。」
「...何かゴメン。」
「....昨日までの時点で倒された同胞は隊員十六名、戦闘員百二名に上ります。」
「ふむ...。」
「これほどかツインテイルズ!」
アルティメギル前線基地のホール内で作戦会議が行われていた。
テイルレッドだけでもかなりの脅威であるにも関わらず、さらに追加戦士として新たに参戦したテイルブルーとサポートのレーザーによってこの一ヶ月の間でかなりの損害がアルティメギル側に出ていた。
「この際、属性力の持ち主もろとも捕らえて即座に引き上げれば良いではないか?」
「馬鹿な!それでは我々が奴らを恐れて逃げているようではないか!!」
安全策を出すエレメリアンにドンと机を叩いて他のエレメリアンが抗議する。属性力が無くては生きては行けぬ身、アルティメギル側にも徐々に焦りが見えてきていた。
《やれやれ。何やら手こずっているようだな。》
「貴様...!」
ゲンムがため息混じりに発言すると全員の敵意の視線がゲンムに殺到する。だがゲンムは全く意に介さずエレメリアン達を見据える。
《何か言いたい事でも?》
「貴様一ヶ月も研究室に籠っていた分際で!」
「左様!少しばかり腕が立つからと言って調子に乗るのは止めてもらおうか!」
《やれやれ。嫌われたモノだな。》
今にもゲンムとエレメリアン達が一触即発な雰囲気になりつつあるその時だった。
「えぇい静まれィ!」
その鋭い一喝に会議室がビリビリと震え、全てのエレメリアン達がシンと静まり返る。
「ど、ドラグギルディ様....」
「生半可な戦士をぶつけるのはもはや徒に戦力を削るだけ。これより先は選ばれし者のみに許された聖戦である。我こそはと志願する者はおるか!!」
「ハッ!ならば僭越ながら私めが!」
ドラグギルディの声に反応したのは、野心や計算なしの危ういまでに実直な威勢の良い声。ドラグギルディが最も好む声である。その声の主は白鳥のような姿の戦士。スワンギルディだった。
「お、おう看護婦属性(ナース)の申し子と呼ばれし神童スワンギルディか!」
「お主なら何の問題もあるまい!」
ドラグギルディの一声に肝を冷やしていたエレメリアン達から安堵の声が上がる。ゲンムは特に反応せずに一人の戦士を見つめる。
(...ふん。)
ドラグギルディはゲンムを一瞥すると立ち上がり、スワンギルディの前に立つ。
「よかろう。だがその前にツインテイルズと戦う資格があるかテストを行う。」
次の瞬間目にも止まらぬ速さで抜かれたドラグギルディの剣がスワンギルディの目前の数ミリで止まる。だがスワンギルディは少しも動じることはなかった。
「ふん。多少肝は座っているようだな。次だ、アレを持ってこさせい!!」
するとホールに戦闘員が一台のパソコンを持って入室してくる。そのパソコンを見た瞬間スワンギルディの顔色が代わる。
「そ、それは私のパソコン!?な、何故ここに!?」
《?》
さっきまでドラグギルディの一閃にすら驚かなかったスワンギルディに焦りの色が見え、ゲンムは何が起きるのか興味を持つ。それほどまでにあのパソコンには何か秘密があるのであろうか。ドラグギルディはスワンギルディのパソコンの電源を入れ、会議室用の大型モニターと画面をリンクさせる。
「それでは試練を始めようか。」
「ま、まさかあのエロゲ・ミラレイターを...!?」
その言葉に会議室全体の雰囲気がかなり重くなる。まるでこれから起こる悲劇を全員知っているかのようだ。
カチカチとパソコンをいじる音が聞こえ、その度にスワンギルディの肩が震える。そしてローディング画面の後、モニターに映像が浮かび上がる。
『いけない!ナースエンジェル~!』
《....は?》
「ヒィッ!?」
ゲンムは困惑する。何やら恐ろしい事が始まるかと思いきや浮かび上がったのはまさかのエロゲのタイトル画面だった。だが呆けるゲンムとは対照的にスワンギルディは悲鳴を上げる。操作を続けながらドラグギルディはパソコンの操作を続ける。
「クックックッ。これはつい先日発売されたモノではないか。それなのにもうコンプリートとは。卑しい者よのぅ。」
「み、見るだけで恐ろしい!」
「公開処刑だ...」
《え。何言っているんだコイツ等...?》
周りの空気についていけないゲンムを置き去りに、地獄が展開されていく。ドラグギルディがセーブファイルを開き、色々と閲覧していく。その中のえらく肌色が目立つサムネイルのファイルに目を止める。
「ふむぅ。これとか怪しいのぅ。」
「お許しを!それだけはお許しをー!!」
必死に赦しを乞うスワンギルディ。だが現実は残酷。無情にもファイルをロードされる。
おそらく主人公の部屋でのやり取り。ヒロインが頬を赤らめ、段々良い雰囲気になるものの、特に何事もなく次の日へ。
「クックックッ。ヒロインが主人公の部屋に来て空気が変わった所ですかさずセーブをしたな?これから二人で睦事をするのではないかと。しかし期待とは裏腹に何事もなく日付ロゴが代わり、落胆ー」
「「あるある」」
「うっぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
《えぇ...。》
ゲンムには全く理解出来なかったが、周りのエレメリアン達は何やら納得し、スワンギルディは悲鳴を上げ泡を吹いてバタンとぶっ倒れる。ぶっ倒れたスワンギルディを一瞥してドラグギルディは指示を出す。
「ふん。情けない奴よ....小奴を医務室に連れて行け!この程度耐えられん等笑止千万!我が出る!」
ドラグギルディ自らの出撃宣言に会議室がざわつく。
「ドラグギルディ様自ら!?」
「何もドラグギルディ様自ら行かなくとも」
「くどい!!」
抗議の声もドラグギルディの一喝が黙殺させる。ドラグギルディはゲンムに視線を向け言う。
「貴様にも出撃してもらうぞ。」
《...私もか。だが出撃後は私の好きにさせて貰うぞ。》
ゲンムがゆらりと立ち上がり、傲岸不遜の態度でドラグギルディに言い放つ。
「貴様ドラグギルディ様に向かっ」
「良い。貴様の好きにするが良い。」
激昂する部下をドラグギルディが諫める。ゲンムは振り返りもせず会議室を後にする。
「ドラグギルディ様...!」
「心配無用。奴が何を企んでいようと。」
ドラグギルディも力強く一歩前に踏み出しエレメリアン達に告げる。
「ツインテイルズは我が倒す。」
「お、今日はナフェール一人?」
「えぇ。そう言う貴理矢さんも一人ですか?」
「まぁね。」
トゥアールとナフェールが作った地下基地のナフェールの部屋に貴理矢はいた。清潔さを感じさせる青を基調とした部屋で作業に打ち込むナフェールに貴理矢は話し掛ける。
「なーに作ってんの?」
「今までのレーザー、貴理矢さんの戦闘データを元にレベル3用のプロトガシャットがもう少しで完成するんです。」
「へぇー!レベル3ねぇ。次は何になるんだ?」
貴理矢が尋ねるとナフェールは少し悪戯っぽく笑みを浮かべて言う。
「フフッ。秘密です。最近はエレメリアンもそこまで強くはありませんし。」
「んだよー。教えてくれても良いじゃない。...でも確かに最近のエレメリアンはなんつーか...弱いな。だって現に自分、出なくても良いし。」
貴理矢が言う通り、ここ数日現れたエレメリアンは控えめに言っても下手打つとレーザー一人でも対処出来る程の実力で、レーザーは万が一に備えて待機とは言うものの、実質レッドとブルーだけで事足りると言うのが現状だった。しかし、貴理矢には一つ気掛かりになる事があった。
「....自分としちゃああのゲンムとか言う奴が一番気になるんだがな。」
「....はい。」
貴理矢がゲンムと言う言葉を出すと、ナフェールは俯く。フォクスギルディ戦以降ゲンムが介入すると思い身構えていたが、ここ一ヶ月全くゲンムは現れず姿を見せない。同じゲーマドライバーを使い、ガシャットで同じく変身する仮面ライダー。ゲンムの正体はナフェールも知らないし、何故ゲーマードライバーを所持しているのかも不明な謎に満ちた敵だ。ただ一つ分かるのはかなりの強敵と言うことだけだ。
「一体何なんだろうなアイツ?」
「....今は分かりません。けどゲンムに対抗するには」
ナフェールがそう言いかけた瞬間、警報が鳴り響く。
「何だ!?」
「トゥアール!?一体何が」
『町にあの例の黒い奴、ゲンムが現れたんです!』
「何!?」
トゥアールの報告にナフェールが慌ててモニターを操作する。そこに映し出された映像にはゲンムが町で大暴れしている映像だった。ゲンムの回りには七面鳥のような頭部をした黒い戦闘員があちこちで人々に襲い掛かっている。
今までのエレメリアン達は人は襲えど町を破壊する、人間を肉体的に傷付けるといった行為は最小限に留めていたが、ゲンムは意に介さず暴れまわっている。
「あの野郎....!!」
貴理矢は腰にゲーマードライバーを巻き、ガシャットを差し込んで出撃するためのゲートへと急ぐ。
「ツインテイルズのお二方は!?」
『すみません!こちらも新たなエレメリアン...ドラグギルディと交戦中で手が回せません!』
ドラグギルディ....トゥアールのその言葉にナフェールの目が見開かれ、ナフェールは言葉を失う。とうとうやって来たのだ。奴が。自分達の世界を破壊した最強最悪の強敵が。
ナフェールは絶望的な戦いが幕を開けた様に思えた。
See you Next Game....
次回決戦です。