紅いきつねさん、じんさん、影龍さん、感想ありがとうございます!
坂柳さんの誘いを受けて数日が経ち、5月1日となった。今日は1年生の各クラスが行った小テストの結果と、各クラスに応じたポイントが支給される。先日坂柳さんから送られてきたメールのおかげで聞き逃した内容は全て把握できた。1週間分の昼飯を奢る羽目になったが......。
身支度を終えて寮を出ると、いつも通りのメンツが揃っていた。
「おはようございます優璃さん。お待ちしておりました。」
笑顔で挨拶をしてくれる坂柳さん。ここだけを見れば、女子が自分と一緒に登校したいがために待ってくれていた、という夢のようなシチュエーションだが、勿論そんなことはない。
「槙野、遅い。」
「悪かったよ真澄さん。次からもっと早く来るように努力する。」
「そう言って早く来たこと無いでしょ? というか、名前で呼ぶな。」
いつも坂柳さんに名前を呼ばれると少し嬉しそうなくせに、俺に言われるのは嫌だとは何てやつだ。
「皆さん行きますよ。」
坂柳さんの一言により、俺と神室(真澄)さんの会話は打ち切られた。そして坂柳さんを先頭に、俺たちは登校を始める。一人を先頭全員がそれに付いて行くというのはいささか不気味で、最初は他の人達の視線が多かったが、Cクラスでも似たようなことがあるらしい。
この学校には王様気取りの変人も少なくはないのだろう。
「ではこれより、一学年のクラスポイントを発表する。」
1限目のHRで担任の真島先生による、各クラスに支給されるクラスポイントの発表が始まった。黒板に書かれていくのは上からA~Dのクラスポイント。詳細は順に、
Aクラス 940cp
Bクラス 650cp
Cクラス 490cp
Dクラス 0cp
元々各クラスは1000cpを所持している。そこから、各クラスの生徒を監視して評価した結果を足し引きしたものが得られるcpになるのだろう。まだ詳細なcpの増減方法を把握しているわけではないが、今のままの生活を続けていれば特に問題は無いということだろう。
それにしても目を引くのはDクラスの0cpだ。この一ヶ月他クラスの生徒を見てきたが、流石にここまで酷いとは思わなかった。
BとCにおいてはこんなものだろう。だがこの2クラスのポイント差を見ると、うちのクラスのポイントは少し異常に見える。これも坂柳さんと葛城さんのカリスマ性によるものなのだろうか。
「続いてこれが、この前行った小テストの結果だ。」
Aクラスの平均点は95点。俺の点数は80点。別に低い点数を取っているわけでもないのに、少し涙が出てくるな......。
「優璃さん。テストの方はいかがでしたか?」
「さらっと100点を見せながら言うのはどうかと思いますよ。」
「あなたもAクラスなのですから、それに恥じない結果を出してほしいですね。」
「分かってますよ......はぁ...。」
学校が終わった後、自室に戻りパソコンを開く。SDカード挿入し、しばらくウィンドウを表示・操作した後、その様子をじっと眺める。そこには学校や寮、ありとあらゆる場所に設置した監視カメラの映像が映っていた。もちろんこれは学校側の管理システムにハッキングしたわけではなく、全て自前の物だ。安物のため画質はあまり良くないが、それでも顔は判別できるため妥協できる。SDカードに保存された映像を場所ごとに分類した後、日にちの分類も行った。その後にすべての映像を見るのだが、こればかりは今日で終わるものではないため保留した。
作業を終え、夕食の支度を始めようとしたときに携帯から着信音が鳴る。因みにこの着信音は普段の物ではなく、坂柳さんからの場合のみ鳴る音である。以前坂柳さんから電話がかかってきたことがあったが、作業に集中してたため無視をした。その結果、彼女は俺の部屋まで来て要件を伝えた後、帰り際に杖で俺に一突き喰らわせてきたのだ。その日以降、俺は彼女からの電話は可能な限り出るようにしている。着信音が違うのもそのためだ。
『もしもし。』
『これから外食をするつもりなのですが、優璃さんもどうですか?』
女子からの食事のお誘い。普通なら二つ返事でOKするところだろう。だがこの状況でそれは命取りだ。相手は坂柳さん。答えを間違えれば間違いなくめんど……食事に神経を使うことになるだろう。なのでここは慎重に……。
『分かりました。では寮の一階、エレベーターの側で待っていますので。』
『え? ちょっ......』
答える時間すらなかった。と言うより元々答えを聞くつもりは無かったらしい。ここで俺がバックレれば、坂柳さんの取り巻きである神室さんや森重が俺を引きずりだしに来るだろう。その後に杖の制裁を喰らうのも容易に想像できる。
この高校に入ってからもう数え切れない程のため息をついた後、簡単に荷物をまとめて待ち合わせ場所に向かう。そこには既にお馴染みのメンバーが揃っていた。
「槙野、遅い。」
「さっき連絡貰ったんだよ。そうカリカリすんなって、真澄さん。」
「だから名前で呼ぶなって......!」
そんなやりとりを行った後、15分ほど歩いた所にあるイタリアンの店に着いた。受付を済ませた後、ほどなくして席に案内される。注文をし、運ばれてきた料理を食べ終わった後、余韻に浸るようにそれぞれが飲み物を追加で注文する。
「では皆さん。報告会といきましょう。それぞれが持っている情報の提供をお願いします。」
そう言われた俺たちは、この一ヶ月で坂柳さんに頼まれた、又はそれぞれが独自で調べた情報を提示し始めた。
「Cクラス代表の龍園だけど、まだ大きな動きは見せてないわ。それ以外に目立ちそうな生徒を何人か付けてみたけど、そっちも気にするような動きは見せていない。」
「Bクラスの代表は一之瀬で間違いない。Bクラスもこのシステムについては理解をし始めている。だが彼女よりかは、神崎という男に気を付けた方がいいかもな。」
「Dクラスは恐らく平田が中心人物だと思う。後、クラスの仲を立て直すにはまだかかりそう。」
「分かりました。皆さんありがとうございます。では最後に優璃さん、お願いします。」
各自情報を提供し、最後は俺となった。俺に任されたのは他クラスの生徒同士の接触を監視すること。監視カメラを設置したのもそのためだ。
「俺から報告することは何もありません。」
「……そうですか。分かりました。皆さん、今回はこれでお開きとしましょう。今月は各クラスで動きがあるはずです。見落としの無い様にお願いしますね。」
報告会が終わり解散となった俺たちは、それぞれ部屋に戻った。
この時俺は、まさか他クラスよりも早く、本格的なクラス内抗争が起ころうとしているとは思っていなかった。
---おまけ---
槙野 優璃
学力 : B+
知性 : A
判断力 : A-
身体能力 : A
協調性 : B
面接官からのコメント : 諸事情により記載は無し。
担任メモ : テストの点数にムラがあるので、安定したパフォーマンスを残せるように改善させます。また、自分の考えで動くことが少なく見えたので、もう少し自主性が欲しいです。
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