期末テストを無事? に乗り越えた俺達は、夏休み期間に入った。
その期間になんと、学校側が2週間の豪華旅行を1年生全員に用意していた。流石としか言えない。
普段はギスギスとした雰囲気である俺達Aクラスも、この時ばかりは打ち解けあっている。
元々人付き合いは得意なやつが多いので、もし派閥争いが無かったらもっと纏まったクラスであった事だろう。
そんな中俺は、いつも通り坂柳さん・神室さん・森重、といったお馴染みのメンバーで行動をしている。
いつもはもう少し人数が多いのだが、先程言ったように派閥を気にせず交流を深めたいと思う生徒がいる分どうしても少なくなる。
決して期末テストの勝負で坂柳派が負けた事によるものでは無い。そう思いたい......。
『生徒の皆様にお知らせします。お時間がありましたら、是非デッキにお集まり下さい。まもなく島が見えて参ります。しばらくの間、非常に意義ある景色をご覧頂けるでしょう。』
突如アナウンスが流れる。
確か旅行の最初の1週間は無人島に建てられているペンションで夏を満喫するというものだったはずだ。
おそらくその島のことだろう。
「だそうです。非常に興味深いですが、私は部屋に戻らせてもらいます。人混みは苦手なので。」
「じゃあ私が坂柳と残るから、槙野と森重は見に行きなよ。」
「悪いな神室、後で写真撮っとくよ。坂柳もそれで我慢してくれ。じゃあ行くぞ槙野。早く行かないと場所取れないしな。」
そう言うと、森重は足早にデッキの方へと向かった。
「分かった。じゃあ坂柳さんを頼んだよ、‘’真澄ちゃん‘’。」
「殴られたくなかったらさっさと行け。」
返しがおかしい気がする。此処は無難に「行ってらっしゃい」等の送り出すような言葉が正解の筈だ。そもそも脅迫の選択肢がある事が間違いである。あの世へ送り出してやる、という意味なのだろうか。
「おい邪魔だ、退けよ不良品共。」
「てめぇ何しやがる!」
森重に追いついた後、なるべくデッキの前の方を目指して進んでいた所に、見覚えのある生徒、もとい同じAクラスの生徒数名が他クラスの生徒と数名少し揉めていた。
「お前らもこの学校の仕組みは理解してるだろ。ここは実力主義だ。Dクラスに人権なんて無い。不良品は不良品らしく大人しくしてろ。こっちはAクラス様なんだよ。」
先程威嚇をしていた赤髪の男子が悔しそうに引き下がる。あいつは確か須藤だったか。聞いてた情報より大部おとなしい気がした。流石に言い返せないのか、それとも成長しているのかは分からないが、この人目に付く場所でこれ以上は不味いだろう。Dクラス側は追い出されるように船首から離れていく。
「森重、先に行っててくれ。」
そう一言伝えると、俺はDクラスを追いかけた。
「よう、災難だったなお前ら。」
「あ? 誰だお前。」
先程揉めていた須藤が、苛立ち混じりに返してくる。まあ、イライラしてる時に知らない奴に話し掛けられたらそうなるわな。
「俺はAクラスの槙野だ。よろしく。」
「Aクラス!......まだ俺達に何かあんのかよ!!」
「いや、俺にそんなつもりは無い。ただ謝罪したいだけだ。俺のクラスメイトが失礼な事を言った。申し訳ない。」
そういった途端、Dクラスの多くは驚きを隠せない様子だった。それもその筈、Dクラスはそれ以外のクラスから見下されている。主に一ノ瀬さんが率いるBクラス以外のA・Cクラスからだ。
「そんな事言われてもよ、お前だって本心は俺達の事見下してんだろ?」
須藤の疑問は最もである。いくらDクラスに優しくしようとも、されてる側からすれば慈悲を与えられていると思うだろう。
「そんな事は無い。初めはこそ見下してても、今のお前達Dクラスは少なからず認められつつある。期末テストでは高得点を取り、Cクラスとの抗争では見事龍園を返り討ちにした。この二つだけでもかなり変わるさ。それが理解出来ない程俺達は馬鹿じゃない。まあ、後はクラスポイントをどうにかすればって所だけどな。」
割と盛った表現をしたが、須藤の機嫌は先程よりも良くなったらしい。穏便に済んで何よりだ。
「今会ったのも何かの縁だ。出来れば名前を教えてくれると嬉しい。」
自然な流れで相手の名前を聞き出すことに成功した。これが友達作りのコツだったりする。
1人ずつ名前を言い、最後に綾小路という男子生徒が自己紹介をする。俺も改めて自己紹介を行い、そいつらとは別れた後、1人寂しく写真を撮っているであろう森重の元へと向かった。
「お待たせ。」
「遅かったな槙野。もう半周したところだぞ。後ついでに交代してくれ。腕が疲れた。」
森重からカメラを受け取ると、撮影を開始する。程なくして周り終えると、船は島に接近を始めた。
「ま、こんくらいあれば充分だろ。」
森重が写真の確認を終えると、俺達は坂柳さんと神室さんが待つ部屋に向かった。
『.........。』
部屋に戻り、坂柳さんと神室さんにカメラを渡して島の様子を見てもらう。最初の半周が森重で、残りの半周が俺だ。
前半1人だった森重はかなり暇だったらしく、他クラスの女子達と一緒に撮った写真が所々混ざっており、発見されしだい神室に鳩尾を殴られていた。
森重の分が終わり、俺の写真を2、3枚程見た所で2人からため息が漏れた。神室さんに至っては片手で頭が痛いと言わんばかりのポーズをとっている。
「どうしたんですか?まさか、データが無くなってたりとか?」
「いえ、写真はちゃんと残っているので問題ありません。ただ、優璃さんの独創的なセンスに驚いただけです。」
センスに驚いたと言う割には、2人の目は明らかに良い方ではないと語っていた。
「もう大体察しがついたんで、包み隠さず正直に言ってください。多分心壊れますけど、何とかしますんで。」
「心配はいりません。もう優璃さんにカメラを持たせることは無いと思うので。」
ダメ出しより酷い事言われた気がする。
「まあそれでも、‘’何とか‘’確認出来るので良しとしましょう。」
しかもやたらと精神的にキツイ部分が強調されていた。
「俺荷物纏めたいから部屋戻るわ。直ぐに戻ってくるよ。それに、‘’残りは全部槙野のが撮った写真‘’だし、俺達はお互いのうぃ既に確認してるからな。」
森重はそう言うと、急いで自分の部屋へと戻って行った。
「俺も荷物の整理したいんで部屋に......神室さん? なんで俺を羽交い締めにしてるの?」
部屋に戻ろうと立ち上がったところを、神室さんに抑えられる。
「是非優璃さんにもう1度見てもらいたい写真があったので、私が真澄さんに優璃さんを逃がさないよう頼んだんですよ。」
何かがおかしい。写真を見せるだけなら俺を羽交い締めする必要は無い筈だ。しかも、気のせいか2人から殺気の様なものを感じる。
女子に抑えられているので無理に引き剥がせない俺は、取り敢えず写真を見る事を受け入れる。
変な写真があったのだろうか?島以外の写真は撮ってない筈なんだが......。
カメラで撮った画像はパソコンで確認しているため、俺も画面が見える位置まで移動する。
阪柳さんがスライドショーを進めていくと、俺が最後に撮った島の写真が表示された。俺が撮った分は全部見たが、絶望的なセンス(彼女ら曰く)以外は得に問題は無かった。
「とても面白い写真がこの後にあるので、是非見てもらおうかと。」
ん?
坂柳さんはさらにスライドショーを進めると.........。
「っ!??」
画面に移されたのは、デッキから島を眺めるある1人の女子の写真。......と、顔、胸、くびれ、お尻、足の計6枚の写真だった。
よく見てみると、ピンク色の髪は長く、出る所はしっかりと出ており、ここにいる2人とは天と地程の差のスタイルを持つ.........Bクラスの一ノ瀬さんだった。
しかも日付は今日で、時間帯は俺が最後に撮った写真より後。
「いやいやいや! 俺はこんなの知りませんよ!?」
「嘘は良くないわよ。森重が言ってたじゃない。‘’残りは全部槙野が撮った写真‘’だって。」
「...............もりしげぇぇぇ!!!」
「痛い......めちゃくちゃ痛い...」
あの後、神室さんから鳩尾に5発。坂柳さんからは杖で殴られながら小言を言われ、肉体的にも精神的にも再起不能にされてしまった。
神室さんが自分の部屋に戻った後、どうやら坂柳さんから俺に話があるらしく、残ることとなった。
「優璃さん。他の皆さんにはもう伝えてあるのですが、私は今回無人島での生活には参加しません。」
これは予想していた為、それ程驚かなかった。だが、話はこれで終わりではないらしい。
「そこで、私が不在の1週間は、優璃さんに真澄さん達の指揮を取ってもらいます。」
「............え?」
憂鬱な1週間が始まろうとしていた。