烏なき島の蝙蝠─長宗我部元親(ただし妹)のやっぱりわたしが最強★れじぇんど!   作:ぴんぽんだっしゅ

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新作(?)始めました。

9/9 ちょっぴり追記


烏なき島の蝙蝠─長宗我部元親(ただし妹)のやっぱりわたしが最強★れじぇんど!

──鳥無き島の蝙蝠コウモリと評価したのは、誰だったか……。うん、そうですね。織田信長でした。

 

四国統一まであと一歩だっただとか、実は羽柴秀吉がやってくる前に四国統一は叶っていたとか言われる長宗我部元親。その人を天下布武を掲げた織田信長が評価した言葉こそが、鳥無き島の蝙蝠と言う元親を現す言葉だったわけですよ。

 

鳥無きとはろくな天敵となる者が居ないという解釈が出来、島の蝙蝠とは四国から出れない長宗我部家のことですと解釈出来ます。信長と比べちゃダメですよ、信長とじゃ勝てる気がしません。

長宗我部家はしょっちゅうピンチの連続を喰らっていて、そのピンチを幸運を拾って切り抜ける場面が多かったのですから。ですので、天敵は常に居たのです。

 

四国なんて、そう広くない所で海に囲まれてて、外からの敵なんてこともそうないから織田信長の言う烏とは外敵という解釈も出来ますよね。その場合はその通りとしか…。

 

とは言っても経済圏とも離れていて、住むのに適した平地も少ない四国はそれだけ最初から他の有名どこの戦国武将とは違っていてマイナススタートだったと思うのです。

 

拠点を攻囲されることもありましたし、経済圏から離れていることで貿易にも日数が経ちますので遅れはどうしても出ますよね?

 

そんな、土佐の無数にある国人勢力の一つでしか無かった長宗我部家に転生しましたよ。

いわゆる、逆行転生というもののようです。

 

土佐の国のいわゆるNo.2権力、守護代だった一条家の力と影響を借り、家が滅亡するところを再興させたのが、長宗我部国親。父上です。

その国親の娘として生まれたようで、幼い頃はどこどこの城を襲って取れるものは盗ってきたとか、だれだれを討ち取ったからこれが首だとか、およそ精神形成に異常をきたしても仕方ない、下手をするとトラウマものの体験ができました。感謝してますよ。父上……国親という存在が男子であろうと女子であろうと手加減のない子育てをしてくれた事に。

父上、国親にとってはその時その時で人生で一番の誇らしい事柄で、娘や息子に自慢がしたかったのでしょうが、にいさまにはすっかり恐怖を植え付けているようですよ?すっかり引き込もって部屋から出てこないで本ばかり読むだけの、およそ武士の子らしくない生活の日々ではありませんか?

などと言っても生首が目の前に差し出されるわけですから……以前の経験とか、その記憶が無ければ同じように恐怖を植え付けるに十分すぎて発狂ものだったんじゃないかな……。

 

 

そんな型にはまらない父上が変わり者なのは、家族の中では周知の事実でした。

ええと、母上は美濃守護代も務めた斎藤利なんたらさんの娘で祥鳳玄陽と言います。ここ、諸説ありなのでなんたらさんでいいかと思うのです。中村御所でお会いしたと言ってました、戦国には珍しく恋愛結婚だったのかも知れません。

 

斎藤なんたらさん、一条の食客として頼っていたらしくて、その娘も家族もやぱり一条御所に住んでいました。そんな感じだったんでしょう。

国親も一条御所で養い子よろしく育っていたので幼い頃からの幼馴染みとの恋愛が実のっての結婚なんて、おめでとう父上!って拍手を送ってあげたい。

そう考えると……育ててもらって、恋も後押ししてもらって、もの凄い恩じゃないですか!そんな、大恩をバッサリ斬って捨てる父上って恩知らずのド畜生ですよね!

 

母上の実家……斎藤なんたらさん、ってね……。

わりと、……エリートだったようですよ?

 

わたしの中に流れる血は斎藤家の血の方が強そうな気がします。ぷんぷんします、そうだといいな……。

ちょっと父上の持つ常識は、他の人の常識とは違うので……でもその方が他人とは違う斬新な目線で物事が見れるのかも知れません。

たとえば、ホラ。

娘のわたしが、証拠です。

戦国の女子、国人の姫なんて行き着く運命なんてのは生まれてすぐ決まっている場合が多い、……そう政略結婚で味方を増やす道具という使命。

それが戦国の世ならではの、常識なわけなのです。

家の命脈を保つためにも敵は敵で無くなる方が良いので、親族にしてしまえば滅多なことでは敵に回らないケースが多かったのです。

それを最も強みとして、道具として日本の歴史で成功したのはあの、徳川家康だったりするので、道具としての姫は侮れません。

 

ですが、父上はちょっと違っていて、かなり変わっていて、重要視している箇所がズレていると言いきっていいと思います。

 

その方が都合がよかったのですけど、……経験と記憶あるのにそれをドブに捨てるようなものですよ、政略結婚のすえに相手の事を好きになったと錯覚させ、思い込ませるのは。

 

父上が重要視するのは使えるかどうか……ええ、首を取ってこれる腕をもってるかどうか。

そういうことなのです。幼い頃からじっと座っているような女子では無かったのは当然として、家臣を振り回して成長しました。父上の思惑に頭の中でハマるには兵を率いて、戦で負けない働きの出来る一門だと思わせるほか無かったです。

父上の頭の中にあったのは再興とそれ叶えば拡張とそして復讐。

幾度と無く、愚痴る父上を見て、傍に居て、国親という武将の考えが判るようになってくるのに気づきました。

猪突猛進、戦のことしか頭に無かったのです。

敵の城を落として、如何様にむごたらしい死を与えられるかという復讐心。

 

父上の奥底でぐつぐつと煮立つ復讐心が存在せず、父上を変わり者に駆り立てる気位の高さが無かったら、この転生の運命は変わっていたかも知れません。

 

女子が武士になるなど、表だっては皆無に等しい行為だったりするので、そうなるとこの物語の内容が、姫は政略結婚をして、味方に率いれたから表舞台に現れる前に身を引いて生まれた息子に英才教育を施し、実家が滅びないように陰ながら手助けする物語になっていた所ですよ。

 

それはそれで、楽しそうではありますけど……満足な人生が送れるような気は全くしませんね!むしろ、後悔の連続になっていたことでしょう!

 

政略結婚なんて承ることは出来ません、エリートの血を家臣にくれてやるようなそんな勿体無い事など……池は細川なので超エリートな名門ではありますが、それとこれとは関係ありません。

 

戦国の世を彩った有名戦国武将なら、政略結婚で文句を言うことも無きにしも非ず。同じ細川でも忠興とか、幸村とか伊達政宗とか、ボンバーマンな人とか。

 

そんなことは土佐に居ては有り得ませんので、そうなると政略結婚なんて真顔で蹴っ飛ばすだけなのです。

結婚を断って、髪結いの式なんてやってられません。武士になるです。やってやります!

 

旦那は戦場に出て探すことにしますよ。斎藤の血は安売りしません!なんて、言ってると父上の血が安いかと言うとそれも違うのですよ?

 

嘘か真か。我が長宗我部は秦氏──秦の血を継いでいるのです、ええあの秦です。秦の王家の子孫というのが秦氏なのです、遠い遠い大昔のご先祖さまの名ですけどね。

 

長宗我部家も安売りはしてやれないのです。限りなく薄ーい血だと思うのですが、ロマンティックな有名どこの王家の末裔ってだけで中二心をくすぐられませんか?

 

某キングダムな歴史の風を少し、感じれたような気もするわけです。

 

長くなりましたが、秦の王家の末裔と名門の斎藤の血を混ぜ込んだチート戦国武将・長宗我部元親から妹がふんだくった戦国サクセスストーリーがこうした下地を踏まえて今、始まるのです。

 

 

 

《1553年》天文22年─土佐・岡豊

 

 

天文9年生まれのわたしは、因みにこの年で数えで14歳。

余談になりますが、同じ天文9年生まれと言えばあの、羽柴秀長が生まれています。

四国征伐をした、天正の陣で我が家が為す術なく大敗したあの四国征伐ですよ。

他に、小出秀政、北条氏照、島左近。えっとーホントに余談になっちゃいましたね、えへ。

 

──げんぷく。そう……元服できた。

 

下克上をかましてやった。

せう言ってもいいすぎじゃない。

 

しゃあーっ。これで勝つる!

 

いや、誰かには勝ったけど誰にも勝ててない。

後ろで恨みがましくブツブツと呟いている男……の娘に勝ったのは確かだけども。

何か、何か違うんだよなぁ。

 

時は戦国。群雄割拠が過ぎて簡単に人の命がぽんぽん飛んでぶっぱして大バーゲンセールの大安売りな時代。

歴女にとってはどうしても生きたくて行きたくて胸焦がすように憧れる時代。

 

そんなわたしも歴女。……でした。

 

……はぁ、どうしてこうなるかなぁ。

 

よりによって……鳥無き島の蝙蝠こと長宗我部家に生まれるなんてね。

 

人生ってつくづく思い通りにいかない物なんです。

 

女神に会いました。ここに来る前に。

 

生まれつき体の弱かったわたしもゲームや漫画の中の躍動感溢れる武将たちに憧れました。

でも、だからて違うんだよ、女神さま。

いや、合ってるって言えば合ってるのか?

 

ううん、全然違う。

 

 

武将の妹に憧れる子も居るとは思うんだけど、そうじゃないんだ。

わたしは妻になりたいとか、女で武将を支えたいとかじゃないんだよ。

 

 

武将になって殿を支えたい。

 

武将になってあちこちをぶっぱして盛大にひゃっはーしたいんだ。

 

あの武将もあっちのもこっちのもお気に入りのあの人も、コレクションして侍らせたいんだよ。右に狸、左に梟雄、その後ろにボンバーマン、更に後ろに長距離射撃ヒットマンとアサシン。

あー大規模炎上坊主と、砲台ブッパキリシタンもいい。

東北覊将も副王さまとホンダムにセムシ男に親方様も忘れずに、風林火山と軍神ともお話したいし、不遇の英雄ともあれもこれも握手会したい。

わかってない、わかってないよ女神さまは。この境遇は、そんな訳で受け入れられない。

 

って僻んだり拗ねたりぐじぐじしても、どーにもなんないんだってさ。

 

だってねー、……何か色々終ってる。

 

詰んでる。

 

元親、あなたはホントにチートキャラだったかも知んない………………。

 

だけど、今チートでは無いってどうゆうこと?

 

わたしもまさか……出し抜けるとは思って無かったよ。

 

長宗我部家は土佐の一勢力。

 

そう、大名ではないのだ。

 

ここに、チート能力が必要になってくる。

そうでもないと生き残れないのだ。

まず、回りが敵だらけ。

まず、敵がメチャメチャ強い……長宗我部が弱すぎるってゆーか規模が小さいとゆーかって事でもあるんだけど。

 

それでも弱すぎる、今日明日にでもお家滅亡が近いとまで言い切れるレベルで。北に山田、北西に本山、東に香宗我部、もっと東に安芸、更にずっと西には大平。この辺りは長宗我部家より大きな勢力。

 

史実よりずっと詰みな勢力図って思ってしまう。

 

この長宗我部家は先代の兼序って殿様の時代に周りに疎まれやっかまれキレられて袋叩きにあって、その結果お家滅亡しちゃったわけで。

いま現在、鋭意建て直しの最中であります。

 

懇意にしてくれた一条さまの領地とは離れているというのもあるし、やはり戦国だもの。

 

そんな優しく、敵からも匿ってくれてその上お家再興に尽力してくれた一条さまの城と領地をすこーしだけ長宗我部のいまの殿様が奪ってたりする。

そんな関係で、まさに四面楚歌、周りに味方してくれるは誰もいないって現状が生まれているのだったり。

 

いまの殿様、つまりこのわたしの父上ってことになる国親のことなんだけど。

 

長宗我部国親のプロフィールに関してはズバリ、元親の父。

 

え、…………他に……?

うーん……じゃあ、味方をわざわざ潰したぼっちを引き摺った症候群とか?

ま、家臣は残ってはいたんだけどね。

なに、これも違うの?

じゃあね……虎の威を借る狐ってよく聞くけど、実際言われちゃった人って事は知らなかったでしょう?

こんなのマジに言われてる人物ってなかなか居ないんだよ。スネ夫じゃあるましし。

 

しかも、歴史にでかでかと残っちゃってるとかさぁ。

それだけで恥ずかしいとゆーかさ。

 

武将としては長宗我部の虎、土佐の虎とか言われてたらしいのだけどどーだか。

え?なぜに曲がりなりにも父を貶すような事を言うのかって?

 

それくらい、長宗我部家を詰ませるようにがんじがらめにしちゃった人だから。なんだけど?

 

せめて一条さまくらいは手出ししないで、味方して貰えてたらもっとマシに戦国を渡っていけるかもだったけど。

弱味をみせたとこから踏み潰される時代だとしてもだよ、ここまで見事に味方以外全部敵な状況つくるかってぐらいに詰んでます。

 

味方は味方で一族、親族、永代の家臣しかいない。嫌われたもんだね。

 

史実では安芸に圧迫されて負けた弱っちくなってた香宗我部に養子を出して乗っ取った頃に、オラオラ系で周辺じゃ強敵の本山茂宗が死んで後を継いだ本山茂辰を叩いて息を吹き返す、そんなラッキースター漁夫の利・長宗我部の下克上がスタートするわけだけど……笑っちゃうくらい元親こと弥三郎が妹としての目から見ても弱そうにしか映らなくて。

 

 

 

しちゃいました、下克上。

わたし、元親こと弥三郎の妹の下克上がスタートしちゃったわ。うふふふ。

 




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