烏なき島の蝙蝠─長宗我部元親(ただし妹)のやっぱりわたしが最強★れじぇんど!   作:ぴんぽんだっしゅ

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貯まってて古いのがまた消えそうだから消化なんて、言えない……つまり、そういうこと。


2.本山

本山茂宗。

立花宗茂と逆だね、そんなことはちょっとしたアンミスだけど全然たいした問題じゃないし、比べる相手が間違ってる。

 

「父上は憎んで居ました。逆に本山も長宗我部を憎んでいた」

 

本山さんは全国的には特に知られてない武将としては名が通っているいわばマイナーな武将だ、と思う。

 

「本山は長宗我部の養分とも言いますし。一歩間違えると、我が長宗我部が本山の養分になっていた未来もあったかも知れないのですよ」

 

とは言ってもここ土佐に於いてはこの人はとっても有名でかつ、強い勢力だったのだ。

 

 

 

 

ううん、むしろむちゃくちゃすっごいんだ。

 

土佐では、七英雄的な七つの豪族勢力があって、それぞれ安芸、大平、香宗我部、長宗我部、津野、吉良、本山。

 

なかでも本山茂宗が率いたら本山家はずば抜けて強かったぽく、影に隠れた名将なんてこともちらほら囁かれたりしたりして。

 

時にこの時代、本山茂宗は絶頂期。

 

まさにピーク。な、もので長いものには巻かれろと長宗我部国親もこの飛ぶ鳥落とす勢いっちゃ言い過ぎかも知れないけど土佐に関しては最も強かった本山に接近、長女を本山家に輿入れさせて一門衆に加わった。

 

言ってみれば親戚になったから滅ぼしちゃやーよ、ってな意味合いで軍門に下ったわけです。

 

誰がどうみてもここらでは最強だったわけだ、となると面白くない人だって出てくるわけで。

 

土佐の守護だった細川氏から守護代を任されていた一条さま。

対明貿易で莫大な資産と財産と……一言でいえば商売が当たってホクホクだった一条さまは、本山茂宗に対してはなにやってんじゃこらぁと言える立場だったんよね。

 

公家だけれどもそれなりに武士の真似事も出来た一条さま。でも、真似。

 

所詮真似事ではイケイケオラオラの本山茂宗には勝てる道理がなかったのです。

公家でおじゃるよ、って。お歯黒なんかしてちゃ、戦に勝てないような……なんかそれは武士とは違うと思うの。

 

必死さが感じられないとゆーか緊迫感ないとゆーか、武士なら血沸き肉踊るそう言った決意表明としてお歯黒はダメだよ。

 

そんなだから守護代を任される一条さまでも抑えられないし、ついには七英雄の一角、吉良を本山茂宗が滅亡させちゃう。

 

史実なら……こんな化け物チートとゆーかお山の大将ちっくな本山家も長宗我部が倒して、逆襲して、飲み込んじゃうんですよ。

 

びっくりするよね、それだけ元親がチートぶりを発揮できたんだろう、……ね。

このがりがりの本の虫が……?まさか。

 

「にいさま。弥三郎にいさま。本当に本が好きねー。剣術やんないの、剣術」

 

「嫌いに決まっちゅうにゃ。本を読めばにゃ?本山に勝てる策も閃くという思い一心にゃ」

 

「にゃあにゃあ可愛い。やっぱ土佐弁は猫語よねっ」

 

小さい頃から兄弟に仕込んだわたしの策が今花開く。

弥三郎にいさまはなんとごく自然に猫語を話している。

 

産まれてすぐから強敵に囲まれていることを悟った、精神はまるで死んだ前世のままのわたしが色々と根回しをした結果、兄弟みな猫語にしか聞こえない土佐弁を話してくれるようになった。

 

正直、まったく苦労しなかった。

 

やっぱり下地がこの土佐にはあるんだよな、猫語ってゆーかにゃあにゃあ語尾の文化がです。

 

「何を喜んでおるんだかにゃ……おっかない、おっかないにゃ」

 

わたしと言えば、木刀を自然に引っ付かんで野山をかけずり、猪なんか見てもびびったりしない、立派なお転婆でじゃじゃ馬な乙女に育ちました。えっへん!

 

ヤワな弥三郎に較べたら弥三郎に悪いくらいに頑健に育っちゃったのですよ。

 

そして、兄弟姉妹唯一土佐弁を喋らない。

土佐弁、馴染みませんでしたです。わたしには。

 

「おっかない。とか言わないでよ。これでも乙女なんだゾ」

 

「え、……乙女かにゃ?小昼が?ぷぷ」

 

そうそう、わたしの名前教えてなかったね。長宗我部小昼。それが今世のわたしの名前だ。

 

ばかにした笑いを浮かべる弥三郎にいさまの頭をコツンと小突いた。

 

兄だけど、尊敬してないし。

 

創作の中の元親さんってもっと美男子か中二キャラだったんだけどなぁ。

今目の前に居て瞳映し出されるその姿は肌真っ白なまるでヨーロピアンな白人。

それでいて、本当に腕も腰も胸板も細い。

背丈だけはすくすく伸びて史実通りでくの坊になるでしょうけどね。

 

さあ、そんな弥三郎を尊敬できるでしょうか、いえ出来ませんとも。

 

わたしの好きな戦国武将はこんな弱っちい男の娘じゃあないんだよなぁ。

 

女に産まれた小昼よりずっと、女らしいのにはちょっちジェラシー。あはははは……。国親に父上に似たんだよ、ちくしょー!

 

でも、ね。

こんな弥三郎に家を任せたは良いものの──長宗我部家は滅亡した。

 

 

 

なんて、テロップが出そうな気がして気が気でならない。だから。

 

出し抜いてやったった。

本山茂宗の一門に加わっている今、本山を警戒させないように振る舞えば本山茂宗の大嫌い長宗我部フラグからの、やっぱ気に入らないわ死んでまえ!的な流れは回避出来んじゃないかなっと。

 

姉さんも本山に嫁いでるわけだし。

長宗我部小昼元親って名乗るわたしのこれからの戦国下克上ライフも明るいって。え?

──うん、そう。

元親。って弥三郎にいさまが名乗るはずの名前は貰っちゃいました。

 

なんせ、本の虫でいつまで立っても元服しないんですよ、弥三郎にいさま。

 

わたしなんて、小昼姫なんて似合わないくらいに筋肉ついた体つきになっちまってるしさ、あははは。

 

まずは本山を警戒しつつ、内政を固めていこうよ。

 

ね?某歴史ゲームでもまずはがっちがちに内政を固めてから、それから戦でしょうよ。

 

長宗我部を貧困から救ってあげないとだわ、あーらなんて優しいのかしら。

小昼って。うふふ。




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