烏なき島の蝙蝠─長宗我部元親(ただし妹)のやっぱりわたしが最強★れじぇんど!   作:ぴんぽんだっしゅ

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22.砂糖は貴重なのだ

いや、懐かしい……。そんな風にしてあの頃、房基に養女にされたんだっけか。

 

そんな房基が今、目の前に座っている。あの時と変わらず、悪巧みをする時は二人きりで話し合うようにしてるんですよ。物憑き扱いで、座敷牢とかやですもん。

周囲にバレないようにしてるわけなのです。

 

岡豊城下にある商家の屋敷の一室。この商家は房基の息が掛かっていて今回は二、三日泊まるということで屋敷丸々借り上げてってことだから、房基の主従が屋敷の周りを固めてまるで房基の出城みたい。この屋敷の中に今は房基勢力しか居なくて、シンと静まる。そこまでする〜?

まー確かに、人払いは頼んだけどさ。使用人まで追い出す徹底ぶりに思わず舌をまいてしまう。

 

「──挨拶はこれくらいにして、何の用?」

 

表向きは大津城という一条の領地視察と、小昼もとい元親としての初陣祝いに駆けつけた。と、長い挨拶の中で聞かされてた。けど、小昼と伯父様の仲もとい通かあの間柄になっているわけで、今こうしてこの公家ハイブリットが麿麿しくしてない格好で挨拶してくるのを見ると、裏がある。ってすぐに判る。判ってしまうまである。

エスパーでもないし、特殊チート能力でもない。まして以心伝心テレパシー感じてる。わけも無いぞ。……思えば、あの初見の時から随分変わってるわよ、この房基。着てる衣装とか。

 

「何のようぞ、とは。連れないの、娘よ。──ズズッ」

 

房基の座る手元には、主従に房基自身がさっき持ってこさせた湯飲みが置かれていて。それを啜るように口に含む。少し味を堪能してからごくり。にぃと笑ってこっちを見てくる房基。

 

「あんまり、娘よ。なんて、呼ばれたく無いぞ。……房基、あんたすっかりコーヒーハマってんのね。高いでしょうに、砂糖」

 

同じように手元に置かれた湯飲み掴んで中身を一口。

このコーヒー、コーヒーというには語弊がある。コーヒー豆と使っている豆が違うんだ。このコーヒーには大豆を使っていて、平成で飲み親しんだ味とはあじわいが違う。風味が違う。

茶葉が手に入らなかったある日、思ってはいたけど試してなかった大豆豆のコーヒーを作って飲んだのを思い出す。あの時は……無かったんだよね、砂糖。

茶葉が買えないくらいなので、手が出せなかったともいう。

 

砂糖はまだこの時代、高級な嗜好品で他家の武将を内応させるだけの威力がある。

そんなヤバいものを目の前で湯飲みとは別の皿から房基がひとつまみ。

無造作に摘まんだ砂糖の砂粒を湯飲みに目の前のなんちゃって公家はまぶして見せた。これが内応途中の人間と小昼が変わってたら、態度は真逆だったかもしんない。それくらいに砂糖は貴重なのだ。もう一度言う。砂糖は貴重。

 

ただし、房基にとっては何でも無いぞという風にその所作で量れる。

何でも無いんだろう実際。

 

「娘よ娘、父をそんなに嫌うな。悲しくなるじゃろう」

 

「悲しい奴がそんないい笑顔見せるかい。どーせ、琉球から沢山砂糖を送らせてるからどうってことない、そうなんでしょ?」

 

房基の今の格好は陣羽織に着流し。その上、これは貿易が旨くいってるんだろう黒いマントまで羽織っている。

水干とか狩衣とか。麿麿しさとは真逆を推移している房基の好み。これで入京した帰りというんだから、一条本家への当て付け……以外の何でもないと思う。

これは本家が、しゃしゃる房基を暗殺したって説も無くは無いな。

まー今の房基を暗殺できるなら、やってみるといい。金に飽かして、伊賀、甲賀の忍びを侍らせているような、ちょっと斜め上に進化しちゃった公家武士の房基をやっちゃえるんならだ。

琉球では和寇の元締めもしているらしい、つまり海賊を飼っているわけだ。まーそれというのも、小昼が口添えというか入れ知恵したんだけどさ。

公家が傾きものにクラスチェンジした上に忍びと海賊を飼ってるってどーゆーことなんだ?って思うかもだけど、手っ取り早く強くして房基の身を守らせるには忍びは必要だったし、死因が諸説あってよく解らないから、解んないんなら房基自身を鍛えなきゃ。になり、自分を鍛えるプロって言えばやっぱり。

そう、忍者!て、わけで忍者雇うといいよって言えば……上忍を家族ごと買うという。ブルジョワは違うってわかんだね。頭をこっちは抱えるレベルで、生きるか死ぬかの貧乏武士生活だってゆーのに……解せぬ。神も仏もこの世に居ない!

父上はこの房基と仲が良くない、あまり。

一条の領地になったわけでおいそれと手出し出来なくなった大津が。

 

欲しかったんですよ。

 

海が無いぞ、でも大津からなら海に手が届く。これは是非とも大津が欲しい。となるわけです。

当然ですね、山ばっかりの土佐では物を運ぶには海から船で運んだ方が楽だし、どうしても効率がいいので。山を越えて米を運ぶ間に海からなら倍以上距離を運んだでしょうしね。

手が出せる距離の近場にある海への足掛かりといえる大津が手が出しづらくて房基と激突することもしばしば。

武力威嚇に大津を囲んだこともある。ま、中に居るのは天竺なのは以前と変わらないってゆーのも、父上が大津を囲んだ理由なのかも。

父上がこんなでそれまでは大津から船に乗って房基と交流会するために中村旅行出来てたのが一時出来なくなったことも。城に住んでるのは天竺もだけど津野さんもいるわけで、津野さんもプライドがあるから武士の沽券があれしてこれして実家や大平の援兵を貰って岡豊と一触即発な場面もあったくらい。

 

「用というほど用もなく。娘と茶を楽しみたかっただけではダメか?駄目なのか?」

 

その後も房基の口から出てくるのは雑談と一条本家に対する愚痴がほとんど総てで、ホントに用もなしに岡豊まで足運んできやがったんでしたよ。主従やら側周りを使用人として使う身分てのは判るけど、それ大名がやることと違うからね。

 

「帰れし……」

 

「娘と話したいのだ。俺の好奇心を満たしてくれる話をな。遠く東にあるという羽合(ハワイ)、買えぬだろうか?」

 

ホントなら二十八で志し半ばに自殺した房基が。今、目の前に居てハワイを買いたいとか妄想を語っている。余裕で買えるんじゃない?まー常夏は常夏でも、小昼が語って聞かせたのは平成のハワイだから、房基は勘違いしてるんだろうけどと思いつつ。




ここまで読んでくれてありがとう!
話が進まないのは、香宗我部戦が上手く進捗してくれないからであって、和数稼ぎでは無いのよ……
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