烏なき島の蝙蝠─長宗我部元親(ただし妹)のやっぱりわたしが最強★れじぇんど!   作:ぴんぽんだっしゅ

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3.内政チート?いいえ、仕様です!

長宗我部の商人を呼んで貰う。

 

長宗我部家の拠点、岡豊のある土佐は人口密度も低い上、平地のあんまりない土地柄だ。

 

山か、海かというサンドイッチ状に挟まれた平地が所々にある、そんなイメージを抱いて貰えば説明がしやすいかと思いますです。

 

その上、その僅かな平野にさえ湿地や沼が多いと来てるんです。

理由は暴れ川と大雨です。

 

暴れ川と呼ばれるほど幾度も氾濫を繰り返す激流の川は、河原のそばに家を建てようものなら前置きもなく押し流していきますし、田畑も捺して知るべしです。

これは平成になっても変わってなさそうですけどね。

一方、野分けと呼ばれていた、戦国時代の台風は今の台風よりも強力で辿るコースもなんと日本縦断コース。

 

台風と言うのは、上陸直後が最大勢力で暴れまわる内にその勢力を弱めます、やがて低気圧と呼ばれる雲の群れに戻るまでが台風です。

つまり、ここ土佐は直撃を台風が来る度に貰っていたんです。

 

土佐に生まれると、まともに農民もやってられないくらいに貧困な人生が待っていたんですよ。

 

そんな少ない土地でせっかく育てた稲も米を収穫する前に全部、言葉の通りみずの泡と消えるなんて……生まれながらに悲惨ですよね、当時の東北はもっとなんでしょうけど。

 

そんな状況があったことを念頭に置いて貰って、お話を進めますです。

 

領民を餓えさせないように賢主であろうとすると、とてもじゃないけど米や麦だけ育てるんじゃ、それは食い扶持は賄えないよね。

 

税を土地柄、米で払わせてるんだから民は飢えるわよ、そりゃね。

 

米以外にも目を向けないとこの貧困からは抜け出せない、と思うです。

 

一抜けの一条さまととか二抜けの本山みたいなまずまずの領地があるって訳でもない。

 

長岡郡、がある。

言い換えると長岡郡、しかない。

長宗我部の拠点は岡豊。

 

ここは土佐と言ってもまあまあな平地が確保できる。

 

ある、あるにはある。

 

だけど……戦続きで満足に年貢も満了納めて貰えるかというと……なかなか、難しそうだよ。

 

物心ついた時から岡豊住みだけど、一面の黄金の稲穂が実っているのを見た記憶がないです。

貧しいから戦をする、戦をするには金が掛かる、兵士にも腹を空かせたまま戦は出来ない。

 

それで借金をする、証文と言うんだけど小切手みたいな物っていうか……大金を商人に用意して貰うために信用は欠かせない。

 

山ばっかなんだから山を活かさないと。

山と言えば斜面を彩るオレンジ色やレモン色の実。

 

そう、オレン……ううん、蜜柑。

それに柑橘類なんかも全般。

これでも少しは食うに困らなくなるでしょうけどね、ここは土佐なんだよ……台風のメッカだもんねー。

土佐と言えば。

 

台風は自然のものだからどうにかすることは出来ない、だから。

早めに収穫するのを徹底しないと。

 

まあ、良いでしょう。山はこれくらいで。

 

土佐と言えば、海ばっかなんだから海も活かさないと。

海を活かすってどうやって?

と思うのは素人でしょ。

鰹釣りはここが本場だって知ってる人は知っている真実です。

 

だから、鰹節を作りましょうって事ですよ。

生節もいいよね、土佐節って名前のアレ。だからって鰹を大量に買い入れて鰹節作らせてってゆーのは、先がほど遠い作業になることは話をする前から頭で理解できるんだ。

 

じゃあ、どうやって金にするか?

それはね、ノウハウを売る。

 

作り方の設計図はわたしの歴女脳にインプットされてるんだから後は実際に作ればいいだけ、大量に作れるものだし全国に売れるものだしね。

 

えーと、戦国では出汁なんて取らないんだけど美味しくなるって判れば。

広まらない筈がない。

 

同じ舌をもった日本人なんだし?

ついでって訳でも何でもないけど、真珠の養殖も伝授しちゃおっかなー。

 

難しくないし、この時代にあるものでも代用出来なくないよね。その筈。

 

後は、イエズス会の庇護をお願いしといた。

神仏とケンカするの判ってるけど、文化レベルを引き上げてくれるのも、オランダやポルトガルの商人からなんだ。

 

チート出来るのが解りきってるんだから、先取り先取りで彼らを利用させて貰わなきゃ損だよ。これは絶対。

 

鉄砲隊、鉄砲隊ってだけチートだと思ったあなたは先見の明ががなぁい。

出直してくださいね。

 

今、現在。平成の世に食べられている野菜の大部分がまだ戦国では食べられていない真実。

 

なら、取り入れない訳がないでしょう。

無かった野菜はオランダやポルトガル商人ともうひとつ。

イスパニアからやってきた神父たちが持ち込んだのですよー。ふふん。

 

野菜を野菜としてまだ見てなかったりするトリビアがあるんですけども、それはまた別の話。

 

イエズス会と繋がりが持てれば貴重な野菜の苗や種なんかも手に入るルートが見えるってわけですよ。

これをイエズス会ガチャと名付けようと思ってる。簡単に望みの品が出てこないのが解ってるからだ。

 

いまゆるそれってまさに、ガチャじゃないかー。

 

 

 

食べ物とすら思われてないのをこの時代持ち廻してる商人も神父もそうそう居ない。

極レア級の品物なわけよ、野菜って。

 

ん?じゃあ野菜はどう思われて居たかったって?

 

それは、鑑賞用の植物。

または綺麗な花くらいにしか思われてなかったってゆーのが真実。

 

持ち込んだ西洋人からしてそう思い込んで日本にもたらしたんだから、鑑賞用に育てられてたって本にも残ってる。

 

いやあ、勿体無い。

そんな勿体無い野菜たちをわたしが救ってあげて、その上で儲けさせて貰おうってわけよ。

 

「ほう……貴重なお話を聞かせていただきました」

 

「ですよね。なら……ご用意して貰えますか?」

 

流石、商人。どうも簡単に話が良い方向に転がってはくれませんです。

 

「しかし、こちらと致しましてもポンと出せる証文にも限りがあります。そこで」

 

「ふふん、え?出せないの?まだ渋るつもりかな」

 

余裕が欲しい。武士になったのです小昼は。

武士が商人に言い負かされて思い通りにいかないなんて、まるで低ステータスのモブ武将止まりじゃないですか。そんなの困ります。

 

表情をなるだけ引き締めて頑張ります。えいえいおー!金をふんだくってやるです!

そして、一面金色の稲穂を実らせてやるのです!

 

「渋る、とはまた異なことを。申し上げたいのはですな、一条さまに頭を提げていただいてから改めてということですよ。どうでしょう、事には順序づけというのがあります。てまえも無い頭を一生懸命に働かせた結果、まずはそちらがてまえ共に誠意を見せる。それで、今日の所は手を打ちませんか?それとも、なんですか……長宗我部は。元親殿はそのていどの誠意も手前共に見せられぬ程、器が小さいとでも言われるので?」

 

わっるそうな、こずるそうな笑みを浮かべてます。

ウインドウに映るすっとぼけ商人を思い出させますよ。

こうなったら、相手を立てないと金は出てこないでしょうね。

確かに、筋道は立ってます。

 

一条さまと父上が微妙な関係だってことも知っていての、この商人の戦略ってとこでしょうか?

 

「……頭、を……。下げる……。(軍門に下れ、ってわけじゃないでしょう。)うむ……」

 

「良いお応えを期待しておりますよ。儲け話は何よりも好きですからして」

 

「でも、うちではなく。一条さまに睨まれたくはない、と」

 

「こくり」

 

商人を帰してすぐに、評定と言う家臣会議を開く許しを得るため国親父上の岡豊城へ取って返す。

評定の結果、押しきった。

 

「得心があります。房基さまには知恵を貸したいわゆる貸しがあるのです、任せて貰えませんか」

 

「しかし、のう。敵だらけじゃぞ?一条さまには恩もある、敵にはなってはおるがにゃ。それもそもそもは本山に弱味は見せられぬからじゃからにゃあ。儲け話というなら乗ってくれぬこともないのにゃ。行かせてやれるなら行かせてやりたいがにゃあ……」

 

父上が困り顔で小昼を見詰めてきます。極悪な顔をしてますが、時おりきゅんとくるこんな寂しそうな悲しそうな顔をしていると、思わずよしよししたくなりますが、我慢します。小昼、偉いです?

 

「本山ですか?」

 

「大きな声では言えんがにゃ。そん通りじゃ」

 

本山は我が長宗我部を大嫌いです。歴女脳が知っています。

ニコニコと親戚面していても、ぶっ殺してやる、なんだコラ!と本山さんは常に敵対心が漏れ出てる人達なのです。

 

ツインテールが長宗我部で、グドンが本山くらいに犬猿の仲なのです。

姉さまが嫁入りしてなかったらツインテール長宗我部はグドン本山に食い散らかされてるというのを知っているのですよ。

 

挑発していいことないのが、今の本山。

 

我が家が力をつけるまでは我慢、我慢の日々です。我慢しないといけないのです。

 

「香宗我部を頼ります。遠回りですけどそれで赤岡浦から舟を拾います。これならどお?」

 

本来なら香宗我部には乗っとり政策を仕掛けている頃かも知れませんが、

 

「元親様。親しき仲にも礼儀ありですぞ?お忘れなきよう」

 

なぜか友好関係があって、でも戦をしないかと言うと隙を作った方が悪いレベルで進んでいってるようです。

用はすぐには敵でもないけど、いずれはどちらか敵対するかも知れない相手同士ってことかも知れないです。

 

長宗我部と香宗我部のは元は親戚でもなんでもありませんです。

なにせ源氏と平家に綺麗に別れてたりします家系から違ってるんですから当然ってことですね。

 

長岡郡の宗我部だったから長宗我部で、香美郡の宗我部だったから香宗我部なんです。

全く違うんですよ、でも全くテストに出ないトリビアです。

お話にも全くの全然出てこない関係ないお話ですしね。

 

「吉田孝頼様。努々忘れては居りませぬよ」

 

父上が座る座主が小昼から真ん前だとすると、左右に座るのが家臣団。小昼から右側が一門衆。こっちは長宗我部姓をもっている親族ってとこです。

左がそれ以外の家臣。でもって福留なんかがこっちです。

 

通称、爺こと、この吉田孝頼。父上の姉だかを奥さんに貰っていて一門衆。

 

しかも超一流の政治屋で軍事も実に強い。ただし、長宗我部という縛りの中でって付け足しコメが付くんですけどね。

 

幼少の頃より、小昼は吉田孝頼を爺と慕ってべったり。まさに、これこそ計算通りです。

 

優秀な人の下でこそ優秀な人間になれると小昼は思ってますです。

 

他のぱっとしない家臣に守役に就かれるより先に小昼からゲットしたのです。

 

木刀を振り回す修練やら、走り回って足腰を鍛えるやらは爺がいつも横にくっ付いていて自由にやらせてくれます。

勉学は、やらなくてもばっちりなので省きます。とにかく戦働きできるように体作りを幼くから淡々とこなしてきたのです。

 

ぱっとしない家臣なら勉学はしないのですか?とか行ってきそうですけど、爺にはさらさらと毎日の日記を見せ続けていたら何も言わなくなりましたです。きっと、何を言わなくても自主練で勉学はしてるんだくらいに思われているんじゃないでしょうかね。

それこそ思惑通りですよ。うふふ。

 

「うむ。そういうことだが……皆はどう思うがにゃ?皆の意見を聞きたい」

 

 

 

「御当主様が頷かれるのであれば。何も申すことございませぬ」

 

家臣団側からも代表して声が上がる。

 

「某も」

 

父上の弟さん方からも了承を得ました。小昼、大勝利です。

 

「うんうん」

 

「……こうなったら儂も腹をくくらにゃの。了承した、誰ぞつれていくがよいわ」

 

「……有り難きしあわせ」

 

「元親よ、誰を選ぶんじゃ?」

 

そうは言われても。腕の立つ父上は連れていくのは無理、もし本山に知られでもしたら戦にはならなくてもよくないことになる。

かといって、吉田の爺ちゃんみたいに完全に信頼できる家臣って居ないし。どうしよっかな。

 

「一人じゃ、ダメ?」

 

「ふざけとるんかにゃあ……?」

 

一拍置いて父上がため息を突くと怒りとも心配とも言えない表情を張り付けたまま小昼を見詰めてきます。

 

「安芸も燻って完全に消えちゃいないのに一人で赤岡に行かせばどうなるか。この場に居る者で判らない者は居ないがにゃあ」

 

「目立つことはしません。商人に紛れてしまえば安芸にも解らない」

 

なんだそんなことですか。安芸があちこちの海岸線を牛耳っていて目を光らせていても小昼には関係ありませんですよ。

こんな小娘が武士とは安芸が思うはずも無いでしょう?だから安心です。

 

「戦に絶対はないぞ?元親、貴様個人の問題で終わってくれぬと知れよ。もし、安芸に貴様が斬られようものならにゃあ……どうなる?行動に責任を持つということが出来るのが元服ぜよ?」

 

「……失言でした。返事は熟孝して出します」

 

うう。思いがけない壁が。

まあ、そっか。戦国、戦争、戦してたんだ。今。頭真っ白になると忘れがちになるけど忘れちゃダメだったわー。

香宗我部は弱ってるから無理して長宗我部と戦までしたくは無いだろうし、そこまで危険はなさそだけど……安芸に本山はイケイケだもんなぁ。

 

 

 

 

 

熟孝した結果出した答えが。

 

「小昼様。もう赤岡が見えます。ここからは安芸の息がかかっておりますぞ、気を引き締めて参りましょう」

 

吉田の爺様に付いてきて貰うことにした。

親貞が居れば安心と思ったけど『子供だけで行かせられない』との猛反対を受けて諦めることに。とほほ……。

 

そして、もっととほほな事になった。大事件だ。

 

 

 

……赤岡で安芸の配下に捕らえられて今は安芸の城に連れてこられてしまったんだよ。

これで、小昼の人生ジエンド。

か、とも一瞬過ったけど。

安芸国虎は一条さまの義理の兄弟みたいなもの。

 

「一条さまに使者として出向いている途中の小昼達をどうするつもり?」

 

「なに?一条さまに?……ううむ」

 

小昼のその一言で、一通り考え込んだ安芸城主、安芸国虎はわたし達を放免した。

その上、謝罪として舟を出して一条さまの所に送ってくれるらしい。

 




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