烏なき島の蝙蝠─長宗我部元親(ただし妹)のやっぱりわたしが最強★れじぇんど!   作:ぴんぽんだっしゅ

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4.安芸の戦略

安芸。初めに広島県の安芸ノ国の事ではありません。

土佐ノ国、安芸郡又は土佐東部全部。これが安芸家が築いた勢力範囲です。

主は安芸国虎。

と、いうことになっています。

 

こほん、ここでは歴女であるこの小昼が安芸国虎を説明しますです。

 

1530年説と1541年説と諸説生まれが言われる、はっきりしない人物ですが…小昼の目の前に居るのは確かに小昼と大して年の変わらない少年武士です。

 

どうやら、やはり、兼定の姉だか妹だかを妻にしているはずなので…1530年説だと色々、結婚もせずに何してんだ?な展開があったりするですよね。

しかも初婚なはずで亡くなった時に幼い息子がいたくらいにしか伝わってないのは、1530年説だと齟齬がでるような気もします。うん。

国虎は兄が居た、くらいに言われた方が信憑性があります。または、妻や子はいたけど病死した。とかなら、1530年説も信じれるのですけど〜?

 

阿波国境から土佐を丁度三等分した時、東の大部分を安芸家が持ってる状況と言えば解って貰えるです?

 

中村の一条よりも家格は劣るものの支配する領地は普通に大きかったのが安芸なのです。

土佐東部に敵らしい敵も居なくてのほほんと暮らしてたら時代は平和じゃなくなって、頼みの綱だった細川京兆家──安芸家は応仁の乱のとき細川家に連れられて当時の大阪・摂津に従軍していったまでは良いものの本家当主やらその息子で嫡男などを細川を守ったり、細川京兆家絡みで討ち死にしてます。

 

室町時代にこんな風に忠義を示して安芸は細川に尽くしていたのに、三好さんに下克上されちゃった後、細川京兆家は旗色が悪くなってきてさっさと泥舟から逃げ出すネズミ宜しく土佐から逃げちゃいます。安芸可哀想……。

安芸国虎はそんな関係もあって五才で当主になります。

五才じゃなんにも出来ないだろうから家老やら家臣やらが助けてたはず、なんだけどこの部分も諸説あるせいで1530年説だと元服終えているので、若いなりに当主を立派にこなしたとか、やっぱり五才くらいなので家老の黒岩、一円らが安芸家を支えていたなのとかはっきりしてません。

亡くなった時に家臣の助命を頼み込んで自殺してるので、やっぱり年齢は幼かったのじゃ?と勘ぐってしまいます。

 

用は、我が長宗我部の最大の敵でした。領地は普通に大きかったので、もっと逃げて阿波方面の最後の最後まで戦う的な考え方できなかったのかなとかも思うです。

諦めの早く、とても戦国武将の図太さみたいのがない人なのです。

 

兼定はあんなにしぶとさを見せたのにね。

あと、兼定の一条家に対しての忠義で生き恥晒して降伏するのは出来なかったのかも?くらいには頭の隅の方で考えたりも出来ます。

兼定の和議(ちょっかい)のせいで長宗我部を丸ごと玉砕する乾坤一擲のチャンスを逃してしまい、兼定がいたからマイナーになってる感あるんですけど、ね。

実は、ちょっとズレてたら長宗我部は本山と安芸を相手に滅亡してたのですよ。

国虎は弱いだけじゃないのです、兼定が空気読めないくんなだけなんです。

兼定の母方の実家も空気読めないくんというか、時勢を読めずに滅んじゃうわけですもんね。教育って、ほんとに!大事だと思います。

領地は大きいけど、戦闘センスとか戦術とか戦略とかに光るものを感じません。

安芸国虎に関する説明をこれにて終わりにさせて貰いますです。あくまで本来の国虎であって、小昼の目の前で小昼と将棋をしているこの少年の歩む人生とは、違うとは思いますけども。

何せ、叔父さまが生きてますから兼定とかゆー愚物で空気読めないくんには育たないと思うのですよ。

 

追記として、彼が主役の某転生モノの某蜃気楼だとメチャクチャかっこいいんですけどねー、戦国武将としてはどうしても……、な安芸国虎です。可哀想なモブ人生を運命付けられたキャラなのですよ。

 

船の上って時間過ぎていくのがゆっくりで退屈ですぅ……。あ、角取られた?国虎のクセしてぇ!

 

 

 

 

◇天文23年─1544年頭・安芸

安芸国虎

 

「怪しい奴を捕えたというから来てみれば…おなごではないか。つまらん、帰してやれ」

 

俺さまの名は国虎。土佐の大名安芸家の当主だ。

いずれ敵をみな排除し、土佐と言わず三好すら恐れさせる存在となる、そんな運命を背負っている国虎だ。

突然だが、我が安芸家の家祖は蘇我家である。

かつて、日本全体を敵に回して大きな謀反をやった、そして──負けた。

 

……。

 

しかし、俺様には蘇我家の失敗など何でもない。

何せ隣には日本の副王と呼ばれる三好が居るのだ。うん。

だからだな、味方のふりして首を縦にふってりゃ、いつかは隙を作ってくれて、俺様が副王の座を三好からかっさらうって完璧な策よ。

我ながら良くできた素晴らしい策だ。

 

成功すれば、三好の首と阿波淡路讃岐が三国ともに安芸の懐に転がり込んでくるという寸法だ。

 

なんでそんな成功を約束された俺様が、おなごの駆除などに腰を上げねばならんのやら。

怪しかろうとおなごの身で何ができるってんだよ?

 

「しかし、こやつらは香宗からの道を通ってきたのですぞ!」

 

何?香宗と言うと香宗我部か。

縄でくくられたおなごの顔を見据えるとあちらも俺様をきぃっと睨みつけ、あっと言う間もなく、ふっと余裕の笑みを浮かべた。

 

「一条さまに使者として出向いている途中の小昼達をどうするつもり?」

 

小昼たち、と?よく見れば小昼というおなごの肩越しにじい様が静かに縄で括られているのが見えた。

 

「なに?一条さまに?……ううむ」

 

何だ?こいつら一条さまへの使いか。

 

というと、香宗我部から来たんだから香宗我部の娘か?

山田ということもあるにはあるか。もうひとつ、長宗我部からの使いかも知れんなあ。

どちらにしろ本山茂宗の領地は通る選択肢はどいつも無いだろうし、海しか奴等には道が無いんだから安芸に睨まれていれば中村にはたどり着けないだろうな。よし!

 

それが本当ならいい機会だ。俺様も一条さまへの御機嫌伺いに出向くとするか。

「娘、香宗我部か?山田か?それとも長宗我部か?」

この辺りの家勢には港が無い。本山に押さえられているからな。

そうじゃないなら細川か、池家という事も無くはない。蚊位田や千箭なら自前の港があるだろうが…。いま一条さまに従うかというと怪しい所だな。

中村は遠く、朝倉は近い。

本山が攻め込んできたとして、千箭や蚊位田などが中村から来る一条さまの軍が着くまで持ちこたえられるかという話になるんだろ。

まま、そうなったら本山になぶり殺されるのが関の山だろうな。一条さまの軍はその後に辿り着く事になる。

一条にいま頼るという必要に駆られているのは、香宗我部か長宗我部か山田というわけだ。

 

「それを正直に話してなんかあるわけ?」

 

「こ、こいつ。殿に向かって何と言う……」

 

なかなか強気なおなごのようだ。年の頃は俺様よりひとつふたつの違いくらいか。どこの姫だろうと、おなごの中身は清楚で男を立てるくらいでないと好みでは無くてな、逆に好みでは無いなと思うくらいの興味しか持たないようなおなごの容姿だ。

 

そもそも、このおなご、姫なのだろうか?なにせ、男のように筋骨ばって全体的に引き締まっていて丸みがない。

一目でおなごと解るのはおなごの服を着ているからで、出るべきところも膨らみが足りないというかな。

良いものを口にすることもしてこれなかったのだ。きっと、これなおなごは。

 

使用人か、後ろのじい様の娘で、じい様の方が家老とかいう事だろうな。まあ、探りくらいいれておくとしよう。

 

かっと来たんだろう、刀を抜こうとしたうちの兵を右手で止めると、頭の中で纏めたことを口にする。

 

「よせ、……俺様も一条さまに御機嫌伺いに出向くことにした。どこの姫か興味もある。これならいいか?」

 

「目的が同じなら、嘘を言うのも無意味よね。小昼は長宗我部から来た!小昼の父上は長宗我部国親よ!」

 

縄に括られたまま、正座で膝を崩した小昼というおなごを見下ろすように訊ねてやると、一瞬目を逸らして何やら考える風だったこの小昼は俺様を睨み付けて来やがったんだよ。

実に気丈と思わせる鋭い寒気すら漂わせる目だ。

 

とはいえ、おなごの身でよくやるていどではあった。

遥か目線の下で精一杯意気がっているおなごの実に微笑ましいことよ。ついぞ、口を開くと考えは当たっていたと納得させる答えが帰ってきた。

長宗我部か。国親というと、一条さまに領地復活の恩があるくせ、それを棚上げして逆らって一条さまの大津を攻めたという逆賊では無かったか。その国親が使者を出すという。

 

──その後、縄を解いて自由にしてやった小昼の話を詳しく聞くと一条さまに頭を下げて謝罪の意を示すために中村に向かうのだということだ。

しかし、これな小昼とは余裕しゃくしゃくな素振りを微塵も崩さない。殺されるなど少しも怖くないとでも思っているのか、そこは腐っても武家の姫ということなんだろうさ。何があろうとじたばたしない武士の鑑、そこは尊敬に値する。見倣わないとな。

死に直面してもなお今の小昼のように傲岸不遜。これこそ武士なのか知らん。

 

ふん、国親が頭を下げるべきではあるが、まずはその血縁が頭を下げるでもまあ良いか。

その後で国親を一条さまに引き合わせ、頭を下げさせれば良いのだからな。

 

娘を嫁がせて本山と手を組んだくせに、戦力が揃えばその本山ともにらみ合いになっているとは、世渡りがうまいのか下手なのかわからんな全く。

 

まあ、俺様の邪魔になるなら踏み潰していけば良いだけだ。

 

本山だろうが、長宗我部だろうが、大平や吉良や津野でもな。

どいつもこいつも俺様の敵ではないな!

 




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