烏なき島の蝙蝠─長宗我部元親(ただし妹)のやっぱりわたしが最強★れじぇんど!   作:ぴんぽんだっしゅ

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42.小金持ち

実は。小昼、にっこにこです。

父上から、どんな無理難題を押し付けられてもそれを相殺してなお勝ってくれます。勝たせてくれるものなんです。

何故か?はて、何故かって?それは──○○サイダーを手に入れたからです!

 

 

《1553年》天文22年─土佐・岡豊国分寺

 

長宗我部小昼

 

対に。対に。対に!

この日がやってきましたーぁ。炭酸ジュースを土佐で飲める日が。なんせ、戦国の世。◯◯サイダーの原液が滔々と湧く泉が誰にも発見されることなく……発見されたとしても、手付かずで丸々手に入れることが出来ました。平野水。有名な多田村平野鉱泉です。

まあ、小昼がと言うより小昼がノウハウを売った堺商人であり博多商人も兼任する洲崎を拠点にして土佐に根を張る刀弥夜叉丸(とうややしゃまる)というどっちだよ!て突っ込み処の多い、通称大平洋の盟主(ドン)。だから、どっちなんですか?っていう大富豪にここ、国分寺にて面会しました。

 

別宮の方が近いけど山を運ぶのは危険が一杯!だそうなので、国分寺に出向いての会見となりました。

めんどくさいから行く行くは岡豊に乗り入れるか、直接父上の許可を得て貰ってだね、御用商人の一人として扱っていきたいです。

 

「詰め物の改めに時間を使いましてね。運んでもただの水に戻ってたら意味ないでしょう?この日が待ち遠しかったのは自分等も同じなんで」

 

詰め物とはコルク栓でしょうか?よく見ると違うんですね、木栓で間違いないでしょうか。コルク栓に変更させましょう。

明治から先取り三百年くらい?平野水を今こうして目の前にしてます。

 

夜叉丸は代々の大富豪の通称なんだとか。確かに堺や博多と伝があれば回船を続けただけで大富豪でしょうね。刀弥は十代目だということです。大平洋堺航路と瀬戸内博多航路とを駆使して代々財をなしてきたんでしょう。洲崎の商人がどうして?そう、ノウハウを大金を出せるのがこの人しか居なかった。手を挙げて貰えなかったのです、しくしく。ぐすん!

 

「そうです。このしゅわっとした炭酸が抜けてしまってはただの水だもんね」

 

「こちらとしても、半信半疑だったぐらいですよ。このパチパチと言う音が無ければただの水!化かされたか、と悔しい日々だった所、詰め物の木を以前の堅いものから柔らかい備前物に変えるとあら不思議。半月の運搬にも耐える品となり、博多にも卸せることが可能で販路がぐぐん!と広がったんですよー、どわははは!苦労した甲斐があったというもの、ささ、堪能してくだされぃ」

 

この十代目、話し始めると自分に酔ってしまってべらべらと一方的に喋り続けるのが、ちょっと乾いた笑いを誘う人物なのですが、年はなんと18。海の上に常に居るからでしょうか赤黒く日焼けした肌と黒光り筋肉質な体とが実年齢よりずっと年上に思わせるんですよ。

 

「ん!美味しい!見事。炭酸が生きてるわ」

 

「元親どの、小昼どの?どちらでも良かったのでしたか。この販路、広げるに当たって河部善左衛門も一つ噛ませて欲しいと」

 

「中村に今、船を着ける商人なら誰でも引き入れてくれておっけー」

 

「おっけー?承諾で宜しいのですな?」

 

「うん!南蛮とも商人なら販路を持ってくれると助かるんだけど、可能かしらね?」

 

三つ目を空けた。炭酸水は麻薬だ。これが手に入ると今までの清水では物足りなくなる。

 

「これは又、難題ですな。臼杵商人と航路が被っていて手前どもは肩身がそれでも狭いので、しかし、この『さいだぁ』と言うのは南蛮にも売れましょう」

 

「彼等、水の方が貴重品よ。炭酸はエールが積んであるはずだから、炭酸の無いものの方が好むと聞くわね」

 

エール=ビール。何れはこっちの製造業も勢力下に置きたいわね。日本人は生ビールの奴隷のようなものだし、これを押さえれば上がりがどれだけ上がってくるか。まぁいいか、まだ無理だろうし。清酒研究が完成してからでも。

 

エールを毎日繰り返し100日くらい飲んでたどり着くから真水を飲んでないんだから、真水を好むんだとか。それでも酒好きはワインとエールから離れられないでしょう。ワイン、ビールはエジプトが起源。戦国の世に実現出来ない品ではないのよね。

 

「これは流石、一条さまと中村に君臨する小昼どの」

 

「別に君臨はしてない……と思う。キリスト教の布教は認めさせたけど」

 

それどこ情報?どこの噂?

小昼、別に君臨なんてしてないよ。

 

「それが十分、君臨なされると言うこと。房基さまより、よっぽど信頼を得ているのでしょう?」

 

あ、解ったかも。おべっかだ。お世辞。ヨイショされてんのね、今。

 

サイダー瓶から視線をあげると丁度視線が合って、夜叉丸が妖しく笑う。

 

「発展するには新しいものを上手く取り入れ、自分のものとしなければなりません。キリスト教も八百万の神々の一柱とすれば、あら不思議。布教になんの傷害もなくなってしまったではありませんか」

 

日本帰化人サイトでそんなことを書いてた気がする、あれはヒンドゥーの神だったかな。それともイスラムの神かな。ラハブだっけ?

神道は末恐るべき宗教だ、いつの間にか自分の国の神が八百万に加わって宜しくやってた。だから。今日も美味しく肉が食える!的な話だったかな、あれは。

す○やのコスパには宗教も敵わないと言うことだったような。

 

「手管が末恐ろしい。それで、南蛮からそれほどまでに欲しがるのは何なんです?」

 

誰かが歩いた道を先取りしてるだけで末恐ろしいとか言われるなんて、ね?

 

「トマト。ジャガイモ、又はジャワイモ。唐芋。とうもろこし。あとはピーマン。それにジャックランタン、又はかぼちゃ。レタスも欲しいと思うし。じゃあキャベツも忘れちゃダメだっけ。それにえーと」

 

「で、それらは何なのです?一応記載して書き付けました」

 

野菜。野菜だよ。肉だけじゃ体壊すよ。戦国だと肉を自由に食べないから、そういう習慣だから、そこから柵を壊さないとなんだけど、米だけ、雑穀なだけではダメだと思う。野菜は絶対必要だよ。春に頼んでそちらはまだ、手に入った報せが来ないから刀弥にも頼みこむのですよ。

 

「野菜なのです。それで、えーと別に話があるのですが」

 

刀弥夜叉丸は、自身が運んできたサイダー瓶を一つ空けて口を着ける。

甘さは無いので蜂蜜を足しました。これって蜂蜜レモンと変わらない?

 

「聞きましょう」

 

口を着けたサイダーを一息に飲み干しけほっと咳を一つしながら夜叉丸。

 

「国分寺もガタが見えます。国分寺といえば由緒正しい仏社。それなりの大工を迎えたいのです。例えば神門国清」

 

にーさまは史実、勧進をやって寺社を復興させて人気取りをしました。名声もそれに伴って高まっていったんです。

寺社の横のコミュニティの広がりは行き着く所無し。常に噂として流れる水物。クチコミで有名になれるってわけです。

 

「なるほど。出雲の最近名を上げた神門国清ですか。土佐の大工も仕事は良いものですよ、洲崎の大社も土地の大工です」

 

「名のある大工を呼ぶことで、得られる名声もあるということですよ。頼みましたよ、夜叉丸」

 

「ただの回船問屋にそこまでさせるんですから、見返りは期待させて貰いますよ?」

 

どこかもののけ的な笑い顔に変貌していく夜叉丸。

まだ、本心には届いてませんものね。もっと稼がせろってワケ。いいわよ?

 

「大工を連れてきてくれたら、こたつを設計図つけて売り付けてあげるよ。これ、絶対売れるから」

 

なにせ小氷河期の戦国の世。秋から冬は平成の寒さ処ではない。全国に鶴が飛来してくるのも頷ける。

誰かの弁を借りるなら、日本全国域で函館の冬を味わえる。だ、そうですよ?

マイナスを下回らない薩摩でもひやっこいんでしょうか。なんか、それはそれで笑えるというか。

 

「そりゃ。楽しみだ──他には?」

 

何?まだ足りないと。

 

「作るには難しい船の設計図なら売ってあげる」

 

これでどうよ。誰も手をつけてない船の設計図よ。

儲かると思う。

作れたとして完成するか補償は出来ない。

 

「さいだぁが五千貫と年の上がりの一割のさらに一割という事でした。その船、おいくらで?」

 

「そうね……一万貫。さいだぁと同じに年の上がりを貰うわ。ちゃんと納めてちょうだいね」

 

大物売りの話をしていると春先に二百貫の証文を取るのに苦労したのが、遠い昔のように思う。一度売れればこうやってノウハウだけで儲かるんだよね。

平成の特許料みたいなものかな。一万貫。二百貫から、跳ね上がったものだね。

 

「売れぬ船が一万貫……納得できぬ話です。こたつを聞いておきましょうか」

 

おっと。お気に召さない?

夜叉丸は目を細めて在らぬ方向をじっと見詰め始める。あれ、小昼知ってるよ。あんな風に何かを悩んで思考をフルブーストさせてるんだ。儲かると思う。儲かるかどうか悩んでんだ、きっと。

 

「こたつを……そうね、五千貫。勿論のことこれも上がりを貰う」

 

こたつ。これは人気が火のつくノウハウだと思う。日本全国でダメ人間製造器として働くんだね。

 

「これはがめつい……船の設計図、横流れすることもあるかと」

 

がめつい?破格な特許料だと思うんだけどな、絶対払った代金を回収して有り余る富を生むんだから。

「その場合、横流れした先にも請求するわよ。当然でしょ、最大級の帆船の設計図を売ってあげるんだから」

 

この売り付けようとしているのは実用性帆船・威臨丸(かいりんまる)のノウハウだ。

別の帆船改造にも使えるノウハウで確実に儲かると思う。

単価で言えばこたつの比じゃない。夜叉丸は大富豪から博多三役の座くらいはかっさらえると思うの。それでもがめつい?

 

「流石、小昼どの。どこまでも商才に長けてらっしゃる」

 

神妙な面持ちで見詰めていたかと思うと、にかっと口角をあげて笑って見せる夜叉丸。口が大きい。

 

おお?まだ引き出しを出させようと……あ、判った……なるほど。

 

「夜叉丸、あなたもこれを踏み台に堺を飲み込むくらいに大富豪になるわよ。房基にもくっつきたいんでしょ?」

 

御用商人の座か。そこに座りたいってことだったのね?

商品より権威を求めるか、まだまだ室町なんだねー思考が古い。自由にどこの湊にも船を着けて商売すればよいのに。

それだけの商売が出来るだけの商品だよ、このサイダーは。

 

「ははは。そうです、一条さまとお近づきになりたいのは山々で。中村の商人は安芸、堺、博多、臼杵と付け入る隙がない。そこへお嬢様、小昼どのを見つけたってわけです」

 

さいだぁに出した五千貫で一条へのコネを買おうってしてたのかー。それは安過ぎる。

サイダーの儲けは約束されたようなもんなんだよ、夜叉丸はあんまり信じてないようだけど。炭酸水は売れる品だから。

 

「あーあ。それじゃ五千貫は安いわ。一万にしようか?」

 

一条へのコネが一万貫ならそれでも安い。琉球と伝が出来るって事だもん。

先の帆船と合わせて琉球航路を二分する存在になる。そんな気がする。一万貫で房基が売れたと考えよう。とてもいい買い物が出来たと思えるはずなのです。

 

「宜しいので?小昼どのは信頼が置けぬと広まるやも、ですよ」

 

──っ!

嫌な不意打ちだ。

信頼は武力の次くらいに、戦国の世でははばを利かせる。

 

「商人に一度付けた値付けは変えさせない、か。嫌な商人を引き当てたってわけね。だからって、一条に引き合わせるにはまだ足りないわね?更なる働きに依っては──御用商人の座を与えるわよ」

 

夜叉丸の粘り勝ちってワケ。小昼、陥落。

房基への、ひいては一条への伝になってあげます。

 

だけど、まだ足りない──夜叉丸にはまだやって貰う。

 

「一条でもない、長宗我部のお嬢様がそれを約束できる、と!?た、確かに御用商人となれば一条に肩を並べて堺商人に負けぬ商人に雄飛するでしょうが……それを長宗我部小昼という童が叶えると!?まことですか」

 

どこの御用商人のこと言ってるのか。中村の御用商人への伝しかないよ?小昼には。長宗我部の根は夜叉丸には魅力的でないようだし。

ん?一条てもしかして、商人の一つなの!?摂関家が商人て、笑える。

対明貿易は大内と一条がやってる分だしね。それにしても回船問屋に商人扱いされてるとかマジうける!

 

「ぷ……ぷぷっ!童って、……まあ童だけど。元服を済ませた武士なのよ、これでも一応。知っての通り一条と長宗我部は蜜月の関係よ。多少のワガママは伯父様に聞いてもらえるでしょう」

 

喋ってると自然と笑いも治まるなぁ。武士を掴まえて童はないと思うよ。立派に武士をやってるんだから。もー!

 

「ははっ!約束が叶いますよう、刀弥全力で神門を連れて参りましょう」

 

「それだけ……?」

 

「は、はい!もちろんのこと野菜を手に入れるに奔走させていただきまする」

 

「──宜しい」

 

他にも夜叉丸にはワガママ攻勢が有効みたいだから、いろいろあちこちに船を着けて人材を運んで貰う手伝いをして貰うことにした。

まずは刀工かな。有名どころを召喚したと聞こえたら長宗我部の名声も高まるでしょうし。武器製作に必須となると思うんだ。近場で有名というと備前造りの刀工になるか。肥後の胴田貫も有名で誰でも耳にするブランド。あと、村上水軍の秘伝火薬を使いたい。あれでバズーカが作れたはず。あれ?ロケットランチャーだっけ。木製の盾を突き刺すロケット花火みたいなの。刺さると船を一気に燃やすから、毛利海軍の攻勢に寄与したとか言う。

今までのような米をバラバラに買うんでなくて、纏めて土佐全体から買い上げて値を合資で決めるシステムを教えた。これには夜叉丸も苦笑い。西半分は一条だから、何とかやれるだろうというけど土佐郡から東はまだまだ混迷している今の状況で何言ってんだですよね、分かってます分かってます。分かってますから!

一条と一条の属征地で米の統合やればいいじゃない。

やったもん勝ちなんだから、それと小昼の手元にはこの上がりも入りこんでくる約定だ。小昼これだけでもすっかり小金持ちですよ。

 

岡豊を活気つけるためにばら蒔いた設計図は夜叉丸には頼まれても出さなかった。特に軟膏と肥料。岡豊がこの辺りは独占で生産している今がある。

 

こちらは、最初に話を通した我が家の御用商人……一条の口利きだけど。の宍喰屋次郎宇右衛門の取り分だもん。これに踏み込ませたらそれこそ堺に顔広い宍喰屋だから信頼は地に落ちる。木材問屋なだけに証文はすぐに書きあげてくれたけど。信頼なんて些細なことで揺れるから気を抜けない。

一条の御用商人の大物、対明貿易の大富豪・島井宗室が来たってこれは渡さなかったんだから。

あーあと、安芸辺りに居る玉木忠吉を連れて来て貰う予定。

毛利が飛躍するための燃料を抜いてあるから、安芸一国を纏めるのに必死だろうし、隙はあるでしょう。

 

と、思ってたのに房基ったら飛んでもない爆弾を持って大津にやってきたのですよ。

 

 

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