烏なき島の蝙蝠─長宗我部元親(ただし妹)のやっぱりわたしが最強★れじぇんど!   作:ぴんぽんだっしゅ

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7.父上はやはり父上

独自の商路を開いて肥料は捌くことが出来ました。

 

これというのも、叔父上に爺が親族の方々に声をかけてくれて誠心誠意売り込んでくれたおかげです、決して……脅して買わせた、騙して買わせた、又は、これを使わなくてもいいから売ってくれる人を見付けてそいつに売り付けたらマージンだすよ的なネズミ講でしょうか?

 

あー……余り深く考えない方がよいのでしょうね……そのへんは。

 

きっちりとしたやっちゃ駄目って決まり事のない戦国の世。

売れればよいのです、売れれば。

まず、何にしても売れないと証文が返せませんし、折角の一条の叔父様の好意が無駄になってしまいます。

 

ただの土から良い土になるくらいの効果は必ずあるので、使ってみると良さが解って貰えるはずですよ。

 

 

 

今、畑の前に来ています。

みんなで田植えをしたあの田んぼです。あれより数日経ちました。

畑を見回して見てもそれほど悪い症状の子もいないようで、すくすくと稲穂は育っているようで嬉しいですよ。

思わず頬が緩みきってしまっても仕方無いでしょう。

 

元服してからより、戦らしい戦も無いのでこうして土いじりから、木いじり、草いじり……およそ武士らしくない生活を送っています。

これも、未来に我が家が転けないための根回し、明日への希望の襷なのですよ、たぶんね。そうなっていくと良いな。

目に見える成果が畑に現れて出るのは一月後くらいでしょうか。

 

「……見事な稲穂に……育つとよろしいですな、小昼さま」

 

脇腹に両手を拳で突いたポーズ─前へならえの一番前のあのポーズで爺へ、どうよ?とアピールすると爺は微妙な笑顔でそう答える。

 

「皆良い子たちよ?青々と育ってるじゃない。夏頃には一面金色の海になってるわ」

 

「もうじき長雨の季節ですぞ。真価は長雨を乗りきれて、それからですな」

 

「爺は梅雨で全部流れるとでも思っているの?」

 

「領石川から水をこの辺りは引きます。領石川は国分川と繋がっているのですぞ、国分川は暴れ川。長雨が続けばこの辺りも川となりましょう」

 

「うっ……。本当に、川って便利で、不便なのね」

 

まっ平らな土地が岡豊で荒れ地で残っている時点で何かあると気づいていれば良かったのです。父上は、小昼の邪魔がしたいのですか?

ここが、領石川に飲まれて川の一部になってしまえばもちろん収穫はゼロになるじゃないですか。

 

「か、川になるような土地を宛がうなんて父上は何を考えているのですか……これまでの苦労を水の泡と消えさせよ、と?」

 

小昼、パニっくしました。

後は手入れして、育って貰って、収穫して、どうです!この成果を見よ!と誉めてもらえる算段が。

 

青い顔に変わって焦りを隠せなくなっている小昼を見かねてか、すかさず爺がフォローします。

 

「殿は、小昼さまに領石川を見事治めて見せよ。と申しておるのでは?今、小昼さまがこの地に立って、この地を見ているのが証拠かと」

 

フォローにいまいちなってない推測でしたが、爺の言うことも尤もです。

 

これは治水イベントですね。クリックひとつで知性ステータスが高ければ成功しました。とテロップが流れる、あれですか。よくあることですよね……。

 

「小昼が、川を治める……?つまり、堤防、堤(つつみ)を作って備えよというのですか。……梅雨はもうそこまで来ていると言うのに……むぐぐ。

良いでしょうっ!父上のその企みに乗ってあげましょうー。堤くらい作ります、作りますとも!」

 

やりましょう、やってやりましょう!

父上にそこまで先読みして政治が出来る人なら長宗我部が四面楚歌になることも無かったんじゃ無いかとも思えてしまうんですけど、小昼の評価に繋がるというのは間違っていません。

 

広げた手のひらで流れる川を差しながら爺に向かっていい放ちます。

強い意思を持って、もうヤケクソなのです。川、治めてあげようじゃないですか。

 

さっきの爺の微妙な笑顔がの裏にこんな罠が隠されていたなんて。

立派な稲穂に育つとよろしいですな、か……。川に変わる土地で稲穂が生き残るような奇跡をやって見せよってわけですよね。

出来れば評価は上がり、出来なければやはり腕はそこそこでも女子は女子とか男尊女卑をさりげなく突きつけられて立つ瀬が無くなりそうです。

そうなると、小昼の寺子屋もどきも解散させられてしまうかもですよね。

それでなくても、家臣の男子も女子も別け隔てなく調きょ…教育できる場ですから小昼は不当な評価を貰うわけにいかないのですよ。

「姫せんせーこれはなんとよむのですか?」

 

「これは小さい、と読みます。そしてこの下の……この漢字はおひるの昼です。この小昼の名前なのです。まずはこの漢字をひらがなで書いてみましょう。できますね?」

 

「姫せんせー我らは武士の子です。読み書きよりだいじなことがあるのでは?」

 

「読めないということは情報に気づけないということ。書けないということはじゃあ、どう武士に必要ないことだと思うのですか?」

 

「情報はのろしで十分ではありませんか?書けないとどうダメなのか解りません!」

 

「のろしでは、敵にも見えます。読み書きが出来れば敵にも知られず、伝えたい情報のみが伝えられます。のろしは大事ですが、のろしだけではダメだと解りましたか?」

 

「姫せんせー読み書きが出来ても!敵将を切れません!」

 

「斬れないですね。でも、……敵をハメておちょくってやれますよ?自滅させることも可能ですし、読み書きより大事なことは無いと思います。あなた達は情報を操り、敵を出し抜いて、自滅に追い込んでやればいいのです。読み書きの重要さ、解りましたか?」

 

「姫せんせーむずかしいでーすっ!」

 

皆に国字くらいは読み書きさせてあげるレベルにしたいのです。

なかなか皆さん覚えが悪いのは下地がないから仕方ないとは思うんですが、親御さんよりは賢くなった。親御さんを言い負かせる弁舌をどうもありがとう。などの一定の評価も戴いてます、……親御さんからは即刻廃止せよ。なんて声も貰いますけど、子が賢くなることが何の悪いことがありますか。

そう言っても、一番の問題は賢くなりすぎて政略結婚でしかない嫁入りを断ったなんて話があがってることでしょうか。

 

小昼が姫をやめて武士やってることも、親御さんには頭の痛いとこなようですよ。

常識外れなんて、よく言われますけど、小昼の場合、本来の意味とは違う悪口なんですよね。女子は道具、という世ですから道具が使えないとなると堪ったものじゃないということでしょうか。

いつかは男尊女卑なんてやってる場合じゃなくなって、立場が逆転してくのにね……?

 

それが、少しばかり早くなることのなにが悪いことなのでしょう?小昼には解りません。

 

 

 

 

さて、寺子屋もどきで親御さんを泣かせている話はもうこれくらいにして本題です。

堤を作ることにしたんですが、これが大問題ですよ。

何せ、川原に湿地に低地の領石川の周りを川の氾濫から守る堤防を作らないといけません。

煉瓦も、コンクリもまだ無いのですよ、手はつけてはいるのですが実を結んでは居ないのでコンクリも煉瓦も無しで堤防作っていきます。

……出来るのかな……?

 

とても、心配……なのです。

 

父上は優しくなかったです。父上はやはり父上だったです。

 

 




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