翌朝、間桐雁夜は目覚めると身体の調子が幾分回復しているのを感じた。むしろ召喚前の状態よりも改善していると言えるかもしれない。半分だけ体を起こしたまま茫然としていると傍らにシールダーが現れた。
「マスター、体は大丈夫ですか?応急手当程度ですが一応処置しておいたのですが…」
「ああ、シールダーのおかげだったのか、体調は大分良いよ。」
「それは良かった、宝具を使えば本格的な治療も考えられるんですが、今の状況で令呪無しに宝具を使うのは無理がありましたから。」
シールダーは安心したように言った。そう、宝具――サーヴァントがサーヴァントたる証にして切り札。これを知らずして聖杯戦争を勝ち抜くことなど不可能だ。
「なあ、シールダー、お前の宝具について教えてもらえるか。その盾が宝具なのは分かるんだが。」
「ええ、もちろんです、マスター。この盾は俺自身の宝具とは言い難いですが、真名開放に問題はありません。見ての通りの攻撃を防ぐための宝具ですね。俺の方さえ耐えられればかの星の聖剣でさえ問題にしませんよ!」
そう語るシールダーはたいそう自慢げだ。なにかその盾を強く信じる理由があるらしい。
「へえ、それだけ自信があるなら防御面は大丈夫そうだな、攻撃手段は何かあるのか?」
「そうですね、一応俺自身の宝具が二つほどあるんですが、その片方は万能に近いから何とかなると思います。」
「頼りにさせてもらうよ、俺は絶対に勝って聖杯を獲らなければならないからな…」
シールダーはふと気づかわしげな表情になった。
「マスター、あなたが聖杯にかける願いは何ですか?」
これまでで一番真剣な声音での問いである。雁夜は正直に答えた。
「この家にいる桜ちゃんという娘を救うために聖杯を獲れと臓硯に言われたんだ…俺に聖杯にかける願いなんぞないしな…」
「ならば良いんですマスター。本来俺は聖杯戦争に呼ばれるようなサーヴァントではない。恐らくこの聖杯、まともなものではありません。願いが叶えられるかも怪しいところでしょう。」
雁夜にとっては衝撃的な発言である。しかも御三家の誰もがそれに気づいていないとすれば。これからのことを考えれば頭の痛い思いであった。
「シールダー、サーヴァント七騎が揃ったとの通達が教会から来たぞ!」
「じゃあ、今夜からいよいよ聖杯戦争が始まるという訳ですね。マスター、使い魔を飛ばして監視を行いましょう。私なら大抵のサーヴァントは見れば真名を把握できるはずです。」
雁夜は言われた通り、虫を操り冬木一帯を監視できるようにした。これまでは雁夜の静養を重視し、彼が魔術を使うことをシールダーが良しとしなかったのである。しかし、大体のサーヴァントの真名が把握できるとはどうした訳か。彼は生前英霊マニアだったのか?
雁夜は混乱していた。
――今宵始まるは第四次聖杯戦争で最も混沌とした戦場となった、都合六騎が集う開幕の宴である――
原作との変更点
雁夜が使い魔を飛ばしていない→アサシンの偽装を知らない
雁夜の体力魔力が多少マシ