埠頭では眉目秀麗な男と金髪の女性が文字通り火花を散らしていた。男は剣と槍という歪な二刀流による変幻自在に戦うが、女の方も不可視の剣を振るい質実剛健に対応していく。
シールダーは若干離れたビルの上からそれを眺めていた。会話は聞こえないが、先頭の様子を見るには十分だ。
『分かりましたよ、マスター。男の方はランサー。ディルムッド・オディナ、フィオナ騎士団の一番槍ですね。剣を持っているのは意外ですが、優れた魔術師がマスターなのでしょうか。』
『女性の方は最優のセイバーにして音に聞こえし騎士の王、アーサー王。正確に言えばアルトリア・ペンドラゴンです。あの状態の彼女を見るのは初めてですが、思ったほど変わりませんね』
念話を聞き雁夜は驚いた。戦っているサーヴァント達は宝具の開放さえしていないのに真名の把握が出来るとは。聖杯戦争において情報は大きな武器となる。これだけでも他の陣営より一歩リードしているといっても過言ではないかもしれない。しかしアーサー王と言えば知名度も抜群の英雄の中の大英雄、間違いなく強敵だ。雁夜の心を不安が渦巻いた。彼の動揺に気づいたのかシールダーが励ます。
『心配いりませんよ、マスター。アーサー王と戦うのはこれが初めてじゃありませんし、これが聖杯戦争である以上真っ向から一人で戦うことしか出来ないわけではないですしね。』
『ところでマスター、そろそろ戦況が動きそうですよ』
拮抗した戦場のさなか、示し合わせたかのように両者は距離をとった。するとセイバーは剣に纏わせていた結界をついに解いた。なるほど、ランサーの持つ武器のうちの赤い槍は「
(なんてこと、あれはエクスカリバーじゃない!セクエンスだ!まっとうな状態で召喚されたアルトリアがエクスカリバーを持ってきていないはずがない。ディルムッドもモラルタを持ってきてるようだし…もしかしてこの聖杯戦争、霊器の規模がまるで違うのか?)
しかし、ランサーも当然このタイミングを逃すほど甘くない。左手に逆手で持った剣を腰だめに構えた。真名解放の一撃を狙っているとみて間違いない。
『マスター、もう少し情報が欲しくなりましたのでもう少し近づきます、よろしいですか?』
『ああ、任せた。気を付けて行ってくれ。』
一気にシールダーが戦場近くのコンテナに向かい跳躍すると同時、唐突に夜空に雷鳴が轟いた。夜闇を切り裂き、神牛に引かれた豪壮な作りの戦車が空を飛んでいた。
シールダーが戦場近くに降り立つのに一足遅れ、戦車に乗った大男が戦場に降り立ち声を張り上げた。
「双方、剣を収めよ!王の御前であるぞ!」
(なんてこった、知らないサーヴァントだ!うーん、大体のサーヴァントは見ればわかるなんて大口をたたいちゃったけど、聖杯戦争は分からないもんだな…)
シールダーは頭を抱えた。彼を見ても真名が分からないのだ。しかし――
「我が名は征服王イスカンダル!此度の聖杯戦争においてはライダーのクラスで現界した!」
(イスカンダルってことはアレキサンダー!?アレがああなるっていうのか!?)
――混迷の夜は、まだ始まったばかりである――
シールダーがセイバーとライダーに微妙な反応をしているのには一応設定があるのですが、ネタバレせずに説明するのが難しいので説明はもう少し後になると思います。
最早シールダーの正体なんてバレバレかもしれませんが。