Fate/Order Of Zero   作:ブルー歯

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更新が遅れてすまない…
周回に夢中でした、エタらぬようぼちぼち進めます。


第4話 裁定、人理の礎

 セイバーとランサーの戦いをただの一言で収めてみせた偉丈夫は自ら真名を放言した。当然それが本当の情報とは限らない。あえて嘘の情報を流すことで自らの真名を悟らせない戦略であるということも考えられるのだが――

 

「何を考えてやがりますかこの馬鹿はぁぁぁぁぁあ!真名をばらすなん…」

 

 ライダーのマスターの少年、ウェイバー・ベルベットは涙目で叫ぶも巨漢のデコピン一発であえなく気絶してしまった。どうやら彼の真名がイスカンダルであるのは確かなようである。マスターの少年は三騎――視認できる範囲では――もの英霊が集う場で盛大な演技をかませるほど豪傑なたちでないことは誰の目にも明らかであった。ライダーはマスターの少年を黙らせると何事もなかったかのように続けた。

 

「うぬらと矛を交わす前に問うておくべきことがある!うぬらが聖杯にかける願望、我が天地を喰らう大望に比してなお、これをも上回る重さを持つか否か!」

「まあつまり、だ。我が軍門に下り聖杯を余に譲れ!さすればうぬらを朋友として遇し、世界を再び征服する喜びを共に分かち合う所存である!」

 

 この余りに傲慢な発言にいち早く反応したのはセイバーである。彼女もまたライダーに負けぬ王気をもって対応する。

 

「ふざけるのも大概にしてもらおう征服王。私も王たるものとしてその手を取ることはあり得ない!」

「むう、そうか。残念だなぁ…じゃあそちらはどうだ?」

 

 ランサーは明らかな怒りをみせて対応する。

 

「今生のこの槍は主に捧げたもの、その発言は騎士の誓いを侮辱するものと知れ、征服王!」

 

 いつの間にか目を覚ましていたらしいウェイバーは声を荒げた。

 

「おいライダー!むしろ悪化してるじゃないか!そんな誘いに乗るわけがないだろ!?」

「だがなあ、坊主。ものは試しというだろう?」

「ものは試しで真名をばらす奴があるか!?」

 

「――そうか、わたしの聖遺物を奪い聖杯戦争に参加した不届き者は貴様か、ウェイバー・ベルベット!」

 

 青い上質なコートをまとった魔術師が戦場に姿を現した。この男、ケイネス・エルメロイは高潔な魔術師である。彼自身がサーヴァントに敵わないことなどとうに織り込み済みであったが、不届き者を糾弾するのに隠れたままでいるなど我慢できることでは無かったのだ。ウェイバーは彼が最も恐れる魔術師の登場にすっかり委縮してしまった。

 

「おう、貴様がランサーのマスターの魔術師だな。貴様が余を召喚しようとしていたようだが、今の今まで静観を決め込もうとしていた臆病者が余のマスターになろうなど片腹痛いわ!」

 

 ライダーは自身のマスターをかばいケイネスを糾弾するが彼も負けてはいない。

 

「それはこちらの言葉だ、ライダー。ランサーは既に私に忠誠を誓った騎士だ。それに手を出そうなどという無粋な男は我がサーヴァントにふさわしくなかろう?」

 

 ランサーはケイネスの傍まで後退し、彼をいつでも守れる位置に立っていた。その姿は紛れもなく忠実な騎士と懸命なその主君であった。ライダーは意外なケイネスの反応に獰猛な笑みを浮かべた。

 

「ほう、マスターにもなかなかのがいるじゃないか!」

 

「――だが、他にもいるだろう!闇に紛れてのぞき見をしている者が!あの見事な二騎の打ち合いの音に惹かれた英雄が余一人などということはあるまい!」

 

「聖杯に招かれし英雄ども!今、ここに集え!なおも姿を見せぬ臆病者は征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れ!」

 

 

 

 

 相も変わらずコンテナの上から状況を俯瞰していたシールダーはこの言葉にピクリと反応した。その感情は読みにくいが、あえて表現するなら「怒り」か。そう、例えるならば友を、仲間を侮辱されたかのような。

 

『ふむ、俺自身はどうでもいい小物ですが、()()()()()()()()以上は俺がその誹りを受ける訳にはいきません。マスター、よろしいですか?』

『ああ、自由に動いて構わない。万が一、時臣の…いや、なんでもない。頼んだぞ。』

『ありがとうございます、マスター。この機に乗じてキャスターの干渉を受ける可能性もあるので念話は切らせていただきますね。』

 

 シールダーは雁夜との念話を切ると、盾を持ったまま軽々とライダーの近くへと跳び、その場に集う英霊たちに負けず劣らぬ覇気を放った。

 

「ふはははは!やはりなかなか豪胆なのもいるじゃないか!やはり英雄が集う戦、こうでなくては!」

 

 シールダーがそれに対し口を開きかけた途端、匂い立つほどの神気が、まるで心臓を握られているかのような王気がその場に満ちた。同時、黄金の粒子が集まり、この場に集った英雄たちの頭上、街灯の上に黄金の英雄が顕現した。

 

「ほう。王を自称する不遜な雑種二匹を間引きに来てみれば…クク、面白いサーヴァントが居るではないか。人理の守護者、星見の者よ、なぜ貴様がこのような場に居るのか、我が手ずから裁定してやろうではないか!」

「まさか王様がここに来てるなんてね、驚いたよ。王様が聖杯なんて欲しがるとは思えないけど、新しい酒器でも欲しくなったの?」

 

 シールダーは涼しい顔をして黄金の王に言葉を返す。面識があるらしい二人の会話に周囲は驚愕を隠せない。

 

「フハハハハハハハハ!なかなか言うではないか、雑種!流石は我が共に戦うことを許した数少ない者の一人だ!だがそれとこれとは話が別、さあ、貴様がその盾を持つならばこの程度、物の数ではあるまい?」

 

 原初の王たる彼の背後に黄金の波紋が現れ、そこから魔剣、聖槍、あるいは宝斧、圧倒的な神秘を纏う武器の数々が顔を出した。その数なんと三十以上。そのどれもが例外なく宝具、シールダーを除く面々は驚愕をあらわにする。しかし彼らも古今無双の英雄、一瞬で判断し、彼らのマスターを連れその場から離脱することを選択した。

 

 「邪魔者は消えた、では行くぞ?」

 

 瞬間、すべての宝具が一度に射出された。すべてが致命の一撃、並の英雄にはこれをしのぎ切ることさえ不可能な規格外の攻撃法。

 

 ――だが生憎、シールダーはその攻撃方法を知っている。そして彼は今、並の英雄とは一線を画する存在。

 

 気合一閃、盾を振るって彼に当たる射線のものを叩き落しながら軽口を叩く。

 

「俺が言うのも変な話だけど、王様をアーチャーで呼ぶなんて大したマスターだね。キャスターでは来てくれないだろうけどセイバーあたりで呼べば良かったのに。」

「ふん、時臣のやつも今頃そう思っているだろうよ。だが、我にはアーチャーのクラスが最も似合いだ、それが分からぬ貴様ではあるまい?」

「ゴージャスなんてのも、悪くないかもよッ!」

 

 椅子に座りながらでもしているような雑談、しかしそうしてる間にも黄金の波紋は元の倍はあろうかという数に増えて攻勢を増し、シールダーはただの一度もその身に傷をつけず、それどころか明らかに接近している。両者劣らぬ攻防、それはまるで神話の戦いだ。

 

 シールダーが鋭く息を吐き大きく跳躍し、盾を構えてアーチャーに向かって突撃する。彼の正面に開いた波紋ではその勢いを止めることは敵わない。アーチャーは大盾の一撃を真正面から受け叩き落され、あっけなく幕切れとなるかに見えた。

 

 

 

 しかし、彼こそ原初の英雄、単純な一撃で沈むことなど当然あり得ない。彼は黄金の双剣を交差させ、確かにシールダーの攻撃を受け止めていた。そのまま腕を振るってシールダーを弾き飛ばす。

 

「ぐっ…終末剣まで出すの!?見せてもらったことはあっても、使ってるところは見たことないのに!」

「たわけ、使う機会がなかっただけだ!これの一撃はエアには及ばぬが相当に強烈だ、そのままで防げると思うな?」

 

 アーチャーが双剣の柄を合わせると終末を告げる剣は弓へと変わる。シールダーは接近戦に持ち込むのはもはや間に合わないと判断したのか体勢を立て直すと盾を正面に構えた。

 

「安心しろ、世界を洗い流すことはすまい。だが、この程度受けきれなければ気が変わってしまうかもしれぬぞ?」

 

 アーチャーは喜悦でその端正な顔を歪め、弦の無い奇形の弓に魔力を込める。

 

「簡単に言ってくれるよ、全く…」

 

 口ではそう言いながらも、シールダーの表情に不安の色はない。両者の纏う空気が変わり、暴力的なまでの魔力が吹き荒れる。

 

 開幕はどちらからともつかず。

 

 

「いざ仰げ!終末齎す原始の禍!」

 

「宝具限定展開、始まりは未だ此処に!」

 

 

 

 ――旧き伝説と始まりの記憶が

 

穢土没す終末の雨(エンキ)!」

 

宝具限定展開/人理の礎(ロード・カルデアス)!」

 

 

 激突する――




エンキの日本語名はオリジナルです。
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