ランクにしてAランク。至高の一矢をシールダーの結界は、果たして完璧に防ぎ切った。
「フハハハハハハハハ!この程度では完全な真名開帳さえ引き出せんか!良い、今宵は此処までとしよう、楽しみは取っておくのも悪くない。先ほどから時臣もうるさいしな!」
「その様子じゃ令呪さえまともに効かないんだ?大変だね、今回の王様のマスターも。」
「ふん、貴様ほどではなかろう?」
アーチャーはそのまま霊体化し姿を消した。シールダーもまた姿を消し一人ごちた。
(王様のせいでちょっと魔力を使いすぎた…マスターの本格的な治療を早めなきゃまずいかもしれない)
しかし、混迷の夜明けは未だ遠い。
シールダーは間桐邸に着くと、すぐに雁夜のもとへと向かった。
「マスター、いきなりですが明日マスターの治療を行おうと思います。」
雁夜はせき込んだ。帰ってきたシールダーをねぎらおうとするなりこれだ。
「ち、治療だって!?そんなことできるのか?」
「ええ、俺の宝具が正常に機能していれば可能です。しかし、この聖杯戦争なにか普通ではありません。必ず成功するとまでは言い切れませんが…」
「い、いや、十分だけど、宝具って…」
「ああ、魔力のことなら心配はいりません、こちらで何とかします。ですが一応、マスターは休息をとって魔力の回復に努めてください。」
雁夜はシールダーの言葉に素直に従い、蟲蔵とは別に工房として誂えられた部屋を後にした。シールダーはそれを見送ると単身蟲蔵に向かう。
「なあ、居るんだろ、間桐臓硯。少し話をしよう。」
彼は一見何もない場所に話しかけたが、その視線の先で蟲たちが凝集し老翁の姿をなした。
「呵々々、気づかれておったか。この老いぼれに何の用ですかな?」
「取り繕う必要はないよ、マキリ。単刀直入に問おう、君の信念はどこにある?それさえもとうに忘れ果てた妄執の化身でしかないというなら、君には消えてもらうしかない。」
「答えてみろ、マキリ!あちらを選ばなかったお前なら、あるいは…」
間桐臓硯は、いやマキリ・ゾォルケンは驚愕した。こいつは一体何を知っている?
――だが、
「決まっている!儂が、私がこうまでして生き延びた理由など…」
何だ?何故自分はこうまでして生き延びた?何故目の前の男はそんな眼で私を見る?
五百年という期間は、理想に溢れた一人の青年を腐らせるにあまりに長すぎた。
「そう、なら仕方ない。マスターの願いのためだ、その妄執、ここで幕としよう。」
「何を…」
瞬間、シールダーが持っていた盾が光を放つ。放たれた三本の光筋が消えると、既にそこには盾はなく代わりに一本の巨大な旗が握られていた。
「洗礼詠唱が使えれば良かったんだけどね。十字教に連なる者ではないからってのもあるけど、何故か彼らとつながらないんだ。だから…」
向けられた旗の先から巻き起こった黒い炎は瞬く間にマキリを構成する蟲を焼き尽くした。この炎は魂すら焼き尽くす憎悪の火、そこに本体が居ようが居まいがもはや些事。五百年もの長きを生きた老獪な魔術師、最期の瞬間に彼の脳裏に浮かんだのは、ただ、かつて恋した白き少女の面影のみであった。
しばしの黙禱を捧げたのち、シールダーは主の死によって絶えた虫の死骸の内より一人の少女を救い上げた。彼女の開かれた瞳に光はなく、くすんだ絶望と諦観のみをたたえていた。何か口を開きかけたシールダーであったが、首を振ると魔術を行使し彼女を眠らせ蟲蔵から上がっていった。
間桐臓硯、彼はこの第四次聖杯戦争を本命としてはいなかった。だが、御三家の一角そのものたる彼が大聖杯の維持のために担っていた役割は第四次聖杯戦争においては決して小さなものではない。そう、彼は百年戦争以前より体を取り換え生き続ける狂気の魔術師の聖杯戦争への干渉を牽制していたのである。
「アハハハハハハハ!あの悪人擬きが死んじゃったかあ!キハッ、キハハハハ!あそこにはジルも召喚されてるようだし大チャンス!
歪んだ少女は嗤う。思惑は絡み合い自体は混迷を深めていく――
シールダー「この聖杯戦争、普通じゃない(キリッ)」
普通の聖杯戦争とは何ぞや(哲学)
最後に出てきた危ない人に関してですが、Fakeの描写からすると第四次のタイミングではまだあの身体ではない可能性が高いんですが、それ以前についての言及がないのでこの世界ではタイミングが少しずれているということでご容赦ください。