彼は歩みを決して止めなかった。人類史にかつてない難行、焼却された人類史を修復する、
間桐雁夜は目を覚ました。今のは当然、シールダーの記憶。未来のこととも、過去のこととも、この世界のことともつかぬ、人類史に残らぬ記録。そう、彼の名は藤丸立香。人に知られず、世界に知られぬ偉業。彼は決して英霊足り得ない。だが、カルデアに集った者たちが彼を忘れることこそあり得ない。人の歩みが世界に跡を残し続ける限りあのカルデアは逆説的にどの世界においても存在したと言える。そう、カルデアの代表として、あるいはカルデアそのものとして、彼の召喚は成ったのだ。
「ああ、マスター目を覚ましたのですね。」
「なあ、シールダー。お前は…」
ああ、と。納得したようにシールダーは言った。
「なるほど。俺の記憶を見たのですねマスター。俺自身は非力な身なれど此度の召喚では誰にも劣らぬ大英雄たると自賛しましょう…と言いたいところなのですが、マスター。もしかすると、あなたが戦う理由はもはやないかもしれません。」
「…え?」
「間桐臓硯は既にこの手で排し、あの少女は蟲蔵から逃がしました。マスター、あなたが苦しむ理由はもはやないのです。彼女の精神が重大なダメージを受けているのは確かですが、それを聖杯に望むべきでもないでしょうし…」
雁夜は瞠目した。彼の望みは桜をあの地獄から救い出すことのみ。ならばこの聖杯戦争に参加する意味は既にない?だが。
「すまない、シールダー。俺はまだ降りるわけにはいかないんだ。時臣と真っ向から戦い話をするのが桜ちゃんのためにできることだと思うし…」
それに、と続ける。
「俺の声に応えてくれたシールダーがいるんだ。お前のような英雄がこんなところに来るなんてきっと意味がある。それを俺が見届けないわけにはいかないだろ?」
それを聞いてシールダーは微笑んだ。
「なるほど、俺は素晴らしいマスターの下に呼ばれたようですね。改めて名乗らせていただきます。俺の真名は藤丸立香。人理の砦たるカルデアのマスターにして今は責任あるシールダー。我らが盾はあなたの敵を打ち払い、あなたを守り切ると誓いましょう。」
「え、英霊の宝具を呼びだす宝具だって!?」
「ええ、マスター。俺自身、藤丸立香の宝具の一つは共に戦った英霊たちとの縁をたどり、彼らの力を借り受けるものです。ランクは下がりますが真名解放にも問題はない、のですが…」
「現状縁ある英霊たちの内、悪の属性を持つ英霊たちとの縁しかたどれないのです。別に属性が悪だからと言って悪い人たちという訳ではないのですが、おそらくこの聖杯、まともな物ではないということでしょうね。」
雁夜とて御三家に名を連ねる魔術師の端くれ。聖杯に関する知識はある程度詰め込まれている。そう、それが意味するのはつまり、聖杯の汚染。
「おい、シールダー!俺は今から過去の聖杯戦争の記録を調べる、お前は桜ちゃんの面倒を」
「その前に、マスター。あなたの治療をしなければ。ここから先聖杯戦争を戦い抜くならば、虫の影響を取り除いたのみでは多分足りません。」
「あ、ああ、そうか。すまない、シールダー。えっと、宝具を使うんだよな?」
「ええ、本当は『
「大丈夫です、苦しいとは思いますがすぐに助けます。絶対に死ぬことはないのでご安心を。」
雁夜は冷や汗を流した。あのシールダーがあそこでの表現をする時点でどう考えても大丈夫ではない。しかし、シールダーはもう床に盾を置き既に準備に取り掛かっている。雁夜がなにか言いかけた時にはすでに遅い。
「サークル構築、宝具展開。絆をここに。」
ここで彼に力を貸すは虚構世界で不夜城に座した女帝。その声は明らかに一人の者ではない。
『憎むべきはそなたならず。そなたの中の罪。我が法は、その罪の全てを痛苦の腕で引きずり出す!』
『告密羅織経!』
最後殺る気にしか見えない…(驚愕)
切るところが半端すぎるのがいけないんですね。