Fate/Order Of Zero   作:ブルー歯

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更新が遅れて大変申し訳ないです…!リアルが忙しすぎてドッタンバッタンしてました。
これからはそれなりに更新していくつもりなのです。

前回注意し忘れましたが1.5部の微ネタバレがあります、ご注意ください。


第7話 潜む悪意

 「告密羅織経(こくみつらしょくけい)」即ち、ある女帝による拷問の具現。この宝具を使うものは相手に対し拷問する者となる。拷問とは相手を生と死の狭間に叩き込む技術に他ならない。ならば、相手が既に生と死の狭間に居るならば拷問以前に生に傾ける必要があるのは必定。そう、シールダーはこの宝具を強引に利用し雁夜を生の側に傾けたのだ。

 

「ぐ…う、もう終わったのか?」

「ええ、あまりに強引な手を使いましたが、その甲斐あって成功です。魔力回路の方の働きも落ちてはいないでしょう。」

「そうか、ありがとう、シールダー。俺は…」

 

 何かを言おうとする雁夜を遮ってシールダーは続けた。

 

「いえ、マスター。その先は必要ありません。マスター、あなたは桜と話をしてきてください。あなたの望みを、あの子の望みを、ゆっくり話し合って欲しいのです。それがどう転ぼうと俺はあなたの望むままに働きましょう。」

「でも…いや、分かった。重ね重ねすまないな、シールダー。」

 

 

 桜の下に向かった雁夜を見送ると、シールダーは霊体化しそのまま間桐邸を離れた。この数日に渡って取りざたされている殺人及び誘拐事件。この異様な一連の事件にサーヴァントが関わっていない筈がない。消去法から言って恐らくキャスターかバーサーカー。しかし、シールダーは下手人に既に目をつけていた。

 

(多分犯人はキャスター、それも多分あの人。今更生前の所業には何も言うつもりはないけど、稀人となった俺たちが無辜の人々に手を出すのを見過ごすわけにはいかない。マスターもそんな地獄を知る必要はない。)

 

シールダーが魔力の痕跡をたどりながら進むと仄暗い水路の中に至った。そこに満ちる空気は酷く淀み、平穏な世界にあってはならない濃密な死と痛みの気配を漂わせていた。

 

そこにあるには地獄だった。生きたまま弄ばれ、芸術の名のもとにその尊い尊厳を汚された子供。それも、一人や二人ではない。間違いない、これを為すキャスターなどあの男を置いて他にあるまい。

 

「ジル・ド・レェか…!…ックソ!」

 

 彼らの身体と心を癒すことは今の彼には不可能、否、「修補すべき全ての疵(ペイン・ブレイカー)」を呼べる状態であっても、ランクを下げての真名解放しか不可能な彼の宝具ではどのみち不可能である。ならばできることはただ一つ。

 

「…サークル構築、宝具展開。絆を此処に!」

 

「…『転身火生三昧』」

 

 シールダーの身は龍と化し、愛ゆえに火龍となった女の炎は周囲一帯をすべて焼き尽くした。宝具を解除した彼はそのまま少しの間黙とうをささげると走ってその奥に進んだ。

 

 工房として作り替えられた水路の広がった地点、果たしてキャスターのサーヴァントはそこにいた。異様に大きく飛び出した眼、特徴的な青いローブ。一見意外なほどに鍛えられた腕。世界を、人を、国を憎んだが故に狂い果てた男がそこにいた。

 

「ジル、お前はここで終わりだ。お前への救いはここでは与えられない。」

 

 さしものキャスターも目をむいた。この侵入者は既に自分の真名を把握している。確かに動揺したがキャスターとて凡愚では決してない。彼は元帥の位置にまで至った男、戦況の判断も早い。撤退はすぐには困難、だが相手は一騎、さらに大火力の宝具はここでは解放が難しい。故にキャスターはここでの戦闘を選択した。彼は手元に宝具である魔導書を呼び出し海魔を召喚した。

 そう、適切な判断である。シールダーがたかが凡百の英霊であれば、だが。しかし、侮るなかれ、彼は世界を救った万夫不当の英雄である。

 

「サークル構築、絆を此処に。」

『私はあの忌み嫌った存在(モノ)になってでも、貴様を斃す!』

 

神罰の野猪(アグリオス・メタモルフォーゼ)!』

 

 子どもを守る、それを心に決めた英霊は、その怒りをシールダーを通して発現させた。森の弓兵にも、シールダーにも似合わぬいっそ醜悪なまでの宝具は道を違えた男を引き裂くべく。確かな意思の下にその牙をむいた。

 




もういつの話だよ、という感じですが剣豪アツかったですね。あのBGMで鳥肌が立ちました。

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