まずはお花の水やりかな?
多分、今日も暑くなりそうですし、外のお花には気温が上がってしまう前に早めにお水を上げないといけませんね。
毎日の手入れや水やりは大変ですが、手を掛ければその分だけ、とても綺麗に咲いてくれます。
もっともっと綺麗なお花でお店を彩ることができるようになれば、きっとお客さんも増えてくれるかな?
もちろんコーヒーの味だってどこにも負けないつもりですけど、飲んでもらうためにも、お店の雰囲気作りは大事です。
それでは、ティッピーと手分けしてやってしまいましょう。
「よし。チノは先に中の方を頼んだぞ」
「はい。中の方が終わったら、お手伝いします」
自分とティッピーの分のジョウロにそれぞれ水を汲み、片方をティッピーの頭の上に乗せてあげたところで、それぞれに分担場所へ移動を開始する。
――いつも思うんですが、ティッピーはどうやって頭の上に色んな物を乗せてあんなに器用にバランスが取れているんでしょうか?
ティッピーがぴょんぴょんと飛び跳ねながら移動しているのに、まるで糊で固定してしまったかの様に頭に乗っているジョウロは滑り落ちるわけでも、水を零すこともない。
お店のスペースや家の中の観葉植物やベランダの鉢植えと各場所に飾っているお花へ水を上げ終わったところで、庭に出るとちょうど水やりをしているティッピーを見つけました。
頭の上に乗せているジョウロをすごく器用に傾けてお花や葉っぱに水が掛からないようにあげてます。
それに、プランターの中に生えてる雑草を咥えて引き抜いてますね。
「家の中は終わりましたけど、あとはどこが残ってますか?」
「おぉ早かったの。あとは店の外周りだけじゃ」
「それでは、あとは私がやりますので、おじいちゃんは休んでてください」
「頼んだぞチノ」
飛び込んできたティッピーを両手で抱きとめて、再び頭の定位置へ持って行く。
よし、ティッピーを頭の上に乗せて作業再開です。
やっぱりティッピーが頭の上に乗ってる時の方が調子が出る気がします。
おじいちゃんに倣って雑草を引き抜きながら、最後にお店の前のお花に水を上げ終わったところで完了です。
家に入ってみるとお父さんは料理の下ごしらえをしていたので、私はお洗濯をしましょう。
ココアさんが来るまではお父さんも手伝ってくれてましたが、最近は私とたまにココアさんで交代してやっています。
私はお父さんのことが好きなので特に気にしていませんが、きっとココアさんを気遣ってなんでしょうか?
ココアさんもモカさんだけでなくお兄さんもいるらしいので、男物の服も見慣れているみたいでしたけど、多分、洗われるのは恥ずかしいかもしれませんね。
――念のためにと思い、洗濯機に入れる前に一応ココアさんのスカートや上着のポケットを調べて見ましたが……
まったく、ココアさんは本当に仕方ないココアさんです。
ハンカチ入れっぱなしですよ。それに小さい紙切れが四つ折りになってますね。
何か大切な物かもしれないので、少し見るのは悪い気がしますが、私が見つけなければ一緒にお洗濯されてしまってたんです。
開いてみたら、多分ココアさん自作のかわいらしいウサギの絵が描かれてました。
もしかして、上手く描けたのをとっておこうとポケットに入れて、そのまま忘れてしまったのでしょうか?
私は悲しいくらい下手ッぴで、かわいい絵が描けないので、こればっかりは羨ましい限りです。
あとでココアさんの机の上に戻してあげるとしましょう。
他には……もう何も入ってなさそうですね。
「とりあえず、最初はこれくらいでいいかな?」
あまり入れ過ぎてしまって前みたいに壊れたら大変です。
――洗濯機が回ってる間に、今の内にちょっとだけ夏休みの宿題をしてようかな。
自分の部屋で数学の問題集を開くと、ページ一杯に書かれている計算問題が待ち構えていた。
ですが、問題はありません。
ココアさんの時は答えだけ言われて全然理解できませんでしたが、シャロさんにしっかりと公式の当て方を教えてもらったので、ちゃんと解けるはずです。
「えーと、この問題の解き方は確か……」
よし。覚えています。この調子なら今日の分もすぐに終わらせそうです。
忙しいシャロさんにあまり迷惑を掛けられませんが、できればまた勉強を見てもらいたいな。
多分ココアさんが帰って来たら、千夜さん達と一緒に勉強会をするでしょうし、良かったらその時にでも……
「ん……そろそろお洗濯も終わる頃かな? このくらいにしておきましょう」
開いていたページの最後の問題を解き終わったところで、軽く体を伸ばして一息つく。
なんだかすごく静かな時間を過ごせたような気がします。
カリカリとノートにペンを走らせる音以外は、たまに自分の少ない独り言が出るくらいしかほとんど物音が出てなかったかもしれない。
ココアさんと二人で一緒に勉強をしてる時は、ちょっとでもペンを止めてしまうと、すぐに分からないところはないか。と話しかけられて……
お姉ちゃんぶりたいのはわかりますが、自分の事を棚に上げないでしっかりして欲しいです。
でも……気に掛けてもらえるのは悪い気はしませんが……たまに、というかいつもすごく優しいですし。
「お姉ちゃんになりたいのなら、もう少し妹の気持ちをちゃんと理解しないとダメですね」
マヤさんやメグさんも自分の妹宣言してしまってるし、まるで年下なら誰でもいいみたいにしか見えません。
私はマヤさんやメグさんとは違って、まだまだココアさんをお姉ちゃんと認めたわけじゃないんですからね。
ゆっくりと腰を上げて筆記用具や問題集を片付けてから部屋を出る。
洗濯場に向かう途中で、お父さんとばったりと遭遇しました。
「あぁチノ、ちょうどよかった。洗濯が終わったみたいだから頼む。二回目のは俺が回しても大丈夫なやつだろ?」
「はい。ほとんどお父さんの物です。それではお願いしますね」
洗い終わった物を洗濯機からカゴに移し終わり、廊下に出ると同時に入れ替わりでお父さんが入っていった。
洗濯カゴを両手で抱えながら、再び庭に出ると一気に気温が上がってしまっているのか、真夏らしい暑さと強い日差しに思わず目を塞いでしまった。
直後に一筋の優しい風が私を通り抜けていくと思わず笑みが零れる。
「これなら洗濯物もよく乾きそうですね」
物干し竿に丁寧に一枚一枚干していく。
前みたいにお気に入りのハンカチが飛ばされてしまっては大変なので、しっかりと止めておかないと。
二回目のお洗濯はほとんどお父さんの物なので、タイミングが合えば私がやってあげたいところですが……
もしかしたら…いえ、多分いつの間にか自分でやってしまいそうですね。
昨日だって夜遅くまでバーの仕事をしてたと思いますし、できれば日中はゆっくり休んでいて欲しいのにな……
よし、午後からはリゼさんも来てくれますし、今の内にお買い物を済ませておきましょう。
私は自分の部屋におサイフと携帯を取りに、はお父さんに私と買い物に行くことを伝えに一度別れた後、玄関の前で合流。
「行ってきます」
「入ってらっしゃい。気をつけてな」
お父さんの声に送り出されながら、ティッピーと一緒に近くのスーパーまで出かけて行った。