瓦解都市   作:匿名

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心骸

 

 

 無数の、白い、寂しげな粒が舞い降りる。凍りついた水分は、その微かな重みを風に煽られ、この街の外れ、小高い丘の上に降り注いで。

 粒は、灰に似て。塵芥に塗れ、排気ガスに侵され。不法に焼いた塵の灰が、空から降り注ぐこの街である。雪と灰が似ているだなどと風情の欠片もない思考に陥るのも、仕方がないことなのかもしれない。事実、この雪だって、見た目のように澄み切ったものな訳が無く。汚い雨がふる街には、汚い雪しか降りはしない。汚染された空からは、汚染された粒しか落ちてくることはないのだ、と。

 丘の上に立つ、奇妙な形のモニュメント。剥げ落ちた塗料、僅かに残った、木材に張り付いたそれから察するに、元は朱色の。背中を預け。慣れた悲劇を想いながら、空を見上げる。

 このモニュメントの意味を知るものさえ、この街にはもう、数える程しか残されてはおらず。元は、この地に伝わる宗教施設の、その門だったというモニュメント。その様は、巨大な漢字、文字、記号が、口を開いているようにも見え。二本の足を力強く。放棄されてからどれだけの時がたったかも知れぬこの門は、潜る者さえいなくなった門は。信じる者さえいなくなった聖域は、一体、どれだけの価値があるというのか、と。深い緑色の屋根瓦も、鈴も。時代遅れな建築物の中に、まだ。神は、いるのか、なんて。

 

 忘れてしまったのだ。人は。人々は。かつて、崇め。信じた。心の向く先。その存在を。大きな、大きな存在だった。縋り、見守られ、時にはそう、こうして。忘れられることなど無いように、と。守り続けてきた存在を。遂に、遂には。忘れ去って。

 

 秩序を失くした街を。穴だらけの廃ビルの群、灰色の森。腐り切った権力から逃れた人々、法に依る統治から逃れた人々が、身を寄せ合って暮らす無法地帯。この街の人々の欲、余りにも真っ直ぐに。形作り、積み重なった大遊郭と、その城を中心に。蜘蛛の巣のように広がった歓楽街。公安の犇く搾取の要塞。そして、その。何れにも属さなかった。属せなかった人々。街の全域を見下ろす丘で、棄てられた神の骸と共に。心の骸と共に。暗い暗い空を見る。汚れた雪が降る前から見守り続けてきたであろう、その建物の中に鎮まる神を私一人が思ったところで、何かが変わることも無く。大きな変化を望むでもなく、只々一つ、息を吐いて。

 

 変わってしまった世界。何が転機となったのか、など。やはり、私は。私は、知らず。遠く、遠く。暗い空を行く。鳥でも、雪のそれでもない。小さく輝いたそれを見詰め、見詰めながら。

 

 舞い落ちる雪の欠片を、一粒。汚れたそれを。冷たく揺れる空気と共に。

 

 

 この口に含んだ。

 

 

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