瓦解都市   作:匿名

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光へ

 突撃を繰り返し。岩盤を打ち貫き。掘削機は、尚も。削り、削り、削り、穿ち。自身の世界を強引に。その、回転する刃を振りかざしてはぶつけ、全てを打ち開いて。

 

 散る散る火花を、横目に。掘り進んだ大地を、夜の外気を、遥か、後方に。削りに削って進みに進み。それは、日の隠れる岩戸すら、根の国へ続く岩壁すらも開かんと言わんが如く。

 彼は、進む、進む。自身の求めるは、その先。楽園は、固く閉ざされた岩盤の先にこそあるのだ、と。物言わぬ鉄の塊は。三対の鉄脚、二本の腕を持って洞穴を、掴み、抉り、貫いて。跳ねた小石が窓を打ち、また、跳ねて。ランプの明かりの届かぬ闇にへと消えては、また、新たな石の欠片が跳び。

 

 掘り進む先にあるものは。隔離された幻想。現と異なる未知の世界。

 岩石を以って張り巡らさられた境界。結界。現と幻、その境目を。砕く。削る。開く。

 

 壁を。糸を。掴み、歪ませ、引き千切って。遂に、遂には。

 

 溢れ出す光。

 探しに探し。見つけに見つけ。暴いた幻想の欠片を放っては、また、新たな欠片を求めて走り続けてきた。しかし、これは。今までの欠片とは違う。それは、この街の中枢。この街の裏に巣食った、全ての歪みの元凶。積み重なり変質した、禍々しくも美しい――

 偶然か、必然か。彼が探し求めたものは。彼の乗り手が、最後まで。探し続けたのは、これだったのか、など。

 物を言う口など持たぬ、彼は。語らない、語れない。引き返すという思考さえ持たぬ彼は、やはり。その、光の先へ。歪みの先へと、回転する刃を突き立てる他、選択肢など持ってはおらず。

 

 その、冷たい強化硝子に。眩い光。色取り取り、虹の様に。光り、輝き、鉄の心さえも魅了する――

 

 

 煙を吐き出す。乗せた骸の瞳が、最早、存在さえせぬその瞳が。こころなしか、光を放ったようにさえ見え。エンジン音は、更に強く。鼓動は熱く。熱く。熱気は、掘り上げたばかりの道血の温度を引き上げてゆく。

 

 彼には。壊せずとも。刃が、その光に。届く事など、無かったとしても、また。

 

 光へ。

 

 動きの鈍くなりゆく体を、無理矢理に。彼を押さえつけんとする、巨大な光が放つ未知の力を前にしても、強引に。血の通わぬ無機質の身体。しかし、心まで持たぬと。誰が決めた。誰が決めつけた。

 彼は、彼は。人と同じ。目の前に、指の先に舞い降りた夢へ、希望へと向けて。無謀だと、無理だと知りつつも手を伸ばす……そんな。非合理的で生物的な、美しい欲に目を眩ませ、否。

 眩んだことは、誰よりも。彼自身が理解していて。それでも尚、手を伸ばすだけの、熱く滾る思いを以て。微睡む意識に。揺らぐ身体に、鞭を打って。

 

 彼は。一体の、掘削機は。心ある鉄の獣は。最後まで、最後まで、轟と。

 抱いた、鋼鉄の巨体を以って。その、光へと向けて駆け出した。

 

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