真・綾子†無双   作:はるたか㌠

1 / 14
スタイルを現在書いているものと揃えました。


一・全ての始まり

「おっしゃ!」

 

 あたしは、思わずガッツポーズ。

 レアモンスターを、やっとの思いで倒せたからな。

 報酬もこれでがっぽり、また装備が充実するな。

 ……あ、ゲームの話な。

 しっかし、三國志の時代設定でモンスターハントとはね。

 どっかで見たゲーム同士を組み合わせるとか無茶だけど、案外面白いんだこれが。

 ちなみにあたしの持ちキャラは、孫策。

 バトルジャンキーな設定だけど、これがまた使い勝手いいんだわ。

 ちなみに、あたしがパーティーを組んでいる面子は、趙雲と程イク。

 選んだ訳じゃなく、街の酒場で仲間を募ったらこうなった。

 勿論、コンピュータじゃなくて別のネットユーザが操作している。

 趙雲は文句なしに強いし、程イクはなかなか計略が強烈。

 おかげで、結構経験値もアイテムも稼がせて貰ってるんだ。

 さて、郡太守のところに報告に行こうかね。

 

 ありゃ?

 街に入ったつもりが、見慣れない景色が広がっていた。

 つーか、コントロールが効かない。

 こりゃ、バグったかね?

 セーブしてないからリセットはしたくないんだけど、何をどうやっても全く動きやしない。

 仲間にチャットで話しかけてるんだが、これまた無反応だし。

 リアルな知り合いなら電話なりメールして知らせるんだけど、流石に違うし。

 ……しゃーない、ブチ切りすっか。

 電源ボタンを押して……あれ、反応しない?

 カチカチカチと繰り返し押しても、長押ししてもダメ。

 おいおい、本体故障とかマジ勘弁だぜ?

 まさか、昔の家電みたいに斜め四十五度でチョップするとか……いやいや、余計壊すだけだ。

 なら、コンセント抜いてから、暫く置いて挿し直しかな。

 流石に、電源供給を絶ったら落ちたか。

 と、テレビが自動で地上波に切り替わったな。

 この時間にもなると、深夜アニメが目白押しだ。

 あたしはあんまり興味ないからわからないけど、これも萌えアニメなのか?

 なんか、キャラは女の子ばっかで、男は一人か。

 当然、そいつはモテモテというお約束通りの設定みたいだ。

 ……よく見ると、時代設定が三國志みたいだ。

 ちょうどいい、たまにはこういうのも見てみるか。

 

 続き物だから全部が理解出来た訳じゃないけど、どうやらパラレルワールドの話らしい。

 で、そこに飛ばされた主人公が北郷一刀という高校生。

 現代の知識はあっても、戦乱の世を独自に生き抜けるだけの頭も力もある訳がない。

 で、この武将達に拾われるような格好で生き抜いていく……まぁ、そんな話っぽい。

 

「あらん、ご主人様。今日もいい男ねん」

「どわっ! お、脅かすなよ」

 

 何か、不気味な筋肉達磨が出てきた。

 しかも、オネエ言葉かよ……。

 うげ、何か吐き気がしてきた。

 

「誰が見るのもおぞましい、不気味な変態ですってぇ?」

 

 そこまで言ってねぇ!

 つーか、こっちを見てないか?

 

「ぶるぅぅぅぅぁ!」

 

 げ、飛びかかって来やがった。

 画面の中の筈なのに、妙にリアルっつーか……防衛本能が働いた。

 

「よ、寄るなぁぁぁっ!」

 

 思わず、あたしは化け物の顔面に蹴りを浴びせた。

 確かな手応えと共に……あたしの視界がぼやける。

 さっきとは違う、質の悪い船酔いにでもなった……気分……だ。

 

 

 

「……ん」

 

 目が覚めると、そこは見知らぬ天井……じゃなかった。

 辺り一面、見渡す限りの荒野だった。

 おかしいな、自分の部屋にいた筈なんだが……何処だここ?

 頬をつねっても痛いし、照りつける日差しとか吹き抜ける砂塵とか、リアル過ぎて夢にしちゃ無理がある。

 しかも、あたしの格好がまたおかしい。

 ネコが描かれたパジャマを着ていた筈なのに、どういう訳か弓道衣。

 弓だけじゃなく、ご丁寧に矢束まで転がっているし。

 更には愛用の薙刀まで。

 その他は……手帳にボールペン、百円ライターか。

 スマホも財布も見当たらない。

 ……さて、どうしたものかね。

 

「キャーッ!」

 

 絹を裂くような悲鳴が聞こえた。

 どう考えても夢じゃない以上、これも空耳じゃなさそうだ。

 弓と薙刀を手に、あたしは駆け出す。

 数百メートル先に、争っている集団がいる。

 襲っているのは、人相の悪い男共。

 一方、襲われているのは女性。

 うん、聞かずともどっちに加勢すりゃいいか一目瞭然だな。

 あたしは矢を番え、狙いを定めた。

 人に向けて射るなんて考えもしなかったけど、今はそれどころじゃない。

 どうすれば良かったかなんて、悩むのは後でもいい。

 ちょっと遠いし、相手は動いているけど……最悪、牽制にはなるだろ。

 よし、行けっ!

 放たれた矢は、驀地に賊に向かって飛んでいく。

 

「グヘヘヘ、大人しくしやがれ!」

「こ、この! 放しなさい!」

「無駄だ!……ギャッ!」

 

 今まさに、剣を振り上げたその腕に突き刺さった。

 

「な、何だ?」

「どっから飛んで来やがった?」

 

 右往左往する賊共に向け、あたしは突撃を敢行した。

 弓は置き棄てて、薙刀を手に。

 

「テメェら、何してやがるっ!」

「な、何だテメェ!」

「やかましい!」

 

 賊の一人を、返した刃で殴りつけた。

 

「ぐはっ!」

 

 吹っ飛ぶ賊。

 

「こ、このアマ!」

「やっちまえ!」

「させるかボケ!」

 

 あたしは薙刀を水車のように振り回し、数人まとめて吹っ飛ばしてやった。

 

「ぐへ!」

「ぐわっ!」

 

 残った賊共は、徐々に逃げ腰になり始めた。

 

「こ、こいつ強いぜ!」

「だ、駄目だ! 逃げろ!」

「逃がすかっ!」

 

 義経の八艘跳びじゃないが、あたしは残った賊を順番に打ち倒していく。

 こいつら、面構えは凶暴だけど全然強くない。

 剣の振り方もなっちゃいないし、隙だらけだ。

 全く、大の男が情けないねぇ。

 

「お前で最後かな?」

「ば、ば、化け物か……」

 

 リーダー格らしい男は、矢鱈と剣を振り回している。

 それで、あたしが近付けなくなるとでも思ってるのか?

 

「はっ!」

 

 薙刀を突き出し、剣を巻き上げた。

 

「あ、ああっ!」

「ほい、おしまいっと」

 

 鳩尾を突くと、男は膝を突いてその場に崩れ落ちた。

 

 

 

「ありがとうございました。助かりました」

 

 馬車に乗っていた女性が、頻りに礼を言ってきた。

 身なりからすると、割といいところのお嬢様ってところかな?

 

「いいって。それより、コイツらどうする?」

 

 賊共は全員縛り上げ、転がっていた。

 何人か逃げようとしたので、もう一度眠らせたけどな。

 

「はい。姉が役人をしていますので、使いの者を走らせます」

「そっか。なら、アンタの街まで送ってやるよ」

「宜しいのですか?」

「ああ、寧ろあたしの方からお願いしたいぐらいさ。ちょっと、迷子になったみたいでさ」

「まぁ。面白い御方ですのね、うふふ」

 

 う~ん、笑いも上品だな。

 猫を被った遠坂みたいだな、まるで。

 

「あ、そうそう。助けていただいたのに名乗りもせずに申し訳ありません」

 

 と、女性は居住まいを正した。

 

「私は孫幼台と申します」

「孫さん? なんか、中国人みたいな名前だな」

「中国人……?」

 

 孫さんは、小首を傾げた。

 

「あたしは、美綴綾子」

「ええと、姓が美、(あざな)が綴、名が綾子……ですか?」

「は? 字?」

「違うのですか?」

「姓名って意味なら、美綴が姓、綾子が名だけど」

「変わったお名前ですのね……あ、ごめんなさい」

 

 まぁ、美綴って名字が珍しいのは確かだけどさ。

 でも、何かずれているというか、違和感を感じるんだが。

 

「あの、姓では変ですから、名で呼んでいただけませんか?」

「いいけど……じゃあ、幼台さん?」

「はい。私も、綾子さんとお呼びしますね」

 

 ……とりあえず、街に行ってみるしかないな。

 パソコンか、電話でも借りられれば少なくともあたしのいる場所ぐらいわかるだろうし。

 

 

 

 馬車に揺られる事、数時間。

 道がダートっつーか、まともな道路なんてありゃしないからお尻が痛くて仕方がない。

 幼台さんは、見かけはお嬢様なのに平然としてる。

 

「あ、見えてきましたわ」

 

 行く手に、城壁が見えてきた。

 つーか、でけぇ。

 

「はー。もしかして幼台さん、お姫様だったりする?」

「え? 違いますよ」

「だって、あの城に住んでるんだろ?」

「ええと、城と言いますか……あれ全体が街なんですけど」

 

 でも、どう見ても城壁だし。

 まぁ、確かに日本にはない規模の城だろうけどさ。

 戦国時代の小田原城とか聚楽第とか、そんな感じなのか?

 

純蓮(じゅんれん)!」

 

 城門のところから、一騎が駆け寄ってきた。

 馬上には、褐色の肌をした女性。

 ……いや~、見事なボンキュッボンだわ。

 あたしもスタイルにはそこそこ自信があるつもりだけど、アレには敵わないわ。

 

香蓮(かれん)姉さん!」

 

 へ?

 

「幼台さん。今、姉さんって言った?」

「はい。姉です」

 

 って、全然似てないぞ。

 幼台さんは、どっちかっつーと色白だし。

 あと、何か知らない呼び方してたな。

 

「無事か!」

「はい。綾子さんのお陰で助かりました」

「そうか。……あなたが、純蓮を助けてくれたんだな?」

 

 幼台さんとは違い、荒々しい感じの女性だ。

 言葉だけじゃなく、実際にかなりの遣い手みたいだけどな。

 

「え? ええ、まぁ」

「ありがとう、お陰で妹が無事に戻って来られた。まずは、礼を言わせてくれ」

「あ、はい」

 

 何か、威圧感というか、オーラのある人だな。

 

「私はこの長沙郡太守、孫文台だ」

「孫文台さん……え?」

「どうかしたか?」

 

 孫文台……孫文台……あ。

 

「も、もしかしてあなた、孫堅さん?」

 

 あれ、少しムッとされたような。

 

「……そうだ。初対面で、いきなり字で呼ばれるとは思わなかったが」

「す、すいません。何か、まずかったですか?」

「まぁまぁ、話は中に入ってからにしませんか?」

 

 幼台さんが宥めると、孫堅さんの顔から険しさが消えた。

 

「……そうだな。済まん、妹の恩人にこのような事を」

「い、いえ。あたしこそ、すいませんでした」

「私の事は、文台でいい」

 

 そう言って、孫堅さん……いや、文台さんは馬を返した。

 しかし、孫堅っていや……あの孫堅だろ?

 雰囲気といい腕前といい、自称じゃなくて多分本人なんだと思う。

 でも、まさか女性だったとは。

 ……あれ、何かつい最近どっかでそんな設定を目にしたような。

 

 

 

 幼台さんの言う通り、城壁の中は街になっていた。

 ドラ○エで言うと、メル○ドみたいな感じかな?

 

「幼台様! ご無事で何よりです」

「心配をかけましたね。大丈夫ですから」

 

 道行く人が、親しげに声をかけてくる。

 その一人一人に、丁寧に受け答えする幼台さん。

 先頭を行く文台さんは、ずっと無言だけど。

 

「やっぱり、幼台さんはお姫様じゃんか」

「だから違いますって。ねぇ、姉さん?」

「……ああ」

 

 ぶっきらぼうに、文台さんは応えた。

 

「綾子さん、あまりお気になさらないで下さいね。姉はいつもああなのです」

「よ、余計な事を言うな純蓮!」

 

 なんか……ツンデレ?

 文台さんは振り返る事なく、そのまま城へと入っていく。

 兵が皆、此方に向かって礼を取っている。

 別にあたしに向かってしている訳じゃないんだけど、どうにもこそばゆい。

 

「さ、着きましたわ」

 

 幼台さんに促され、あたしは馬車を降りた。

 

「ふう。やっと自分の足で歩ける」

「うふふ、お辛そうでしたものね」

「何だ。馬車が合わないなら早く言えばいいものを」

「あ、でも結構楽しかったですし」

「そうか。ああ、私に対して敬語は要らんぞ。堅苦しいのは性に合わん」

「え? でも……」

「良いと言えばいいのだ」

 

 文台さん、どうも気は短いみたいだな。

 ま、本人がいいって言うんだし。

 

「じゃあ、そうする。これでいいかい、文台さん?」

「ああ。純蓮、着替えたら参れ」

 

 そう言って、文台さんはスタスタと歩いて行く。

 

「綾子さん、どうぞ此方へ。お疲れでしょう、部屋を用意させますので」

「え? いいの?」

「勿論ですよ。参りましょう」

 

 あたしは幼台さんに連れられ、城内に入った。

 石造りの建物に、中華風の装飾。

 やっぱ、此所は中国なんだな。

 ……あ、一つ確かめておかないと。

 

「幼台さん。もし良かったら教えて欲しいんだけど」

「何ですか?」

「さっきさ、文台さんと別の名前で呼び合っていたじゃない。あれ、何?」

「ああ、真名の事ですか?」

「真名?」

「そうです。真名とは、本人が心を許した証として呼ぶことを許した名前なんです」

「へー。じゃあ、気安く呼んだりしたら?」

「そうですね。姉ならば、即座に斬り捨てている事でしょう」

 

 げ。

 うっかり口にしなくて良かった。

 

「でも、綾子さんも真名をお持ちなのでしょう?」

「……いや、ないから聞いたんだって」

「そうなのですか?」

 幼台さんは、驚いて口に手を当てた。

「うん。親がくれた名前、って意味だったら綾子がそうなるけど」

「…………」

 

 ジッと、幼台さんはあたしを見る。

 

「なら、綾子さんは私や姉に、真名を許した……そういう事ですね」

「そう……なるの?」

「ええ。……わかりました、私の事も真名でお呼び下さい。純蓮、と申します」

「いいの? だってまだあたしが何者かもわかってないだろ?」

「そうかも知れません。でも、感じるんです……綾子さんが、心許せる相手だって」

 

 随分、あっけらかんと言ってくれるなぁ。

 

「幼台さん、そうは言うけど」

「純蓮です」

「いや、だから」

「綾子さん」

 

 幼台さんは、真顔になった。

 

「一度真名を許した相手を、そう呼ばないのは却って失礼に当たりますよ?」

「う……。じ、じゃあ純蓮さん」

「はい」

 

 ニッコリ笑う純蓮さん

 こりゃ敵わないな、諦めてそう割り切る事にしよう。

 これが、あたし達の初めての出会いだった。




新しく登場したオリキャラは後書きで簡単に解説していきます。

◇孫(堅)文台
真名は香蓮(かれん)。
長沙郡太守を務める。
猛将のイメージはそのままながら、妹や娘、仲間への思いは人一倍強い。

◇孫(静)幼台
真名は純蓮(じゅんれん)。
香蓮の実妹。
姉とは違い武の才能は乏しいが、内政の手腕に長ける。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。