「...ねぇ慧音。あの子から何か感じた?」
私の横を飛ぶ慧音に、こんな時だとわかってはいても質問してみる。慧音は人里の守護者と言われるぐらいの実力者の一人だ。それも半人半妖のワーハクタク、二つの血を持つ彼女なら響について何か感じることがあるかもしれないと思い、響と会わせて見たのだけれど。
「そうだな...握手した時、私は響を怖いと思ったな。」
「怖い?」
予想を斜め上に行く返答に思わず聞き返してしまう。
「ああ、なんだろうな。私の妖怪の直感みたいなものが一瞬ではあるが、そう感じた。アリスや魔理沙は感じなかったのか?」
「いえ、特には無いわよ?まぁ一週間いて思うところはあるけれど...見えたわね。」
里の入り口が見えてきた。と、同時におかしな気配も感じられるようになった。
「あれか、確かに不気味だな。」
空から視認できる範囲で10ぐらい、黒い靄のような変な生き物が確かに徘徊していた。赤い点が二つ、そこかしこに動いてるように見えるけど、おそらくあれが目かしら。
「確かに何かを探してるように見えるわね。何か心当たりある?」
「いや、無いな。もし貸本屋の妖魔本が原因なら奴らは人里の中に現れるだろう。」
「つまるところ正体不明ね。どうするの?」
「...とりあえず追い払おう。このまま居られても里の皆が不安がる。」
「わかったわ。」
方針が決まったので私は人形を呼び出す。そういえば上海無しで戦うのは何時以来かしら?少し寂しさを覚えつつも、私はスペルを宣言。慧音もまたスペルを唱えた。
蒼符「博愛の仏蘭西人形」
産霊「ファーストピラミッド」
私たちがスペルを発動したところで彼方が私たちを見た。そして攻撃をされたことに気づいて一斉に飛び上がってきた。戦う気満々ね。
さっさと終わらして、あの子の所に帰ろう。来月はあの子と一緒に人形劇をやらなきゃいけないのだから。
「なんだか難しい本が一杯だね?」
「シャンハーイ?」
アリスさんとけーねさんが出ていった後、僕はする事も無かったので、けーねさんの家の中を物色していた。
「あ、これって皆と勉強するための本かな、読んでみよっか?」
「シャンハーイ!」
トントン
本を机の上に置いたところで誰かがドアをノックしてきた。
「あれ?お客さんかな?」
うーん、とりあえずでてみようか。伝言ぐらいなら僕にだって出来るしね。
ガチャ。
「すいません、今けーねさんは不在で伝言なら僕が...?」
「...。」
目の前に立っていったのは男の人だった。里の人で間違いは無いんだろうけど、何か変だ。目が虚ろで、僕の言葉にも反応してくれないし。なんなんだろ、この人?
「...ミツケタ。」
「え?うぐっ!?」
いきなり男の人の手が伸びてきて、僕の首を思いっきり絞めてきた。ど、どうにかしないと...!
「シャンハーイ!!!」
「ガッ!?」
「げほっ。ありがと上海。と、とにかく逃げよう!」
「シャンハーイ!」
捕まれた時に僕の腕から離れた上海が男に弾幕をぶつけて解放してくれた。僕は男から離れるために肩に上海を乗せてすぐに走り出す。チラッと男の方を見ると男から黒い靄のようなものが抜け出て人型のようなものが出来上がっていた。
「っ!一体何なのコイツらはっ!」
「ふんっ!」
戦い始めてから10分が経ったが、まだ戦闘は終わらない。その理由は、
「...!!」
「またか!?」
慧音が弾幕で吹き飛ばした黒いのが復活しているのだ。最初は仲間を呼んだのかと思ったけれどそうじゃない。倒れた奴が時間をかけて再生し、何度も何度も襲ってきていて、キリがない。
「今の私たちじゃ、打つ手がないわね。」
「そうだな、どうするべきか...。」
「...!!!」
慧音と背中合わせで方針を練っていると、突然奴らの視線が別の方向に向いた。あっちは人里だけれど、何に惹かれてるの?
「なんだ?アイツら一斉に違う方向を見ている?」
「...ミツケタ、ミツケタ!」
「んなっ!?」
言葉が聞こえたと思うとこちらを無視して飛び出していった。人里の上を飛んで行く黒いのは里の人間には目もくれず、ただ真っ直ぐに飛んで行く。
「この方角に何があるというんだ?小鈴の本屋でも阿求の屋敷も無いのに。」
「他にあるとしたら慧音の家ぐらい...!まさか狙いは響!?」
そう思ったところに人里の反対側から火の鳥のような弾幕があがった。あれは確か。
「!?あの弾幕は妹紅か!一度合流しよう!もしかすると一緒かもしれん!」
「わかったわ!」
待ってて響...無事でいて!
「うぅ、まだ追ってきてるよぉ!」
「シャンハーイ!」
角を曲がってアイツの視界から消えようとしても、何故かすぐに追いついてくる。まるで僕がどこにいるかわかってるみたい。
「壁!?もしかして人里の端っこ!?」
「...!!!」
「しまっ!ぐっ!?」
思わず立ち止まってしまう。その瞬間背中から衝撃を受けて僕は壁に思いっきりぶつかり、その場で倒れてしまう。たぶん黒いやつの攻撃だ。
「う...うぅ...。」
あ、上海が近寄ってきて僕を揺らしてるのがわかる。けど、駄目だよ、もう黒いの後ろに来てるから、早く逃げて。ほら、手が伸びてきてる。背中に一撃もらってだんだん視界も悪くなってきてるし、僕死んじゃうのかな?伸びてる手が赤く炎のように燃え上がる幻覚が見えたところで、僕は意識を手放した。
「よっと!」
たまたま人里の近くまで来たから慧音に会おうと思ってたんだが、なんだこの黒いのは。一発ぶん殴ってみたけど再生してくるし。全部燃やしたら復活しなかったけど、二回目から警戒し始めて当たらなくなった。
「シャンハーイ!!!」
「...。」
おまけに、どうにもコイツら私の腕の中の子供を狙ってるようだ。どうして人形が一緒なのかはわからんが助けるべきだろう。後は、
「この子を誰かに預けたいんだがな。とりあえず慧音と合流か。」
さっきの弾幕で私が此処にいるのは慧音に伝わっているはず。そうと決まれば行動開始。といきたかったが、さらに黒いのが飛んでくるのが見えた。
「ちっ、囲まれた。10体もいると厄介だな。どうする?」
黒いのの一体が突っ込んできた。それを半身になってかわすとすぐに次のが突っ込んできて、今度は上に飛び上がってよける、が。
「...ミツケタ、コロス!」
「ぐっ...」
すでに私の上に移動していた奴が弾幕を撃ってきた。こんな至近距離では流石に避けられず、撃ち落とされてしまう。なんとか地面にぶつかる前に態勢を整えるが、連中もまた、すぐに私を囲む。
「ちぃっ。」
私が全力をだせば、私の炎でコイツらはおそらく消えるだろう。最初にこの子供を襲ってたやつは消えたわけだし、跡形もなく吹き飛ばせば倒せることは実証済み。
でも今は子供がそばにいるため、全力をだせば子供も灰となるだろう。
「..,コロスコロス!!!」
連中が一斉に襲いかかってきた!
「こうなりゃとことんやってやる!」
肉弾戦だってできないわけじゃない。拳に炎を纏わせて、向かってくる敵を殴り飛ばしてやる!拳が黒いやつの顔面に入る、直前、
「...!?」
突然、辺り一面が緑にも青にもとれる光に包まれた。
もこたんインしたお!