IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界-   作:陽夜

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第十九話 少年と真実

 

 

 

「…………んっ、あれ……ここは?」

 

 

 保健室のベッドで寝ていた鈴が起きる。

 あれから3時間ほど経ち、もう夕暮れ時だ。

 

 

「あ、一夏……」

 

 

 隣には一夏が安らかな顔で眠っていた。

 

 

「(そうだあたしは……ッ!!)」

 

 

 すぐに思い出す。

 無人機と思われる機体が来てからの事を。

 

 

 そして、一人の少年がいた事を。

 

 

「(龍也は……どこに!?

  いや、そもそもあれは本当に現実なの?実は夢を見てたりしたとかーーー)」

 

 

 焦り始める鈴。

 だがそこに、保健室の扉を開け千冬が入って来る。

 

 

「起きたか、凰」

 

 

「千冬さん……」

 

 

「織斑先生だ」

 

 

 

 

 

「ーーまぁまぁ、そんな固い事言わなくてもいいじゃないですか千冬さん」

 

 

 

 保健室に二人目が入ってくる。

 

 

 鈴の目が驚きで見開かれる。

 

 

「よっ、鈴。怪我は、大丈夫か?」

 

 

「りゅう、や……?」

 

 

「……久しぶりだな、ってもう二回目か」

 

 

「ほん、とうに、龍也なの?」

 

 

「ああ。『橘 龍也』本人ですよーっと」

 

 

 そう言って鈴に向けてピースをする龍也。

 

 

「……そのピース、やめた方がいいぞ」

 

 

「ええ……なんでそんな不評なのかなぁ」

 

 

 千冬に苦言を言われ、頭を落としわかりやすく落ち込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ゆめじゃ、なかった。

  よかった、よかった…………本当に」

 

 

 今目の前の現実に龍也がいる。

 それを確認できた鈴は、泣き出してしまう。

 

 

「鈴……」

 

 

 鈴のベッドへ近づき手前の椅子に腰を下ろす。

 そして、泣いている鈴の頭を撫でる。

 

 

「ああもう、泣くなって。せっかくの感動の再会が台無しだろ?」

 

 

「ぐすっ……ふふっ、何が感動の再会よ、全くもう」

 

 

「ははっ、そうやって笑ってる鈴の方が、俺は好きだぜ?」

 

 

「ふぇっ!?あ、あんた何言って……」

 

 

 ぼふん、と頭から湯気を発するが如く顔を赤くする鈴。

 

 

「え?いや、思ったこと言っただけなんだけど……」

 

 

「そ、そう……ありがと」

 

 

「お、おう」

 

 

 なんだか気まずい雰囲気になる二人。

 

 

「……お前達、そういちゃいちゃするのはいいが、一夏を忘れてないか?」

 

 

「ち、千冬さん!何言ってるんですか!」「そ、そうですよ!なんでこんな奴と!」

「あ、お前言ったな!大体鈴こそ顔は綺麗になっても胸はペチャパイだろお前!」「きーっ!言ってはいけない事を!!!!殺してやる!!!」「わ、馬鹿やめろ!生きてたのにお前が殺すつもりかー!!」

 

 

「はぁ‥‥勘弁してくれ」

 

 

 すると、あまりに大声を出したので隣で寝ていた一夏が起きる。

 

 

「ん、なんだよ……。

 

 あれ、千冬姉に鈴、と…………!?」

 

 

 視界に映るありえないものに飛び起きる。

 

 

「……よっ、一夏。一年と、ちょっと振りだな」

 

 

「な、なななななななっ……!!」

 

 

 驚きのあまり言葉も出ない一夏。

 

 

「ーーゆ、幽霊だな!?」

 

 

「はあ?」「一夏?」「お前は何を言ってるんだ……」

 

 

 左から龍也、鈴、千冬の順番。

 完全に全員に呆れられている。

 

 

「だって、こんなところに、龍也が、いる、はずが……」

 

 

 

 口に出して言ってしまえば、目の前にいるのが誰かすぐに理解した。

 

 

「……どうして」

 

 

「まぁ、簡単に言えば、生きてたってことかな」

 

 

「……そっか、そうかそうか、生きてた、かぁ」

 

 

 

 

 

 布団の上で拳を握りしめ静かに涙をこぼす一夏。

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーよかった、お前が生きていてくれて」

 

 

 

 

「……ったく、お前も泣くんじゃねえよ、一夏」

 

 

 

 よしよしと泣いている一夏の頭を撫でる龍也。

 

 

「へへ、やめろよ、気色悪りぃなぁ」

 

 

「なっ、気色悪いとはなんだ!慰めてやってんのに……!」

 

 

「誰も慰めくれなんて言ってないだろ、大体昔から龍也はお節介が過ぎるんだよ」

 

 

「お、ま、え、が!散々俺達を困らせるような事をしたんだろうが……!」

 

 

「なんだと?」「やんのか?ああ?」

 

 

 睨み合う二人。それを見て鈴が笑う。

 

 

「ーーあははっ、やめなさいって二人とも!一夏は一応怪我人なんだし、ほら」

 

 

「別にこれくらいの怪我……いっつつ……」

 

 

「無理すんなよ。あのゴーレム《無人機》に思いっきり殴られたんだ、無理もない」

 

 

「龍也、お前はあれが何か知っているのか?」

 

 

 千冬が問いかける。

 

 

「ええ、そこらへんの話も含めて詳しくーーー」

 

 

 

『ちょーーっとまったぁ!』

 

 

 

 廊下から声が割り込んでくる。

 そして、声の主は部屋に入ってくる。

 

 

 

 

「やっほー!遅くなっちゃった!色々と準備してたらちょっとね〜」

 

 

「……束」

 

 

「ちーちゃんも久しぶりだねっ!相変わらず物騒な顔は変わってないことで……い、いたい!痛いよちーちゃん!離してぇぇぇぇ!!」

 

 

 アイアンクローで束の頭を締め付ける。

 このままじゃ拉致があかないと踏んだ龍也が助け舟を出す。

 

 

「千冬さん千冬さん、束さんが話せる状況じゃないと話が進みませんよ?」

 

 

「む、それもそうか」

 

 

「いたぁい!……ちょっと!いきなり落とさないでよ!ちーちゃん!」

 

 

 もうっ!とぷんすこ怒っている束。

 

 

 だが、すぐに平常心を取り戻す。

 

 

「ーーーそれで、あの無人機の事と、龍也が生きていること。お前に説明できるんだろうな?束」

 

 

「うん、もちろん。じゃあ何から話そうかなーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ******

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーまず、さっきのは正真正銘の無人機だよ。キミ達の試合途中に乱入するようにプログラムを設定してあったんだ」

 

 

「どうしてそんなこと……」

 

 

「一つは、私自身で白式のデータを取る為。

 

 もう一つは……」

 

 

「俺の為、ですか?」

 

 

 龍也が問いかける。

 

 

「うん。そうだよ。りゅーくんに動いてもらう為に、本来通常通り行われるべきだったクラス対抗戦の試合を潰したの。ごめんね2人とも」

 

 

 束が頭を下げる。

 

 

「いえ、いいんですよ束さん。

 それに、そのお陰でまた龍也にも会えましたし」

 

 

 一夏が束にそう言い、龍也の方をチラッと見る。

 

 

 少し照れくさくなった龍也は目を背けてしまう。

 

 

「それで、龍也のあの『IS』は何なんですか?もしかして専用機とか?」

 

 

 鈴が問いかける。

 

 

 だが、答えはNoだ。

 普通の人間ならばその解釈、考え方で間違いないだろう。しかし、ここにいる他の面々はそうじゃない事を知っている。

 

 

「いや、違うんだ。俺の『力』は正確に言えばISじゃない」

 

 

「え?それってどういうーー」

 

 

『2代目』ダークネスの一夏がすぐに疑問を生じる。

 自分が使っている時は純粋なダークネスの力であったはずだ、と。

 

 

「いっくんが入学したての頃、ドライバーとメモリを預けてもらったよね。

 その時から実は、この『Darkness Sistem』と束さんの『Infinite Stratos』を合体させちゃおうと密かに研究していたのだ!えっへん!」

 

 

 胸を張る束。よく見る光景だが、揺れる胸にまだ慣れない龍也は再び目を背ける。

 

 

「だーくねす……しすてむ?何ですか、それって」

 

 

 鈴の疑問に、束の代わりに一夏が答える。

 

 

「簡単に言えば、ISとは全く無関係ながらISと戦えるくらいの力を持ったモノ、かな。

 龍也が死んだ中学2年の時、この力を持ってた。だから命を落とすようなことになったってことだ」

 

 

「ま、その後は死んだ俺の代わりにお前が『2代目』になったけどな」

 

 

「そう、だったんだ……そんな物があったなんて」

 

 

 やっと過去がつながった。

 

 

 あの日、詳しく聞けないまま日本を去ってしまった鈴。

 何故命を落とすことになったのかの理由、一夏が今まで何をして来たのかなど、疑問が少しずつ解消していく。

 

 

 次に、千冬が声をかける。

 

 

「だがいいのか?ISと混ぜてしまえば色々と不便が生じてしまうのではないか?」

 

 

 ISとしてダークネスがあってしまっては、センサーに引っかかったりやIS反応が出てしまうのではないか。

 これから戦っていく上で不利が生じてしまうのでは、と千冬は考えた。

 

 

「……実はね」

 

 

「束さん、ここからは俺が」

 

 

「……いいの?」

 

 

「はい。俺が話さなくてはいけない事なので」

 

 

 他の三人の方へ身体を向け話始める。

 

 

「まず、鈴以外は俺が権利団体の人間を追っかけてISを潰しに回ってたのは知ってるな?」

 

 

「ああ」「もちろん」「え、なにそれ」

 

 

「龍也はダークネスの力を使って、ISで色々と悪い事をしていた女性達と戦ってたんだ」

 

 

「そのうちの大きな組織の一つが、女性権利団体だ。それを追っかけてた俺は、ヘマをしてやられちまったってわけさ」

 

 

「何してんのよ……まったく」

 

 

「心配かけたな、悪い」

 

 

「だ、誰が心配なんて……///」

 

 

「………それで、結局どうなんだ」

 

 

 千冬が話を戻す。

 

 

「あの後俺は、束さんに拾われた。まぁ助けたってよりは『興味』があったってだけかな。ISを潰しに回ってたから。

 結果から言えば死ぬ事はなくなって、そのまま身を隠す為に束さんの所にいた感じだ」

 

 

「そういうことだからりゅーくんが生きてるんだよ。見つけた時はひどい状態だったけどね〜もう少し遅かったら手遅れだったよ」

 

 

 さらっととんでもないことを言う。

 龍也もあれ、そうだったんだ……といった顔をしている。

 

 

「……そんなこんなで死んじまった俺の後は、ダークネスとなった一夏が俺と同じ事をしていた。

 だが、あの日の夜死んだと思ったはずの俺《ダークネス》がもう一度出てきたと知れば、確実に中の俺を探して殺しに来るはずだ。中身が一夏とも知らずにな」

 

 

「でも素性はバレないはずではないのか?全身装甲だろう?」

 

 

「……実は、数人に顔を見られていたんですよ。あの日の夜、頭の面が割れてしまった時にいた数人に」

 

 

「なっ、大丈夫なのかそれは!?」

 

 

「それが、つい先日の事です。

 

 

 俺の事を嗅ぎ回っていた権利団体の人間達が、全員死にました」

 

 

「………………は?」

 

 

 全員の顔が驚愕に染まる。

 

 

「権利団体の中には、派閥が分かれていたらしい。同じ目的を持つ者同士が色々なところから集まって出来た集合体が、女性権利団体だったんだ」

 

 

「ちなみに私が調べたよ〜。ちょーっとデータを覗いてみたらすぐにわかったからね」

 

 

「俺が敵対していたのは中でも過激派の奴らでね……他の組の人間からしたら大分派手に色々やってて、邪魔に思われたんだろう。

 

 飛行機事故に見せかけて殺された」

 

 

「……ッ」

 

 

 セシリアの両親の列車事故を思い出してしまう一夏。

 

 

「こう言っちゃなんだが、これでようやく俺は身を隠す生活から解放されたってわけだ……。

 最も、表に出て来るのはもう少し後にしようって言ったんだけどな」

 

 

 じーっとジト目で束を見続ける龍也。

 それに対し、吹けていない口笛を吹きながら明後日の方向を向く束。

 

 

「そうか、そうだったのか……」

 

 

 納得する千冬。

 

 

「ちなみに、ちーちゃんの質問に答えるとISの技術を応用することによって戦い方に幅が出るんだよ!試合中に見せた『6枚羽』がそれかな。

 元々ダークネスは、地上格闘戦をメインとして戦うように出来てるっぽいからね。IS相手だと空の上とかに飛ばれちゃうと何も出来ないんだよー

 

 そ、れ、に!ダークネスをISにしたのはちゃんと理由があるんだよねっ!」

 

 

「そこの所は俺も聞いてないけど、なんでなんだ?」

 

 

「むふふーそれは後のお楽しみってことで!」

 

 

「なんだよそれ、ここまできて今更隠すのか……」

 

 

 げんなりしてしまう龍也。

 今回の襲撃だけで十分驚いたのに、まだ何かあるのかと思う。

 

 

「……なら、これで龍也は普通の生活に戻れるのか?」

 

 

「うん。りゅーくんもそろそろ社会復帰してもらうのだ!」

 

 

「お前達が、俺の為に復讐をしようとしてくれたのは、わかってる。でも、もういいんだ。今まで悪かったな」

 

 

 頭を下げる。

 自分の1人の存在が2人の人生を大きく変えてしまったのだ。取り返しのつかないことをしたのはわかっていた。

 

 

「……いや、いいんだ。俺もダークネスになれたおかげで、色々なものを得られた。

 それに、また鈴とも出会えた」

 

 

「あたしも一緖。結局あんたが生きてたんなら、もう復讐なんてする必要ないしね」

 

 

 なんか疲れちゃったぁ、とベッドに横になる鈴。

 

 

「お前ら………もう少しなんかあるだろ」

 

 

 苦笑する龍也。

 自分も2人を試すなどと言っておいて結局はこうして出て来てしまっているのだ。格好もついたものじゃない。

 

 

「それで、今後の龍也はどうするのだ。学校に通わせるにも、何処にーー」

 

 

「心配はいらないよちーちゃん!

 この『大天災』束さんが、既に手を回しているのだ!」

 

 

「え?それってどこですか?」

 

 

 まだ話を聞いていない龍也。

 自分が日常に戻る為の第一歩はどこなのか。

 

 

「んふふ、それはねーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ朝のSHRを始めますね。

  織斑君、号令をお願いします」

 

 

「はい。起立!……礼!」

 

 

 クラス代表兼委員の一夏が声をかけるとおはようございまーすとクラスから朝の挨拶の声が上がる。

 そのままそれぞれ席へ着く。

 

 

 そして担任の千冬から告げられる。

 

 

「今日は朝の連絡は無いが、一つ重大発表がある。

 

 

 

 橘、入って来い」

 

 

 前の扉が開く。

 入って来たのは『男子用の制服を着た人物』

 

 

 教壇の前に立ち生徒達へと顔を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日からこの1組に入ることになった、『橘 龍也』です。『2人目の男性操縦者』ということでここに来ました。

 ………仲良くしてくれると嬉しいです、はい」

 

 

「そして、今この瞬間から橘の存在が世界に発表されることになった。

 ちなみにこいつは『篠ノ之束のお気に入り』だ。下手に手を出すようなら消されかねないからな、注意しておくように」

 

 

 クラスが静まり返る。

 何も反応がないことに不安になる龍也。

 

 

「(あ、あれ!?なんかマズったか!?何、もしかして俺顔になんか付いてる!?)」

 

 

 目の前には一夏以外全員女子しかいない。

 慣れない環境への焦りから意味のわからないことを思い浮かべ自分の顔をペタペタ触り確認する。

 

 

 すると……

 

 

「き、」

 

 

「き?」

 

 

「「「きゃぁぁぁぁぁ!!!!」」」

 

 

「う、うがぁあっ!み、耳が……」

 

 

「2人目!?2人目の男の子!?」「織斑君と違ったタイプのイケメンきたー!」「ちょっと可愛いかも……」

 

 

「な、なんだぁ!?いきなり!?」

 

 

「……馬鹿どもが騒いでるだけだ、気にするな橘」

 

 

 何度目かわからないため息をつく千冬。

 

 

「は、はは……そうですか」

 

 

 これからの学園生活大丈夫かなぁ、と不安になる龍也だった。

 

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