IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界- 作:陽夜
ドアをノックする一夏。
「ーーーオルコットさん?いる?」
数秒待つとドアが開き、中からセシリアが顔を出す。
「はい?どうされましたか……って貴方は……!」
「ど、どうも橘です……何をそんなに驚いてるの?」
「い、いえ、何でもありませんわ、こちらの話です。(び、びっくりしましたわ、幽霊ではありませんわよね)
それで、何かご用でしょうか?」
「オルコットさんに、龍也の事話さなきゃなって思って。一緒に食事でもどうかな?」
「……わかりましたわ、少々お待ちになってください」
扉を閉め一旦部屋の奥へ戻るセシリア。
数分待つと軽く身支度を終えたセシリアが再び出てくる。
「お待たせしました、行きましょう」
「ここでいいか」
各自食事を持ち、食堂の端の方へ座る四人。
「改めて、橘 龍也だ。一夏とは中学からの仲なんだ」
「セシリア・オルコットですわ。イギリスの代表候補生をしております。
そ、それで、あの……その」
聞き辛そうに躊躇う。
どう話を切り出していいのか迷っているのだ。
だが、そんな事を一切気にしない龍也はすぐに、
「一夏から話を聞いているんだろう?」
「ッ……はい」
「その話に出てきた『龍也』ってのは、俺のことで間違いないぞ」
「では、今生きていらしているのは、死んではいなかったと?」
「そりゃ死んでたら今ここにいないだろうよ」
「そう、でしたか……」
死んだはずの人間が生きていた。
気になることが多少あるが、自分が全てを知る立場ではないと判断し聞くことを選別する。
「では、一つよろしいですか?」
「ああ、いいぞ」
「今日の授業で使用していたIS、あれは織斑さんの話していた『ダークネス』と呼ばれる力ではありませんか?それと『仮面ライダー』と世に広まり伝わる噂も。
先日のクラス対抗戦の日の乱入者とも、形状が似ていたもので」
「んー」
少し返答を考える龍也。
だが、セシリアはダークネスの存在を知っている。クラス対抗戦の日も自分の姿を認識していた。話しても問題ないだろうと判断する。
「そうだ、あの日試合に割り込んだのは俺だし、『黒龍』は正式にはISじゃない。
『仮面ライダー』って数年前から噂になってるのも、多分俺だろうな」
「やはり……」
「クラスのみんなを騙して悪いとは思うけど、話すわけにはいかないんだ。
変に『ダークネス』っていう異質な存在が広まると、それだけで危険に晒される可能性もある」
世界では都市伝説と言われているが、一部の悪質な人間たちはその存在が現実であると知っている。
学園内部から情報が漏れ、知れ渡ってしまえば、無関係な一般生徒が狙われる可能性もあることはセシリアも即座に理解できた。
「わかりましたわ、では、他言無用と言うことで」
「そうしてくれると助かる。箒もな」
「ああ、わかっているさ」
「あら、箒さんをファーストネームでお呼びしているのでしたら、わたくしもセシリアで構いませんわ」
「そうか?ならそうさせてもらおうかな。俺も龍也でいい」
「はい、龍也さん」
友好が深まり、少し笑みを浮かべ合う2人。
セシリアと龍也、互いに名前で呼ぶことを許したが、そうなるとここにいるもう1人はーー
「…………ああ、味噌汁は美味しいなぁ」
「ど、どうしたんだよ一夏、そんな死んだ目して味噌汁啜って」
「いや、俺はオルコットさん呼びなのに龍也は打ち解けるのが早いなって思ってさ……はは」
「ふふ、『一夏さん』もファーストネームで呼んで差し上げてもよろしくてよ。
ですが、それだと……」
「な、なんだ、何故私を見るセシリア」
「……いえ、なんでもありませんわ」
言い終えると同時に紅茶を口に含む。
何かを暗示していたような視線で箒をチラッと見たが、どういう意味だったのかはセシリアにしかわからないだろう。特にこの場の人達では。
「じゃあ、セシリア?」
「ええ、それで構いませんわ」
「なんかむず痒いな、改めてよろしく」
少しの気恥ずかしさを感じつつも、セシリアと一夏も名前を呼び合う。
話が一旦落ち着いた所で、セシリアが別の話題を振る。
「それと、龍也さんにもう一つ聞きたいことがありましたわ」
「ん?まだ何かあったか?」
食事をするのを再開した龍也は、水を口に含む。
「一夏さんや鈴さん達との事ではないのですが、そうですね、
ーーー本音さんとのことについて、お聞きしたいなと」
「ぶほぉっ!!」「うわっ!お前汚ねえぞ!」「げほっ、す、すまん一夏……ちょ、ちょっと!?セシリアさん!?」「何をやっているんだお前達!?これで拭け!」「あ、ありがとう箒……」
「そ、そこまで動揺されると此方としても少し困ってしまいますわ……」
グラスを傾け、上を向いている時にむせてしまい水を吹き出してしまう。
その為、隣に座っていた一夏に被害がかかった。
「わ、悪い、つい。それで……本音ちゃんのことだったか?」
「俺も気になってたんだよ。中学の頃に会ったって言ってたけど、まさか『ダークネス』絡みか?」
「い、いや、そうじゃないんだ。その、えっと……」
「なんだ」「早く言えよ」「言い辛い事でしたら別に無理にとは言いませんわ」
優柔不断な龍也に多少イラっとしてしまったり、久しぶりに友人を揶揄うチャンスだと急かしたり、気遣うような発言をしたりと三者三様。
「…………あー、簡単に言えば、本音ちゃんがナンパされてるのを、俺が割り込んでナンパした、ってことになるのかな?」
「「「…………え?」」」
「あはは……」
「……お前、ナンパはしてないって言ってただろ」
「い、いや!そう言う目的で声かけたわけじゃないんだって!本当に!」
「じゃあ何故そうなった」
「………本音ちゃんが嫌がってそうだったから助けようとしたら、絡んでたヤンキーに『おい、この子は今俺達がお誘いしてんだから中坊は引っ込んでな』って言われてつい、な?手が出ちゃって……てへ☆」
「「「…………」」」
「な、なんだよ、別にいいだろ!俺だって若かったんだしよ!今じゃ手は出さねえよ!」
「そ、それで、結局その後はどうなったのだ、布仏とは」
「確か……本音ちゃんは落としたキーホルダーを探してたはずなんだ、大事に持ってたっていう。
その場所が公園の中で、必死に探してる時に声かけられたって言ってた」
「結局俺も手伝って探して、ちょっとしたら見つかったから帰ろうとしたんだけど、お礼するって言われてそのまま街をぶらぶらしただけだよ」
「なんだよ、結局ただのナンパじゃねえか」
「意外と策士ですのね、龍也さんは」
「ふん、姑息な手を使いおって。男ならもっと堂々と誘うべきだろう」
「ああ……もうそれでいいよ、うん」
ボロクソに言われげっそりしてしまう龍也。
しかし、勘のいいセシリアは一つ思う事があった。
「(本音さんがあの様子では、鈴さんは苦労しそうですわね。最も、本人は気づいていないようでしたが)」
他人の感情に敏感なセシリア。
本音も鈴もまだ『好意』にはなっていないが、互いに気づくのも時間の問題ではないかと推測を立てる。
鈴に至ってはあの場で怒りを撒き散らし、教室を後にしたのだ。そういう事ではないのかと予想はできる。
「(龍也さんとは一年近く一夏さんや鈴さんは会わず、さらに本音さんはそれ以上も会っていないと。
それでしたら、まだ気持ちの整理はまだついていないのでしょう)」
そういえば、朝のSHRで篠ノ之博士のお気に入りであるとも言われていた。きっと何かしらの理由で世話になっていたのだろう。
もし、博士にそういう感情があればお二人にとってこのブランクのある数年間は厳しいものにーーーと、謎の三角関係が出来上がる構図を勝手に妄想するのだが、それが後々間違いではなくなることをまだセシリアは知らない。