IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界-   作:陽夜

31 / 54
番外編1の続きです。
時系列が度々変化します、ご理解の上読んでいただければと。


番外編2 〜失われた命、2人の親友〜

 

 

 

 

「(……ッ、なん、だ?)」

 

 

「ーー経過は良好、もう時期目を覚ますかと思います」

 

 

「了解。ありがとねクーちゃん」

 

 

「いえ。それより彼は、一体……」

 

 

「結局この束さんの頭脳でも『アレ』は解析できなかった。こいつに直接聞くしかないだろうねー」

 

 

「危険要素がなければ良いのですが」

 

 

「IS相手に瀕死まで追い込まれてるから、そこは大丈夫だと思うよ」

 

 

「(だ、れかの、声が、する)」

 

 

 少年は目を覚まさない。

 意識は朦朧としていて、自身が置かれている状況は理解できない。

 

 

「ーーそれと、織斑 千冬の方にはどうされるのですか?」

 

 

「黙っておくよ、ちーちゃんには。こいつを拾っておいたことはね」

 

 

「よろしいのですか?」

 

 

「うん。別に善意で助けたわけじゃないからね。もし用済みだと判断したら、すぐ処分する」

 

 

「そうですか」

 

 

 淡々とした会話。

 そこには情など一切なく、あくまで都合のいい道具のようでしかない。

 

 

「(ち、ふゆ、さん……?)」

 

 

「……ごめんね、いっくん。お友達をすぐに返してあげられなくて」

 

 

「束様……」

 

 

「……行こっか、クーちゃん。束さんお腹空いちゃったなぁ」

 

 

「はい。それではお夕食にしましょう」

 

 

「うん」

 

 

「(いち、か……り、ん……)」

 

 

 2人が部屋を出ると同時に、少年の意識も再び闇へと沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ******

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、千冬姉、どこ行ってたんだよ!?」

 

 

「…………いち、か」

 

 

「その、手に持ってるおもちゃみたいなのは?」

 

 

「……わからない」

 

 

「千冬姉……」

 

 

 家を急に飛び出したかと思えば、土砂降りの雨の中傘もささずに帰ってきた千冬。

 

 

「……とりあえず、お風呂沸かしておくから。風邪引くといけないから身体だけ拭いて」

 

 

「……ああ、すまないな一夏」

 

 

 風呂を沸かしに向かう一夏。

 玄関先に立っている千冬は濡れた髪を乾かす事もなく考える。

 

 

「(何処に行ってしまったんだ、龍也……)」

 

 

 ギリッ、と歯をくいしばる。

 指定された場所へ行ったのはいいが、橘 龍也本人はおらず、あったのは今手に持つおもちゃのような物だけ。

 そしてーー

 

 

「(…………あの血は、一体)」

 

 

 ーー引き摺られるように続いていた、何者かの血痕と思われるもの。

 考えたくはない。だが、状況が状況だけに嫌な想像をしてしまう。

 

 

「(何に、追い詰められていたんだ、お前は。世界最強の私であってさえも、頼りにならなかったというのか)」

 

 

 力には自信があった。

 生身、IS問わずそれこそ世界最強を張れる程には、と。

 それでも彼には頼られる事すらなかった。

 

 

「(私は…………)」

 

 

 何が起きていたか把握はしていない。

 もしかしたら思い過ごしなのかもしれない。

 だが、千冬の中に渦巻く虚無感は、一晩を越しても消えることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ******

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………知らない天井だ」

 

 

 スッと目を覚ました少年。

 意識は寝起き(?)だと言うのに完全に覚醒している。

 周りを見渡せば、見慣れぬ機械や装置が山程。

 

 

「此処は……それに、俺は……ッ!!」

 

 

 少し考えて思い出す。

 自分が何をしていたか、そして意識を失う前にどんな状況に置かれていたか。

 

 

「(どうして生きてる……!?出血量的に、もう助からなかったはずだ)」

 

 

 抉れていたであろう、腹の辺りを触るが、特に痕も残っていない。

 

 

「(俺の身体、人間のままだよな?)」

 

 

 改造されてサイボーグにでもされたか、そう解釈せざるを得ない。

 

 

 身体中の痛みに我慢しながら、立ち上がろうとしたその時、

 

 

 

 

 

 

「ーーーまだ起き上がっちゃダメだよ。傷は完全に治っていないから」

 

 

「ぐっ…………え?」

 

 

「聞こえなかった?傷はまだーー」

 

 

「い、いえ、それはわかりました」

 

 

 目の前に突如現れた女性に驚く。

 

 

「あの、貴女は?」

 

 

「『篠ノ之 束』って言えば、わかるかな?」

 

 

「なっ……!!」

 

 

 テレビやニュース、そして友人から聞いたことがある。

 iS開発者にして『天災』、篠ノ之束。

 

 

「物事の理解はできるようだね。

 後遺症は残っていないはずだけど、どうかな?」

 

 

「あ、はい。痛み以外は特に感じないですけど」

 

 

「そう」

 

 

 淡々とした返事、すると次には、

 

 

「早速だけど」

 

 

「え?」

 

 

 拳銃を突きつけられる。

 

 

「ーーお前は、何者かな?」

 

 

「……俺、ですか?」

 

 

「男なのに『ISらしき物に乗って戦っていた』。これを嘘だと言わせないよ?」

 

 

「……さすが篠ノ之博士、ご存知でしたか」

 

 

「あれだけ派手にぶっ壊してくれればね。

 まぁ、世間一般的に悪人と言われる人達のだけだったけど」

 

 

 最初は疑問でしかなかった。

 だが、軽く調べを進めると破壊されたIS搭乗者の特徴は、ほぼ全員が女性権利団体の人間であったり、裏では名の知れた悪名高い人物であった。

 

 

「俺は……」

 

 

 天災の目を見て、はっきりと答える。

 

 

 

 

 

 

「俺は、『ダークネス』。

 この世界の悪を裁くために戦っている、ただの戦士です」

 

 

 

 

 

 

『橘 龍也』は言った。

 

 

 ISが普及したこの世界での、異物の名を。

 

 

 そして自分をーーー戦士と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ******

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜1ヶ月後〜

 

 

 

「千冬さん、こんな場所に来てくれなんていきなりどうしたんですか?」

 

 

「……来たか、凰、一夏」

 

 

 人気のない場所、千冬に呼び出され一夏と鈴はいた。

 

 

「なあ、千冬姉。何か進展があったのか?龍也の事について」

 

 

「ッ!本当ですか!?」

 

 

 突如行方を眩ませた2人の親友。

 街での聞き込みや自分達の足での捜索など、できる限りのことはしていたが成果はなかった。

 

 

「………………今からお前達に言うことは、全てが事実だ」

 

 

「千冬姉?」「千冬さん?」

 

 

 明らかに様子がおかしいのは一目瞭然だった。

 そう、まるでーーー何かに苦しんでいるような。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……橘 龍也は、死んだ。現場の血痕からDNA鑑定で判明した。遺体の存在は、不明だそうだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「……………………は?」」

 

 

 

「………………」

 

 

 

「は、はは、何の冗談だよ、千冬姉」

 

 

「そ、そうですよ!何を、いきなり……」

 

 

 声が震える。

 脳が理解を拒否する。

 

 

 だが、無理にでも理解をせざるを得なくなる。

 

 

 

 

 

 

 

「………………っ、うっ、くっ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー織斑 千冬が、泣いている。

 

 

 

「ち、ふゆねえ……」

 

 

「すまない、すまない2人とも……」

 

 

 決して人に弱みを見せることのないあの世界最強が。

 今、2人の少年少女の前で、涙を流している。

 

 

 

「う、そよ」

 

 

「嘘じゃない」

 

 

「そんなこと、あるわけ……」

 

 

「全て、真実だ」

 

 

「……ッ、うそだうそだうそだ!!!!

 だって、龍也は、あたしの、料理を、食べて、くれるって‥‥」

 

 

「鈴……」

 

 

「あ、あああ、ああああああああっ……」

 

 

 膝から崩れ落ちてしまう鈴。

 

 

「そんな……どうして………」

 

 

 一夏は、唇を強く噛み、手を血が滲むほど握りしめ、下を向き顔を震わせる。

 

 

 

 

 

「ーーーどうしてだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!龍也ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 少年少女は、絶望した。

 

 

 

 

 親友の死という、避けられない現実によって。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。