IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界-   作:陽夜

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活動報告を二つ更新しました。
この小説の今後の展開についてのアンケートなので宜しければ是非閲覧下さい。

それでは、どうぞ。


第三十二話

 

 

 

「と、とりあえず荷物置けよシャル。奥のベッドが空いたからさ」

 

 

「う、うん。そうさせてもらうね」

 

 

 楯無が出払い、部屋に二人だけになる。

 突然の事だったので互いに少し驚きが残っているが、すぐにたわいもない会話が始まる。

 

 

「今日一日どうだった?一組は」

 

 

「いい人達ばかりだよ、みんな優しいし」

 

 

「まぁ『男の子』のお前には優しくて当然だよな〜」

 

 

「むぅ、意地悪言わないでよお兄ちゃん」

 

 

 冗談混じりに言う龍也。

 だが、真面目な雰囲気を作る。

 

 

「………で、なんで『男のフリ』なんてしてるんだよ、シャル」

 

 

「…………………」

 

 

 重苦しい空気に。

 シャルルは俯き、龍也は心配そうに見つめる。

 

 

「俺にも頼れない事なのか?」

 

 

「ううん、そうじゃないよ」

 

 

「じゃあどうして言ってくれない」

 

 

「……………それ、は」

 

 

「……俺はお前の力になりたい。デュノア社の、お前の親父と母親の時みたいに」

 

 

 以前、権利団体の人間を追いかけていた時に、デュノア社長夫人が会社を乗っ取ろうとしている情報を手に入れたことがある。

 それを見過ごせなかった龍也は、ダークネスで直接出向き企みを阻止したのだ。

 夫人はその後裏での様々な工作がバレて警察に捕まり、流れでシャルルと知り合ってしまった龍也はデュノア社長にも気に入られたというわけだ。

 

 

「お兄ちゃん……」

 

 

 龍也の思いに応えようとしたのか、シャルルは話すことを決心する。

 

 

「実はね……」

 

 

「おう」

 

 

 一体どんな内容なのか、緊張が出てきて唾を飲み込む。

 そしてーー

 

 

 

 

「…………お父さんに、入学する時は男装しろって言われたんだ」

 

 

「……いや、それはそうだと思ってたよ。今のシャルを見ればわかるしな。

 そうじゃなくてさ、他のことだよ他の」

 

 

「……………………」

 

 

「え?ちょ、まさか」

 

 

「それだけだよ。その方が面白いから、って」

 

 

「嘘だろ……」

 

 

 どんな問題が起きているのかを考えていた龍也には、床に手と膝をつき愕然とするしかなかった。

 まさか『ただ男のフリをさせている』だけだとは、想像も付かなかった。

 

 

「お兄ちゃんが入学したって情報を聞いて、その後僕をここに編入させるのは確定だったんだって。

 でも、何処でどういう風に道を間違えたのか、社内会議で僕を男として送るって話になっちゃって……」

 

 

 あはは、と笑うシャルル。

 

 

「あそこはアホしかいないのかよ……」

 

 

「あ、お父さんがお兄ちゃんによろしくって言ってたよ」

 

 

「ああ、うん、そっかぁ」

 

 

 もう遠い目をするしかない龍也。

 

 

「だ、大丈夫?お兄ちゃん」

 

 

「……まぁ、お前に何もなくてよかったよ、シャル」

 

 

 頭を撫でる。撫でられて嬉しそうに笑うシャルルは、到底男には見えなかった。

 

 

「えへへ、お兄ちゃんとまた会えたし、一緒に住めるなんていい事だらけだよ」

 

 

「(可愛いやつだな、全く)」

 

 

 あくまで妹としか見ていない龍也。

 シャルルもそれは同じで、血は繋がっていないが大切な兄といった感じだ。

 

 

「というかシャル、お前そんなにすらっとしてたか?」

 

 

「……え?どういうこと?」

 

 

「いや、その、胸とか……」

 

 

「………お兄ちゃん?」

 

 

 余計な失言《セクハラ》により、妹に睨まれてしまう龍也。

 

 

「わ、悪い!気になったからつい……」

 

 

「お兄ちゃんの、えっち」

 

 

「ぐっ」

 

 

「……サラシ巻いて胸は潰してるの。それくらい察してよ」

 

 

「あ、ああ!そうだよな、あははー」

 

 

 他人の感情には敏感なのだが、自分の周りのことになるとどうにもポンコツな龍也だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(とりあえず、一夏には話しておかないとマズイよな。後女性陣からも一人、シャルのことを知ってる奴がいた方がいい)」

 

 

 今後の事を考えながら廊下を歩く龍也。

 すると、何処からともなく声が聞こえてくる。

 

 

「ーー教官、是非ともドイツにお戻りください。我々『シュヴァルツェ・ハーゼ』は貴女の指導をお待ちしています」

 

 

「それは出来ない。

 私はここの教師だ。今の教え子達を一人前にするのが役目なのでな」

 

 

「(あれは、千冬さんとボーデヴィッヒ?)」

 

 

 職員室の近くで話していたのは千冬とラウラ。

 

 

「……何が貴女をここに縛るのですか?」

 

 

「縛られているつもりはないのだがな。意外にも、教師という仕事が似合っているのかもしれない」

 

 

「…………………」

 

 

「(俺は教師より軍人の教官の方が似合ってるとは思うけどな)」

 

 

「……そうですか、なら仕方ありませんね」

 

 

「?ラウラーーッッ!!」

 

 

「(ーーーーッ!)」

 

 

 

 

 

 

「ーー此処にいる生徒達を殺してでも、貴女をドイツへ連れて行くとしますか」

 

 

「な、にを言って」

 

 

「ああ、そうだ。織斑 一夏もいました。彼も消さなくては……」

 

 

「ふざけるな、ラウラ」

 

 

「(ッ、おいおい、千冬さんマジギレじゃねーか)」

 

 

 本気で怒っているのが、離れたところからでも空気を通してピリピリ伝わってくる。

 

 

「そんな事が、許されると思っているのか」

 

 

「関係ありませんよ。何故なら私はーー」

 

 

 

 

「私は、貴女の代わりに邪魔者共を消し去る、復讐者ですから。

 ふふ……あは、あははははは!!!!」

 

 

「復讐、だと?」

 

 

「(どういう事だ、代わりに復讐?)」

 

 

「その為なら手段は選びません。必ずや、織斑 一夏の首を……」

 

 

 千冬の元から離れていくラウラ。

 残された千冬は、歯をくいしばるように苦い顔をし悲痛な顔を浮かべる。

 

 

「ラウラ……お前に、一体何があったんだ」

 

 

「千冬さん」

 

 

「ッ!?……橘か。何度も言わせるな、ここでは織斑先生だとーー」

 

 

「今の話は、どういう事ですか?」

 

 

「……盗み聞きとは趣味が悪いな」

 

 

「すいません、たまたま通りがかったものですから」

 

 

「…………………」

 

 

「ボーデヴィッヒが、貴女の教え子なのはわかります。束さんからドイツで教官をしていた話は聞いていたので。

 ですが、復讐とは何ですか?千冬さんに恨んでいる相手が?」

 

 

「……分からない。恨んでいる相手など、私の記憶にない」

 

 

「じゃあなんで……」

 

 

「……龍也、お前に頼みたい事がある」

 

 

「何でしょうか」

 

 

「ラウラをーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日の放課後。

 一夏や龍也達はアリーナに集まり練習をしていた。

 主には一夏に対する指導がメインなのだが、箒、鈴、セシリアの教え方では一夏に伝わり辛かった。

 

 

 しかしそこはシャルルの出番。

 初心者にもわかりやすく且つ理論的に教えてくれ、更には進歩度合で適切な実地が行われる様子は、一夏からすればまさに天使の降臨と言ってもよかったであろう。

 シャルルに付きっきりになってしまった一夏に他の三人の不満が上がった為、ストレス解消的な意味も兼ねて龍也と鈴は軽い組み手のようなことをしていた。

 すると、そこに、

 

 

「ねえ、アレってドイツの……」

「うん、第3世代IS。肩に大口径レールカノンなんて随分ずっしりしてるね」

 

 

 他の訓練をしている人達から上がる声の方を見てみれば、そこにはラウラの姿が。

 徐々に此方に歩いて来て、一夏をじーっと見ている。

 

 

「おい、織斑 一夏」

 

 

「なんだよ」

 

 

「私と戦え」

 

 

「断る。今はみんなと訓練してるし、お前と戦う理由がない」

 

 

 ラウラを見ていると初対面での対応を思い出す。必然的に好意を抱けないのは仕方のないことか。

 

 

「……なら仕方ないか、やむを得まい」

 

 

「は?何言ってーーーッッ!!」

 

 

 ラウラの肩部のレールカノンから弾丸が一夏へと射出される。

 だが、その弾丸は横から割り込んできた漆黒の鎧の振るう剣に叩き落される。

 

 

『またか、ボーデヴィッヒ。挨拶が下手くそすぎないか』

 

 

「そう言うな。私は、こういったやり方しか知らないのでな」

 

 

 敵意を剥き出しにする龍也とは対照的に、何食わぬ顔で龍也を見つめるラウラ。

 

 

「わざわざ巻き込まれに来るとは。……殺す順番が変わるだけだというのに」

 

 

『お前が何を考えているのかは知らないが、好き勝手やらせるわけにはいかない』

 

 

 右手の剣を下げ、左手に持つ銃をいつでも撃てるように構える。

 ラウラも戦闘態勢に構えプラズマブレードを展開する。

 両者が動き出そうとしたその時、

 

 

『そこの生徒!何をしている!学年、クラス、出席番号は!』

 

 

 アリーナの管理担当の教員から声がかかる。

 

 

「……ちっ、興ざめだな」

 

 

 振り返りアリーナを後にしようとするラウラ。

 

 

「次また私の邪魔をするならば、その時は……覚悟しておけ」

 

 

 そのままラウラの姿が見えなくなると、ふぅと息を吐き変身を解く。

 その後、一夏が龍也の肩を叩く。

 

 

「悪い、龍也。助かった」

 

 

「気にすんな。友達だろ?」

 

 

「何なのよ、あいつ。一夏を目の敵にして」

 

 

「心当たりはありますの?一夏さん」

 

 

「…………わからない」

 

 

「一夏……」

 

 

 心配そうに一夏を見つめる箒。

 そんな箒の内心を察したのか、龍也が声をかける。

 

 

「大丈夫だよ箒。一夏はやらせないし、こいつもそう簡単にくたばるような柔な鍛え方してないさ」

 

 

「おう。負けるつもりなんてないしな」

 

 

「………ああ、わかってる」

 

 

「それじゃあ、そろそろ練習を再開しようよ。時間も勿体無いよ?」

 

 

「そうだな、やるぞ一夏」

 

 

「ああ」

 

 

 シャルルの呼びかけにより練習を再開する全員。

 だが、頭の中には先ほどの出来事が住み着いており完全に気持ちを切り替えることはできなかった。

 




ラウラは落ち着きすぎていて怖いタイプです。
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