グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

108 / 219
life03 深夜の会談

ある日の深夜。

俺たちはオカルト研究部の部室にいた。ようやく連絡のついた吸血鬼と会談をするためだ。

この場にいるのは、リアスと眷属全員、ソーナとその『女王(クイーン)』真羅副生徒会長、アザゼル、イリナ、そして見慣れぬシスターが一人。

目鼻立ちがはっきりしている北欧的な顔立ちの二十代後半のシスター。

そのシスターがこの場にいる全員へ挨拶をする。

 

「挨拶が遅れました。この地域の天界スタッフを統括しておりますグリゼルダ・クァルタと申します。今後とも何とぞよろしくお願いできたら幸いです」

 

「私の上司様です!」

 

イリナが追加情報をくれるがグリゼルダと言えば、

 

「確か、ガブリエルの『Q(クイーン)』だったな。女性エクソシストの中じゃ五指に入ると聞いている」

 

「恐れ入ります。ガブリエル様もお世話になっていたようですし………」

 

と、言いながら俺を軽く睨んでくるグリゼルダ。四大セラフであるガブリエルの『Q(クイーン)』で、そのガブリエルがハートのスート(セラフによってスートが違う)なこともあり『クイーン・オブ・ハート』と呼ばれているそうだ。

俺を睨んできた理由はそのせいだろう。ガブリエル本人はまだ気にしているんだろうな…………。

第一印象は優しそうな女性だが室内で一人だけ彼女を見てビクビクしている奴がいた。

 

「あらあら?ゼノヴィアったら、顔色が悪いわね?」

 

イリナが言う通り、ゼノヴィアの様子がおかしい。

事実ゼノヴィアはグリゼルダを極力視界に入れないようにしている。

そのゼノヴィアの顔をグリゼルダが両手で押さえ込む。

 

「ゼノヴィア?私と顔を合わせるのがそんなに嫌なのかしら?」

 

「ち、違う。た、ただ……」

 

「ただ?」

 

「で、電話に出なくてごめんなさい」

 

ゼノヴィアの謝罪を受けてグリゼルダは手を離す。

 

「よく出来ました。せっかく番号を教え合ったのだから、連絡ぐらいよこしなさい。食事ぐらい出来るでしょう」

 

「ど、どうせ小言ばかりだろうし」

 

「当たり前です。また一緒の管轄区域になったのだから心配ぐらいします」

 

何か姉妹の会話を見ているようだ。

にしてもゼノヴィアにも苦手な相手がいたのか……。

そんな発見をしながら、俺たちは吸血鬼を待つことになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから更に夜は更けていき、外は静まりかえり、皆も静かにし始めた頃。外から異様な冷たさを感じ取った。

この場にいる全員がそれを把握したようで旧校舎の入り口のある方向を見ていた。

リアスが立ち上がる。

 

「来たようね。相変わらず吸血鬼の気配は凍ったように静かだわ」

 

そう言うとリアスは木場に目で合図を送る。それを受けて木場は立ち上がり一礼してから部屋を出る。

吸血鬼は初めて来た場所には招待されないと入れない。

吸血鬼は鏡に映らなず、影もない。

吸血鬼は流水(川など)を渡れず、ニンニクを嫌う。

吸血鬼は十字架、聖水に弱い。

吸血鬼は自分の棺で眠らないと自己の回復が出来ない。

これが純血の吸血鬼の特徴だ。

ハーフのギャスパーは鏡に映るし、影もある。川も渡れるし、ニンニクは現在克服中。そして段ボールでも眠るなどの違いがある。これはおそらく人間の血が濃いからだと解釈している。

そんなわけで木場は吸血鬼を招待しに行ったわけだ。

イッセーたち眷属はリアスの傍らに並び、真羅副生徒会長はソーナの背後に、イリナもグリゼルダの背後に、朱乃は給仕係として台車の前に移動。俺とアザゼルは堂々と座っている。

問題のギャスパーはというと、

 

「………………」

 

複雑な表情をしていた。自分を迫害した奴らに会うわけだから、心中オダヤカではないだろう。ギャスパーの家の者ではないらしいが、表情同様かなり緊張しているんだろう。

二分ほど待つとドアがノックされる。

 

「お客様をお連れしました」

 

木場の応対で扉を開き、客を招き入れる。

姿を現したのは中世のお姫様が着るようなドレスに身を包んだ人形のような少女だった。

作られたような美しさがある人間味の感じられない怪しい雰囲気を漂わせている。金色の髪に真っ赤な双眸をしているが、それ以上に気になるのが生気を一切感じられない肌の色合いだ。

見た目はイッセーたちと同じ年頃に見える。だが、吸血鬼も悪魔同様に見た目を変えられるからな、年齢は何とも言えない。

そして何より影がない。まさしく純血の吸血鬼だな。

その少女の背後にはスーツ姿の男女、ボディーガードかなにかだろう。

吸血鬼のボディーガードもまた吸血鬼なんだろうな。

俺がそんな事を考えていると少女が口を開く。

 

「ごきげんよう、三大勢力の皆様。特に魔王様の弟君に妹君お二人、そして堕天使の前総督様とお会い出来るなんて光栄の至りです」

 

リアスに促され、リアスの対面の席に少女が座ることになったが、座る前に少女は名乗る。

 

「私はエルメンヒルデ・カルンスタイン。エルメとお呼びください」

 

いかにも高貴そうな名前の響きだな。

アザゼルがあごに手をやる。

 

「カルンスタイン。確か吸血鬼二大派閥の一つ、カーミラ派の中でも最上位クラスの家だ。久しぶりだな、純血で高位のヴァンパイアに会うのは……」

 

カーミラ派か。

吸血鬼のやっていることは悪魔と似ているがかなりの違いがある。

お互い教会を敵にしていた時も共闘はせずに悪魔と吸血鬼は極力不干渉をしていた。それは様々な勢力と和平を結んだ今もだ。

そんな吸血鬼も一枚岩ではない。簡単に言うと男尊主義のツェペシュ派、女尊主義のカーミラ派の二つに分かれているのだ。それがアザゼルの言った二大派閥ってわけだ。分かれたのは数百年前の話だが、それは今も続いている。

今日来た彼女はそのカーミラ派の吸血鬼というわけだ。

そんな彼女にリアスが質問を始める。

 

「エルメンヒルデ、いきなりで悪いのだけれど、私たちに会いに来た理由を聞かせてもらえないかしら?今まで接触を避けてきたあなたたちが私たちの元に来た理由は?」

 

エルメンヒルデは一度だけ頷くと口を開いた。

 

「ギャスパー・ヴラディのお力を借りたいのです」

 

━━━━ッ!?

俺たちは声にこそ出さなかったが全員が驚いていた。

ここまで直球にギャスパーを狙ってくるとは思ってもいなかったからだ。

やはり例のゲオルグを倒したとかいう力が狙いか?

俺たちがそんな疑問を頭によぎらせていた時、アザゼルがエルメンヒルデに訊く。

 

「率直な質問に率直な答え。すまんが説明してもらおう。吸血鬼の世界に何が起きた?」

 

アザゼルの問いにエルメンヒルデが答える。

 

「我々吸血鬼の世界でとある出来事が根底の価値観を崩すほどのものになってきているのです。ご存じかもしれませんけれど、神滅具(ロンギヌス)を持つものがツェペシュ側のハーフから出てしまったのです」

 

そういえばそんな事聞かされたような気が…………。

とにかくそれが絡んで来るってことは、絶対に面倒事だな。

アザゼルが訊く。

 

「それでツェペシュ側の神滅具(ロンギヌス)は何だ?」

「………『幽世の聖杯(セフィロト・グラール)』です」

 

エルメンヒルデの答えにアザゼルは目元を厳しくしてい

それもそうだろう。その神滅具ロンギヌスは………、

 

「よりにもよって、『聖遺物(レリック)』の一つか」

 

アザゼルがため息混じりにそう言った。

聖遺物(レリック)』ってのは字のごとく先人たちが残した聖なる道具だ。ちなみに曹操の使っていた聖槍もそうだったりする。

アザゼルが続ける。

 

「聖杯ってのは伝説が多い。だがその『幽世の聖杯(セフィロト・グラール)』はただの聖杯じゃない。神滅具(ロンギヌス)であり、生命の理を覆しかねない代物だ。エルメンヒルデといったか、吸血鬼がそれで何を求める?」

 

「絶対に死なない身体。吸血鬼の持つ弱点を無くした『決して滅びない体』をツェペシュの者たちは得ているのです。いえ、正確には『滅びにくい体』でしょうか。聖杯の力はまだ不完全のようですから」

 

だったらまだいいか。まだ滅ぼせるつまり殺せるならどうにかなる。

俺がそんな事を考えているとエルメンヒルデは続ける。

 

「何も弱点のない存在になろうとしているのです。誇りを捨てるだけならまだしも、あの者たちはこちら側を襲撃してきたのです。これらの行為を許すつもりはございません。同じ吸血鬼として粛清するつもりです」

 

エルメンヒルデの瞳は憎悪の色を強く帯びていた。

つまり、

 

「カーミラ側の吸血鬼としての生き方を否定して、襲ってきたツェペシュ側のやり方が気に入らないつもてことか。ま、気持ちはわかるが」

 

俺が言うとエルメンヒルデは頷く。

 

「はい、その通りです。そして私たちの目的は……」

 

エルメンヒルデはギャスパーに視線を向ける。

 

「そちらにいらっしゃるギャスパー・ヴラディの力を借りて、ツェペシュの暴挙を食い止めることです」

 

つまりギャスパーを抗争に使うから貸せと……。

リアスは冷静に訊く。

 

「それは、ギャスパーがヴラディ家の………ツェペシュ側の吸血鬼であることに関係あるのかしら?」

 

いつも通りに言っているように感じるが、リアスは内心少しずつキレ始めてるな。

グレモリー家でも特に情愛の深いリアスの事だ。自分の眷属を突然貸せ。なんて言われたらキレるよな。

それでも怒りを抑えてあちらの真意を聞き出そうとしている。

リアス、見ないうちに成長したもんだな。

リアスの問いにエルメンヒルデは意味深な笑みを見せた。

 

「それもあります、リアス・グレモリー様。けれど私どもが欲しているのは、ギャスパー・ヴラディの力です。眠っていた力が目覚めたと小耳に挟んだものですから」

 

こいつら、ここどこで知ったんだ?イッセーは見たことがない、上位神滅具(ロンギヌス)の『絶霧(ディメンション・ロスト)』を倒せるほどの謎の力。おそらくその力を聖杯の持ち主にぶつける気なのだろう。

エルメンヒルデは続ける。

 

「私どもは吸血鬼の争いを吸血鬼の力で解決しようと思っていますわ。そのためにギャスパー・ヴラディのお力をお借りしたいのです」

 

出来れば吸血鬼の問題には首を突っ込みたくないが、ここまで来たら無理だな。

下手したらツェペシュ側からもギャスパーを貸せ。いや『返せ』と言ってくるかもしれない。

リアスは改めてエルメンヒルデに訊く。

 

「あの力は何?あなたたちはそれを知っているの?」

 

俺たち的にはそれが一番大事な事だったんだけどな。

今はそれどころじゃなくなり始めてるが…………。

 

「ごく稀に本来吸血鬼が持つ異能から逸脱した能力を有する者が生まれてくることがあります。今世においてはハーフの者に多く見られております。ギャスパー・ヴラディもその一人かと。くわしい資料は有しておりません。しかし、ツェペシュ側には手がかりがあるかもしれませんわ」

 

吸血鬼的にもギャスパーの力はよくわからんと。今しれっと、詳しく知りたければヴラディ家に行けって言われていたよな気がするな。

エルメンヒルデは続ける。

 

「問題の聖杯について。所有者はもちろん忌み子、ハーフではありますが、名はヴァレリー・ツェペシュ。ツェペシュ家そのものから生まれたのです」

 

その名前を聞いてギャスパーは泣きそうな顔になっていた。

 

「ヴァレリーが?う、嘘です!ヴァレリーは僕みたいに神器(セイクリッド・ギア)を持って生まれてはいませんでした!」

 

あの臆病なギャスパーがここまで熱くなるとは………。ヴァレリー・ツェペシュか。ギャスパーにとって大事なヒトなのか?

エルメンヒルデは答える。

 

「何かの切っ掛けで力が発現する。これはあなたもご存じでしょう?ヴァレリー……彼女も近年覚醒したものと思われます」

 

イッセーも今年になって目覚めたらしいからな。そういうのには個人差があるらしい。前にアザゼルに聞いた通りならそのはずだ。

アザゼルは腕を組みながら話始める。

 

「俺たちや天界が観測する前に隠蔽されたと思っていいだろうな。どうしようもないな。聖なる力を嫌う吸血鬼が『聖遺物(レリック)』を捨ても預けもしないで自分たちのもとに置いておくなんてよ」

 

「私もそう思います」

 

アザゼルの言葉にエルメンヒルデも応じた。

エルメンヒルデは再びギャスパーに視線を向ける。ギャスパーは今度はしっかり視線を交わしていた。

 

「ギャスパー・ヴラディ、あなたは自分を追放したヴラディ家に……ツェペシュに恨みはないのかしら?今のあなたの力ならそれが可能ではないかと思うのだけれど」

 

「ぼ、僕はここにいられるだけで十分です。部長たちと一緒にいられれば………」

 

「………雑種」

 

ギャスパーの言葉を遮るようにエルメンヒルデは言った。それを聞いたギャスパーは徐々に表情が曇り始めた。それを確認したエルメンヒルデは続ける。

 

「混じりもの、忌み子、もどき、あなたがいかように呼ばれていたのかしら?感情を共有できたのはツェペシュ家のハーフ、ヴァレリーだけ、でしたわね?ツェペシュ側のハーフが一時的に集められて幽閉される城の中で助け合って生きていたと聞いておりますわ。ヴァレリーを止めたいとは思いませんか?」

 

言わせておけばこいつら!ギャスパーの傷ををえぐり返しやがって……………!

俺の怒りが溜まりまくっているなかで、黙していたグリゼルダが口を開く。

 

「あなた方はハーフの子たちを忌み嫌いますけれど、もともと人間に子を宿らせたのは吸血鬼の勝手な振る舞いでしょう?悔しい思いをしながらも憂いに対処してきたのは、我々教会です。出来れば、趣味で人間と交わらないでもらいたいものです」

 

やわらかい物腰ながらも言葉には毒たっぷりだ。

流石『クイーン・オブ・ハート』、伊達に女性エクソシストトップクラスじゃないな!

グリゼルダの発言にエルメンヒルデは小さく笑む。

 

「それは申し訳ございませんでしたわ。けれども人間を狩るのが吸血鬼の本質。悪魔や天使も同じだと思っておりますが?我々異形の者は形は違えど人間を糧にせねば生きられぬ『弱者』ではありませんか」

 

確かに俺たち悪魔は正義じゃない。理不尽な取り引きで下僕にされる奴も多いのもまた事実だ。そういう奴を狩るのが仕事だったんだよな…………。

俺としては上手くやれば共存できると思っているが、エルメンヒルデの場合は完璧に狩りの対象として割り切ってる。

吸血鬼的にはこれが普通なのだ。

純血の吸血鬼にとってしてみれば世界にいるのは、純血の吸血鬼かそれ以外の二種類だけ。

これだから吸血鬼は嫌なんだよ。

エルメンヒルデは後ろのボディーガードの吸血鬼を呼び何かを取り出させた。

 

「手ぶらで来たわけではありませんわ。書面を用意しました」

 

その書面をアザゼルと俺に見えるように渡してくる。

こいつは………ふざけやがって………!

俺はそんな内心を抑えるために一度息を吐く。

 

「カーミラ側の和平協議について、か……」

 

『………ッ!?』

 

俺の言葉にイッセーたちは驚いていた。

俺は平静を装ってエルメンヒルデに言う。

 

「今日のこれは外交、つまりおまえらは特使としてここに来たということか」

 

俺の確認にエルメンヒルデは答える。

 

「はい、我らが女王カーミラ様は堕天使の総督様や教会の方々と長年にわたる争いの歴史を憂いて、休戦を提示したいと申しておりました」

 

むこうは冷静に言ってくるが横にいるアザゼルは額に青筋立てている。俺は何とか抑えるようにしているがそろそろ無理かもしれねぇ…………。

そんなアザゼルが言う。

 

「順番が逆だ、お嬢さん。普通は書面が先で話は後だろうが。これじゃまるで力を貸さなければ、和平に応じないと言っているようなもんだ」

 

「色々な勢力と和平を結んできた俺たちがこれに応じないと他の勢力への説得力が薄くなる。『相手を選んでやっているのか』なんて思われても仕方ない。しかも停戦ではなく、休戦だからな。こっちの弱味をわかっていらっしゃる」

 

アザゼルに続いて俺も皮肉げに言った。

吸血鬼がここまで嫌な連中とは思わなかったよ………。

これに応じないとリアスの今後や兄さん、セラの信用にまで影響が出ちまう………!

リアスが怒りに打ち震えているがソーナが手を握りなだめていた。

エルメンヒルデは俺たちの様子を嬉しそうに見ていた。

 

「ご安心下さい。吸血鬼の問題は吸血鬼で解決いたしますわ。ギャスパー・ヴラディを貸していただければ、あとは何もいりませんわ。和平のテーブルにつくお約束とヴラディ家への橋渡しを私どもが行いましょう」

 

それを聞いてたまらずイッセーが口を開く。

 

「待てよ。仮に━━━」

 

「仮にギャスパーを貸したとして返してくれる保証は?戦力が足りていないなら俺たちが動くことも考えるが?仲介や加勢程度ならいけるぞ」

 

イッセーが何かを言おうとした瞬間に俺が割って入る。今イッセーを喋らせるわけにはいかない。余計に向こうのペースになっちまうかもしれないからな。

俺の発言にエルメンヒルデは首を横に振った。

 

「あくまで我々の決着は我々の手で行います。アドバイザーぐらいでしたら、いかようにも」

 

いちいちムカつく野郎だな。………だが今の発言、逆に言えばアドバイザーとしてなら行けるってことだな?

最後にエルメンヒルデは俺たちを見渡してから立ち上がる。

 

「以上ですわ。今夜はお目通り出来て幸いでした。何よりも根城に招き入れて下さり感謝いたしますわ。リアス・グレモリー様」

 

エルメンヒルデのわざとらしい微笑にリアスは瞳に怒りをたぎらせていた。

 

「今日は貴重な会談が出来てよかったわ。あなたたちのことがよくわかったものね」

 

「それではごきげんよう。この地に従者を置いていきます。何かありましたらその者に………では、よいご報告をお待ちしております」

 

リアスの嫌味をものともせずに彼女たちは旧校舎を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから十分程が経った頃。

ゼノヴィアがテーブルを叩いた。

 

「相変わらず、吸血鬼は好きになれない……」

 

ゼノヴィアの奴はよく我慢したよ。会談中敵意を出しまくっていたからな。

グリゼルダが言う。

 

「昔のあなたなら斬りかかっていたところですね。よく我慢しました。成長しましたね」

 

グリゼルダに褒められてゼノヴィアは頬を赤く染めていた。

ホントに今後も吸血鬼は好きになれないかもな。ギャスパーは色々あるけどいい奴だからいいが。

各々が緊張をほぐすなか中でソーナがリアスに言う。

 

「どうするのですか?協定を無視するわけにはいかないでしょう。ギャスパーくんを送り出すことになったら、最悪彼を失うかもしれません」

 

それを聞いたギャスパーは複雑極まりない顔をしていた。

それもそうだろう。ギャスパー一人で吸血鬼の半分が休戦協定のテーブルにつくのだ。

拒否したいが出来ない。一番嫌な状況だ。

そんな中、ギャスパーか震える口調で吐き出した。

 

「ぼ、僕、行きます」

 

………気弱なこいつがここまで決意に満ちた瞳を出来るとはな。

俺が感心しているとギャスパーは続ける。

 

「吸血鬼の世界に戻る気はありませんし、ここが僕にとってのホームです。で、でも、ヴァレリーを助けたい!彼女のおかげで皆さんに会えて幸せになれました。それなのに彼女だけ辛い目に遭っていると思うと……きっと理不尽な扱いを受けていると思うんです!」

 

そのままギャスパーはリアスに告げる。

 

「僕、ヴァレリーを助けたいです!そして絶対に死にません!ヴァレリーを救ってここに戻ってきます!」

 

ギャスパー………。ここまで男だとは思わなかったよ。格好は女だが、やっぱりイッセーの後輩だな。

ギャスパーの決意を聞いてリアスも立ち上がる。

 

「行くわ、私。今度こそヴラディ家とテーブルを囲むつもりよ。まずは私が行ってあちらの現状を確認してくるわ。ギャスパーの派遣はそれからでも遅くはないと思うの」

 

リアスの瞳にも決意の色が見えた。

自分の眷属にあそこまで言われたらそうなるよな。逆にならない方がおかしいと思うぜ。

 

「行くにしてもメンバーは最小限でだな。下手に向こうを刺激しかねないってことと、最悪の事態に備えての増援として待機も必要だ」

 

「ええ、お兄様。祐斗を連れていくつもりです。いいわね、祐斗?」

 

「はい、お任せください」

 

木場と一緒なら安心だな。

それを聞いてアザゼルが言う。

 

「俺も行こう。俺はカーミラに会ってくる。んでもって何人かは向こうでも動けるように話をつける。土産も持って行くつもりだ。リアスはヴラディ家に直接行ったほうがいい。リアスがカーミラ側に顔を出したら、警戒が強くなるだろうからな」

 

流石はアザゼル、ただでは転ばないな。

こっち側の何人かが動ければ、ギャスパーの危険回避とともにヴァレリーとかいう子も助けられる確率が上がる。

 

「妥当だな。天界関係者だと警戒されて話をさせてもらえないだろうし、アザゼルなら神器(セイクリッド・ギア)についても詳しい、それだけでも交渉の武器になるからな」

 

俺の言葉にアザゼルが頷き、イリナたち天界組に言った。

 

「そういうわけだ。イリナ、シスター・グリゼルダ、このことはミカエルに伝えておいてくれ」

 

グリゼルダは頷く。

 

「わかりました。こちらもジョーカーを切るつもりだとミカエル様もおっしゃっておりますし、最悪の結果だけは避けたいものです」

 

今の言葉に俺とアザゼルは軽く驚いた。

 

「そんな簡単に切っていいのか?いやまぁ、今回は相手が相手だ」

 

「ああ、聖杯と吸血鬼。多分ろくでもないことになる。俺は最低限の犠牲で済むようにしたいんだがな」

 

「そうならないために暇人ジョーカーは存分に使えとのご意志です」

 

「ジョーカーは相変わらずおいしいもの巡りしてんのか」

 

「…………はい」

 

俺の質問にグリゼルダが間を開けて答えてくれたが、………そうか、相変わらずなのか。

 

「アザゼル、一応言っておくが俺は残っておくぞ。念のためな」

 

「ああ、頼む。何かあれば連絡する」

 

そんなわけで、リアスと木場、アザゼルが吸血鬼のもとに、あとはこの町で待機ってことになった。そして、向こうで何かあればすぐさま合流すると。

何もなければいいが、こういう場合は何か起こるからな。

犠牲なしで解決出来ればいいんだが…………。

ま、俺たちが出来るのは降りかかる火の粉を払うだけだがな。

こうして、吸血鬼との会談は終了したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。