グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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life04 お茶会

部屋に案内されてからしばらくすると、リアスとギャスパーはヴァレリーが面会したいとのことで連れていかれ、アザゼルはマリウスの息がかかった上役の吸血鬼に連れていかれた。

リアスとギャスパーは純粋に話し相手として、アザゼルは神器(セイクリッド・ギア)研究の第一人者としてだろう。

で、部屋で待機していたそれ以外のメンバーは、ようやくギャスパーの父親との面会が許されたので話を聞きに行くことになったわけだ。

この城のメイドの案内でギャスパーの父親がいるという地下室に続く階段を下りていく。

しばらく下ったあとで広い空間に出た。まるで留置場のように複数の扉がある。その空間の中でメイドは迷うことなく一つの扉の前に移動した。

 

「ここがヴラディ家当主様がおられる客室でございます」

 

客室というにはあまりにかけ離れた場所だが、牢屋とかよりはマシか。

メイドが扉をノックをすると「お客様がお見えです」と中にいる報告し、施錠された扉を開きいて中に入るように促してくる。

俺たちは頷きあい入室する。

部屋の中は外と比べると随分と豪華で、天井にはシャンデリア、家具も全てが高級そうだ。

これは牢屋というよりは超高級ホテルの一室だな。

中のソファに座る人物が俺たちを確認すると立ち上がった。

金髪の三十代男性だ。父親らしく、なんとなくだがギャスパーに面影がある。

俺と朱乃が一歩前に出て挨拶をする。

 

「はじめまして、ロイ・グレモリーです」

 

「私はリアス・グレモリー様の『女王(クイーン)』姫島朱乃と申します。彼らもリアス・グレモリー様の眷属ですわ」

 

リアスがいないときは朱乃がリアス眷属のトップだ。朱乃は失礼のないように振る舞った。

男性は頷くとソファに座るように促してくれた。

 

「どうぞ、お座りください。……『アレ』いえ、ギャスパーについて話をしに来たのですね?」

 

こちらの用件がわかっているのは助かるな。無駄な話をせずに済む。

俺と朱乃がソファに座り、イッセーたちがその後ろに並ぶように立つ。

男性は純血の吸血鬼らしく生気を感じさせない肌の色をして、光に照らされても影が出ていなかった。

その男性が口を開く。

 

「すでにリアス様とは話をしましてね。お互いに『アレ』の情報を交換しあいました。今後『アレ』の処遇を巡ってグレモリーとヴラディでどうしたらいいのか話し合いを進めるなかで私がこの城に召喚されまして………情けない話ですが、ここに幽閉されたわけですよ。こんなにも静かにクーデターが起こっていたとは想像もしていなかったものでしてね。私が幽閉されたことで、マリウス殿下側が息子にリアス様をこの城に連れてくるよう命じたようです」

 

話の内容の割には落ち着いた口調で、今の状況にたいして動揺している様子もない。逆に受け入れているようにさえ見える。

それにしても、

 

「『アレ』、ですか………」

 

俺はこのヒトはさっきからギャスパーのことを『アレ』呼ばわりしているのが気になり訊いてみた。

 

「アレは……ギャスパーは悪魔として機能しているのですね。リアス様からそれを聞き、正直驚きました」

 

「ギャスパーの母親はやはり………」

 

「ええ、すでに亡くなっております。アレを産んだ直後に」

 

「難産だったと?」

 

俺のそう質問した。出産は母子ともに負担がかかるものだ。実際に母さんがリアスを産むときは大変そうだった。

俺の質問を聞いたギャスパーの父親は初めて表情を変えた。目元を細め、眉根を寄せた。

 

「……いえ、ショック死です」

 

ショック死したのか………。出産の時に何かあったってことか?

俺の疑問に答えるようにギャスパーの父親は恐ろしげに話を続ける。

 

「彼女の腹から産まれたのは━━禍々しいオーラに包まれた何か別のモノでした」

 

「何か……?」

 

このヒトの言葉の意味がよく理解できてないが、一つだけ言えるのは……このヒトが知っているギャスパーと俺たちが知るギャスパーでは決定的な違いがある。それだけだ。

父親は絞り出すように続ける。

 

「………生まれたとき、恐ろしげなアレは……人の形をしていなかったのです。黒くうごめく不気味な物体が腹から出てきた。形容しがたい何かが母体より生まれ出た。何かもわからないものが自分に宿っていた。アレの母親はそれを目の当たりにして精神に異常をきたし、そのまま死に至ったのです」

 

黒くうごめく何か……。最近覚醒したギャスパーの力も黒い闇だったな。生まれた時からあれを使えたが、使えなくなった。じゃあ、なんで今になって…………。

思考を巡らせるなか、父親は続ける。

 

「その場に居合わせた産婆を含めた数人が数日のうちに次々と変死しました。………おそらく呪殺、でしょうね」

 

「まさか産まれたてのギャスパーが呪いを?」

 

「ええ、無意識のうちに振り撒いた呪いなのでしょう。産まれて数時間ののちに通常の赤ん坊の姿に変化したのですが、もうそのときには母親はショック死した後でした」

 

「ギャスパーくんはそれを知っているのですか?」

 

ここまでの話を聞いて朱乃が訊くが、父親は首を横に振った。

 

「いえ、知らせてはいません。いたずらに刺激したら真の姿に戻ってしまうかもしれなかったので………。このことを知らない者たちは時間停止の神器(セイクリッド・ギア)を気味悪がっておりましたが、真相を知るものはそんな時間停止よりもアレの正体のほうがよほど畏怖すべきものものでした」

 

父親はそこまで言うと口元を隠し、重々しく言葉を発した。

 

「……グレモリーの皆さん、我々はアレを吸血鬼としてもハーフとしても認識できないのですよ………。異物の存在としか、識別できないのです。アレをハーフとして扱ったことも正しかったかどうかさえ、わからないのです。そして正体もわからぬまま私たちはアレを外部に出してしまった……」

 

困惑の表情の父親に後ろにいたイッセーが言う。

 

「昔はあいつがどうだったのかわかりません。けど、今ギャスパーは悪魔です。俺の後輩です。たとえ、体が闇に塗れようとも……仲間ですから」

 

小猫もイッセーに続く。

 

「……ギャーくんは大事な友達です。初めて出来た、同い年のお友達なんです」

 

いつもギャスパーと一緒にいる小猫だからこその言葉だな。

父親が一言訊く。

 

「あなた方はアレの正体をご覧になられたのでしょう?」

 

ゲオルグを倒した時とグレンデルに隙を作ってくれたときだな。確かにあの時はヤバイと感じたが、あいつは大雪な仲間だからな。

俺たちは頷き、それを見た父親は苦笑していた。

 

「……やはり、リアス様の兄君とグレモリー眷属なのですな。リアス様にも同様のことを問い、同様のことを言われました」

 

『人間でもなく、吸血鬼でもないのなら、ギャスパーは悪魔です。何せ、私がこの手で悪魔に転生させたのですから。正体がなんであれ、あの子はグレモリー眷属の悪魔ですわ』

 

リアスはそう告げたという。

リアス、お前は自慢の妹だよ………。

父親は小さく笑みを作りながらこう漏らす。

 

「我々には理解しがたい感情ですが、なるほど。あの力を見た上でそうおっしゃられるのなら、アレはあなた方に救われたと思っていいのでしょうな」

 

それからもギャスパーの父親との会話は続いたのだが、最終的にわかったのはヴラディ家はギャスパーを歓迎していないことだ。リアスとの会談もおそらくギャスパーを正式にグレモリーに預けるためのものだろう。

つまり、ギャスパーの居場所はここじゃないということだ。

会談を終えた俺たちが地下室から出たところでメイドが会釈して報告を告げる。

 

「兵藤一誠様、塔城小猫様、ロイ・グレモリー様、ヴァレリー陛下がお呼びでございます」

 

今度はイッセーと小猫、なぜか俺も呼ばれた。本当になんでだ………?

呼ばれた俺たちは視線を合わせて頷きあい、ヴァレリーの元へと向かうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

俺たちが通されたのは城の上階の室内庭園だった。

一切窓がないが、人工的な明かりで色彩鮮やかな花と流れる水を照らしていた。

庭園の中央にはテーブルが置かれ、リアスとギャスパー、ヴァレリーが座っていた。

メイドに通された俺たちも空いた席についた。

横から感じる不気味なプレッシャー。王の間にいた黒ずくめの男━━━最強の邪龍『三日月の暗黒龍(クレッセント・サークル・ドラゴン)』クロウ・クルワッハが壁に寄りかかりながらこちらに視線を送っていた。

 

「………………」

 

無言でこちらを一瞥すると目をつむった。

これだと、下手なことはできねぇな…………。

俺が小さくため息を吐き、ヴァレリーに視線を送った。相変わらず目が虚ろであり、微笑を浮かべていた。

俺たちにも紅茶が出されると、ヴァレリーが言う。

 

「リアス様から日本での事を訊かせていただいたの。日本はとても平和な国だそうですね、兵藤一誠さん」

 

突然話題を振られたイッセーは一瞬迷うと、失礼がないようにと考えたのか敬語で返した。

 

「え、ええ。日本は美味しい料理や楽しいものがたくさんありますよ。ヴァレリー………陛下」

 

それを聞いたヴァレリーはクスクスとおかしそうに笑う。

 

「敬語はやめてください、兵藤一誠さん。リアス様にも普通に接してくれるようにお願いしているのよ。ヴァレリーと呼んでくださいね」

 

「ええ、ぜひそうなさい、イッセー」

 

ヴァレリーにリアスも続き、イッセーは頷いた。

 

「はい、わかりました、ヴァレリー」

 

「うふふ、ありがとう」

 

儚げな笑みを浮かべるヴァレリー。彼女が今までどんな環境にいたのか、なんとなくだが察してしまえる………。

ヴァレリーは小猫にも問う。

 

「塔城小猫さんは美味しいお菓子をたくさん知っているのでしょう?日本にはどういうものがあるのかしら」

 

「えーと、私が好きなのは━━━」

 

そこから他愛もない会話が続いていった。

話の内容は何気ないものばかりだが、ヴァレリーにとっては何もかもが新鮮なようで、様々な質問が飛んでいた。

リアスたちの話を聞きながら、俺は手持ち無沙汰となっていた。ため息やあくびを噛み殺し、時々相づちを入れる。

━━━それにしても、何で俺は呼ばれたんだ?

俺がそう思った矢先、ヴァレリーが俺に話題を振ってくる。

 

「ロイ様、手を出してもらってもいいでしょうか?」

 

「あ、ああ」

 

いきなりの発言に俺は若干困惑しながらもヴァレリーに向かってゆっくりと右手を突き出した。ヴァレリーは両手で俺の右手を包み込むと目を閉じる。

俺が疑問符を浮かべているとヴァレリーが口を開く。

 

「あなたには、何かが憑いているのかもしれません………」

 

ヴァレリーはそう言うと目を開き、部屋の片隅に視線を送った。

 

「あのヒトたちのような…………」

 

「………………」

 

俺は冷や汗を流しながら無言で目を泳がせる。ヴァレリーが言っているのは亡者たちのことだ。それが、俺にも憑いている………?

リアスたちも困惑するなか、ヴァレリーがその何かと話し始める。

 

「----そうよね。やっぱり----。でも---」

 

俺が次の言葉を待っていることを察してか、ヴァレリーは再び俺たちにもわかる言葉を発する。

 

「過去を受け入れ、自分を見失わないことです。あなたが信じる皆様のためにも、あなたを信じる皆様のためにも………」

 

『過去を受け入れ、自分を見失わない』、か。よくわからんが、肝に命じておこう。

俺は頷き、少し雑に礼を言う。

 

「ご忠告どうも。まあ、気をつけるさ」

 

「はい。お気をつけて」

 

ヴァレリーは笑みながら頷くと俺の手を離してくれた。

生命の(ことわり)に触れることのできる聖杯。それを所有するヒトからの言葉。近いうちに何かありそうだな………。

俺が手を引っ込めながらそんなことを思慮していると、突然ギャスパーが話を戻した。

 

「ヴァレリー!今は忙しいかもしれないけど、お暇がいただけたら、ううん、僕が迎えに来るよ!そしたら、『二人で』日本を見て回ろう!」

 

いつになくハイテンションのギャスパー。もしかして、

 

「妬いたか?」

 

俺がイタズラっぽく言うと、ギャスパーが顔を赤くして狼狽えた。なんだ、図星か。

俺が笑みを崩さずに追撃をしてやろうとすると、

 

「ロイ先生、ギャーくんは人生初のデートのお誘いをしているんです。冷やかし禁止です」

 

小猫からツッコミが入った。

 

「だがな、小猫。こう、年下が頑張っていると弄りたくなるんだよ」

 

「ロ、ロイ先生!そ、そんなことをするヒトだったんですかぁっ!?」

 

ギャスパーが顔を赤くしたまま言ってくる。ま、やっていて楽しいし、見ていて安心できるからな。

一連の流れを見ていたイッセーとリアスは苦笑し、ヴァレリーは━━━、

 

「うふふ。そうね、ギャスパーと二人でお外を歩くのは楽しいでしょうね」

 

先ほどとはまったく違う、瞳を輝やかせた彼女本来の笑みを見せてくれた。ギャスパーなら、この()は助けられるかもしれないな。

俺はギャスパーに視線を送り、ばっちり目が合ったところでヴァレリーに視線を流した。

━━━━もう一息だ、もっと押せ。

俺のちょっとした応援が伝わったのか、ギャスパーが口を開こうとすると━━━、

 

「何か楽しいことでもあったかな」

 

くそムカつく第三者の声が庭園に響いた。俺も再び思考を真剣なものに戻す。

狙ったかのようなタイミングで入ってきたのはマリウスだった。作った微笑を隠そうともせず、こちらに歩み寄ってくる。

ヴァレリーの瞳に戻った輝きが失われ、彼女は不自然な笑みで答える。

 

「マリウスお兄様。皆様とお話をしていたのです」

 

マリウスは改めて俺たちにあいさつをしてくる。

 

「これはどうも。失礼します。ヴァレリーがお客様と面会されていると聞いて、顔だけでもと………」

 

「お忙しいなか、お気遣いありがとうございます。別の機会でもよろしかったと思いますが…………」

 

俺は軽く睨みつけながら敬語でマリウスに言うが、奴は苦笑しながら返してきた。

 

「いえいえ、お客様がお休みのところにお邪魔するというのは失礼だと思った次第でして。お邪魔でしたかな?」

 

俺はため息を吐き、マリウスに言う。

 

「だいたいは話し終えたところです。私たちもそろそろ戻ろうかと━━━」

 

「あ、あの!」

 

「何かな?」

 

俺の言葉を遮ったのはギャスパーだ。何かを決意した表情でマリウスに言う。

 

「ヴァレリーを解放してもらえませんか?僕ができることがあるのなら、なんでもします。だから!どうか、ヴァレリーをこれ以上、苦しめないで…………」

 

よく言えたな、ギャスパー。昔のこいつを知っている俺としては、最近の成長には目を見張るものがある。想像しにくいが、存外いい男になるかもしれないな。

マリウスはしばし考えると、不気味なほどニッコリと微笑んで答えた。

 

「わかりました。解放しましょう」

 

━━━ッ!乗りやがった!?聖杯を手放すつもりはないだろうに、ヴァレリーは解放するってのか!?いや、『解放』ってことは、まさか…………。

俺が一つの仮説を立てているなか、マリウスは続ける。

 

「ただし、少しだけ時間をください。女王がいきなり降りるのも体裁が悪いので、『準備』をしなければなりません」

 

マリウスの言った『準備』という言葉が妙に引っ掛かった。こいつが本当にヴァレリーを解放することはまずないだろう。ならば、一体何から『解放』するのか。………そんなもの、ほとんど決まっているじゃねぇか…………!

俺、リアス、イッセー、小猫が表情を険しくしているなか、それに気づいていないギャスパーがマリウスに頭を下げた。

 

「ありがとうございます!ありがとうございます!」

 

「いいえ、いいのですよ。ふふふ」

 

意味深な笑みを浮かべるマリウス。その横で手を取り合って喜ぶギャスパーとヴァレリー。

俺たちを襲う不吉な予感。できれば当たって欲しくないが、このまま行けば確実に━━━━。

マリウスの次の手を予想できても、クロウ・クルワッハがいる限り何もできない。せめてアザゼルが戻ってくれば…………。

俺は何もできない歯がゆさを痛感しながら、ヴァレリーとのお茶会は終わりとなったのだった。

 

 

 

 

 




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