グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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life11 告白

戦争が休戦状態に入り、しばらく経った頃。

魔王様全員を失ってしまった悪魔は、生き残った上役を中心にこれからどうしていくかを決めているそうだ。

そんな中、俺、兄さん、セラ、母さん、父さんの五人はグレモリーの屋敷のある部屋に集まっていた。

理由は、二天龍討伐作戦前にセラと交わした約束を守るためだ。

重苦しい空気の中、俺は四人に見つめられている。

そんな中、気を利かせてくれたのかセラが俺に訊いてくる。

 

「それで、ロイ。私やお義母(かあ)様に隠していることって何なの?」

 

俺はその問いを聞いて一度瞑目。覚悟を決めるように息を吐いてから口を開く。

 

「先に言っておきます。これから話すことは本当のことです。俺がおかしくなったというわけではないので安心してください」

 

俺の言葉にセラと兄さんは少しだけ首をかしげるが、父さんと母さんは動じることなく俺に視線を向けてくる。

それを確認して俺は続ける。

 

「俺には前世の記憶があります」

 

『━━━ッ!』

 

俺の言葉にさすがの母さんも驚愕の表情を浮かべる。いち早く言葉を理解したのか、父さんが訊いてくる。

 

「それは、どういうことだい?」

 

「言葉のままです。俺には、今までロイとして生きてきた以外の、いえ、正確にはそれ以前の記憶があります」

 

「「「「…………………」」」」

 

俺の言葉についに黙りこんでしまった四人。俺としては何かしらリアクションがあってくれると助かったのだが、さすがにそれは無理か。

 

「ロイ、その、前世の記憶はどういうものなの?」

 

母さんが困惑気味に俺に訊いてきた。前世の記憶と言っても━━━、

 

「物心ついた頃から戦場にいる、いわゆる少年兵でした。それからは、何かあるわけでもなく、死ぬまで戦場に………」

 

俺がそう言うと、再び重い空気が室内を満たした。前世は家族も親友もいなかった。ある程度の信頼を寄せる戦友はいたが、背中から撃たれないか、常に警戒していたことも事実だ。

 

「それで、どうして今告白をしようと思ったんだい?」

 

当然の疑問を父さんが言った。俺は一度頷き、口を開く。

 

「まず一つは話せばこうなることがわかっていたから……」

 

そして、セラを見つめながら、もう一つの、一番大事なことを言う。

 

「もう一つは、愛するヒトに隠し事は出来ないと痛感したからです」

 

それを言って俺は勢いよく四人に頭を下げた。

 

「今まで黙っていてすみませんでした。これで気味悪がられることも、異物と思われることも承知です。ですが、これが俺の隠していたことです」

 

しばらくの静寂が室内を包み、俺の胸の鼓動が早まり、額には脂汗が滲み出る。

俺が言葉を待っていると母さんが言った。

 

「頭を上げなさい、ロイ」

 

その言葉を受けてゆっくりと頭を上げる。そのまま少し自分を落ち着かせようとしていると、父さんが俺に歩み寄り、左肩に手を置いてきた。

 

「まったく、一人で抱え込まずにもっと早く言ってくれても良かっただろう?」

 

「まったくよ。子供の頃からずいぶん大人びていると思ったら、そういう理由だったのね」

 

母さんが父さんに続き、笑みを浮かべた。次に兄さんが少し困惑しながらも笑みを浮かべ、

 

「まったく、昔から困った弟だね………」

 

こんな俺を『弟』と呼んでくれた。そして、最後にセラがいつもの笑顔で言う。

 

「本当、もっと早く言ってくれても良かったんじゃない?私は、私たちは気にしないわよ?」

 

四人ともあっさりと受け入れてくれた。もしかしたら、Ms.神様はこうなることがわかっていてグレモリー家に、悪魔で一番深い情愛を持つ場所に転生させたのかもしれない。

俺が目元が少し熱くなっていることを感じていると、父さんが改めて『息子』に言い聞かせるように俺の肩に置く手に力を込め、父親の威厳を放ちながら言ってきた。

 

「いいか、ロイ。おまえは私とヴェネラナの自慢の息子だ。気味悪がる?異物と思う?そんなわけないだろ!」

 

父さんに面と向かってその言葉を言われ、少しだけ目元が湿っている気がした。俺がそれを感じていると共に、父さんが笑う。

 

「何だ、珍しいな。ロイが泣くなんて」

 

「え?」

 

俺は自分の目元を拭うと、確かに濡れており俺は涙を流していたようだ。それを意識したせいか、余計に涙が流れ始める。

それを聞いたセラと兄さんが父さんの背後から近づいて俺の顔を覗きこむと、おかしそうに笑った。

 

「本当だ。ロイが泣くところ初めて見たかも」

 

「そうだね。ロイは我慢強い奴だから」

 

と、言いながらセラは俺の頭を撫で、兄さんは右肩に手を置いてくる。

俺たちの様子を見ていた母さんが笑顔で言う。

 

「ロイ、分かったでしょう?ここにはあなたを避けるヒトは居ません。ここがあなたの居場所よ」

 

ここが俺の居場所………。前世にはそんな場所はなかった………、けど、今は………。

母さんたちの言葉に、溢れる涙が止められない俺は震える声で言う。

 

「ありがとう、父さん、母さん、兄さん……セラ。ありがとう………」

 

四人は笑顔で頷いてくれる。Ms.神様、今の言葉、おまえにも言ったんだぜ………?

俺がMs.神様にも心中で礼を言うと、母さんが訊いてきた。

 

「その前世の記憶ということはわかりました。ですが、ロイ。なぜそれをもって生まれたかはわかるのかしら?」

 

俺は言葉に困ったが、ここまで来たら正直に話してしまおう。

俺はそう決めて口を開く。

 

「神様的な何かに会った、からだと思います」

 

少し言葉を濁してしまった。もう百年以上前のことだ。Ms.神様の顔とかは思い出せない。あいつが本当に神様なのかも、今になって見ればわからない。

俺の言葉に母さんは表情がかたくなったが、

 

「まあ、それでロイが生まれたのなら、それでいいです」

 

と言って頷いた。訳のわからない神様が絡んだことに母さんなりに思うことがあったのかもしれないが、どうにか納得したようだ。

俺は流れる涙をある程度落ち着かせると、あることに気づき、肩に手を置く父さんに言う。

 

「それと、父さん……」

 

「何だい?」

 

父さんは俺の言葉を待ちながら笑みを絶やさなかったが、

 

「左肩、すごい痛い………」

 

「あ………」

 

俺が短めに言った言葉に間抜けな顔をしながら手を離す。あー、痛かった………。

左肩を優しく擦りながら、セラを見る。

 

「セラ……」

 

「何かしら?」

 

「こんな俺でも、おまえに隠し事していた俺でも、おまえを愛していいか?」

 

俺が訊くと、セラは心外だと言わんばかりの表情を浮かべながら言ってきた。

 

「もう、言ったじゃない。私は『あなたが何者でも大好きだから』って」

 

「そう、だったな……」

 

俺はセラに近づき、そのまま抱きしめる。セラは一瞬驚くが俺を抱きしめ返してくれた。

 

「まったく、見せつけてくれるね………」

 

「サーゼクスも頑張りなさい!」

 

「もう、あなたはあまり急かさないの」

 

俺とセラの言動を見て兄さんはいつかと同じ言葉を呟き、父さんは少し興奮した様子で兄さんを応援、母さんはそんな父さんを落ち着かせていた。

俺とセラは赤面しながら一旦離れる。すると母さんが父さんに言った。

 

「この事はシトリー様に言った方がいいのかしらね?」

 

それを受けた父さんはしばらく考え込むが、一つ頷いて、

 

「誰にでも隠し事はあるだろう?」

 

と言った。明らかに俺の覚悟を全否定してくる発言なのだが、多分本人に自覚はない。それにこのヒト、教える気もないのかもしれない。

俺が額に嫌な汗を滲ませていると、セラが言った。

 

「お父様は何となくロイが隠し事をしていることに気がついていましたよ?」

 

「なっ!?」

 

驚きの声を上げたのは俺だ。まさか、会った回数が極めて少ないあのヒトが!?

驚愕する俺をよそに、セラは笑顔で続ける。

 

「それと、『彼が何を隠していようと、私はおまえが幸せになれるのならそれでいいさ』とも言っていました」

 

その発言と共に笑顔のシトリー卿の顔がよぎったが、あのヒトもかなり親バカだな。

セラからの伝言を聞いた父さんが再び頷いた。

 

「そうか、流石はシトリー卿。それでも私たちの息子に愛娘を預けてくれるとは」

 

「今度挨拶に行かないとですね」

 

勝手に話を進める父さんと母さん。俺の告白って、あんまり大事になってないな。

俺が拍子抜けしていると、兄さんが言ってきた。

 

「とにかく、ロイは僕たちの家族であることは間違いない。僕も構わずに今まで通り………」

 

そこまで言うと、兄さんはイタズラでも思いついたような表情で言ってきた。

 

「前世の記憶があるということは、年齢は何歳かロイが上になるのかな?」

 

「兄さんは兄さんです………」

 

俺は苦笑混じりにそう答える。兄さんが敬語で接してくるのは、ちょっと気持ち悪い。

俺の心の声をよそに、父さんと母さんが言った。

 

「私たちはともかく、他の悪魔たちが何か言ってくるのは面倒だ。この事は他言無用にしよう」

 

「そうね。ロイとセラフォルーのこれからに関わってきてしまうわ」

 

どうやら、二人は俺とセラの今後が心配のようだ。

こうして、俺の覚悟の告白は案外あっさりと受け入れられ、俺としての生き方が変わることはなかった。

俺の問題は一応の解決となったが、悪魔が抱えている問題は、いまだに解決の目処がたっていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 




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