グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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life06 始まる儀式

外出していた俺たちが戻ってくると、アザゼルも戻ってきていたようで他のメンバーと話し込んでいた。

 

「帰って来たな。で、町はどうだった?」

 

アザゼルの質問に俺━━ロイが答える。

 

「馬車の窓から見たまんまだったよ。静かなもんだ」

 

「だろうな」

 

するとギャスパーが興奮気味にアザゼルに話しかける。

 

「アザゼル先生、聞いてください!マリウスさんが、ヴァレリーを『解放』してくれると約束してくれたんです!良かったですぅ。これでヴァレリーを日本に連れていってあげられます!」

 

ギャスパーの言葉を聞いてアザゼルは、俺たちのほうを見る。

 

「……話せ、何があった」

 

アザゼルが訊くとリアスが話始めた。

 

「面会の時、ギャスパーがヴァレリーを解放するように頼んだの。そうしたら、マリウスがそれを承諾したのよ………」

 

それを聞いたアザゼルは俺、リアス、朱乃、イッセーを部屋の隅に集める。

ギャスパーに聞こえないようにするためだ。

集合するとアザゼルが小声で話し始める。

 

「(わかっていると思うが、解放ってのは……)」

 

「(はい、やっぱり、よくないことですよね……)」

 

イッセーの呟きにアザゼルは頷く。

 

「(抜き取るつもりだろう、聖杯を。堕天使の技術も流失している。抜き取る技術があっても何らおかしくないさ。何せ奴らのバックは『禍の団(カオス・ブリゲード)』ときているからな)」

 

抜き取る、か。

宿主から神器(セイクリッド・ギア)を抜き取ると宿主は確実に死ぬ。マリウスのいう解放ってのはつまり━━━。

 

「(あの時マリウスは『解放』と言った。あれから二日、そろそろ『準備』ってやつが整った頃だろう。だったらすぐさま行動を起こすはずだ。どうにかしてギャスパーに伝えて、ヴァレリーを連れて逃げるが得策だな。脱出ルートはベンニーアたちが用意してくれているんだからな)」

 

俺の意見に話を聞いていた全員が頷いた。

今からでも行動に移れればいいんだが……。

とりあえず話はここまでにして、部屋の隅から皆の元に戻り話題を変える。

 

「ところでアザゼルはここ二日間、何してたんだ?」

 

「………ハーフヴァンパイアの神器(セイクリッド・ギア)について調べていたんだ。どうにも最近、神器(セイクリッド・ギア)を持って産まれてくるハーフが多いらしい。理由はわからんが」

 

ハーフの神器(セイクリッド・ギア)所有者か。ギャスパーやヴァレリーもそうだが、少しずつ増えているのか。

アザゼルは続ける。

 

「問題は吸血鬼側の研究者が神器(セイクリッド・ギア)に関する知識に明るくないということだ。マリウスのように独学で調べ上げようとする者もいるようだが、それでもレベルが低い。そこで色々と伝えてきた」

 

アザゼルの言葉に俺が問う。

 

「よかったのか?この時期に下手に技術提供したら、それはそれで利用される。てか吸血鬼相手によくできたな。そういうの嫌いそうだが………」

 

アザゼルは苦笑しながら返してくる。

 

「それもそうなんだが、俺と話した連中はクーデターが起こる前から研究に没頭していた。誇りうんぬんよりも俺の話に耳を傾けていたぞ。聖杯に関してはマリウスが当たっていたようだからな、彼らには謀反の気はなかったんだろう。だから最低限の情報は提供した。この国も神器(セイクリッド・ギア)で危機に瀕しているからな」

 

「まさかここにも禁手(バランス・ブレイカー)の情報が?」

 

俺の質問にアザゼルは首を縦に振った。

 

「ああ、そういうことだ。逃げるために使うならまだしも、力に魅せられ暴走することが問題だ。むこうもそれがわかっていたらしく、それに関しても対策を教えてきた。グリゴリからの派遣も約束したよ。どこも似たような問題を抱えてるな」

 

それを聞いて全員が苦笑していた。

そこで俺が訊く。

 

「それでアザゼル。聖杯に関しては何かわかったか?」

 

アザゼルは悔しそうな表情で言う。

 

「いや、ダメだった。聖杯はマリウスが独占しているそうだ。少しでも調べられれば対処もしやすかったんだが……」

 

やっぱりダメだったか……。

するとイッセーが俺に質問してくる。

 

「冥界は……サーゼクス様のところは今回の件はどうなんですか?報告はされたんですよね」

 

俺はそれを聞いて思い出していた。

初めてだった。俺の連絡にセラが何も言わなかった。言えなかったのほうが正しいかもしれないが………。

 

「一応はしたが、今のところ返信が来ていない。ただですらユーグリットのせいで混乱していたのに、間髪入れずに今度はリゼヴィムだ。あっちは大変なんだろ。兄さんもセラも身動き取れなくなっている。悪魔にとって『ルシファー』はそれだけ特別な存在だ。リゼヴィムは前ルシファーの実の息子だ。そいつが行動を起こした。それだけでまた旧魔王派が動き出してもおかしくない」

 

俺の言葉に全員がしんと静まりかえってしまった。

ようやく掴めそうな平和がまた遠ざかっていく。そんな感覚が俺にもある。こいつらもこいつらなりにそんな事を考えているんだろう……。

すると突然俺たちを不思議な感覚━━━結界に包まれたときと同じ感覚が襲った。だが嫌な感じではない。見知ったオーラを感じられたからだ

すると天井にシトリーの魔方陣が浮かび、そこから逆さまに何者かが頭を出してきた。

今まで別行動ていたベンニーアだ。

 

《どうも。外とここを繋げるのに時間がかかりやしたが、何とかなってよかったですぜ》

 

俺たちとは別行動で頑張ってくれていたからな、この部屋に張ったのは直接ここに移動するためか。一応脱出ルートの確保はできたみたいだな。

そうこうしていると天井から何かが降ってくる。

 

「きゃっ!」

 

そんな可愛らしい声を出したのはエルメンヒルデだ。着地に失敗し尻餅をついていた。ルガールとベンニーアは慣れた様子で着地していたが………。

着地に失敗して腰をさすっていたエルメンヒルデは俺たちが見ているのに気づき、すぐに立ち上がると咳払いをして改まった。

 

「ごきげんよう、皆様。お元気そうで何よりですわ」

 

いつかと同じように高圧的だが、さっきの出来事のせいで迫力に欠けると思ってしまった。

 

「エルメンヒルデ、この国に潜入していたのか」

 

俺の言葉にエルメンヒルデは頷く。

 

「当然です。町で城へのルートを工作員と決めかねているときにそこのベンニーアさんと裏路地でお会いできたものですから。━━━お知らせすることがありますわ」

 

エルメンヒルデは改まると真剣な表情で伝えてきた。

 

「━━━間もなく、マリウス・ツェぺシュ一派は聖杯を用いた一連の行動を最終段階に移行すると密告がありました」

 

━━━ッ!

それを聞いてギャスパーの顔が引きつる。

 

「最終段階……まさか」

 

驚くアザゼルにエルメンヒルデが言う。

 

「ヴァレリー・ツェぺシュから聖杯を抜き出して、この国を完全に制圧するようです。聖杯の力を高めて、この城下町の住民すべてを作り替える計画を発動させるそうですわ」

 

聖杯の力で住民全員を作り替える?

俺はあごに手をやり、エルメンヒルデに問う。

 

「それで作り替えたとして、それはもう吸血鬼と呼べるのか?」

 

俺の言葉にエルメンヒルデは嫌悪の表情を浮かべていた。

 

「おぞましい限りです。我々は町に侵入しているカーミラの者はツェぺシュ派の政府側と共に反政府派を打倒するつもりです」

 

なるほど、あっちも動くわけか。

ギャスパーはこの事実を聞いて曇った表情となっていた。

 

「あの、聖杯を抜き出されたら、ヴァレリーは………」

 

「━━━死ぬ。奴らは最初から抜き取るつもりだったんだろう。所有者が死ねば次の宿主のもとに行ってしまう。そうならないようにするには、宿主が死ぬ前に抜き出して手元に置くしかない」

 

アザゼルからハッキリ告げられた言葉でギャスパーは崩れ落ちた。

 

「……そ、そんな。マリウスさんは……」

 

ポロポロと涙をこぼすギャスパーをリアスが優しく抱いた。

 

「あそこまでの卑劣漢もそうはいないものよね。━━━不愉快極まりないわ」

 

リアスの瞳は怒りの色に満ちていた。

 

「こうなったら、力ずくでヴァレリーを━━━」

 

イッセーが息巻いて言葉を発した瞬間、窓から強烈な光が差し込んだ。

吸血鬼の国に日が射すことはない。日光の光は吸血鬼にとって猛毒だからだ。━━━これは、魔方陣の光!

俺たちはすぐさま外の様子を見る。

巨大な光の壁が城を覆うように発生していた。

これはつまり━━━。

 

「先を越されたな。カーミラ側の動きが察知されているぞ」

 

「オリジナルの紋様が刻まれているが、神滅具(ロンギヌス)を抜き取るときに描くもので間違いない!」

 

「だったら━━━━」

 

『行動開始だ』と言おうとした矢先にエルメンヒルデに遮られる。

 

「吸血鬼の問題は吸血鬼が解決します。あなた方は脱出してください」

 

俺はその言葉に嘆息した。

 

「おまえな、この状況でも手を出すなと?」

 

「はい、そうです」

 

エルメンヒルデは強気に笑むが一度瞑目して言葉を続ける。

 

「━━━と言いたいのですが、我らが女王カーミラがあなた方の援助をお認めになられましたわ」

 

不満そうな声音だが、ここまで来たら認めるとかいう問題じゃないだろ………。

 

「ま、俺たちは『ギャスパーの補佐』をするだけだ。それでいいんだろ?」

 

どうせ俺たちが派手にやったら色々と言ってきそうだがら表向きはそう言っておく。

それにエルメンヒルデは頷いた。

 

「……その通りです。それではごきげんよう。お手数ですけれど、外と繋げてください」

 

ベンニーアに転移を頼むエルメンヒルデにイッセーが訊く。

 

「案外、あっさり任せるんだな?」

 

「あなた方の実力は買っていますので」

 

それにエルメンヒルデは皮肉げに返した瞬間、転移魔方陣に『落ちていった』。

 

「きゃぁぁぁ━━━━━」

 

魔方陣の先からも悲鳴が聞こえるんだが……。

俺が何とも言えない表情をして魔方陣を眺めているとベンニーアは舌を出しながら言う。

 

《繋げた先もどっかの天井ですぜ》

 

「あんまりいじめんなよ?」

 

俺とベンニーアのやり取りを他所に、ギャスパーが強い瞳で訴える。

 

「━━━救います。僕、ヴァレリーを救いたい!皆さん!どうか、力を貸してください!」

 

あのギャスパーがここまで男の顔をするとはな。まぁ、答えは決まっている。

全員がそれに頷き、それぞれがギャスパーに覚悟の言葉を言ってギャスパーを鼓舞していくなか、俺、アザゼル、ロスヴァイセの年長組はこんなことを話していた。

 

「あれこそ若さだな。なぁ、アザゼル?」

 

「ほんと、若いっていいねぇ。なあ、ロスヴァイセ先生」

 

「私もお二人と比べると若いのですが、頑張らせていただきます!」

 

これで全員の意見がまとまったな。

俺は咳払いをして全員に言う。

 

「そんじゃ、オカルト研究部フルメンバー、生徒会新人二名、そして教師三名。出陣だ!俺たち悪魔の力、見せてやろうぜ!」

 

『おおっ!』

 

俺の言葉に全員が勢いよく返事をした。

さあ、出撃だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━と、息巻いたはいいが、作戦というものは大切だ。

俺たちは客室に結界を張り、作戦を確認していた。

例の魔方陣を堂々と展開した以上、城の中でも外でも臨戦態勢になっているはず。そしてこの部屋にも攻撃が飛んできてもおかしくないため、念のために結界を張ってから確認しているわけだ。

さっきから爆音とかが聞こえてはいるんだがな。

アザゼルはそんな爆音を気にせずに懐から一枚の図面を床に広げる。

 

「くすねてきた城の見取り図だ。これを見ろ。城の地下深くに広大な空間が存在する。階層は五つ。ツェペシュ派は大事な儀式を一番下の階層でおこなっていたそうだ。聖杯の取り出しもおそらく………」

 

「そんで、そこに『禍の団(カオス・ブリゲード)』もいるわけか」

 

俺の言葉にアザゼルは頷く。

 

「クーデターに関与している上役やその近衛兵たちもここにいるだろう。んで、俺たちの目的地もこことなる」

 

アザゼルが見取り図の最下層にあたる場所を指差しながら言った。そして木場が見取り図に印をつけていく。

「この二日間で城に待機している兵士の活動範囲はだいたい把握しました。『いちおう』地下まで、できるだけ兵士と遭遇しないルートは用意できそうです。『いちおう』というのはこの非常事態で配置が変わっていると思うからです」

 

忙しいなか木場にやらせてしまったが、流石は木場だ。仕事が早い。

木場が不敵に笑みながら続けた。

 

「どちらにしても、地下で必然的に強敵と遭遇するのは僕たちということですね」

 

そういうことだな。いつもこんなんだから慣れてるけどさ。

イッセーも同じことを思ったのか頭をポリポリかいていた。

 

「俺たち、こういうのばかりですね」

 

「そう言うなよイッセー。そのおかげで五段飛ばしぐらいで成長を遂げているわけなんだしよ」

 

「そ、それもそうですけど……」

 

俺とイッセーのやり取りがそこで終わったことを確認したアザゼルが告げる。

 

「今回の目的は聖杯の抜き出しを阻止すること。最悪の場合はマリウスを捕縛する。マリウス以外は………できるだけ生き残らせろ。テロリストどもは問答無用で始末していい。それは俺が許す。危なくなったら、ヴァレリーと聖杯だけでも取り戻して逃げの一手だ」

 

もとよりそのつもりだ。あの黒ずくめの男━━クロウ・クルワッハ、最強の邪龍を相手にするほどの余裕も戦力もない。

 

「ぼ、僕はヴァレリーを取り戻します!」

 

ギャスパーが立ち上がり、気合いの一声。

それに全員がいい笑顔となった。

 

『もちろん!』

 

異口同音で意見が一致した。さて、やることもルートも決まった。あとは行動あるのみ!

全員が立ち上がり、客室を勢いよく飛び出した━━━。

 

 

 




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