グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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life07 地下を目指して

俺たちはあれから特に戦闘をすることなく、無事に地下への階段を下りていた。

外の戦闘はなかなか激しいらしく、城の壁が所々破壊されていた。さすがに地下までは影響はないだろうから、それはあまり気にしなくてもいいだろう。

そんなことを思いつつ階段を下りていくと最初の階層に出る。

天井の光で奥まで見えるが、広い部屋の約半分を鎧を着込んだ吸血鬼の兵士たちで埋め尽くされていた。全員が手に得物を持ち、赤い双眸を輝かせている。

数はざっと見ても百は越えている。この部屋、なかなか広いな。大の男が百人入ってもまだ余裕あるぞ。

アザゼルが手元に光の槍を作り出しながら言う。

 

「さて、誰がいく?結構な数だ。これからのことを考えると無駄に消耗したくはない」

 

「アザゼルは下で仕事があるからな、下がってろ」

 

俺が前に出て銃剣を取り出して構えるが、俺よりも前に出る影が二つ。

 

「……問題ない」

 

《ま、ここはあっしらが》

 

ルガールとベンニーアだ。確かにこの二人なら十分かもな。

 

「それじゃ、任せる」

 

俺はそう言って構えを解いて下がると、ベンニーアは異空間から身の丈以上に長い鎌を取り出した。

 

《それじゃ、いきやすぜ》

 

緊張感に欠ける声音でそう言いながらベンニーアは飛び出していく!

まるでアイススケートをするかのように床を滑り吸血鬼の一団に斬り込んでいく。残像を残しながら高速で動き回る、死神(グリム・リッパー)特有の動きだ。

 

《ほらほら死神っ()のお通りですぜ》

 

ベンニーアは軽い口調でさらに速度を上げていき、超高速で生じた残像で吸血鬼たちを翻弄、奴らはそれを見切れずに一方的に攻撃されている形だ。

木場がベンニーアの動きを見て感嘆の息を漏らす。

 

「……あの残像は目で捉えられるけど、超高速の末に生じたものだ。捕まえるのは容易くない動きだよ」

 

リアス自慢の『騎士(ナイト)』に言わせる辺りすごいんだろうな。俺にはしっかり見えている。てか、見えなきゃ恥ずかしいわ。

 

《死にやすぜ………あっしの姿を見た者は皆死んじまいやすぜ》

 

ベンニーアはそう言いながら吸血鬼を切り刻んでいくが、パッと見ただけでは怪我もしていないのに斬られた吸血鬼が次々と倒れていく。倒れてた吸血鬼はまるで魂を抜かれたように動かなくなった。

 

「あれが噂に聞く死神の鎌(デスサイズ)か。斬られても怪我はしないが魂を持っていかれる。死神の技量によってその持っていける魂の量は変わるらしいが………。あの様子だとベンニーアの実力はなかなかのもんだな」

 

いつぞやに俺たちを襲撃してきた死神ご一行も持っていたんだが誰も斬られなかったからな。本当は怖い武器なんだよな。

 

「本人の資質と『騎士(ナイト)』の駒との相性が抜群だな。よく見とけよ」

 

俺はゼノヴィアを横目で見ながら言う。

ゼノヴィアは不服そうな顔をしていたが俺が言う前からしっかり見ていたがな。

俺がこんなことを言った理由は簡単だ。つい先日、木場から、

 

『どうにかしてゼノヴィアにテクニックの重要性を教えたいんです!力を貸してください!』

 

と、キャラにもなく必死に訴えられたからだ。

俺がそんなことを思い出しているなか、ルガールがコートを脱ぎ捨てた。シャツの上からでもわかるいい鍛え方をしていると思える肉厚の身体だ。

 

「…………いくぞ」

 

ルガールがそう一言呟くと彼の体の節々が脈動し、隆起していく。

肉体の変化に服は耐えきれずにミチミチと音を立てて破れていった。

ルガールの口に鋭い牙が生えそろい、獣のように口全体が突き出していく。爪が鋭利に伸びていき、全身に灰色の体毛が出現していった。

 

オオオオォォォォォン!

 

室内に獣の咆哮が響き渡る。今のを聞いた者はすぐさま彼が何なのか理解できるだろう。そうルガールは━━━、

 

「狼男だと!?」

 

「くっ!悪魔に転生した奴がいたというのか!」

 

吸血鬼たちが言う通り『狼男』だ。

ルガールは首をコキコキ鳴らしながら言う。

 

『俺もシトリーの者としてやらせてもらおう』

 

そう言うなりルガールは高速で飛び出していき、吸血鬼を紙くずのように引き裂いていく。

 

「さすが、狼男だ。吸血鬼とやり慣れてる」

 

「ロイ先生、どういう意味ですか?」

 

俺の呟きにイッセーが質問してくる。

俺はルガールたちの動きから目を離さずにイッセーに返す。

 

「吸血鬼と狼男は古くから争い、お互いを天敵として認識してるからな。だからルガールは吸血鬼とやり慣れてるんだよ」

 

俺がそう言うとイッセーは納得してくれたのか頷いた。

俺が説明しているなかでもルガールは一方的に吸血鬼を惨殺していく。逆に吸血鬼の攻撃はどれもダメージになっていない。

 

『ルガールの兄ちゃんはただの狼男じゃありやせんぜ』

 

ベンニーアが攻撃をしながら言う。

ベンニーアの言葉を合図にルガールの両腕に紋様が浮かび上がる。魔法の術式に似た紋様から炎が生まれルガールの腕を包み込んでいく。そして炎に包まれた腕で吸血鬼を殴りつけていく。

かすめただけで吸血鬼の体を燃え上がらせ、鎧を溶かしていった。

それを見て驚くイッセーにベンニーア吸血鬼を切り伏せながら解説を入れる。

 

《高名な魔女と、灰色の毛並みで有名な狼男一族の間に生まれたハイブリッドっつーチートウルフガイですぜ》

 

『チートウルフガイ』って、その呼び方はどうなんだ?

俺はルガールに目を向けるが、戦闘に集中しているのか、それともベンニーアの軽口に慣れているのか、特に気にする様子もなく吸血鬼を殴り倒していた。

 

「ソーナったら、いい『戦車(ルーク)』を見つけたものね」

 

リアスもルガールの特徴に舌を巻いていた。実際、ルガールのほうがベンニーアより多く吸血鬼を殺しているようだ。

ルガールは狼男の俊敏性と『戦車(ルーク)』の圧倒的な火力。ベンニーアは死神(グリム・リッパー)としての技量と『騎士(ナイト)』の速度。どちらも好相性のようだ。

まったく頼もしい限りだな。リアスとソーナがゲームをやったら、これは面白くなりそうだ。

俺がそう考えていると俺たちの後方、つまり上の階から複数の足音が聞こえてくる。全員がそれを察知していた。オーラの質からして、敵の増援だな。

 

『行け。ここは俺とベンニーアに任せてもらう』

 

ルガールが吸血鬼を引き裂きながら言った。

 

「任せていいのね?」

 

リアスの言葉にベンニーアが鎌を振りながら答える。

 

《そのために派遣された面がありますぜ。新人コンビは能力のお披露目と主役のための足止めが適任なんでさ》

 

『さっさと悪魔の力に慣れろということだろう。我が主はスパルタだ』

 

ベンニーアとルガールはそう言いながら攻撃を繰り返していく。

俺たちは頷きあい次の階段へと走り抜ける。

到着したら全員を先に行かせて俺は振り向き、吸血鬼を倒し続ける二人に言う。

 

「ここは任せだぞ!新入りコンビ!」

 

ベンニーアとルガールは親指を立てる。

もう言葉はいらないな。

俺はそれを確認すると、リアスたちに追いつくために足早に階段を駆け下りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上の階をルガールとベンニーアに任せて階段を下りていくなか、ゼノヴィアが呟く。

 

「……シトリーの戦力増強は凄まじいな。ゲームをしたら次はかなり食い込まれるんじゃないか?」

 

俺が言う。

 

「ソーナのほうが眷属のバランスは上だな。火力重視じゃこれから大変だぞ。リアス」

 

リアスが息を吐いた。

 

「わかっています。私はソーナをなめたことなんて一度だってありはしません」

 

それはそうだろうな。ソーナは兄の俺よりも長くリアスと一緒にいる。お互いのことは知りつくしているだろう。

階段を下りていくと再び開けた空間に出た。

第二階層にいたのは━━━。

 

「来た来た。主どのがおっしゃった通りだ」

 

「うむ、噂のグレモリー眷属」

 

「強化された我々にとってはいい相手になりそうだ」

 

上の階の連中と比べると格上の雰囲気を醸し出している吸血鬼三人。鎧などは身につけず、普通の衣服を着ている。

 

「クーデター派の上役の直属の戦士だろう。純血ではないだろうが、吸血鬼の特性を色濃く持つ戦士だ」

 

アザゼルが解説してくれる。

さて、いい加減働きますかね。

俺がそう思って前に出ていこうとすると、俺よりも速く二つの影が飛び出していった。

 

「お先に」

 

「失礼します!」

 

ゼノヴィアとイリナのコンビだ。

二人は瞬時に敵との距離を詰め聖剣と量産聖魔剣を交錯させて吸血鬼の戦士に斬り込んでいく。

イリナが使っている量産聖魔剣は、木場が天界に提供した聖魔剣をもとに作られたものだ。量産と言っても聖魔剣なので十分強力だ。

 

「くっ!聖剣か!」

 

吸血鬼もそれに気がついたのか、身体を霧に変えて攻撃を避ける。だが二人の攻撃はそれだけでは終わらず、そのまま聖なる波動も飛ばしていった。

後方にいた吸血鬼の男が身体をコウモリに変えてそれを避けた。

 

「伸びろっ!」

 

ゼノヴィアが二撃目とばかりにデュランダルの刀身を鞭状に変えて、吸血鬼を切りつけた。

 

「ぬわっ!」

 

その吸血鬼はそれを受けるがあまり効果が通っていないようだ。あれが聖杯による強化の影響と見るべきだろう。

あのままやればそのうち倒せるだろうが、今は時間がない。

下にクロウ・クルワッハがいる以上、イッセーと龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の魔剣━━グラムを使える木場は絶対に行かせなければならない。だったら━━━。

「俺が相手をする」と伝えるために口を開こうとすると、小猫が前に出た。

 

「…………ここは私に任せてください」

 

小猫はそう言うなり日を閉じ、深く息をし始める。

なんだろう、さっきから出番を取られまくっている気が………。

俺がみんなにバレないように小さくため息を吐いていると、小猫は続ける。

 

「……姉様に教えてもらったものがお役に立ちそうです」

 

次第に小猫の体に淡い白い光が集まり始める。

その光が膨れ上がり大きくなっていき、何かを形作り始めた。

そして光が収まるとそこにいたのは………黒歌に似た女性だった。

白い着物を着て、猫耳、二又の尻尾、つまり━━━。

 

「小猫、なんだそれ………」

 

困惑気味の俺の質問に大きくなった小猫が答えた。

 

『近隣に存在する自然の気を集めて、自身の闘気と同調させることで強制的に成長させました』

 

声は完全に小猫のもの。それはいいが、なるほど、強制的な成長か………。

 

『白音モードと私は呼んでいます』

 

小猫が自身の胸に手をあてながら言った。

『白音モード』か。よく黒歌が呼ぶ昔の名前、いや、小猫の本名と言うべきものだな。

━━━にしても、色々な意味でデカい。身長だけでなく、胸も………。イッセーが喜びそうだ。てか、鼻の下が伸びている。

そんなイッセーを気にすることなく、小猫が右手を横にすると、その先に大きな車輪が出現した。

その車輪は白い炎に包まれていく。

 

『━━━火車。猫又が操る能力のひとつです』

 

『火車』、か。確か死者をあの世に誘う妖怪、猫又のもうひとつの姿と言われていたな。死体から起き上がって吸血鬼になったあいつらには効果抜群だろう。

小猫は宙にいくつもの火車を出現させると、それを吸血鬼たちに放っていく!

火車は勢いよく回転しながら高速で吸血鬼たちに迫っていく!

 

「見知らぬ技だが、この程度!」

 

吸血鬼は不敵に笑いながら余裕で避けるが、火車は吸血鬼を追い続け、ついに捉えた!

その瞬間、吸血鬼を白い炎が包み込む!

 

「う、うわぁぁぁ!」

 

絶叫をあげながらその吸血鬼は灰になった。一撃で灰になるって、恐ろしい技だな。

俺が関心しているなか、吸血鬼は驚愕の表情をあらわにした。

 

「な、なぜだ!?我らは炎すら寄せ付けない体を手に入れたはずだ!?」

 

弱点を克服したと思ったらこれだ。そりゃ驚くな。

小猫は無慈悲に言う。

 

『無駄です。その炎は死者を燃やし尽くすまで決して消えることはありません。仙術の応用により取り込んだ自然の気を浄化の力に変えていますから。弱点どうこうではありません。あなたたちの存在理由そのものから作り替えない限り、炎はあなたたちを燃やしていきます』

 

匙のヴリトラの炎の真逆ってことか。匙は呪い殺し、小猫は清めて消し去る。考えてみると、匙の炎も結構怖いな………。

俺の中で駒王町に残る匙の評価が若干上がるなか、吸血鬼が回避を諦めたのか、小猫に接近していく!

 

「こうなれば、攻めるまでだ!」

 

小猫は殴りかかられても避けようともしない。そして、その拳が小猫に触れた瞬間━━━灰になった!

 

『……今の私は浄化の力そのものです。触れただけで消えてしまいますよ?』

 

触れただけでアウト。浄化ってすごいんだな。

俺は感嘆の息を吐きながらイッセーに言う、

 

「すごいが、おまえは触れないほうがいいかもな。触れた瞬間に消し飛びかねないぞ?」

 

「そ、そうかもしれませんね…………」

 

若干テンションが下がるイッセー。今すぐにでもあの胸にダイブしたいんだろう。

俺は小猫に視線を戻し、彼女に言う。

 

「━━━だが、あの力なら、邪龍相手でも通用しそうだな」

 

「ちくしょおぉぉぉぉぉ!」

 

俺の言葉をかき消すように断末魔を発しながら、最後の一人となった吸血鬼も消し飛んだ。

片付いたのを確認して息を吐く小猫。かなり疲労しているようだ。

そんな彼女にイッセーが近づいていくと、小猫は体をもじもじさせながら頬を赤く染めて言う。

 

『………イッセー先輩。…………おっきくなりました』

 

「た、確かに………大きくなったな」

 

イッセーが小猫の体を、特に胸を見ているように見える。

小猫は上目遣いでイッセーに言う。

 

『この状態はあまり長いこと維持できないんです』

 

小猫がそう言い終わると同時に彼女を包んでいた光が止み、体が元の大きさに戻ってしまった。途端に力が抜けたように崩れ落ちた。

 

「……ふぇ」

 

意識を失う前にリアスが小猫を抱き留める。

 

「お疲れ様、小猫」

 

頭を撫でるリアス。

しかし、最近こいつらの成長は目を見張るものがある。リアスが本格的にレーティングゲームに参戦したら、業界が盛り上がりそうだな。

 

「初めての実戦で一気に消耗しちまったんだろう。少し休ませてやれ」

 

アザゼルの言葉にイッセーが頷き、小猫をおんぶする。

俺たちはまったくと言っていいほど消耗していない。このまま一気に駆け降りる!

俺たちは頷きあい、さらに下を目指して走り出した。

 

 

 

 

 




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