俺━━兵藤一誠は小猫ちゃんをおんぶしながら階段を駆け下りていた。
さっき見せてくれた『白音モード』。将来小猫ちゃんがあんな綺麗なヒトになると思うと、俺は嬉しいです!
俺の横を走るロイ先生はさっきから小声で━━━、
「(なんで胸に目がいっちまうかな………?他に見るものがあるだろうが…………。修学旅行からこんな調子だよな…………)」
と、ぶつぶつ呟いていた。
お、俺が小猫ちゃんの胸を見て喜んでいたことが気になったのかもしれない。
ロイ先生はリアスが『スイッチ姫』と呼ばれたり、胸が俺のパワーアップに関わっていることを気にしているから、余計なのかもしれない。
けど、『修学旅行から』って、なんのことだろう?俺としては修学旅行の時に大きな迷惑をかけてしまった記憶しかないけど………。
俺がそんな事を考えていると、いきなりロイ先生の表情が険しくなり、殺気立ち始めた。
俺が疑問符を浮かべた瞬間、階段の先から邪悪なオーラを感じ取った。この気配、ロイ先生が真っ先に気づいたことも頷ける。
俺たちがその階層にたどり着いた瞬間、そのオーラの主が哄笑をあげた。
『グハハハハハハハッ!この間ぶりだなぁ、悪魔に
ちゃぁぁぁぁぁぁんっ!』
黒い鱗、銀色の双眸。巨大なドラゴン!
「グレンデル………ッ!」
ロイ先生が邪龍━━━グレンデルを睨みつける。あの時頭を吹き飛ばされたのに、ぴんぴんしていやがる!
『そうだぜぇ、おまえらをぶっ殺したくてたまらねぇグレンデル様だぜぇぇぇっ!』
相変わらずの悪意を全身から波動を放ってくれていた。
ロイ先生がゼノヴィアに問う。
「ゼノヴィア、確かエクス・カリバーはおまえの許可があれば俺でも振れるんだよな?」
確か、できたはずだ。サイラオーグさんとのゲームでロスヴァイセさんに渡していた。
ゼノヴィアが頷く。
「ああ、時間制限つきだができる。それを訊いてどうするつもりなんだ?」
ゼノヴィアがロイ先生に聞き返すと、ロイ先生はグレンデルの後ろ、下に続く階段の入り口を銃剣で差した。
「こいつは俺が受け持つ。おまえらは行け」
ロイ先生の進言にアザゼル先生が驚愕しながら返す。
「ロイ!おまえ、この下にはもう一つ階層があるんだぞ!?ここでおまえが抜けるのは━━━」
「グレンデルを抑えられるのは俺かアザゼル、イッセーぐらいだ。アザゼルには仕事があるし、イッセーたちにはクロウ・クルワッハの相手をしてもらわないといけねぇ。だったら、俺が残るさ」
ロイ先生はそう言うと、両手の銃剣の銃口をグレンデルに向ける。あの時と同じように倒すつもりだろう。だったら、なぜゼノヴィアにエクス・カリバーの話を……?
俺が疑問符を浮かべるなか、ロイ先生は続ける。
「今回は手早く済ませたんでな、火力が欲しい。デュランダルの制御が難しくなると思うが、『破壊』と『擬態』、ついでに『夢幻』をくれ」
「私も残ればいいんじゃないのか?」
ゼノヴィアがまっとうなことを言う。
ロイ先生とゼノヴィアの二人で戦えばそれでいいはずだ。
だが、ロイ先生は申し訳なさそうに言う。
「悪いが、足手まといだ。それに、下にできるだけ数をやりたいんでね」
ゼノヴィアはその一言に眉を寄せて悔しそうに息を吐き、エクス・デュランダルの鞘を変形させる。
切っ先から刀身の半分の部分が変形し、ゴツい一本の聖剣になった。
すると、ロスヴァイセさんがロイ先生の手に何かの魔方陣を描く。
「この術式で聖なるオーラを中和できます。短時間だけですから、あまり過信しすぎないでください」
「ありがとうな」
ロスヴァイセさんはロイ先生にお礼を言われ、少し頬を赤くしていた。
ロイ先生は銃剣を異空間にしまい、術式のかけられた右手で三種類の特性が混じったエクス・カリバーを握った。
準備を整えたロイ先生に対してグレンデルが吠える!
『悪魔ちゃん、舐めてんのか?あぁ!?俺様が通すわけねぇだろうが!ここで全員ぶっ殺すんだよ!』
ロイ先生はグレンデルに構うことなく、エクス・カリバーを大上段に構えると一気に振り下ろした!
破壊の力を乗せたのか、俺たちを大量の砂煙を包み込む!さ、先が見えないんですけど!?
「走れッ!」
『━━━━ッ!』
ロイ先生の指示に俺たちは反射的に反応して一気に駆け出す!程なくして砂煙から全員が脱出したのだが、俺たちは驚愕した!
『くそが!うざってぇ!どれが本物だ!』
グレンデルが足元にいたロイ先生を踏み潰そうとしたが、その直前にロイ先生は霞のように消える。
てか、俺の横を俺が走ってる!?俺だけじゃない、リアスが、木場が、朱乃さんが、この場にいた全員が何人もいる!?
まさか、『夢幻』の力で作られた幻なのか!?『夢幻』を要求したのはこれが狙い!
グレンデルは縦横無尽に逃げ回る幻の中から本物を探すように時には拳を放ち、時には尻尾を振るうが、どれも本物を捉えることはない。
グレンデルが舌打ちをしながらオーラの関知をしようしたのか、一瞬だけ動きを止めた瞬間、ロイ先生『たち』が襲いかかる!
ロイ先生たちの『破壊』の力を乗せた猛攻で大小様々な切り傷が生まれていき、体のあちこちから不気味な青い血が吹き出していく!
そして━━━━、
『ぐおおぉぉぉぉぉぉおおおお!?』
グレンデルの叫び声!見ると、左目から大量の血が吹き出していた!ロイ先生たちの銃剣の銃口からは魔力が煙のように漏れ出ている。また目潰しをしたようだ!
俺が階段にたどり着いた瞬間、ロイ先生たちが一ヵ所にに集まり、重なりあっていく。
そして、最後には本物一人だけになった。一人になったロイ先生がこちらに視線を送ってくる。
「任せたぞ………」
一人になったロイ先生が俺たちに背中を向けながらそう言うと、俺たちの幻が全て消える。
見ると、俺たち全員が無傷で通りすぎることができたようだ!足に自信のないアーシアはゼノヴィアに担がれていたみたいだ。
俺たちはそのまま全速力で階段を駆け下りていく。この下には、おそらくクロウ・クルワッハがいる。俺たちで勝てるかはわからないけど、ロイ先生のためにも頑張るしかない!
━━━━━
『くそが………ッ!』
グレンデルは悪態をつき、俺を睨みつけてくる。
俺も息を整え、いつかと同じように頭を吹き飛ばそうとすると、
『同じ殺され方するわけねぇだろうがぁぁぁぁぁああああぁぁぁッ!』
グレンデルは叫びながら、銃弾のめり込んだ左目に指を突っ込んだ!そのまま『ぐちゃぐちゃ』と嫌な音を響かせながら左目の中を探り、何かを引き抜くとそれを投げ捨てた。
乾いた音と共に銃弾が床に落ち、転がっていく。
「自分の目を抉るとは、恐ろしい奴だな…………」
俺は思わず苦笑してしまうが、すぐに切り替えてエクス・カリバーを握り直す。
グレンデルが左目から垂れる血を舌で舐めとり、狂喜的に笑む。
『グハハハハハハハッ!ドライグには逃げられちまったが、てめぇを殺して追いかければいいだけだよな!下にはクロウの旦那がいるんだからよ!俺が行くころには終わっちまっているかもしれねぇけどな!』
「おまえに殺されるほど俺も弱くねぇし、イッセーたちも弱くねぇよッ!」
俺は言い切ると同時に銃弾を放つ!黒い軌跡を残して飛ぶそれを、グレンデルは体を大きく動かして避けた。
『ようは当らなきゃいいんだろぉ?簡単じゃねぇか!』
確かに、中から食い破るためには弾丸を中に通さなければならない。それができないのなら━━━。
俺は銃剣を剣モードに変え、逆手持ちにしながら刀身に魔力を込めていく。刀身が紅の魔力に包まれ、さらに魔力を込めていくと黒い魔力が刀身の包んだ。
俺はさらに魔力をコントロールして刃のみに魔力を集中。刃のみが黒く染まり、腹や峰は紅に戻る。
黒と紅のツートーンカラーの剣を見て、グレンデルは笑う。
『へぇ、剣か!いいぜ、へし折ってやる!』
グレンデルの挑発は無視し、俺はゆっくりと息を吐いた。そして━━━!
フッ!
音を置き去りにして一気に飛び出す!
グレンデルは目では追えていないが、接近していく俺に的確に攻撃してくる!だが━━━━!
「遅い!」
『━━━ッ!』
グレンデルの攻撃はどれも遅く、見てからでも避けられる。そして、隙だらけのグレンデルに『破壊』の力を乗せたエクス・カリバーの一撃を放ち、ドラゴン最硬クロスの鱗を無理やり砕き、滅びの刃で出来立ての傷を抉るように斬りつけていく!
グレンデルが払おうとすれば的確に避け、反撃。火を吐こうとすれば一気に退避。決して欲張らず、一撃離脱を心がける。
『くそが!ハエか、てめぇは!?』
「どっちかと言うとコウモリだ!間違えるな!」
『うるせぇ!』
俺はそう言い返すと、グレンデルは火を吐こうと腹を膨らませ、口から炎を溢れ出して今にも発射しようとする!
俺は慌てることなく『擬態』の力でエクス・カリバーを鎖鎌に変え、鎖の先についた重りをグレンデルの口に目掛けて投げつける!
『あ!?』
グレンデルは間の抜けた声を出すが、その瞬間に奴の口に鎖が巻き付き、口を無理やり閉じさせる!
一瞬間を置いて━━━━、
ボン…………!
こもった爆発音が耳に届いた。
エクス・カリバーを剣に戻し、グレンデルの口を開かせると、
『ごはっ!』
炎の代わりに血を吐いた。離れた位置からでも肉の焼けた臭いが鼻に届き、俺の表情を険しくさせる。
口の中で炎が暴発したようだ。まぁ、発射間近の口を塞がれれば、ああもなるだろう。
『あちぃじゃねぇかこの野郎がぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』
グレンデルが半狂乱になりながら俺に向かって飛び出してくる!俺が横に飛ぶと、俺のいた場所にグレンデルの拳がめり込んだ。
初めてやったときは恐ろしかったが、冷静に対処すればそれほどでもねぇか…………。
その後に放たれる連打も全て避け、再び反撃をしていく。集中的に狙っている両手首からは絶え間なく青い血が流れ出ていた。
時々それが飛んできて俺の体を汚すが、いつも通りなので特に気にすることはない。
グレンデルの大振りな攻撃を避けて後ろに跳躍すると、奴はほぼノーモーションで火炎を吐いてきた!
俺は一瞬目を見開いて驚くが、すぐさま『破壊』の力を乗せたオーラを飛ばしてそれを相殺しようとすると━━━。
『らぁぁぁあああああッ!』
グレンデルが自分の炎を突っ切って俺に肉薄してくる!
俺は飛ばさなかった破壊のオーラをさらに溜めながら右脇に構え、グレンデルが拳を放つのを待つ。
グレンデルの拳が放たれ、俺に迫ってくる。
まだ、もっと引き付ける。
グレンデルの拳がさらに迫り、当たると確信した奴の表情が歪む。
━━━━今だなッ!
俺が不敵に笑むと、俺の『目の前で』俺が殴り飛ばされた━━━ように見えた。
グレンデルの表情が驚愕に変わる。殴ったはずなのにその感触がなければ当たり前だ。殴られた俺は空中で霞のように消えた。
グレンデルの表情が怒りに歪む。今殴ったのは幻だと気づいたようだ。
━━━だが、もう遅い。
俺は一気に『破壊』オーラを解放、『幻の俺』を殴ったグレンデルの腕の、ボロボロになった手首に振り下ろした。
瞬間、手に確かな手応えを感じた。
グレンデルの手首が宙を舞い、床に落下。手から流れ出る血が血溜まりを作る。
俺が短く息を吐いた矢先ににグレンデルの踏みつけが放たれる。俺は神速でそれを避けると、その一撃が床にヒビを入れた。
『━━━チッ!』
グレンデルは切り落とされた手首を見ながら舌打ちをする。
だが、その表情に怯えはなく、むしろ楽しんでいるようだ。死ぬことすらも嬉々として受け入れる。聞いてはいたが、本当に面倒な相手だな。
俺はため息を吐くと、グレンデルが嬉々として笑む。
『いいじゃねぇか、悪魔ちゃんよぉ!この前と違って積極的じゃねぇか!いいぜ、こっちもガンガン行くぜぇぇぇぇぇぇ!』
グレンデルは大量に血をぶちまけながらこちらに突貫してくる!
やはり、頭を吹き飛ばさねぇとダメか………っ!
俺は剣を銃剣に戻し、魔力弾を生成しながら再び構えを取る。
撃ち込んだ瞬間に刃を発生させねぇと、また抉り出させる。一気に削るしかねぇ!
俺は駆け出し、グレンデルに接近していく!
グレンデルを乱打を掻い潜り、弾丸を撃ち込んでは滅びの刃で貫き、できた傷を『擬態』で変化させた『破壊』の力を乗せたエクス・カリバーで抉る。
その度にグレンデルは悶絶するが、痛みの絶叫がすぐさま笑いに変わり、大量に吹き出る血なぞお構い無しに暴れまわる。
頭に一発でも入れば勝ちなのだが、手首から先がない右腕を盾代わりにして防いできやがる。致命傷がまったく狙えねぇ。
やっていて、こっちもおかしくなりそうだ…………。
数分か、それとも数十分か、時間の感覚がなくなりそうなほど俺はグレンデルと削りあっていく━━━。
「はぁ…………はぁ…………」
『はぁ…………ハハハ………いいねぇ………!』
グレンデルを削り続け、俺も息が絶え絶えになっていた。エクス・カリバーを杖代わりに使い、刀身も体も青い血がベトベトだ。魔力もかつかつになってきやがった…………。
グレンデルは俺の攻撃を受け続け、右腕がただついているだけの肉塊になっており、片ひざをついていた。それでも狂喜的な笑みを崩さない。
リアスたちは、大丈夫だろうか…………。
もはやその思いが俺を支えている気がする。
邪龍相手に粘り続ける。できれば、ここで最後にしてもらいたいもんだ………。
床や天井もヒビだらけであり、いつ崩れてもおかしくはない。
「いい加減終わらせる……………ッ!」
『いいぜぇ、悪魔ちゃんにも飽きたところだぁ』
俺はグレンデルの言葉に耳を傾けずに銃剣を剣に変え、ありったけの魔力を込める。エクス・カリバーは『破壊』の一撃に全てを懸ける…………ッ!
剣からはどす黒い、エクス・カリバーからは俺が持つには相応しくないほどの攻撃的なオーラを放ち始める。
「はぁ…………はぁ━━━ッ!」
俺は息を整え翼を展開、一気に天井近くまで飛び上がる!
『バカが!いい的だぜぇぇぇぇぇぇっ!』
グレンデルは腹を膨らませると広範囲に火炎を放ってきた!
避けるのも飽き飽きだ、押し切るっ!
火炎を避けることはせず、両手に握る二刀を大上段に構える。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
叫びながら二刀を振り下ろし、滅びと聖のオーラを解き放つ!
魔の黒いオーラと聖なるオーラ、相反するふたつの濁流がグレンデルの火炎を突破して本体を飲み込み、奴の声にならない断末魔が俺の耳に届いた。
同時に床が崩れ、白目を剥いたグレンデルが下に落下していく。下にはリアスたちがいる。それに、グレンデルにとどめを指さねぇと…………。
俺はグレンデルを追うように、底が見えない暗闇に落ちていった━━━━。
誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。