グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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皆様、明けましておめでとうございます。
今年も未熟な私と、そんな私が書いた作品をよろしくお願いします。








life10 殺す者 殺される者

クロウ・クルワッハに見逃され、階段を下りていく俺たち。

あぁ、くそ!魔力を消耗しすぎたな。魔力とエクス・カリバーの同時使用がここまで堪えるとは計算外だった!銃剣を重いと感じたのは初めてだ!

俺が小さく舌打ちをしていると、

 

「ヴァレリー、もうすぐだよ!」

 

いつの間にかギャスパーが先頭を走っていた。この先にヴァレリーがいることを感じ取っているのかもしれない。

そのまま階段を下りると、装飾の凝った石造りの大きな扉が現れた。ここが最下層への入り口だな。

俺たちは頷きあい、豪快に扉を開け放って中に入る。

中は祭儀場のようで、儀式に使うであろう怪しげな像や書物の棚が部屋のあちこちに置かれている。

 

「……ギャ…ギャスパー……?」

 

ヴァレリーの声が聞こえ、全員がそちらに顔を向けた。

そこには床に巨大な魔方陣と、その中央に置かれた寝台に寝かされたヴァレリーの姿が目に入った。

すでに魔方陣の怪しい輝きがヴァレリーを包み込んでいた。

ヴァレリーの表情は苦痛にまみれたものだ。

 

「ヴァレリィィィィィィ!」

 

叫ぶギャスパーが近づこうとするが、障壁に阻まれ近寄ることは許されなかった。

ギャスパーは魔方陣の中にいるマリウスを視線に捉えた。

 

「やめて!やめてくださいぃぃ!もうこれ以上、ヴァレリーをいじめないで!解放してあげてぇぇぇぇ!」

 

ギャスパーの叫びにマリウスは嫌らしい笑みを見せた。

 

「ええ、だから『解放』してあげようとしているのですよ。ほーら、もうすぐ彼女の心身を蝕んでいた聖杯が取り出されますよー」

 

「いやぁぁぁぁぁぁああああああ!」

 

いっそう高い絶叫がヴァレリーから発せられ、体から何かが出てこようとしていた。

 

「なろっ!」

 

「くっ!

 

「斬れないか!」

 

俺、木場、ゼノヴィアの三人で魔方陣に斬りかかるが、ビクくもしない。てか、魔力が足りねぇ!刃を長時間維持できねぇぞ!

歯を食い縛り、無理やり刃に魔力を込めていく横でイッセーも魔方陣を殴っているが、効果なしだ。

そんな俺たちを見てマリウスは嫌な笑みを浮かべたまま言う。

 

「下手な攻撃はやめてくださいね。下手すると聖杯も、聖杯の所有者も無事では済みません。元総督殿に案があったとしても無駄です。私は誰よりもこの聖杯に触れ、調べてきました。抜き出し方も誰よりも熟知しているのですよ」

 

アザゼルが手元に魔方陣を展開させて、マリウスが使っている術式を調べていたが、すぐに舌打ちをした。

「くっ!このプロテクトコードは……聖書の神のものだ!なぜ、俺も知らないコードをおまえが知っている!?これもリゼヴィムからの情報提供なのか!?」

 

アザゼルの疑問にマリウスは笑う。

 

「彼らからはいろいろなものを提供してもらいました。おかげで聖杯の研究は飛躍的に進み、滅んだ邪悪な魔物たちも復活させることができました。どうやらヴァレリーの聖杯は弱点を薄めることに特化していたようです」

 

吸血鬼だけじゃなく、邪龍の弱点軽減もされているのか。

マリウスが術式の操作を止める。

 

「ふふふ、無事完了致しました」

 

魔方陣がいっそう強く輝き、その光がヴァレリーを包み込む。

このままだと、ヤバイ!

 

「俺がドラゴンショットで!」

 

イッセーが構えるが俺とリアスがそれを制する!

 

「止せ、イッセー!下手したらこの王国が吹き飛びかねねぇ!」

 

「下手に強力な攻撃をすれば術式が暴走してどうなるか……本当に王国が吹き飛びかねないわ!」

 

「で、でも!こんなのは二度と!」

 

イッセーの言葉で俺は思い出し、横目でアーシアを見る。

俺が任務についていた頃。アーシアも一度神器(セイクリッド・ギア)を抜かれ、死んでいる。イッセーはそのときのことを………。

イッセーは攻撃の矛先を定められずにいた。そんななか、ヴァレリーの体から小さな杯が現れた。

金色に輝く小さな杯━━━。あれが、聖杯なのか………。

 

「………あぁ…………」

 

ヴァレリーは神器(セイクリッド・ギア)を取り出され、寝台にぐったりと横たわり、完全に生気を失っていた。

マリウスがヴァレリーから取り出した聖杯を取り上げ、頭上に掲げる。

 

「これが……神滅具(ロンギヌス)幽世の聖杯(セフィロト・グラール)』。しかも禁手(バランス・ブレイカー)の発動条件も揃った代物です」

 

魔方陣が役目を終えたことで消滅し、障壁もなくなる。ギャスパーが涙を目に浮かべながらヴァレリーに駆け寄る。

 

「妙だ。神滅具(ロンギヌス)の取り出しにしては……」

 

アザゼルが何かを考えているうちにギャスパーがヴァレリーを抱きかかえ、最期の話をしていた。

 

「最期に……あなたに会えた……。私のたった一人の友達……家族……。……ねぇ、ギャスパー……」

 

「…何?」

 

ヴァレリーは天井を見上げる。いや、彼女はその先にあるものを見たかったんだろう。

 

「……お日さま……見たかったわ……皆で……ピクニックに行けたら……どんなに……」

 

「……見れるよ。僕が連れていってあげるから。ピクニックも行こうね」

 

この状況に耐えられなくなったアーシアがイッセーに抱きつき、ふるふると悲しそうに震えていた。

………前に聞いたリアスたちとアーシアの出会い。イッセーは目の前でアーシアを失った。それをギャスパーも味わうことになってしまった。

ヴァレリーはギャスパーの頬をひとなですると、ギャスパーの胸元に手を添えた。

 

「ここに……もう一人のあなたがいるの……。最期にお願いしなくちゃ……」

 

ヴァレリーは今にも消えてしまいそうな声で言う。

 

「……あなたともお話したかったわ……。……あなたも、ギャスパーなのだから、皆とお話しなきゃダメよ……。……あなたを許してくれる居場所はここにあるのだから……」

 

ヴァレリーの手が━━━力を失い下に落ちる。

 

「……皆と仲良くできますように……」

 

それが最期だった。それが彼女の最期の言葉だった。

 

「…………っっ」

 

ギャスパーは首を何度も振り、ヴァレリーの体を抱きしめる。

……この光景を見て不快に手をパチパチと鳴らす者がいた。

マリウスが聖杯を片手に笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

━━━━

 

 

 

 

ギャー助の恩人であるヴァレリーを助けられず、ヴァレリーを死なせてしまった俺たちの耳に、マリウスの拍手が聞こえた。

マリウスが聖杯を片手に笑みを浮かべていた。

マリウスがロイ先生に不敵に言う。

 

「ロイ・グレモリー様、あなたの滅びの力を私に撃ってください」

 

それを聞いたロイ先生は黙りこみ、顔を俯ける。

 

「……おや?そんなにショックでしたか?ハーフ風情を救えなかったことが」

 

━━マリウスの野郎!言わせておけば!

ロイ先生が動かない中、代わりにリアスが前に出ようとする。

その瞬間、俺たちは異常なまでに冷たいオーラを感じ取った!

そのオーラの主は━━━ロイ先生!?

そのロイ先生が口を開く。

 

「………久しぶりだよ………ここまで誰かを殺したくてたまらないって思ったのは………」

 

『━━━ッ!』

 

今まで聞いたことのないほど、低く冷たい声のロイ先生にリアス含めて全員が驚いていた。

 

「なんつったっけ?『滅びの力を撃ってください』だったか?」

 

「ええ、そう言ったのですよ」

 

ロイ先生の言葉にマリウスは動じることなく、不敵に笑みながら返した。

 

「いいぜ。……だが二撃目はない。………一撃で終わらせてやる━━━━ッ!」

 

ロイ先生は怒気を込めてそう言うと、全身からどす黒いオーラを放ち始めた!コカビエルに潰され、普段は白濁している左目の瞳が黒と紅が入り混じった色に染まっている!

仲間の俺たちでもヤバイと感じるほどの魔力!さっきまで消耗しきっていたのに、どこにこんな力が━━━!

俺たちが驚くなか、ロイ先生が一挺だけ銃剣をしまい、残した銃剣に魔力を込めていく。

全身から放たれたどす黒いオーラをが銃剣に吸い込まれるように集まり、バチバチと銃剣が悲鳴をあげ始める!

ロイ先生はそれに構うことなく銃口をマリウスに向け、その引き金を引いた!

反動で体が後ろに持っていかれそうになるが、それをうまく逃がして体勢を整える。

通常の時とは比べ物にならないオーラの塊が吐き出され、床を削り取りながらマリウスに向かって飛んでいく!

マリウスは防ぐことも避けることもなく、それを真正面から受けた!

そこでいつもとは違うことが起きた。

まず一つは銃剣が耐えきれずに破裂したこと。とっさにロイ先生が顔を守り、その盾になった腕に大量の破片が突き刺さり、服に大きな赤い染みをつくった。

そしてもう一つは、ロイ先生の放った一撃はマリウスを包み込み、そこにとどまっていることだ。

黒い塊をの中で滅びのオーラが暴れまわり、中にいる者━━マリウスに遅いかかっているのだろう。

ロイ先生は腕に刺さった大量の破片を一瞥すると、マリウスを包み込んだ塊に手を向け、その手を閉じた。

すると、マリウスを包み込んだ塊が一気に小さくなり、ついには見えなくなってしまった!

マリウスの体は完全に消えてなくなり、聖杯だけは無傷で宙に浮いている。

マリウスの体だけを消し飛ばしたってことなのか。━━これで終わった?

俺たちが困惑するなか、ロイ先生は腕を下げると、そこから垂れる血を気にすることもなく、奥で様子を見ていた吸血鬼たちに言う。

 

「それで誇り高き純血の吸血鬼ども。どうする?……まだやるか?」

 

ロイ先生の一言に震えながら、いかにも偉そうな格好をした一人の吸血鬼が口を開いた。

 

「な、なぜだ!?なぜ聖杯を持つマリウス殿が!?」

 

「体と魂を同時に、完全に消し飛ばした。聖杯があっても、魂がなきゃどうにもならねぇだろ」

 

ロイ先生の見下したような言葉に、その偉そうな吸血鬼が返す。

 

「なぜわからない!?我らと同じ純血の貴族であるならば理解できるはずだ!貴様らも我々も人間を糧に生きてきた!我々は人間を食料と考えている!家畜を支配するために力を求めて何が悪い!わかるはずだ!貴族とそれ以外の者の差が!」

 

吸血鬼の一言にロイ先生は息を吐いた。

 

「………おまえらと同じに考えてほしくはねぇんだがな。そもそも俺は貴族なんていいもんじゃねぇよ。見ての通り、この手を汚しまくってるだけのただの━━━」

 

ロイ先生はそこで一旦言葉を切り、銃剣を握っていた血まみれの手を強く握り、瞑目すると天井を仰いだ。

 

「━━━『過去を受け入れろ』か。昔の俺はただの『殺人鬼(キラー)』でしかねぇのによ」

 

いつかにヴァレリーから告げられた言葉を反復するロイ先生。

けど、その言葉はどこか切なく、虚しさを感じる声音だった。

 

 

 

 

━━━━━

 

 

 

 

ヴァレリー、おまえの言葉、何となくだがやってみたぞ………。

━━━だが、まだ何か、何かが足りねぇ。

 

 

 

 

━━━━━

 

 

 

 

「あとは任せる」

 

ロイ先生は息を吐いてそう言うと、全身から放っていたオーラが収まり、左目も元の白濁したものに戻った。そして、その目である一点を見た。

俺たちもつられるようにロイ先生が見つめる場所を見る。

そこにいたのは全身から黒いオーラを生み出しているギャスパーだった。

その黒いオーラは徐々に室内を覆おうとしている。

のろのろと立ち上がったギャスパーはこの世のものとは思えない危険な輝きを放つ双眸を吸血鬼の上役に向けていた。

その黒い何かは少しずつ人間の形を崩していき、獣のような形になっていく━━━。

両腕は長く太くなり、鋭い爪が伸び、背中が隆起していくつもの羽が生え、足が逆関節となっていく。

頭部もドラゴンを思わせるように形成されていき、鋭い牙が生え、角が生え、真っ赤な双眸が怪しく輝く。

 

《コオオォォォォォォォォォォォォ!》

 

獣の咆哮が響き渡ると同時に室内を完全に闇が包み込んだ。

俺たちの目の前にいるのは闇のオーラを全身から放つ見たこともない、全長五メートルはある巨大な生物だった。

あれがギャスパーの真の姿なのか?

俺たちはただ震えて見ていることしかできない。

ヴァーリは腕を組み静観し、ロイ先生もいつの間にか後ろに下がってきて、同じく静観を決め込んでいた。

 

「………この現象は……」

 

アザゼル先生もこの有様に眉根を寄せていた。

 

「これは!」

 

「なんだというのだ!?」

 

吸血鬼の上役はロイ先生の一撃に続き、こんなものを見せられ、恐れおののいていた。

すると、その様子を見ていたロイ先生が煽るように口を開いた。

 

「どうした?自慢の純血の力でどうにかしねぇのか?」

 

「そ、そうだ!我々は聖杯で強化されている!ハーフごとき、次のステージに進んだ我々の敵では━━━」

 

バグンッと一人の吸血鬼が、足元の闇から生まれたワニのようなものに飲み込まれた。

 

《次のステージが………何だって?》

 

ギャスパーだったものがケラケラと笑いながら言う。

それを合図に部屋のあちこちから見たこともない生物が誕生していった。

その光景に身震いしていく吸血鬼たち。だが一人の男が怒りに顔を歪めて身体から虫や獣を生み出していく。

 

「その手の芸当は貴様だけのものではない!たかが、闇に包まれた━━━」

 

啖呵を切った男性を滑空してきた鳥形の魔物が連れ去られていく。

運ばれた先で魔物に囲まれて━━━。

 

「や、やめろぉおおおおおお!」

 

抵抗むなしく一方的に喰われていった。

………なんだよ、これ。ギャスパーがやっているのか?

これがギャスパーの真の力、真の姿なのか………。

全身の震えが止まらない俺だったが、闇の魔物はさらに増えていき、吸血鬼たちを追い詰めていく。

魔物は俺たちには危害を加える素振りだけは見せない。

 

「ひいぃぃいい!」

 

「そ、そんな!我らの力が!」

 

「な、なんなのだ!?」

 

「貴様はいったい、なんだというのだ!?」

 

吸血鬼たちは必死に抵抗するが、魔物が際限なく生まれて向かっていった。

 

《なぜ、うまく吸血鬼の能力が発動できないのかわかるか?おまえたちが聖杯で強化された力を停止させているからだ》

 

「能力の停止か。えげつねぇな」

 

ロイ先生が呑気に呟いているが、まったく同感ですよ!能力の停止ってそんな凶悪なことまでできるのか!?

ついに吸血鬼たちは足を取られ、変化ができないように全身を闇にからめ捕られてしまった。

 

「くっ!卑しいもどきがぁぁぁ!」

 

「ち、近づくな!わ、私たちには高貴な血が……貴様には到底想像もつかない歴史と伝統を持って━━━」

 

《いいよ、喰らい尽くせ》

 

その合図と共に吸血鬼の上役は闇の魔物に食い尽くされていく。

あまりの光景にアーシアは目をつむり、耳を押さえていた。

 

「や、やめろぉぉぉぉ!やめてくれぇぇぇ!」

 

そんななか、闇の奥から最後の一人の断末魔が室内に響き渡った。

 

 

 

 

 




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