グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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life09 防衛戦開始

リゼヴィムが指定した三時間後というタイムリミットまで残り四十分ほど。

俺━━━ロイは作戦会議を終えると、義手を戦闘用のものに取り換え、一足先に地上に出て空を埋め尽くす邪龍の群れを睨んでいた。

これからあの数の邪龍を相手にしなければならない。吸血鬼の王国で出現したのは百体弱、だが今回は下手をすれば数千体。あの時とは規模がまるで違う。

俺がそんなことを考えていると、リアスたちも上がってきた。だが、一つ気になること━━━鎧を着た男性が数十人いるのだ。

 

「リアス、そのヒトたちは?」

 

「子供たちの父兄の方々です」

 

リアスの言葉を聞いてから改めて男性たちを見回す。全員が覚悟を決めた顔をしていた。

俺はリアスにただ頷き、リアスもそれを確認すると頷きみんなの方に戻っていった。

それだけで十分だ。なぜ彼らが剣をとり、ここに来てくれたのか。理由なんて知れている。

時間まで二十分、俺たちの戦いが始まろうとしていた………。

 

 

 

 

 

それからも町を囲うように量産型邪龍は滞空し続けていた。

気合いたっぷりだった父兄の方々もそれを見て戦慄している様子だ。

俺たちは持ち場に散らばる前に、校庭で最終確認をしていた。

作戦を立案したソーナが一歩前に出て言う。

 

「今から作戦通り、この学園を中心に八方に散らばってもらいます。基本的には二人一組で敵を迎え撃っていただきますが━━━」

 

視線を向けてきたソーナに俺は頷く。

 

「俺は単独だろ?わかってるさ」

 

「お願いします」

 

俺たちはアウロス学園を中心に邪龍を迎え撃つ。基本的に前衛と後衛のチータが出来るように、リアスとソーナ両眷属の混合チームが編成された。

俺だけは単独だ。理由としては、またリゼヴィム自身が俺に接触してくる可能性があるからだ。

アーシアはイッセーの船型使い魔━━━スキーズブラズニルこと『龍帝丸』に乗せて戦場を飛び回ってもらい、その時に応じて回復オーラを飛ばしてもらう。ロスヴァイセはその護衛として同行する。

俺たちが最終確認を済ませると、校庭に連絡用の魔方陣が展開された。魔法使いがよく使うものだ。

その魔方陣は紫色のゴスロリ衣装の若い女性を映し出した。ゴシック調の紫色の日傘をくるくると回していた。

 

『ごきげんよう、悪魔の皆さん。わたくし、「魔女の夜(ヘクセン・ナハト)」の幹部をしているヴァルブルガと申しますのよん。以後、お見知りおきをん♪』

 

神滅具(ロンギヌス)、『紫炎の祭主による磔台(インシネレート・アンセム)』の所有者か……」

 

俺の言葉にイッセーたちは言葉を失っていた。

ヴァルブルガはニッコリと笑いながら続ける。

 

『もうじき戦闘を開始する予定ですが、準備はよろしいのかしらん♪』

 

俺たちはヴァルブルガを睨むが、彼女はわざとらしく怖がるだけだ。

 

『いやーん、怖いですわねん。悪魔の皆さんが激おこですわ♪うふふ、楽しくなりそう』

 

彼女の声音は本当に楽しみにしているものだ。そしてその笑みもまたイカれた奴がするものだった。つまりこいつもイカれてるってわけだ。

 

『ロスヴァイセさんってどなたかしら?「ロイ・グレモリーと彼女だけは無事に連れてこい」っ言われているのん』

 

ヴァルブルガの言葉を受け、全員が俺と俺の横にいたロスヴァイセに視線を集めてしまう。俺はともかく、ロスヴァイセもあいつにバレてしまった。

俺は殺気を放ちながらヴァルブルガに告げる。

 

「リゼヴィムとユーグリットに言っとけ、俺もロスヴァイセも行く気はないってな」

 

「その通りです。私たちは戦います」

 

俺とロスヴァイセがそう告げるとヴァルブルガは『そうよねん♪』と返事がわかっていたように応じた。

ヴァルブルガはスカートの裾をあげ、別れのあいさつをした。

 

『では、皆さん。よいバトルをしましょうねん』

 

それだけ言うと魔方陣は消失した。

俺はため息を吐き、吐き捨てるように言う。

 

「ああいう奴の考えることも心理もよくわかってるが、あれは、そうだな……これから殺す相手の顔を見て、殺す瞬間の喜びを強くするタイプだな。言葉が悪いが、反吐(へど)が出る、としか言えん」

 

リアスはヴァルブルガの登場に息を吐くと、一転して強気な笑みを浮かべた。

 

「用意はいいかしら?さあ、私のかわいい眷属たち!相手は量産型の邪龍を引き連れたテロリストたちよ!今までも私たちはどれだけピンチをくぐり抜けてきたと思う?これもまた窮地でしょうけど、死ぬことは許されないわ!」

 

リアスは一度言葉を区切り、堂々と言い放った。

 

「いつものように吹き飛ばしてあげましょうっ!」

 

『はい!』

 

リアス眷属とイリナが勇ましく返事をした。

ソーナも眷属たちに向かって言う。

 

「……私たちが敗れれば、この学校は跡形もなく消え去るでしょう。壊されたあとにまた直せばいいという単純な話ではありません。━━━夢と希望がここに集まりました。それを壊させていい道理はありません。守りましょう。それがここを建てた私たちの戦いです」

 

『はい!』

 

ソーナ眷属が気合い十分に返事をしていた。

俺も父兄の方々に対して言う。

 

「いいか!これは死戦だ!だが死ぬことは絶対に許されない!あんたたちは子供たちの未来を、夢を見届ける義務と責任がある!だから絶対に死ぬな!這ってでも帰ってこい!」

 

『はっ!』

 

こっちも気合い十分だ。

俺たちは頷きあい、指定の場所に散らばっていった。

 

 

 

 

 

 

 

俺の担当は東側だ。俺は一人、畑の真ん中を陣取り待ち構えていた。

 

「ふぅぅぅ……………」

 

かなり久しぶりに吸ったタバコの紫煙を吐き出す。腕時計を確認し、タバコを携帯灰皿に押し込んだ。

 

オオオオオオオオオオオオンッ!

 

同時に空から響いてくる咆哮。邪龍の群れが吼えたのだ。それが合図となり、邪龍が一斉に飛来してきた。

俺は右手に黒い直刀、左手に改良された銃剣を握り、殺到してくる邪龍の群れに突撃する!

すれ違い様に首を落とし、時には滅びの弾丸を撃ち込み、すぐさま刃で体内から食い破らせて撃破していく。

絶命した邪龍が次々と落ち、地面を揺らしていった。

その後もフルオートで弾幕を張りながら、それを抜けてきた邪龍を斬り裂いていく!

射撃と剣速を上げ、片っ端から邪龍を倒していくが、はっきり言うとキリがない。

俺がため息を吐くと、足元の影から三体の何かが飛び出し、邪龍に襲いかかっていった。ギャスパーが学校で闇の獣を作りこっちに飛ばしてくれているようだ。

一応、人数的に少ない俺のところを優先と言われているようだが、そんなことは言っていられないほどの量だ。他の地区もかなりのものだろう。

俺は闇の獣に邪龍を任せ後ろに飛び、銃剣にオーラを込める。

 

「ギャスパー、獣を退けろ!」

 

俺が叫ぶと、闇の獣が俺の後ろまで下がった。それを確認し、引き金を引く。

銃剣から極太の滅びのオーラが放たれ、次々と邪龍を飲み込んでいく!

オーラが止むと、邪龍の群れに大きな穴が開いていた。だが、その穴もすぐに埋まっていく。

 

「ふぅぅぅ……」

 

俺は一度大きく息を吐き、直刀と銃剣を握り直す。

 

「━━━さて、次はどいつだ?」

 

邪龍を挑発するように切っ先を邪龍の群れに向けながら笑み、適当に相手を決めて、闇の獣を引き連れながら再び突撃した!

 

 

 

 

それから十分ほど。

俺とギャスパーの獣で順調に邪龍を片付けているとき、ここまで届くほどの爆音が鳴り響いた。

音の方向に目を向けると、天を突くほどの巨大な紫色の火柱が発生していた。

ヴァルブルガが動き出したようだ。━━━あっちは北側、リアスとベンニーアが担当だったはず!

耳に入れていたインカム代わりの魔力装置からソーナからの指示が届く。

 

『北側より、先ほどのヴァルブルガが襲来しました。リアスたちだけで相対するのは厳しいでしょう。一旦、防衛範囲を━━━』

 

ソーナの指示を最後まで聞こうとした矢先、上空からの火炎球が俺を襲う!

 

「チッ!」

 

俺は舌打ちしながらそれを避けるが、獣の一体が避けきれずに消し炭にされてしまう!

俺はそれにも舌打ちをしながら、放った本人がいる上空を睨む。

 

『よう、悪魔ちゃぁぁぁん。久しぶりだなっ!』

 

こちらを挑発するように、邪悪な笑みを浮かべた黒い鱗に包まれた人型のドラゴン━━━。

 

「グレンデル!」

 

『そうだ!俺様だ!』

 

グレンデルは口元をさらに釣り上げながら、銀色の双眸をギラギラとさせて俺を見下ろしてきた。

俺とグレンデル。ここまで来ると因縁だよな。

 

「すまねぇが、しばらく連絡が出来ない。俺の分も誰かカバーしてくれ。俺はグレンデルを()るっ!」

 

『ロイ様!━━━わかりました。グレンデルはお任せします』

 

「任せろ」

 

俺はソーナの言葉を聞き終えて頷くと、グレンデルが降下してきた。

 

「さあ。━━━決着だ」

 

『いいねぇ。そうこなくっちゃよっ!』

 

俺は両手の得物を握り直し、グレンデルは姿勢を低くして突撃の態勢に入る。

グレンデルとの三度目の殺し合い。今度こそ━━殺す!

 

 

 

 

 

 




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