グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

142 / 219
life12 贖罪

俺━━ロイがユーグリットを追っていくと、大分進んだ場所で奴は待ち構えていた。

ユーグリットはロスヴァイセを抱えたまま、指で下を指す。

おそらく、降りろってことだろう。そこで、俺とやり合うつもりらしい。

俺は奴と共に高度を下げていき、周りを確認する。

荒れた土肌の土地、ここなら無理できるな。まあ、今も無理してるわけだが……。

俺とユーグリットは同時に着地し、対峙する。

 

「それで、何で今頃現れた?兄さんたちへの━━━現政府への反逆のためか?」

 

俺はユーグリットの意志を確認しておきたかった。甘いと言われるのも百も承知だが、俺はあいつの『義兄(あに)』なんだ。

俺の質問にユーグリットは語り出す。

 

「諸々ありますよ。現政府への不満、姉への問い、膨大な時間をかけて自問し続けました。義兄にいさん、答えてください。━━━悪魔とは何です」

 

「悪魔とは、か。悪魔は悪魔だ。人間同様、正義を志す者もいれば、悪を志す者もいる。それだけだ」

 

俺の返答に、ユーグリットは落胆するように息を吐いた。

 

「義兄上、あなたは甘すぎる」

 

「甘くて結構だ。それで、おまえはどう考えてるんだよ?」

 

俺からの問いに、ユーグリットは深く息を吐く。

 

「リゼヴィム様と同じですよ。どの生物よりも、どの存在よりも邪悪であるべきだと思います。しかし、ここからは私だけの答えです」

 

ユーグリットは両手を広げる。

 

「━━━私はリゼヴィムという男を通して全勢力に悪魔を見せます。知らしめます。悪魔がどれだけ凶悪か、どれだけ危険かを全勢力に知らせたいのです。支配や政治はこの際どうでもいいのですよ、私にとっても、リゼヴィム様にとっても。━━━最終的には悪魔を人間界にも見せたいところですね」

 

こいつがやりたいこと、それはあの学校にいる子供たちの、これから先に生まれてくる子供たちの未来を奪うもの……。

俺はユーグリットを怒りの表情で睨みつける。

 

「悪魔そのものを、世界から孤立させたいのか」

 

俺が静かな怒りをたぎらせている中で、ユーグリットは遠い目をしていた。

 

「姉は……私にとって憧れでした。女性でありながら、誰よりも強く、誰よりも勇敢だった。私にとっては、誇りそのものでした。姉を支えることこそが私の生きる道だと信じていたのです。その姉が、『ルシファー』に尽くすルキフグスの定めに反して、悪魔ともいえない異形に心を許した。これが、私にどれだけの衝撃をあたえたか、あなたには想像できますか?」

 

ユーグリットの言葉に、俺は義姉さんの亡命作戦を思い出していた。

あの任務を終えた時、兄さんに会った義姉さんは本当に嬉しそうだった。

だが、あの任務が、この状況を作り出してしまった。

ユーグリットは空を見上げた。

 

「私は長らく心の均衡を崩し、精神的にも肉体的にも屍と変わらぬ状態でしたが、好き勝手に振る舞い、冥界に新しい風を吹き込む彼に━━━兵藤一誠を知って思い至ったのです」

 

ユーグリットの表情はどこか晴れやかなものになった。

 

「『ああ、そうか。自分も好きに生きればいいんだ』━━━と」

 

「イッセーを見て、ここまでの事をしようとしたのかよっ!」

 

俺は声を荒げたが、ユーグリットは特に気にする様子を見せず、言葉を続ける。

 

「単純な思いでした。悪魔が英雄を持つ。その英雄を子供たちが見て、影響を受ける。それは悪魔らしくない。だったら私は子供たちに悪魔を見せないとね」

 

「その悪魔がリゼヴィムか。━━イカれてるな。だったら、俺はおまえを止める」

 

俺は銃剣の銃口をユーグリットに向ける。

ユーグリットは薄く笑った。

 

「義兄上。あなたはそちら側ではないと言われたはずです。なぜ戦うのですか?」

 

俺は銃口を下ろさず、即答で答える。

 

「守るためだ。誰かの命を、夢を………」

 

「なぜリゼヴィム様は、あなたのような方に興味を持たれたのか、疑問です」

 

ユーグリットは俺を軽蔑するような目で睨んでくる。

 

「あなたの答えと行動は、ある意味矛盾しています。守ると言いながら、あなたはそれ以上の命を奪っているではありませんか」

 

確かに、俺はこっちに来てからも何百、へたをすれば何千という命を奪ってきた。

だが━━━、

 

「全ての命を守るなんてこと、誰にもできねぇよ。ただ目の前にあるものを必死に守るだけだ」

 

━━━そう、これが今の俺の生き方。前世(むかし)とは真逆とも言える生き方だ。二つが混ざり合うことは、ないかもしれない。

 

「どうやら、私たちとは合間見えないようです。なら、私はあなたを倒すまでです!」

 

ユーグリットは宣言するように俺に言ってきた。

 

「━━━それはそれとして、どうしてロスヴァイセを狙った。いくらなんでも、リスクが大きすぎるだろ?」

 

残った疑問をぶつける。いくらロスヴァイセが優秀でも、あれは悪手だ。

ユーグリットはロスヴァイセに視線を向けながら言う。

 

「………このヒトは賢明です。才能もある。私たちのもとに連れていけば、有効活用できるでしょう。何せ、彼女は666(トライヘキサ)に封印を施すものを導き出そうとしていたのです」

 

━━━━ッ!

 

ロスヴァイセの論文が、666(トライヘキサ)を封印する鍵だってのか………!

ユーグリットはロスヴァイセの銀色の髪を撫でる。

 

「それに………ロスヴァイセは、似ているのですよ。とても似ている」

 

「似ている?どこの誰に似てるってんだ」

 

「━━━姉のグレイフィアにです」

 

━━━━━ッ!?

 

ユーグリットの言葉に驚く俺とロスヴァイセ。………ロスヴァイセと義姉(ねえ)さんのどこが似てるんだ?雰囲気は若干似ている………?いや、似てねぇな。

ユーグリットは薄く笑みを浮かばる。

 

「………このヒトは私の姉になれるかもしれないのです。それはとても重要なことです」

 

………そうか、こいつ、もう━━━━。

 

俺は悲哀を込めて言う。

 

「━━━心が壊れたか」

 

「?何を言っているのです?私は至って正常ですよ?」

 

「………そうか。それじゃ、やろうぜ?俺とおまえの最初で最後の━━━『兄弟喧嘩』ってやつを」

 

俺がユーグリットを睨みつけながら言うと、奴はロスヴァイセに魔力の縄をかけてから、手を離した。

俺とユーグリット、これが最初で最後の戦いになるだろう。

相手はレプリカとはいえ赤龍帝だ。勝てるかどうかはわからない。こっちは消耗してるから負ける確率のほうが高いかもしれない。

俺はロスヴァイセに目を向け、安心させるように笑みながら彼女に言う。

 

「ロスヴァイセ、一緒に帰るぞ」

 

 

 

 

 

━━━━━━

 

 

 

 

ロイはロスヴァイセにそう告げると、全身から周辺一帯を吹き飛ばす黒いオーラを解き放ち、全身に纏わせる。

ユーグリットも兜を装着すると、周辺一帯を吹き飛ばす程の質量を持ったオーラを解き放った!

黒と赤のオーラがぶつかり合い、火花を散らすなか、二人は同時に飛び出した!

二人の拳が正面からぶつかり合い、凄まじい衝撃波を発生させる!

 

「きゃ!」

 

その衝撃波を間近でくらったロスヴァイセは、倒れながらも二人のほうに目を向け、驚愕した。

 

『━━━━━━━!』

 

「くっ!まだです!」

 

ロイとユーグリットは、お互い退かずに殴り合っているのだ!

ロイの拳の何発かはユーグリットの鎧を砕き、体にもダメージを与え、ユーグリットの拳の何発かもロイの滅びを突破してダメージを与えていくが━━━、

 

『━━━━フッ!』

 

「ぐ…………ッ!」

 

ユーグリットには痛みが『ある』。痛みがあれば、体はそれを避けようと反射的に動き、結果大きく動いての回避や、魔力を使った防御など、至近距離での殴り合いでは無駄な動きが増えていく。

それに対して、ロイには痛みが『ない』。そもそもダメージへの恐怖がない。ゆえに、必要最低限の、危険と判断した攻撃のみを確実に避け、それ以外は避けずに受ける。

爆音にも似た打撃音が周辺に響き、大気を震わせる。お互いの体が悲鳴をあげ、耐えきれなくなったユーグリットは一度オーラを解放、ロイを吹き飛ばして間合いをあける。

吹き飛ばされたロイは翼を展開して勢いを殺し、ゆっくりと地に足をつける。同時に、拳を初めとした体の各所から血が吹き出し、地面に染みをつくる。

ユーグリットはそんなロイに対して━━━、

 

『Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!』

 

増大させた魔力弾を放つ!極太とも言えるオーラの濁流がロイに向かっていくが、

 

『………………ッ!』

 

ロイは右手から極太の黒いオーラの奔流を放ち、正面から迎撃した!

二つの莫大な魔力同士がぶつかり合い、大爆発を起こした!

大量の砂と煙が舞い、ロイとユーグリット、ロスヴァイセの視界を遮り、それぞれの状況を確認できなくなる。

それは一瞬のことであり、ロイが薙いだ腕で砂と煙が切り裂かれる。

 

『…………………………』

 

「はぁ………はぁ………な、なぜ………?」

 

大きく消耗した様子はないロイと、肩で息をするユーグリット。

既に限界を迎えているはずのロイが、なぜ立っていられるのか、なぜ戦えるのか、ユーグリットにはそれがわからず、ただ困惑していた。

そんなユーグリットに、ロイが右手を向けるが、

 

『━━━━ッ!』

 

大量の血を吐き出し、片ひざをついた。

ロイは既に限界を迎えている。『痛覚』という警告を無視して動いている彼は、極端な話、肉体の限界が『わからない』。

腕の骨が砕けようが、足の肉が削がれようが、それに気づかず前進し、対象を殺そうとする。だが、気づかないうちに限界が訪れ、それがわからないまま倒れる。今の状況はまさにそれだった。

ユーグリットはそんなロイを見て、安堵にも似た感情を抱いた。ロイは既に限界を超えて動いていたが、その限界さえも超えてしまった。彼は、もう戦えない………。

ユーグリットの思いを後押しするように、ロイを包む黒いオーラが弱々しくなっていき、所々剥がれ始めていた。

ユーグリットが言う。

 

「義兄上、終わりです。グレンデルとの戦闘、紫火によるダメージ、その後の邪龍の群れとの戦闘。あなたは、体を誤魔化して戦い、グレンデルを討伐しました。ですが━━━━」

 

ユーグリットは高速で飛び出してロイに迫り、

 

『Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!』

 

威力を増大させた拳を放つ!

ロイは無理やり立ち上がり、体を包んでいた黒いオーラをを右拳に集中させる。防御を捨てたロイは高速で接近するユーグリットに、クロスカウンターの如く拳を放った!

同時に放たれた二人の拳は━━━━、

 

「━━━━━━━━━ッ!」

 

「━━━━私の、勝ちです」

 

ロイの拳が外れ、ユーグリットの拳がロイの左目付近を捉えた!

爆音と共にロイは吹き飛ばされ、後ろにあった岩山に激突、大量に舞った砂塵で姿が見えなくなる。

ユーグリットは肩で息をしながら、ロスヴァイセに視線を向ける。

 

「………これで、あなたは私のものです………」

 

狂ったような笑みで表情を歪めながら、ロスヴァイセに近づいていくユーグリット。

ロスヴァイセも逃げようとするが、縛られた体では無理がある。

ユーグリットの手が、ロスヴァイセに向かってゆっくりと伸ばされる。

ロスヴァイセは、諦めたように、ゆっくりと目を閉じた━━━。

 

 

 

 

 

━━━━━

 

 

 

 

 

俺━━ロイは何もない、黒一色の空間に寝転んでいた。

どうしてこんなところにいるのか、そもそもここがどこなのか、全く検討がつかないが、まだやることがある。

俺が勢いよく立ち上がると、いきなり景色が変化した。

見覚えのある、森の中にある小さな村だ。ここは、前世(むかし)訪れた場所だ。確か、ここは━━━。

俺が思い出した瞬間、村が火の海に変わる。どこからか、悲鳴や怒号が聞こえてくる。

そうか、ここは、『深層心理』ってやつか。『あれ』の最中に気を失っちまったせいでこんなものを見ているのか?

燃える村を見渡すと、遠くに立つ誰かと目があった。体格的には男だが、顔は見えない。

いや、あれは━━━。

この村、いつかの戦闘に巻き込まれた場所だ。この村で、俺は━━━。

俺が思い出した瞬間、物陰から人影が飛び出してくる。何かを察した男性が駆け出すと、間を空けて乾いた音が響き渡った━━━。同時に再び景色が黒一色になる。

俺は、あれで死んだんだったな。あの助けた奴がどうなったかは知らねぇが、生きているといいな………。

 

『助けて……………』

 

『痛い、痛い……………!』

 

『どうして…………?』

 

俺の耳に声が届いた。苦しそうで、同時に悲しそうな声だ。だが、聞いたことがある………。

声の主のほうに目を向けると、

 

「━━━━━ッ!」

 

俺は声を失った。視線の先には、何かもよく分からない生物がうずくまっている。

 

『誰か、誰かぁ………』

 

『私は、あなたを救おうと………』

 

ああ、そうか。あれは━━━━俺が殺した奴らか。

ヴァレリーが言っていた「憑かれている」ってのは、これのことか………。

俺は納得と共に、悲哀の眼差しでそれを見つめる。

前世から重ねてきた俺の『罪』、目の前にいるこれは、その象徴か………。

殺して殺して、殺し続けて、それで得た金で生活する。前世の俺は、ただ自分のためだけに戦っていた。それしか知らなかったから、自分にはそれしかなかったから………。

だが、今は違う。愛されることを知った。愛することを知った。戦う意味を、理由を見出だせた。

それでも、前世の俺を否定する気も、『罪』から目を背ける気も、逃げる気もない。

いまだに悲痛の声を発し続けるそれに、ゆっくりと近づいていく。

 

「俺は逃げない。逃げるわけにはいかない。おまえを受け入れなきゃ、俺は先に進めない。俺を殺したければ殺せばいい」

 

『━━━━━ッ!』

 

俺の言葉を受け、目の前にいる何かが俺に突っ込んでくる。だが、逃げるわけにはいかない。

足を踏ん張り、受け入れるように両手を広げる。その瞬間、それが俺に飛びつき、そのまま体内に入り込んでくる。

 

『殺してやるッ!殺してやるッ!殺してやるッ!殺してやるッ!コロシテヤルッ!コロシテヤルッ!コロシテヤルッ!コロシテヤルッ!』

 

頭の中に、老若男女の様々な声が響く。同時に凄まじい痛みが身体中を駆け巡る!

この痛み………!この苦しみ………!これが俺への罰だというなら、何としてでも耐える………!

 

「ぐッ………!あああああああああっ!」

 

床に倒れこみ、激痛に悶え苦しむが、痛覚無視はしない。それは、痛みだけじゃなく、心を殺して、誰かを殺している事実からも逃げているだけだ………!

俺が侵した罪は、決して償うことはできないだろう!だが、俺を信じてくれる奴らのためにも、俺が信じる奴らのためにも、俺は━━━!

 

「どんな罰でも受けてやる!永遠の時間をかけてでも、殺した以上の人々を救ってやる!」

 

激痛に耐えながら、叫んだ!

何をしても、償いにはならないだろう。そんな事は承知だ。

 

「おまえらに許してくれとは言わない!それでも━━━!」

 

俺は激痛に耐えながら立ち上がり、天に向かって、出来るだけ優しい声音で言う。

 

「━━━見ていてくれ。俺なりの『贖罪』を」

 

言い切ると同時に、身体中の痛みが引いていった。

俺が踏ん張って握っていた拳をゆっくりと開くと、どこからか、威厳溢れる声が聞こえてくる。

 

『ならば、償ってみせろ。貴様の魂に刻まれた、決して償えぬ罪を。━━━そして、見せてみろ。貴様の「生き様」を━━━』

 

「ああ。俺の生き様、見せてやる………!」

 

 

 

 

 

━━━━━━

 

 

 

 

 

「………これで、あなたは私のものです………」

 

狂ったような笑みで表情歪めながら、ロスヴァイセに近づいていくユーグリット。

ロスヴァイセも逃げようとするが、縛られた体では無理がある。

ユーグリットの手が、ロスヴァイセに向かってゆっくりと伸ばされる。

ロスヴァイセは、諦めたように、ゆっくりと目を閉じた━━━━。

 

バアアァァァァァンッッ!!!

 

「「━━━━ッ!」」

 

凄まじい破壊音と共に、圧倒的な『滅びの魔力』を感じとったユーグリットは振り返り、ロスヴァイセは目をあける。二人の視線の先には、抉りとられるように消滅した岩山と━━━━━、

 

「待たせたな………」

 

左瞼が腫れ上がり、左目が開かなくなっているロイが立っていた。

先程までの消耗がなかったかのように、足取りがしっかりしている。

そして、何よりも、変わったことがあるとしたら………。

 

義兄上(あにうえ)、その目は………?」

 

ユーグリットの言葉に、ロイはそっと右目の下を撫でる。

 

「ああ、『見えてるよ』。かなり無理をしていることに変わりねぇがな」

 

ロイの右目は、一言で言うと『不気味』だった。普段白濁している右目の黒目にあたる部分は『鮮やかな紅』に染まり、白目にあたる部分が『黒一色』に染まっている。

紅が今のロイを表すのなら、黒は前世(かつて)の彼を表す色だ。その二つが、混ざり合うことはなくとも、同じ場所にあり、同じものを見つめていた。

ロイは優しく笑みながら、ロスヴァイセに言う。

 

「悪い、心配かけたな」

 

ロスヴァイセは目に涙を貯めながら、首を横に振る。

ロイはため息を吐き、後頭部をかきながらぼそりと漏らす。

 

「贖罪するって言ったのに、さっそく泣かせちまった」

 

「何なのですか、あなたは…………!」

 

『Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!』

 

ユーグリットは、再びオーラを増大させ、ロイに向けて解き放った!

再び放たれたオーラの濁流は、迷うことなくロイに向かって突き進んでいくが━━━━、

 

「━━━ッ!?」

 

突如として、縦に切り裂かれたのだ!ユーグリットは驚愕しながらも、今の一撃を切り裂いたであろう男━━ロイに視線を向けると、

 

「ふぅぅぅぅぅ…………」

 

紅よりもさらに濃い、鈍く深紅(しんく)の輝きを放つ刀身を持った、身の丈はあろうかという大剣が彼の右手に握られていた。

今まで使っていたシンプルな直刀とは少し違う、どことなく西洋剣を思わせる形状をしている。

ロイは深紅の大剣を『八相の構え』を思わせる構えを取ると、その場から消え失せた!

ロスヴァイセにも、ユーグリットにも見えない速度で動いた彼は━━━━、

 

「━━━━━ッ!」

 

既にユーグリットの懐に飛び込んでおり、ユーグリットがそれを認識した瞬間、ロイは左足を地面を砕くほどの勢いで踏み込み、

 

「俺の、勝ちだ━━━━」

 

━━━音を置き去りにする速度で豪快に斬り上げる!

刀身の通り道には深紅の残光が残り、それが消えた瞬間、

 

「━━━ぐはッ!」

 

渾身の一撃に巻き込まれた地面は深く削り取られ、ユーグリット本人は袈裟懸けの傷がつけられた。そして、ユーグリットの背後にあった岩山が、ロイの一撃の余波で真っ二つに切り裂かれる!

その一撃の前では、ユーグリットの鎧は無意味であり、難なく鎧を突破した一撃で、ユーグリットの体が空中に投げ出される!

ロイはゆっくりと息を吐き、大剣を背中に背負うように納刀すると、ユーグリットが鎧独特の金属音と共に地面に落下する。

ユーグリットは大量に血を吐きながら、ロイの髪と、彼が背負う大剣に目を向け、

 

「姉上、そんなに『赤』が━━━『紅』が好きなのですか?私は………何を間違えてしまったのでしょうか………?」

 

ぼそりとそう漏らすと、気を失う。

それを聞いたロイは瞑目しながら深く息を吐き、そのまま仰向けに倒れこんだのだった━━━。

 

 

 

 

 

 

 




誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。