グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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life02 天界巡り

巨大な門━━天界の前門を潜ると、塵一つ落ちていない石畳の白い道、ずらりと立ち並ぶ石造りの建物、空に浮かぶ建物、道や空を行き交う天使たちが視界に飛び込んできた。

天使たちはリアスたちを珍しそうに見ると、俺に気づいて殺気のこもった視線を送ってくる。

俺がため息を漏らしていると、グリゼルダが説明を始める。

 

「天界は全部で七層あります。ここは第一層━━第一天と呼ばれるところです。第七天は神の住まう場所とされていました。今は奇跡を司る『システム』だけが存在しております」

 

イリナがそんな事を言っていた気もするな。多くの天使が働くところであり、天使の前線基地とか呼ばれているらしい。イリナとグリゼルダもここに来ることが多いそうだ。

イリナは真上を指さしながら説明を始める。

 

「ミカエル様やセラフの方々は第六天にいらっしゃるわ。天界の本部もそこなの。まあ、私を含む末端の天使はここ━━第一天にくることのほうが多いわ」

 

ミカエルは上にいるのか。目的地はかなり上のようだな。

リアスが興味深そうに辺りを見渡しながら言う。

 

「昔と構造が変わっていると聞いているけれど」

 

「アザゼル含め、純血の堕天使は第五天に収容されていたんだったか?」

 

俺の問いかけにグリゼルダが頷く。

 

「はい。第五天は彼らの収容所だったと言われています。現在は研究機関の多い階層となっております。『御使い(ブレイブ・セイント)』のカードもそこで製造されています」

 

御使い(ブレイブ・セイント)』ってのは、天使版の転生悪魔のようなものだ。悪魔はチェスに倣ったが、天使はトランプに倣い、セラフメンバーを『K(キング)』とし、『A(エース)』から『Q(クイーン)』を直属の部下として転生天使にするものだ。

まあ、こちらの場合、何かしらの要因ではぐれとかにはならないが、堕天使になるらしい。そのままグリゴリに入るか、滅せられるかって感じだな。

なんて思っているうちに再びエレベーターに乗り、さらに上を目指す。第二、第三天はそのまま通過となった。

エレベーターに乗り、手持ち無沙汰の俺たちにグリゼルダが言う。

 

「一般的に天国と呼ばれるのは第三天となります。広大すぎて、橋がどこにあるのかわからないとさえ言われています」

 

「第二天はどんな所なんだ?」

 

話を飛ばされた第二天について訊いてみる。

 

「第二天は、暗闇が支配する世界です。そこでは主に星の観測をおこなっておりますが、罪を侵した天使を幽閉する場所でもあります」

 

天界にも暗闇が支配する場所もあるんだな。まあ、星を観測するなら邪魔な光はないほうがいいだろう。

俺たちが話しているうちに第四天も通過していた。

 

「第四天は別名エデンの園。アダムとイブのお話が有名よね」

 

イリナがそう口にしていた。

エデンの園、ね。いつかに世話になったサマエルはそこにいたんだよな。

ついに到着した第五天。話のとおり、研究所らしき建物が多い。第一天は神秘的な建物が多かったが、第五天は近代的な建物が多い。

第五天の大通りを抜け、上に続くエレベーターに乗った時、グリゼルダが思い出したように言った。

 

「天界のルールなのですが………人間界や冥界ほど、俗世のものに強くありません」

 

人差し指を一本立てると、話をまとめた。

 

「つまり、邪なものに酷く脆いのです」

 

……うん、だよな。あいつの胸にダイブさせられた時は、俺よりもダイブされたほうが慌てていたし、周りの天使も大変そうだった。

俺はそれを思い出しながら苦笑し、イッセーに言う。

 

「まあ、イッセーは自重しろってことだな」

 

「はい!今回ばっかりは自重します!」

 

イッセーが勢いよく返してきた。本当に自重するかは、わからないがな。

第六天に到着すると、バカみたいにデカイ門と扉が現れた。見渡す限り壁であり、門もざっと百メートルはあるだろう。そして、その門がゆっくりとひらいていき、俺たちはその門を潜る。

門もかなり分厚い。穴を開けるのには骨が折れそうだ。おそらく、全力状態のイッセーでも無理だと思う。

門を抜けると、長い道の先に金色に輝く光輪を背にした神殿が佇んでいた。

見ているだけで悪魔には毒になりそうなほど、神々しい力を神殿から感じ取れる。まあ、あんまり実害はないが。

グリゼルダが神殿に続く道を先導しながら、俺たちに説明する。

 

「あそこがセラフの方々が住まわれている現天界の中枢機関━━『ゼブル』です。建物のことも私たちはそう呼んでおります。ここよりさらに上━━第七天はセラフ以外立ち入り禁止なのです。ですから、基本的に私たちが足を踏み入れられるのもここまでになっています」

 

あの神殿にセラフの連中が住んでいるんだな。まさか、生きてこんなところまで来れるとは、長生きしてみるもんだな。

このまま真っ直ぐ神殿に━━━と思っていたら、先導するグリゼルダが途中の道を曲がって道から外れる。

……ん?目的地はあれじゃないのか?

疑問に思いながらも、先導するグリゼルダに続いて俺たちも道を曲がる。

 

「実は、『ゼブル』は内装工事中でして、セラフの方々はそれぞれ別のところに行かれているのです。ミカエル様はこちらにお待ちなのですよ」

 

工事中なのか、『ゼブル』。まあ、テロに備えて色々とやっているんだろう。こっちも大変だな。

さらに進むこと数分。中庭と思われる場所に到着した。多種多様彩り鮮やかな草花が咲き誇り、ちょっとした川のように水が流れている。まるで中庭ってよりも庭園だな。

テラスとなっている小屋のテーブルに、目的の人物を発見した。その人物もこちらを確認すると、立ち上がって柔和な笑みを浮かべた。

 

「これは皆さん。お久しぶりです」

 

金色の翼を持った男性天使━━ミカエルだ。現在の天使たちのトップ。結構久しぶりに会った気がする。

 

「お久しぶりです、ミカエル様。このたびはご招待いただきまして、まことにありがとうございます」

 

リアスを始め、オカ研メンバーが丁寧にあいさつしていくが、俺は軽い感じであいさつする。

 

「久しぶりだな、ミカエル。運動会以来か?」

 

「はい、あの運動会はなかなか楽しかったですね」

 

「………あれを見てなぜそう言えるのか気になるが、今はいいか」

 

テーブルに促されて全員が着席していくなか、ミカエルが訊いてくる。

 

「どうですか、天界は?」

 

「なんだか、神々しいというか………」

 

イッセーが正直な感想を言い、

 

「素敵なところですわ。人間の魂がここに運ばれてくるというのなら、それはまさに楽園なのでしょうね」

 

リアスがそう漏らした。俺の目に写る天界は、何もかもが新鮮に思えた。だが━━━。

 

「俺には眩しすぎるな。ちょっと落ち着かねぇ」

 

俺はそうとも思えてしまった。楽園に『殺人鬼(キラー)』は似合わねぇ。

俺の言葉を受け、ミカエルが苦笑する。

 

「まあ、悪魔の皆さんが来ること自体想定していませんから、慣れていないとここは眩しいかもしれませんね」

 

ミカエルは俺の発言を言葉のまま受け止めたようだ。確かに物理的にも眩しいけどな!

俺を除いて、固い表情の面々にミカエルが言う。

 

「あまりかしこまらないでください。何もないところではありますが、ゆっくりとしていってください」

 

ミカエルが手を挙げると、女性天使が俺たちに紅茶を出してくれた。━━のはいいが、最後に淹れられた俺は冷たい視線で睨まれた!理由が理解できているからどうしようもない!……毒とか、入っていないよな?ミカエルにも同じもので淹れていたし………。

ミカエルは俺の心配をよそに、話を始める。

 

「改めて、今年一年、本当にありがとうございました。━━激動の一年でしたね。あなた方がいなければ、今ごろどうなっていたか……本当にありがとうございます」

 

ミカエルから労いの言葉が送られた。まあ、頑張ったのはイッセーたちだから、俺は聞き流す。

俺が紅茶に口をつけていると、俺たちに紙が手渡された。見てみると、プレゼントの一覧表のようだ。

 

「では、こちらがクリスマス企画における━━━』

 

ここから、クリスマス企画の話し合いが始まったのだった。

 

 

 

 

「━━━詳しくは、そろそろ現地に到着する企画立案者と打ち合わせていただければ問題ないかと。皆さんもお忙しいでしょうし、各々の持ち場に戻っていただいたほうがいいでしょう」

 

ミカエルは話し合いを締めくくった。駒王町に立案者が来ているのか。詳しくはそいつにってことだな。

話が一通り終わったところで、俺は深緑色の宝玉を取り出した。

 

「グレンデルを封じた宝玉だ。封印を頼めるか?」

 

そう、アウロスで倒した邪龍━━グレンデルを封じた宝玉だ。事前に話し合ったとおり、天界に任せることにした。

俺の問いにミカエルは頷く。

 

「わかりました。お任せください」

 

ミカエルに宝玉をしっかりと手渡し、俺は安堵の息を吐いた。これで、グレンデルと戦うことは二度とないだろう。

 

「ミカエルさまぁ」

 

そんな俺の耳に、若干間延びした女性の声が届いた。その瞬間、全身が硬直して動けなくなった!い、今の声は━━━!

俺が壊れたロボットのような音をたてながら首を動かし、その人物を視界に入れる。

 

「━━━━ッ!」

 

その人物も俺に気づいた瞬間、全身を硬直させた。

ウェーブのかかったブロンド、おっとりした雰囲気を醸し出す女性天使━━ガブリエルだ!なぜかサンタクロースのコスチュームでの登場だった!

硬直したガブリエルに、ミカエルは困ったように苦笑しながら声をかける。

 

「ガブリエル、時間通りですね」

 

「は、はい、ミカエル様、な、なぜ彼が………」

 

相当切羽詰まっているのか、口調が固くなるガブリエル。できることなら、俺もここから立ち去りてぇよ!

ミカエルは続ける。

 

「言っていませんでしたか?駒王町の悪魔の皆さんをお呼びしたと」

 

「い、言われました。え、えぇ……」

 

相当困惑しているようだ。そんな俺も大変だけどな!ミカエルの脇に控える女性天使からの殺気が凄まじい!

俺がその女性天使の殺気から逃げるように視線を泳がせていると、不運にもガブリエルと目が合ってしまった。

顔を赤くしながら、俺を警戒するように腕で胸を隠していた。

俺は、あそこにダイブしたわけか………柔らかかったな……。

俺がそんな事を思った瞬間、俺の体を覆うように結界のようなものが張られた!

 

「━━━っ!ちょ、なんだ!?」

 

俺が突然のことに驚愕していると、ガブリエルがさらに顔を真っ赤にし、女性天使が鬼の形相で光の槍を俺に放とうとしてきていた!

ミカエルは苦笑しながら女性天使を手で制し、言ってくる。

 

「それは、いわゆる堕天防止装置です。本来、天使の必要以上の煩悩を関知すると展開するものなのですが、あなたにも発動してしまったようですね」

 

「ぼ、煩悩!?そんな変なこと━━━」

 

━━━考えてた。うん、ガブリエルの胸にダイブしたことを思い出しちまってたよ!

俺が変なところで言い淀んだせいで、リアスたちからも冷たい視線を送られ、イッセーからも「なにやってんですか………」と呆れられる始末。ロセからは、

 

「…………………」

 

完全に軽蔑の視線を送られている!前の黒歌との一件からこれだからな、仕方ねぇか!

くそ、こういうのはイッセー担当だろうが!なんで俺がこんな事に………!とにかく、こんな時こそ平常心、平常心だ。落ち着け、落ち着け………。

俺が何度か深呼吸すると、ようやく結界が消えた。それを確認するとため息を吐き、視線をリアスたちに戻す。

リアスたちも息を吐くと、視線から冷たさが消える。

あー、天界に来てからろくなことがねぇ。さっさと下に戻りてぇな。

俺がガブリエルを視界に入れないようにしながら、再びため息を吐いていると、

 

「おんや~、イッセーどんたちじゃないか」

 

聞き覚えのある声が聞こえてきた。声の主のほうに目を向けると、そこにはジョーカー・デュリオの姿があった。にんまり笑いながらこちらに向かってきている。

 

「デュリオ、散歩は終わったのですか?」

 

ミカエルの問いにデュリオも頭を下げる。

 

「あ、どうも、すみません。こんな時期に気分転換の時間なんていただきまして……」

 

「こんなときだからこそ、必要な休息もあるのでしょう。デュリオもクリスマスのプレゼント配りを手伝ってくれるのですよね?」

 

「はい、それはもちろん」

 

デュリオも参加するのか、クリスマス企画。まあ、大勢でやれば楽に終われるか。

デュリオの登場を皮切りに、グリゼルダがミカエルに進言した。

 

「ミカエル様、例の件をお知らせしたほうがよいのでは?」

 

ミカエルは頷き、俺たちに『例の件』というものを教えてくれた。

 

「そうですね。関係なくもないでしょうし。実は、現在、教会の役員が襲撃を受けるという事件が発生しています」

 

教会の役員が襲撃。いきなりきな臭くなってきたな。

緩んでいた空気が一変、真剣なものになる。

 

「ヴァチカン本部の幹部だけでなく、支部の重要人物にまで死傷者が出ているのです。まだ詳しくは調査中なのですが、どうにも邪龍の気配も感じ取れたということで━━━」

 

「クリフォト、か」

 

俺の呟きに、ミカエルも頷いた。

 

「ええ、警戒はしておいてください。彼らの目的がわからない以上、怠れば隙を突かれるでしょう」

 

アグレアスの次は天界の関係者か。奴ら、何を企んでいやがる………。

クリスマス企画に浮かれる俺たちに、戦いの気配が迫ってきていた━━━━。

 

 

 

 

 

 




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