グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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life05 語られる真実

俺━━ロイは襲撃を受けたイッセーたちを連れ、トウジさんの治療のために教会側の医療施設に転移した。

外傷自体はアーシアの能力で治せたが、そこから入った毒で苦しんでいるとのこと。

イリナは、父親を守れなかったことで心に大ダメージを受けた様子で、椅子に座ってうつむいていた。

俺があっちについていれば、トウジさんが重症にならずに済んだかもしれない。だが、あの野郎がトウジさんを狙うとは、計算外だった。狙うなら俺だろうとばかり……。

俺がそんな思考を巡らせていると、俺たちのもとに二つの影が近づいてくる。━━リアスとアザゼルだ。

 

「ごめんなさい、大事なときにいなくて」

 

「事情は聞いた。クリフォトの対処と紫藤局長の解毒について、教会側と協議してくる」

 

そう言うと、アザゼルは足早に廊下の奥へと消えていった。

リアスにあそこで何があったのか改めて説明していると、病室からグリゼルダと医師が出てきた。全員の視線が集中するなか、医師はその場で一礼して離れていった。

グリゼルダが言う。

 

「……局長の体には、邪龍から受けたと思われる毒が入り込んでいます」

 

それを受けて、イッセーの左腕に籠手が現れた。ドライグが俺たちにも聞こえるよう、宝玉が点滅させながら喋り始める。

 

八岐大蛇(やまたのおろち)の毒か。厄介だな。サマエルの毒ほどじゃないが、凶悪だ。放っておけば数日せずに魂まで汚染される。解毒ができるのも限られた術者か、施設のみだろう』

 

ドライグの言葉にグリゼルダが頷く。

 

「はい。ですので、局長を天界にお連れするつもりです。天界の解毒法ならば、治すこともできるでしょう。━━ただ」

 

「ただ?」

 

聞き返したイッセーに、グリゼルダが病室の扉を開ける。

 

「その前に局長からお話があるそうです」

 

俺たちは顔を見合せ、入室していく━━━。

 

 

 

 

 

 

「パパッ!」

 

ベッドに横たわるトウジさんに、イリナが飛び付いた。

 

「……ごめんなさい。私、ミカエル様に選ばれたのに……天使になれたのに、パパを守れなかった……」

 

涙を流しながら懺悔するイリナを、トウジさんは愛しそうに抱き締めた。

 

「ハハハ、イリナちゃんは悪くないよ。それに死んじゃうみたいな雰囲気はやめておくれ。パパはこのあと天界で治療を受けるのだから、大丈夫大丈夫」

 

イリナを励ますように言うが、トウジさんの顔色は悪い。脂汗が顔中に浮かびあがり、皮膚が黒く変色している部分も見られる。腕に繋いである点滴から毒の進行を抑えているそうだが、効果は期待できなさそうだ。

トウジさんは俺たちを見渡しあと、重い口を開く。

 

「……天界へ行く前に少しだけお話ししたいことがあります。先ほど襲撃してきた彼のことです」

 

大蛇(おろち)だけでなく、あの男の使っている剣は、『天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)』と呼ばれる日本の聖剣らしい。数年前に折られたその剣をクリフォトに奪われ、あの男の手に渡ったようだ。

先ほど聞いた情報を確認していると、トウジさんが話し始める。

 

「……彼は八重垣(やえがき)正臣(まさおみ)。かつて私の部下だった男です」

 

「……『だった』。つまり、あいつは……」

 

トウジさんは俺の言葉に頷き、続ける。

 

「彼は亡くなっています。……教会側が、彼を粛清したのですから」

 

『━━ッ!』

 

突然の事実にリアスたちは驚愕していた。あいつ、死んでいるのか……。聖杯で甦ってまで復讐を目指すとは、クレーリアとはどういう関係だったんだ……?

トウジさんは続ける。

 

「……教会の役職にある者たちが襲われているのは、ご存じですね?」

 

俺たちは頷く。前にミカエルから言われたことだ。

 

「彼がやったのでしょう。彼にはそれをおこなうだけの動機がある。そして、殺された者たちは、かつての私の同僚ばかりです」

 

次々と告げられる真実に、全員が言葉を失っていた。

トウジさんの同僚が殺害され、トウジさん自身も狙われた。そして━━、

 

「バアルの関係者も襲われている、と」

 

俺の呟きに、イッセーが驚愕しながらも訊いてくる。

 

「そ、それって、サイラオーグさんのところですね!?サイラオーグさんは大丈夫なんですか!?」

 

「落ち着けよ。バアル家そのものには被害なしだ。バアル家ってよりは、その取り巻きの政治家が襲撃を受けているって感じだな」

 

俺の言葉を受けた木場が、あごに手をやりながら口を開く。

 

「教会側と悪魔側、両陣営に被害が出ている……」

 

「ついでに、俺も襲われたんだよな。昨日……」

 

『え?』

 

俺が苦笑しながら言うと、部屋中の視線が集中する。それを無視して、トウジさんに訊く。

 

「クレーリア・べリアル。この名前に覚えはあるか?駒王町の()()()前任者の名前だ」

 

俺の発言に反応したのは、リアスだった。

 

「お兄様、それは……一体どういうことですか?私の前任者はバアル家の縁者だと━━━」

 

「何事にも裏があるもんだ。真実を隠すために、(てい)のいい嘘で塗り固められる。で、どうなんだ?」

 

視線をトウジさんに戻して再び訊くと、トウジさんは大粒の涙を流しながら、悲痛な表情で頷いた。

 

「八重垣くんと、クレーリア・べリアルは……お互いに惹かれあっていたのです。私たちは、彼らを武力で引き裂いた……ッ。私たちは、彼に殺されても何も文句は言えないでしょう……ッ!」

 

嗚咽を漏らし始めるトウジさん。このヒトが抱えている真実は、かなり重いものになりそうだ……。

 

『「彼女の死」を利用したあなたを、許さない………ッ!』

 

八重垣の言葉の意味、そういうことか。

俺は、あいつ自身とあいつの『恋人』の死を利用して、リアスたちを守っていた………。

 

 

 

 

 

 

 

 

トウジさんが天界に送られたことを確認した俺たちは、バアルからの使者が来たというグレモリー城に来ていた。

ここにいるのは、リアス眷属一同とイリナ、俺だ。レイヴェルには兵藤宅に残ってもらった。少しばかり、バアルとグレモリーの政治的な話になりそうだからだ。

リアスの機嫌はあまり良くない。クレーリア・べリアルの話を一切知らされず、嘘だらけの情報で駒王町に送り込まれていたのだ。不機嫌になっても、無理ないだろう。

グレモリー城の廊下を進んでいき、ついに応接室の前にたどり着く。

俺がドアをノックし、「父さん、全員到着しました」と告げると、中から『入りなさい』と返ってきた。

ドアを開け、一礼してから中に入り、リアルたちも俺に続く。

応接室は、装飾の施された見事なソファーとテーブル、暖炉が目に入る。

 

「よく来てくれた」

 

父さんが立ち上がり、迎え入れてくれた。ソファーに座っているのは、初老の男性だ。貴族服を着ている。紫色の瞳と黒い髪というバアル特有の特徴をしているから、バアル家の血筋のヒトだな。威厳溢れる雰囲気からして、かなり上の立場のヒトなんだろう。

男性が口元を少しだけ笑ませる。

 

「ごきげんよう、ロイ殿、リアス姫」

 

父さんが俺とリアスに言ってくる。

 

「二人とも、ご挨拶なさい。このお方はバアル家━━初代当主様であらせられる」

 

「━━━ッ!?」

 

横のリアスは驚愕を隠しきれていなかった。かなり上とかじゃなく、バアルという悪魔の始まりのヒトじゃねぇかよ……。

初代様は俺たちに改めて言う。

 

「はじめまして、ロイ殿、リアス姫。私の名はゼクラム・バアル。まあ、私のことは聖書や関連書物を見ていただければ十分だろう」

 

「……はじめまして、お話だけはうかがっております」

 

横で萎縮しているリアスに変わり、俺が挨拶を返した。眷属や部下じゃなく、初代様が出てくるとは、今回の話はかなり重要なことなんだろう。

 

「グリモリー眷属の皆々。活躍は私の耳にも届いている。我が家のサイラオーグともよくしてくれているそうで……礼を述べよう」

 

ゼクラム様はそう言うと、すぐに本題に入った。

 

「訊きに来たこととは、あの町にいた……貴殿の前任者について、でよいな?」

 

リアスが息を整えて肯定する。

 

「はい。敵の……クリフォトに手を貸す者の一人が『天界に、そしてバアル家に復讐する』━━と」

 

ついでに俺にもな。今は面倒だから言わないでおこう。

ゼクラム様はそれを聞き、目を細めた。

 

「ふむ、どこから話したら良いものか……」

 

イリナが一歩前に出てゼクラム様に言う。

 

「お願いします。聞かせてください。私のパパ……父も関与していたと聞きました。いま、その父はテロリストに命を狙われております。あの町で起こったことをお聞かせください!」

 

ゼクラム様はイリナが天使だと気づいたようだ。

 

「……貴殿は天使か。関与というと、当時の教会から派遣されたエージェント。もしや、紫藤という人間の?」

 

「はい、私は紫藤イリナ。紫藤トウジは私の父です」

 

それを聞いたゼクラム様は大きく息を吐いた。

 

「……これも縁か。まったく、サイラオーグの世代になってから、いろいろなことが噴出してばかりだ。……前もって訊こう。あの土地と我らの関係についてはご存じかな?」

 

リアスが頷いた。

 

「はい、今はグレモリーの統括ですが、以前━━古くはバアル家とグレモリー家の共同地域と聞いております」

 

俺はその頃から任務にいそしんでおりました。

 

「貴殿たちが利用しているものの大半も古くから我らが関わっていたのだ。主にグレモリーが工面していたのだがね。駒王学園もしかり。だが、一時だけあの地を貴族の子息、子女の経験のために短期間貸し与えたこともあったのだ。そのなかにあの娘がいた」

 

つまり、あの娘ってのが、クレーリア・べリアルってことか。しかもクレーリアは、ディハウザー・べリアルの従姉妹だという。

ゼクラム様は続ける。

 

「クレーリアの運営は順調であった。どこにでもある上級悪魔が取り仕切る町の様相を見せていたのだ。ところが、偶然が重なり、クレーリアは人間の男と通じてしまった、いや、それ自体は咎めることではない。悪魔が人間と関係を持つこなど、古来、そう珍しいことでもないからだ」

 

所詮、我々よりも短命の存在。永生なる悪魔にとって、一時の戯れとして付き合うには十分な素材だ。とゼクラム様は付け加えた。

すると、ゼクラム様の目元が険しくなる。

 

「ただし、相手が教会側の人間ならば、話は別となる」

 

ゼクラム様はイリナに目を向ける。

 

「いまでこそ、この場に天使が同席するということが許されているが、当時では考えられぬことだ。聖職者を堕とすならいいだろう。だが真剣に愛し合うなど、禁忌とも言えた。まったく、今年に入ってから価値観が覆るようなことばかり起こるものだな」

 

ゼクラム様は苦笑いをしているが、イリナが問う。

 

「……べリアルの女性と、教会の戦士は……」

 

「あってはならぬことだ。我々はそれぞれの立場から説得を試みた。……が、彼らの間柄はすでに深いところにまで行っていた。このままでは、特例を許してしまうことになる。強引に引き離すことが決定したのだよ。皮肉にも、教会側も同様の決定を下したようだった。彼らも業の深い存在だとは思わないかね」

 

俺の任務中にそんな事があったのか。俺が任務についていなくても、どうにもならないことだな。

リアスが訊く。

 

「二人は……亡くなった。……粛清したのですね?」

 

ゼクラム様は淡々と語る。

 

「結果的にそうなってしまったのだよ。我らは最後まで説得を試みた。……が、業を煮やした教会側が……いや、我らのほうが先に手を出したのかもしれないが、お互いがお互いの不備を正した」

 

「結果的にあの町を管轄する悪魔がいなくなり、旧魔王派が潜り込む隙ができてしまった、と。……知らなかった」

 

「おそらく、どの勢力のトップにも伝わっていなかったのだろう」

 

俺の言葉にゼクラム様が返してくれる。

何とも言えないな。それがあったから俺は駒王町に入り込めて、コカビエルを倒してリアスたちを助けられたわけだ。

父さんがあごに手をやって静かにうなった。

 

「初めてうかがうお話ですな。まさか、リアスの縄張りにそのような事案があったとは……。リアスの代になるまであの地をバアル側にお任せしていた面もありましたが、我らも肩書きの上では共に治めていた身です。一言いただきたいところでしたな」

 

父さんは不満そうな声音になっているが、。ゼクラム様は気にせずに続ける。

 

「過去を捏造し、あの地をリアス姫に紹介したことは謝罪しよう。しかし、そのようなことが起こった地だ、早めに後任者を決めねばいらぬ邪推が飛び交うことになる」

 

「その後任者には有望な若手が適任だった。………ということですな。確かにリアスなら、バアルの血を宿す、魔王ルシファーの妹。不名誉なことが起きた地を上書きするには、十分な逸材と踏まれたと?」

 

父さんの言葉にゼクラム様は薄く笑む。

 

「たとえ、今回のように明るみになろうとも、有望な若手であるならば、その前に実績を積んで十分に清算できるだろう。……と思ったのだが、有望すぎて、あの地は三大勢力の和平の場所となってしまった。上書きとしても、過分すぎるほどであろう」

 

確かに、ゼクラム様の言う通りだ。リアスはあの町で現在進行形で実績を残していっている。今、この話が出てきても『今さら』で片付けられてしまうだろう。

リアスは首を横に振り、できるだけ怒りを抑えるように言う。

 

「当時の政治が絡んだのでしょうから、それについて私は特に何もありませんわ。けれど、どうして━━」

 

「どうして捏造したのか?グレモリー卿を騙してまで━━と、そういうことだろうか?」

 

「……………」

 

言いたいことを先に言われ、リアスは不満げに口を閉ざす。

ゼクラム様は続ける。

 

「サーゼクス殿には話した。伝わっていなかったとしたら、それは彼の愛情だ。それは否定できることではあるまい。いらぬ情報、気苦労を妹にも、弟にもかけたくはなかった。そうは思えないかね?」

 

確かにあの任務のタイミングで話されてたら、確実に動揺なりしてバレることもあったかもしれない。

知らないところで兄さんも戦っていたんだな。

 

「ですが、それが今回の被害をもたらしてしまった。そうは考えられます。前もって知らされていれば、一人や二人なら助けられたかもしれません」

 

俺は若干の怒気を込めて言ったが、ゼクラム様は笑うだけだった。

 

「ロイ殿、キミはまだまだ若い。私のところのサイラオーグといい、リゼヴィムの坊っちゃんといい、まるで人間のようだ。話は聞いている。キミも悪魔は悪であるべきと思っているのだろう?」

 

「俺は……善悪両方あって当然と思うだけですよ。ただ……俺自身は悪よりかもしれませんが……」

 

俺の言葉を聞いてリアスたちは何とも言えない表情になっていたが、ゼクラム様だけは鋭い眼光を放ち、そして言った。

 

「貴殿たちもよく心しておいてもらいたい。真の悪魔とは、古くから伝わる上級悪魔の血縁者を指す。それ以外は眷属━━下僕であり、本当の悪魔ではない。邪悪であるにしろないにしろ、この貴族社会を未来永劫存続させることが、悪魔のすべきことだ」

 

これがこのヒトなりの悪魔の意味か……。邪悪であるにしろないにしろってのは俺の意見と同じだが、それ以外のところは何とも言えないな。

ゼクラム様は息を吐き、立ち上がった。

 

「ふむ、年甲斐もなく話し込んでしまった。私もまだ若いのかもしれんな」

 

ゼクラム様は苦笑いすると、こう述べた。

 

「今回はキミたち、D×Dに任せよう。バアル側の動きをうかがっている者がいそうなのでね。下手に動くのは悪手と判断した」

 

警戒してるんだな。まあ、ゼクラム様もクリフォトのターゲットになっているかもしれない。

ゼクラム様は言う。

 

「あの町のことを黙っていて、申し訳なかった。━━では、私はおいとまさせていただこうか」

 

「ゼクラム様、お送り致しましょう」

 

父さんが手をやって差し出すが、ゼクラム様は「かまわんよ」と断っていた。

ゼクラム様は部屋を出る直前に何かを思い出したように言った。

 

「アグレアスは何としても奪取したほうがいい。赤龍帝殿が上級悪魔を目指しているのなら、なおさらだ」

 

ゼクラム様はそう言うと部屋を出ていった。

ゼクラム様が退室して、応接室にはなんとも言えない空気が流れていた。

俺は緊張を解すように息を吐き、口を開く。

 

「長く生きた悪魔は無気力になりやすくなるが、あのヒトはそれを感じられなかったな。悪魔とはうんぬんは抜きにして、俺もあんな感じに年をとりたいねぇ」

 

周りの緊張を解すために軽い感じに言うと、ロセが睨んできていた。さっきの俺は悪よりってのが引っ掛かっているのかもな。

俺が苦笑していると、リアスが呟く。

 

「……大王がおこなったことは、大王の血を継ぐ者で決着をつける。私があの地に送られたのは、そういうことなのでしょうね」

 

だったら、俺も頑張らねぇとな。俺もゼクラム様の子孫━━『滅びを継ぐ者』なんだから………。

 

 

 

 

 




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