俺━━兵藤一誠とロイ先生、リアスのお父さん、サイラオーグさんの四人は、『ゆるキャラ』修行のために山に来ていた。
俺たちの目の前には雄大な自然が広がり、耳をすませば鳥のさえずりなんかも聞こえてくる。
サイラオーグさんは周りの自然を見渡し、感嘆の息を漏らしていた。
『……なるほど、いい山だ。木々も水もきらめいている』
着ぐるみを着たままのサイラオーグさんはやる気十分のようだ。
サイラオーグさんは俺の手を取ると、山を指さして宣言する。
『兵藤一誠!まずはあの山の頂上を目指すぞッ!』
「え、えええええええええ!?山登りですか!?」
目玉が飛び出そうな勢いで驚く俺。ついていきなりだから驚いてしまった!
俺、装備とかなんにもないんですけど!学生服ですよ!?まあ、サイラオーグさんは着ぐるみ姿のままですけどね!
「登ってこそ見えるものがある。まずはそれからだッ!」
……俺はいざとなったら鎧をまとえばいいか。サイラオーグさんは、闘気でどうにかしてしまえそうだ。
それはそれとして、サイラオーグさんが指さした山は、富士山かそれ以上の高さがあるように見える……。
当惑する俺の横では、
『ここをキャンプ地とするごも!』
『ふむ。我々はここでキャンプの準備をしていよう』
着ぐるみ姿のグレモリー親子が楽しそうにテントを組み立て始めていた。お二人的には、久しぶりに親子でキャンプに来ているみたいな感覚なのかな?
『では、行くぞッ!』
俺の手を引き、山へ駆け出すサイラオーグさん!
かくして、俺は『ゆるキャラ』と共に山を登ることになった━━━。
━━━━━
『ゴモりんJr.』こと俺━━ロイは、久しぶりに父さんと二人でキャンプの準備を進めていた。
着ぐるみを着ているせいか、細かな作業に時間がかかってしまったが、どうにか全ての作業が完了。久しぶりにコーヒーを淹れていた。
『うん。昔に比べれば、美味しいよ』
『どうもごも』
父さんから褒めてもらえた。昔は酷評ばかりだったからな、嬉しいもんだ。
俺が着ぐるみの中で笑顔になっていると、父さんが話題を変える。
『さて、真剣な話をしよう。最近、女性と縁があるようだな』
『……そうですね』
真剣な話ということで、口調を戻す。女性と縁があるって、確かに今年に入ってからすごいな。悪魔だけじゃなく、天使にまで好かれているようだからな……。
俺は小さくため息を吐いていると、父さんが俺の肩に手を置きながら言う。
『私も若い頃はやんちゃをしたものだよ。その度にヴェネラナからお説教されたが……。それはともかく、しっかり皆を幸せにしなさい。ハーレムを作るなら、その覚悟を決めること』
━━と、真面目な声音で言ってくる父さん。まあ、ロセに告白した時点で覚悟は決めていたけどな。
『わかりました』
俺が返すと、頷く父さん。すると、何かを思い出したように言う。
『女性の縁ということで思い出したんだが、この近くの湖にリリティファさんが暮らしているんだ。あいさつに行ってきたらどうだい?』
━━ッ!リリティファが近くに住んでいるのか。あれからまったく会えていないし、たまには顔を出してみるのもいいだろう。
『行ってみます。ああ、ついでに魚も取ってきますね』
『うん。頼むよ』
そんなわけで、俺は近くの湖を目指す━━前に着替えよう。着ぐるみで泳ぐとか、溺死しちまう。
俺は一旦着ぐるみを脱ぐ。こんなこともあろうかと、下にはジャージを着ておいたのだ。おかげで死ぬほど暑かったがな……。
俺は汗を拭い、父さんに「いってきます」とだけ言ってその場を飛び出した。
━━さて、あいつは元気にしているかな……。
そんなわけで、飛ぶこと数分。
湖のほとりに降り立ち、周りを見渡していた。。
あ~、やっぱり生身が一番。視界が広い(右半分は見えていない)な。
一度大きく体を伸ばし、湖のほうに視線を向ける。そこからは、特徴的な緑髪の女性が顔を出していた。ばれていないと思っているのか、俺と目があっても動くことはない。
俺は後頭部をかき、そのヒトに言う。
「久しぶりだな!リリティファ!」
「━ッ!」
名前を呼ばれたリリティファは驚きながら一度潜り、そのままこちらに泳いでくる。
浅瀬に入ると上半身を水面から出し、笑みを浮かべた。
「お、お久しぶりです。その節はお世話になりました」
「ああ、久しぶりだな。そっちも元気そうでなによりだ。こっちに来てからは何もないか?」
俺が訊くと、リリティファは笑顔のまま頷く。
「はい。こちらに来てからは、恐いヒトに追いかけられることもなくなりました」
なら安心だ。あの時は、色々あって死にかけたからな。頑張ったかいがあった。
俺がうんうん頷いていると、リリティファが若干不安げに訊いてくる。
「あなたもあれから大丈夫でしたか?時々ニュースで名前を聞くのですが……」
「ん?ああ、テロリスト相手に頑張ってるよ。左腕が吹き飛んだけどな」
俺がなんてことのないように言ったことに、リリティファが驚く。
「ふ、吹き飛んだんですか!?そ、それで、お体はだ、大丈夫なんですか!?」
俺は服の左袖をまくり、肘まで見えるようにする。そこが義手と生身の繋ぎ目だ。
「この通り、義手だ。ちょっと不自由な時があるが、あんまり前とは変わらないな」
「そ、そうですか……」
ホッと息を吐くリリティファ。何だろう。最近、行く先々で女性に心配されている気がする……。
俺はその思考を振り切るように首を横に振り、本題に入る。
「さてと、俺は魚を捕りに来たんだ。手伝ってくれるか?」
「はい!お任せください!」
元気よく笑顔で返事をするリリティファ。やる気十分なのは結構だ。
魔力でジャージからウェットスーツに着替え、銛の代わりとしてアロンダイトを取り出す。
「さて、やるか!」
「はい!」
こうして、俺とリリティファは共同で漁をすることになったのだった━━。
「大漁だな!」
「はい!」
数時間をかけ、ザルいっぱいに魚を獲った俺とリリティファ。
漁をしながら思ったが、材料があっても料理をするには調味料も必要だよな。
「リリティファ、調味料か何かを貸してくれないか?」
「はい、今取ってきます!」
リリティファはそう言って湖に潜っていった。湖の中に住んでいるのか、それともほとりに家があるのか。
俺がそんな疑問を思いながら首をかしげていると、こちらにに近づいてくる気配が複数。
「何者だ?ここは山賊『ビルーバ
山賊ね……。この手の輩はどこにでもいるもんなのか?
俺がため息を吐いていると、リリティファが戻ってきた。
「ロイ様、お待たせしました!」
調味料が入っていると思われる箱を持っている。だが、タイミングが悪かったな。ちょうど問題が発生したところだ。
リリティファが山賊たちを視界に捉える。
「あ、あなた方は!」
リリティファはどうやら知っているようで、驚愕の声を漏らしていた。だが、いつかの海賊の時ほど怯えている様子はない。
「リリティファ、誰だこいつら」
俺がそう訊きながらその山賊を指さすと、リリティファは歯切れ悪くこたえた。
「ええと、最近私に告白してくるヒトの部下さんです」
「……告白って、またかよ……」
俺が呆れていると、山賊共が言ってくる。
「えーい!貴様ら!俺たちを無視するな!」
「ちょっと黙ってろ……!」
俺はそう言いながら軽くアロンダイト振り、オーラを飛ばす!
『ギャァァァアアアアアッ!』
その一撃をくらった山賊たちは吹っ飛んでいき、空の彼方でキラリと光った。……ように見えた。
「これにて一件落着だな」
俺がなんてことを言っていると、リリティファが訊いてくる。
「ところで、ロイ様はどうして魚を捕りに来たのですか?」
「……あ」
いけねぇ、漁に夢中になって理由をど忘れしてた。父さんたち、もう待ちくたびれてるだろうな……。
俺はため息を吐き、リリティファに言う。
「ま、これも何かの縁か。リリティファ、一緒にどうだ?
「い、一緒に、とは……?」
聞き返してくるリリティファに、俺は言葉を足して言い直す。
「近くでキャンプしていてな、一緒に食事はどうだ?」
俺の言葉にリリティファは一瞬考えると、笑顔で頷く。
「お邪魔させていただきます」
「了解。そんじゃ、行くか……」
転移魔方陣を展開し、急いで父さんたちの元に戻ったのだった。
転移の光が止み、視界が回復すると、
『ロイ、お帰り。こっちの準備はできているよ』
そう言って迎え入れてくれる父さん。奥には疲れた様子のイッセーと、なぜかびしょ濡れの『バップルくん』が椅子に座って休憩していた。
二人共、いつの間にか戻ってきていたのか。あっちは登山に行ったはずなのに、先に戻ってきているとは、向こうで遊びすぎたな……。
『リリティファさんもお久しぶりです』
「お、お久しぶりです。当主様?」
リリティファは疑問形で父さんに訊いた。父さんはまだ着ぐるみ姿だからだろう。
『ああ。私だよ。さて、イッセーくん、サイラオーグ。ロイも戻ってきたところで、食事の準備を始めよう。リリティファさんも食べていきなさい』
「は、はい……」
四人中二人が着ぐるみの状況に少し当惑しながら、リリティファは返事をした。
その後、五人で騒がしく食事の準備を進め、俺たちが捕ってきた魚や、サイラオーグが森で捕ってきた鹿などで様々な料理を作っていき、少し遅めの、キャンプとは思えないほど豪華な夕食を摂ることになったのだった━━。
誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。