俺たちが喧嘩の舞台となるフィールドに転移し数分。ようやくフィールドの駒王学園に当たる場所に到着した。
校庭で対峙する俺たちと教会クーデター組。今にも始まってしまいそうだが、俺は戦士たちの一団の奥に座るストラーダに言う。
「ストラーダ倪下、お初にお目にかかる、ロイ・グレモリーだ」
「貴殿が噂に聞く『
小さく笑みを浮かべながら言葉を返してくるストラーダ。
そんな彼に訊く。
「━━言葉は不要か」
「ええ。では、始めるとしましょう」
ストラーダがそう言うと、彼を囲む戦士たちが構える。
「ああ。始めよう」
俺は魔力を込めた拳を構え、リアスたちも構える。
ストラーダはデュランダルのレプリカの切っ先をこちらに向け、高らかに宣言した!
「戦士たちよ、天より許された一戦、思いの丈を今日この場で全て吐き出せっ!」
『オオオオオオオオオオオッ!』
この一帯が振動するほどの声量が発せられた!数も数だからな、なかなかの闘気を感じられる!
「死んでも後悔はするなっ!罪からくる報酬は━━死なのだからっ!」
『オオオオオオオオオオオッ!』
それが開戦の合図となり、戦士たちが一斉に殺到してきた!
「……さて、やるか。おまえらも気を付けろよ!」
『はい!』
リアス、朱乃、アーシア、ロセを後衛。小猫、匙、ギャスパーを中衛。イッセー、ゼノヴィア、俺が前衛で迎え撃つ形になる。
一応だが、こっちは向こうを殺すつもりはない。クーデターを起こしたとはいえ、死者を出していない彼らをいきなり殺してしまうのはどうか、と言うのが俺たちの意見のためだ。
なので、アロンダイトを使えない。殴ったり、投げ飛ばしたりで戦士を倒していく。まあ、魔力による強化はある程度できるので、それはやらせてはもらうが。
男の光の剣をスレスレで避け、あごに一発、ふらついた隙に右回し蹴りを撃ち、五人ほど巻き込んでいく。
続けて遠距離から対悪魔用の銃から光の弾丸が放たれるが、それを体捌きで避け、放ってきた奴に一気に肉薄。邪魔してくる奴らの間をすり抜けて銃持ちのみぞおちに一発。先ほど無視した奴らが後ろから迫ってくるが、一人一人を素早く、確実に気絶させていく。
回りを見れば、リアスたちもうまく殺さないように注意しながら応戦していっていた。
イッセー、小猫は打撃、ゼノヴィアも加減しながらの斬撃。匙は
死にかけてしまったら、すぐさまアーシアに治してもらえばいい気もするが、それはそれ、これはこれだ。出来れば、そんな重症を負わせたくはない。
にしても数が多いな。俺たちが始める少し前にソーナから始まったと連絡が来ていたが、向こうも大丈夫なはずだ。クリスタルディがどれほどの化け物かにもよるがな……。
俺はそう考えながらも、向かってくる教会の戦士たちを蹴散らしていった━━。
戦闘開始からもうすぐ二十分というところで、俺たちのもとに虹色のシャボン玉が飛んで来た。正体不明なので、念のためってことで全て避けていく。
敵の攻撃かとも思えたが、そのシャボン玉は戦士たちにも飛んでいっているから、あちらの攻撃ではなさそうだ。シャボン玉に当たった奴が泣き崩れているんだが、なぜだ?
試しに突っついてみるか?いや、何かヤバイものだったらそれはそれで………。
俺がシャボン玉を避けながら考えていると、ここに近付く気配が二つ。どうやら向こうは終わったようだ。
その気配が到着すると同時に言う。
「そっちは終わったみたいだな。木場、イリナ」
と、言いながらもシャボン玉は避ける。そんな俺を見て、イリナが訊いてくる。
「はい、無事に終わりました。……それで、先生は何を必死に避けているんですか?」
「これってこっち陣営のでいいんだよな?」
俺の避けながらの質問に木場が答える。
「はい。このシャボン玉はジョーカーが作り出したもので、相手の大切なものを思い返させて戦意を鈍らせるものだそうです」
我らがリーダーらしい、やさしい技だな。
俺は泣き崩れる戦士たちを見ながら感心していたが、この状況でも戦意が薄れない者が一人。
「これはこれは、キレイなシャボン玉ではないか」
しわくちゃな顔で笑みを浮かべるストラーダ。
このシャボン玉でほとんどの戦士が泣き崩れ、戦線は崩壊した。今まで静観していたストラーダがようやく腰を上げたのだ。
ストラーダは祭服を脱ぎ捨てる。その祭服に隠されていた肉体は、八十七歳とは思えない筋肉の塊。
なんて肉体だよ……。どんな鍛え方してんだか……。
ストラーダが一歩前に始まった出る。その瞬間、俺たちの背中を冷たいものが走った。まるで邪龍みたいなプレッシャーなんだが……あいつ、本当に人間なのか……?
ストラーダは手を広げて、彫りの深い笑みを浮かべた。
「では、教義の時間といこうか。悪魔の子供らよ」
ストラーダから感じるプレッシャーに全員が息を呑んだ。
ゼノヴィアが言う。
「……デュランダルのレプリカ。力は本物の五分の一ほどと聞くが……倪下が持つ以上、その限りではないだろう」
ゼノヴィアのエクス・デュランダルは性能的には勝っているだろうが、使い手の勝負になりそうだ。
最初に飛び出したのは木場とイリナだった。向こうで勝った勢いで、自信に満ちた足取りだ。
だがストラーダは動かず、構えも取らない。油断をしているわけではなく、余裕ぶっているわけでもない。そこに木場の聖魔剣が伸びていくが、ストラーダはその一撃を素手で止めた。……素手で止めた!?
俺も驚いているが、一番驚いているのは木場だ。目を見開きながら聖魔剣とストラーダの顔を交互に見ていた。動かそうにもびくともしないのようだ。
ストラーダが頷きながら言う。
「いい剣筋だ。的確でいて、ためらいもない。しかし」
パリン……。と乾いた金属音が鳴り響いた。聖魔剣がストラーダの握力によって折られたのだ。
「まだ鍛練が足りない」
そう言い放ち、ストラーダは裏拳を木場に撃ち、木場は折られた聖魔剣で防ぐが、吹き飛ばされていった。
「倪下、失礼を!」
イリナが斬りかかるが、今度は指二本で挟んで止め、豪快に剣ごと投げ飛ばされた!
「ならば魔法です!」
後衛のロセから大量の魔方陣を展開、そこから各種属性入り乱れのフルバーストを放った!
ストラーダは避ける素振りも防ぐ素振りも見せずに、魔法が直撃する瞬間、指を一本だけだして高速で術に触れていく。触れられた魔法は、力を失ったように霧散していく。
「━━っ!?術式を崩したというのですか!?」
驚愕するロセに、ストラーダは諭すように言う。
「魔法とは、計算だ。━━となると、方程式を崩す術をぶつければ相殺、あるいは壊すことが可能なのだよ。若い使い手は形だけの場合が多い。わずかな綻びを見つければ物の数ではないぞ」
……マジで?ロセのフルバーストをあんな形で防ぐことが出来たとは、知らなかった。てか、知っていても怖くてできねぇよ!
《それなら、僕が行こう!》
闇の獣になったギャスパーが飛び出していった!最近、接近戦の特訓を始めたわけで、それなりに期待できる!……かな。今のを見たせいで不安のほうが大きい。
ストラーダは接近するギャスパーに対し、構えを取った。右拳を引き、まさしく正拳突きを放とうとしているようだ。
次の手がわかった瞬間、ストラーダの右腕の筋肉が一気に肥大した!
「ふんッ!」
気合い一閃と共に、正拳突きが撃ち出された!正面から挑んだギャスパーはギリギリで避けるが、
「ッ!」
こちらに迫ってきた余波をその場を飛び退いて避ける!同時に、俺の後方にあった建物が崩壊していった!
「威力はサイラオーグ並み。直撃はアウトだな!」
体勢を整えながら皆にも言い聞かせるように言う。余波でもあれなら、直撃したら骨が砕け散るだろう。いや、その前に━━。
「倪下のパンチは『聖拳』と呼ばれている。パンチにすら聖なる力が宿っている!」
ゼノヴィアが叫んだ。そう、ガブリエルから渡された書類にもあったが、ストラーダの拳は聖なる拳━━『聖拳』。ただの拳に力が宿り、下手な聖剣よりも悪魔にとって脅威となる。
拳をかいくぐり、懐に飛び込んだギャスパー。彼の迎撃のため、ストラーダはようやくデュランダルを構えた。濃密な聖なるオーラが刀身を包み込む!
ギャスパーが拳を蹴りを連続で放っていくが、ストラーダはそれを時には受け流し、時には避けて見せる。
ギャスパーがデュランダルを抑えようとするが、デュランダルのオーラに負けて闇の衣が剥がされ、生身のギャスパーの顔を覗かせた。
ギャスパーの闇は魔神の化身とも言える。それを剥がすとは、何なんだあいつ……。
ギャスパーは追撃を避けるためにその場を飛び退くと、そこに匙の放ったラインが向かっていく!ストラーダはそれを追撃するため、デュランダルを軽く薙いだ━━。この場にいる全員が悪寒を感じ、体勢を低くする!同時に俺たちの頭の上を斬撃が通り過ぎていく!背後を確認すると、先ほど頭の上を通り過ぎた斬撃により、建物が斬られていた。だが、崩れるわけではない。窓ガラスも含め、鋭利なもので斬られたように横一文字の痕跡が残っていた。
匙のラインも見事に真っ二つにされており、邪炎さえも一時的に消失してしまった。
『ま、マジかよ!?』
驚愕する匙。ストラーダが再び諭すように口を開く。
「貴殿らはあまりに
魂にパワー……。何だろう、俺は軽くもない呪いというか
何て場違いなことを考えていると、いつの間にか真紅の鎧を纏ったイッセーがストラーダに挑んでいった!あくまで正面からの勝負だ!
イッセーの全力の拳とストラーダのデュランダルがぶつかり合う!余波で二人を中心として地面が抉られる!
互角のぶつかり合いあった両者はその場を飛び退く。その瞬間、木場とイリナがストラーダに挑んでいき、朱乃と白音モードの小猫がそれに合わせる。
木場とイリナ、小猫が抜群の連携攻撃をしていくが、ストラーダをそれを全て捌いていく。朱乃が援護として放つ雷光龍も襲いかかるが、デュランダルのオーラで霧散させてしまう。
四人がデュランダルのオーラを避けて距離を開けた瞬間、ゼノヴィアが突貫していく!エクス・デュランダルのオーラを全開にし、ストラーダに斬りかかっていった!
ストラーダはそれを受けながら、心底楽しそうに口元を笑ました。
「いいぞ!それでいい!何も考えてはいけない!デュランダルの本質は━━純粋なパワーだ!だからこそ、戦士ゼノヴィア、貴殿は選ばれた!否定するな!力を否定してはいけないッ!」
まるで弟子に指南するように言うストラーダ。いや、実際に何かをゼノヴィアに伝えようとしているように思える。
「━━だが、パワーの表現はひとつではない。この剣の姿は、貴殿が本当に求めていたものなのか?」
「━━ッ!!」
ストラーダの問いかけに、ゼノヴィアは何かを感ずるものがあったらしく、一瞬表情を変えた。
ゼノヴィアは飛び退き、エクス・デュランダルに意味ありげに視線を送る。それを見てストラーダは微笑んでいるが、デュランダル使いにしかわからない何かがあるのだろう。
今度はリアスが前に出る。全身にオーラを纏い、頭上に巨大な魔力の球体が生まれていた。
「━━なら、これならどう?」
リアスが作り出した球体は『
「避けないと死ぬわよ!」
そう告げてから球体を放つリアス。避けてくださいと言わんばかりの速度で進むそれを、警告してから放つということは、文字通り『必ず殺す技』として作り出したからだろう。つまり、避けろってことだな。
だが、ストラーダは避けようとしない。ただ正面から愉快そうに微笑み、滅びの球体に視線を向けていた。
「これはこれは……老体にはちと厳しい代物だ。━━しかし」
レプリカのデュランダルを天高く掲げる。刀身に莫大な聖なるオーラが集まっていく。
周囲のものを吸い込み、消し飛ばしながら近づいてくる滅びの球体に、デュランダルが振り下ろされる!視界が白く染まるほどの光量に、思わず目をかばう。
ゆっくりと目を開けてみると、俺たちの視界に飛び込んで来たのは━━真っ二つにされた滅びの球体だった!
あいつ、滅びを斬りやがったのか!?牽制で撃ったものならともかく、当たれば確実に死ぬであろう高濃度のものだぞ!?
驚愕する俺たちに、ストラーダは肩で息をしながら言う。
「━━デュランダルは『すべて』を斬れるのだ。バアルの滅びであろうと、例外はない」
デュランダルのただひとつの特徴を告げるストラーダ。
単純な破壊力は聖剣最強と称されるデュランダル。使い手とつかいかた次第で、ここまでできるのか。
俺は苦笑し、異空間からアロンダイトを抜き放つ。
「━━さて、俺もやるか」
同時に深紅の魔力を解放。視界の右半分が見えるようになり、アロンダイトの刀身から滅びのオーラがにじみ出る。
息を整えたストラーダがこちらに目を向ける。
「━━『折れぬ聖剣』アロンダイト。まさか、封じられたその剣を見ることが叶うとは……」
感嘆の息を漏らすストラーダ。なんか、変な気分だ。それにしたって、『折れぬ聖剣』か。確かに、珍しく折れたとかそんな話がないからな。全盛期のエクス・カリバーとも打ち合えたとも聞いたし。レプリカとはいえあのデュランダルとも、いけるのか……?
俺は一歩ずつ近づきながら肩をすくめる。
「まあ、もろもろ昔とは違う代物になってはいるが━━」
ある程度近づいたところで、霞の構えに似た構えを取る。
「━━堪能していけ」
不敵に笑みながら告げると、ストラーダも微笑みながらデュランダルを構える。
「始めるとしよう。さあ、来るといい『
俺とストラーダ。そしてアロンダイトとデュランダルの戦いが、始まろうとしていた━━。
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