ストラーダたちとの戦いを終えた日の夜。
疲れた体に鞭を打って寝間着に着替えた俺━━ロイはベッドに腰をかけて、目の前にいる相手を見てため息を漏らした。
「はぁ…………」
「にゃははは。さて、約束は守ってもらうわよ」
いたずらっぽく笑む黒歌。決戦前にした約束を果たしに来たのだ。
まあ、ヴァルブルガからの拘束を解いてくれたのは重々承知だ。それに、約束したのも俺だし……。
小さくため息を漏らし、黒歌に目を向ける。なぜ、下着姿なんだ……。
「なあ、せめて寝間着ぐらい着てこいよ……」
「何で?もしかして、襲いたくなっちゃうとか?」
何て訊いてきながら、色っぽく自分の体を撫でる黒歌。それを見ながら生唾を飲み込んでしまうことを自覚しながらも、なぜか視線を外すことができない。
それを気づいたのか、黒歌がブラに手をかけて勢いよく取っ払った!
何度か見たことのある、大きめの胸と、健康的なピンク色の先端が丸見えとなった!って、何を冷静に観察してんだ俺!?
視線を外そうと顔を背けると、正面から黒歌が抱きついてくる!その勢いのままベッドに押し倒された!
頭全体を非常に柔らかいものに包み込まれる!だが、強引に抱きつかれたためか、ちょっと息苦しいんだが!
そんな俺の想いが通じたのか、黒歌は一度俺から離れて顔を覗きこんでくる。黒歌の奴、若干頬が赤い気がするんだが……。ちょっと瞳も潤んでいるし……。
「黒歌、大丈夫か……?」
「だ、大丈夫よ。ちょっと待って……」
黒歌は何度か深呼吸をすると、自分の胸元に手を当てる。すると、頬の赤みが引いて落ち着いた表情になった。
俺が疑問符を浮かべていると、倒れこむように胸に顔を預けてくる黒歌。なんか、無理をさせているようでこっちも気を遣うんだが……。
何となく黒歌の頭を撫でてやり、それを受けた彼女は一瞬驚くが、すぐに持ち直して甘えるように頬擦りしてくる。
ボケッと天井を見上げながら黒歌を撫でていると、何か腹の辺りから音が聞こえ始めた。なんか、外している……?
音のほうに目を向けると、黒歌がそっと俺の寝間着のボタンを開けていた!しかも、もうほとんど終わってやがる!
残ったボタンを守ろうと手を伸ばすが、寝るときは義手を外すことを思い出すが時すでに遅く、そのまま全てのボタンが外れ、俺の上半身も丸見えになる!
黒歌は笑みながら、俺の体の上を這うようにして上がり、顔同士が触れあいそうなほどまで距離を近づけてくる。そのまま抱きつき直すと、腕の力を強めてきた。彼女の胸が俺の体でむにゅんと潰れ、ダイレクトに柔らかさが伝わってくる!
俺が完全に硬直していると、黒歌が耳元でささやく。
「あんたの体、温かいわね……」
「……そ、そうか?」
俺が聞き返すと、「ええ」と呟いて俺の耳たぶを甘噛みしてくる。体がビクッと反応してしまい、黒歌はそれを受けて楽しむように耳を舐め回してきた!
ああ、もう!寝るどころの話じゃねぇ!こいつの相手でそれどころじゃねぇよ!
黒歌はそのまま下を這わせ、俺の頬や首まで舐めてくる!猫又だからか、猫の舌ようにざらざらとした感覚が伝わってくる!
いろんな意味で耐える俺に、再び黒歌がささやく。
「それに、美味しい」
「…………」
その一言で完全に硬直する俺。いや、もう、何て返せばいいのかわからねぇよ……。
何かに憑かれたように俺の首を舐めてくる黒歌。すると、彼女の手が俺の腹部に当たる。同時に体の芯から温まってきた。
「ふふ。いちおう、これも約束だからね」
いや、仙術でどうこうの話はしていたが、この流れでやってくるのかよ……!
黒歌はそのままぎゅっと俺に抱きついて足を絡めると、
身体が温まってきたからか、いきなり強烈な眠気に襲われ始めると、黒歌が珍しく優しく笑む。
「今日はお疲れ様。お休みなさい……」
こいつ、時々だけど、いい女性に見えるんだよな……。
━━━━━
「ふふ、本物に寝ちゃうなんてね」
無防備な寝顔を晒すロイを見ながら苦笑する黒歌。
つい最近まで敵側だった自分を、ここまで信頼してくれているロイには感謝している。けれど━━、
「あんた、見ててハラハラするのよね……」
優しく頬を撫でながらぼやく。戦う度にぼろぼろになって戻ってくるのは、基本待つ側の自分には辛いし、きっと現レヴィアタンもそうなのだろう。
とりあえず、自分も寝ることにしようとするが、その前にあることに気づく。
(さ、さすがに冷えてきたにゃ……)
ロイにくっついていれば温かいが、背中は無防備である。年が明けたばかりのこの時期は、まだまだ冷えるのだ。もしかしたら、さっきの寝間着どうこうの発言はそういう意味もあったのかもしれない。
黒歌はロイに乗ったまま毛布を被り、彼の体をベッド代わりにして寝ようとすると、
「んん………」
ロイが小さくうめき声をあげ、そのまま寝返りをうつ。もちろん彼の上に乗っていた黒歌も一緒に回るわけになり━━、
「にゃ!?」
ロイに抱きつくようにして落ちることは避けた。お互い体を向かい合わせて寝る格好になり、ロイをベッド代わりには出来なくなったが、黒歌は特に気にした様子もなくロイを優しく抱き締める。
(とりあえず、今日はこれで我慢してあげる)
何て事を思いながら寝ようとすると、突然黒歌の体がロイの体にさらに密着する。彼女が近づいたわけではなく、背中から肩にかけて、温かい何かに押さえられているのだ。
黒歌は何が起こったをすぐに察し、頬を赤く染める。まさか、いきなりロイに抱き締められるとは、思いもしていなかったのだ。
(ま、これもこれでいいか)
黒歌はそのまま目を閉じ、寝りにつく。明日、彼が目を覚ましたらどんな顔をするのか想像し、少しいたずらっぽい笑みを浮かべながら━━━。
━━━━━━
翌朝。
俺━━ロイが目を覚ますと、なぜか俺が黒歌を抱き締めていた。いや、え?なんで?
俺が必死に考えていると、黒歌が目を覚ましたのか、ゆっくりと目を開けると大きなあくびをする。
「ふにゃ~。あ、おはようにゃ」
「おはようさん。━━で、なんだこの状況は」
「あんたが抱き締めてきたんでしょ?覚えてないの?」
真剣な表情で言う黒歌。おそらく、嘘は言っていないんだろう。だが、一切覚えがない。
俺が若干眉を寄せていると、黒歌の表情が崩れ、いつものいたずらっぽい笑みを浮かべる。
「ま、寝相でだけどね」
「……覚えてるわけねぇな」
頬をかきながら言うと、黒歌が笑う。
「おかげで温かく寝れたにゃ」
「それは、良かったな」
とりあえず、寝間着を直そう。こんな話をしている間にも黒歌の胸が当たっていて、地味に気になる。
離れようと手を離すが、その分を黒歌が力を入れて抱き締めてくる。
「……おい」
「もうちょっとこのままでいさせてよ。別に急ぐ用事もないでしょ?」
確かに、今日は日曜日。急いでやることも特にはないが……。
俺が納得しかけていると、ドアがノックされる。
『ロイさん、朝食は何にしますか?今日は私が作ります』
ロセの声だ。今日の当番って、あいつだったけか……。
とりあえず、返してやろうと口を開く。
「それじゃあ、おまえに任せる!」
「にゃん♪」
「はぁん!?」
言い切ると同時に黒歌が再び耳に甘噛みしてきて、明らかに変な声が出た。これは、恥ずかしいしヤバイ……。
『………失礼しますよ』
若干どころではない怒気のこもったロセの声。返す暇もなくドアが開き、顔を覗かせたロセとバッチリ目が合った。
ロセは俺と黒歌を見ると、ぷるぷると全身を震わせながら着ていたジャージに手をかける!
「仲間外れにするんでねぇぇぇぇぇぇぇ!」
涙目になりながら叫び、勢いよく服を取っ払うと下着姿で俺に抱きついてくる!抱きつかれた勢いで再びベッドに倒れる俺。それにしたって、ロセがどんどん大胆になりやがる!
綺麗な女性二人にベッドに押し倒される。言葉にすればいいものだが、実態としては━━━、
「黒歌さん!ロイさんに何をしたんですか!まさか、怪しい術を!?」
「何にもしてないわよ。ちょっと仕事の対価を求めただけにゃ」
「た、対価ってなんですか!?だったら、私だって大事な仕事をしたんです!もっといい対価をください!」
「事前に言っておきなさいよ。悪魔なんだから、多少は交渉術を学んだほうがいいにゃ」
「う……っ!そ、それは、私は悪魔歴が短いんです!まだ不馴れなんですよ!」
耳元で非常にうるさい。いや、うまく仲裁してやればいいんだろうが、二人を止められる気がしねぇ。
俺が小さく息を吐いていると、不意に黒歌が俺の手を取る。
「ん?」
「ま、あんたはこれも出来ないでしょ?」
黒歌は挑発するようにそう言うと俺の右手を自分の胸に誘導し、そのまま胸に埋めていく!セラのものとは違った弾力のあるものに手が埋まっていく!なんか、指が無意識にわしゃわしゃ動いちまう!
「にゃふん……。ちょっと、あんまり激しくしないで……にゃん……」
黒歌の喘ぎ声に、鼻から温かい何かが吹き出そうになるが、それに耐えていると、ロセがやけくそ気味に俺の左腕を掴む。
「で、できますもん!このくらい、キスに比べれば余裕です!」
ロセの発言を受けて、黒歌が眉を寄せる。ロセはそんなものお構いなしに俺の左腕を自分の胸元に引っ張り、そのまま埋没させていく!触ればわかる。二人の胸の違いがぁぁぁぁぁぁ!
何となくだが、イッセーの言っていた胸の素晴らしさがわかっちまったよ!
鼻から何かが吹き出そうになる間際、黒歌が目元を厳しくしながら訊く。
「ところで、今『キス』って言ったわよね?何回したの?」
「え!?そ、それは………」
「ふーん、なるほど。じゃ、今から三回ぐらいさせてもらうかにゃ」
「だ、ダメです!それだけはダメですぅぅぅぅ!」
ロセと黒歌に引っ張られながら、俺の鼻からついにその何か━━血が吹き出した。ダメだ、もっとしっかりしねぇと……。
「ロ、ロイさん!?大丈夫ですか!?」
「や、やり過ぎちゃったかにゃ……」
心配するロセと、何となく反省する黒歌の声が聞こえた。
何か、視界が霞んできたが、とりあえず一言。
━━こいつら、覚えてろよ……!
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